↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/186

01-08-0008




 Side:アッシュ



 「単に寝ていたら、私から何かを盗もうとしていた者が居ただけです。

 奴隷闘士の頃から寝ていたら突然蹴られるとかありましたのでね、近づいた者は殴りつけたり、手を出して来たら握り潰したりとかするようになったみたいです。

 生憎(あいにく)私には意識が無いので何とも言えないのですが」


 私がそう言うと、受付嬢もハバン殿も呆れたような顔をした。


 「おいおい、そりゃまたメチャクチャ寝相が悪いというか何というかな話だな。

 お前の近くで寝るヤツは危険だ」


 「いえ、悪意が無かったりすると何もしないそうで、悪意があるヤツだけを何故か攻撃するそうです。

 部屋が与えられるまでは、他の仕事の者達と同じ部屋で雑魚寝でした。

 でも、悪意を持ったヤツ以外には何もしなかったらしく、近くで寝たがる者は多かったですよ」


 「完全に用心棒ねえ………ま、とりあえず行ってきなさい。

 最後に私の名前はリテュナ・ウェグルスと言います。

 何かあったら遠慮なく呼ぶように」


 「分かりました。失礼します」


 私は一礼してからハンター協会を出ると、ハバン殿と共にまずは商業区へと歩く。


 「まずは背負い鞄を買いに行く。

 オレも背負ってるが、荷物を持ち歩くには重要だからな。

 それと色々な事に使える縄に、これも色々な事に使えるナイフだ。

 主に獲物の首を切ったりするのに使う」


 「獲物の首を?」


 「血抜きと言ってな、狩ったモンスターは首などを切って血を抜かなきゃいけねーんだ。

 なるべく素早く血を抜かなきゃ獲物は腐りやすい、だからナイフが必要な訳だな。

 ちなみに罠を作る際にもナイフは必要なんで、幅広い用途に使う」


 「なるほど」


 「武器は安い物でもいいが、ナイフをケチるな。

 ナイフをケチって安い物にするってのは、己の命を危険に晒す事だと思え。

 良いナイフを持っていたから助かったってヤツは多い。

 最後の武器にもなる物だからな」


 「確かにそう考えると半端な物は買えませんね。

 今の私ではとても手が出ませんが……」


 「さっき渡した小袋の中には小金貨も入ってるぞ?

 あれだけあれば十分に買い物が出来るだろ」


 「えっ? 金貨!?」


 「おう、あの女オーナー相当に溜め込んでたぞ。

 元々は兄の男爵の出世の為に儲けてたらしいんだが、途中から自分の為に悪さして稼いでたみたいだな。

 アッシュを扱(こ)き使ってたのも、その為だ。

 だからこそ22年もやらされたんだろうさ」


 「あのオーナーの為だったんですか。

 …………普通の悪いヤツとしか思えませんね」


 「言いたい事は分かる。やってる事の悪どさと違って、目的は普通の小悪人なんだよ。

 もしくは普通の小悪人がたまたま上手くいったから調子に乗ったって感じなのかね?

 だから大々的にやろうとしなかった。

 そしてその所為で見つかりにくかったのかもしれん。

 それに田舎だったのもあるんだろう」


 「だから余計に発覚し辛かったと……」


 ハバン殿に顛末(てんまつ)を教えてもらいつつ、私は背負い鞄と剣帯と縄とナイフに布袋を買った。

 全部で中銀貨3枚に大銅貨が1枚という値段だったが、小袋の中に小金貨だけで4枚もあったので余裕だった。

 なので私は昨日見つけた棍棒を買い、それを持って王都の入口へと行く。


 「周りからスゲー見られてるが、そんなデカい棍棒持ってりゃそら見られるわな。

 オーガよりもデカい、サイクロプスしか使わねえ棍棒だぜ。

 それを普通に持ち歩いてるんだからエゲつねえわ」


 「そうですか?

 闘技場で使っていた剣と変わらない重さなので、特に問題なく振り回せますよ。

 それに棍棒は殴ればいいので楽そうですし」


 「まあ、棍棒を使うヤツってのはそれなりに多いし、気持ちは分からんでもない。

 使うヤツが多い理由は簡単だからだ。

 剣や斧は刃を立てなきゃ切れねえ、しかし棍棒はブン殴れば済む。

 ハッキリ言って使うのが簡単なんだよ」


 「私の場合は闘技場で剣を使ってましたが、剣で殴るというような使い方でした。

 槍とか色々あったのですが普通のは壊れやすかったので、最後には頑丈なだけの剣を使う事になったんです」


 そう答えつつ王都入り口の門番に木札を見せ、外へと出ると南に進む。

 街道が分かれている所まで来たら、今度は東の方へと歩いていく。


 「頑丈なだけで戦えるってのも凄い事だな。

 オレも闘技場の中を調べたけど、一本だけ異常にデカい剣があったのを見たよ。

 それ見た瞬間にアッシュが使ってたっつー剣だって分かったわ。

 アレどう考えても、唯の鉄の塊だぞ? よくアレで戦う気になったもんだ」


 「他のだと壊れるので、正直に言って不利にしかならないんですよ。

 戦闘を始めて一度や二度の攻撃で壊れますし、だったら壊れない剣モドキの方がマシです」


 「分かるんだが、そのパワー自体が色々と逸脱してんだよなー。

 ……っと、そろそろ真面目に狩りをするぞ。

 まずはここ、穴倉街道だ」


 「穴倉街道?」


 「街道はそうでもないんだが、ちょっと離れると………ほら、穴が開いてるだろ?

 これな、ウサギどもの巣穴なんだよ。まずはこいつらを狩る練習だ」


 「分かりました」


 私は穴の近くに顔を寄せて嗅いでみるが、臭いはしなかった。

 となるとこの穴には居ないはずだ。他の穴を探そう。


 「おいおいおいおい、何をしてるんだ?

 急に穴の近くに顔を寄せて臭いを嗅いだと思ったら移動し始めたが」


 「私は臭いを嗅ぐとだいたい分かるんですよ。

 この穴は臭いが薄いというか、ほぼしないので居ません。

 ですので別の穴を探します」


 「なるほど、お前さんそういう事も出来るんだな。

 ちなみに新人がやる方法は穴の近くを踏む事だ。

 すると地揺れが来たと勘違いして飛び出してくるんで、そこに一撃を加えて倒すってーやり方になる」


 「そういう方法があるんですね」


 「ああ、こういうのは先輩のやり方を見て覚えるんだよ。

 誰かが教えてくれるなんて事はねえからな。

 誰もがそうやって、見て覚えていくってこった。

 で、それを工夫して自分なりの方法にする訳だ。

 とはいえウサギの出し方は有名だから、当たり前の情報でしかない」


 見て覚える、か。

 これからどこに行かされるか分からないが、少なくともその場に行って誰かのやり方を覚えるのが基本となりそうだ。

 特に誰かが教えてくれたりしない、というのは大きい。

 てっきり教えてもらえるものだと思っていたが、どうやら私は甘かったようだな。


 次の穴を見つけたので臭いを嗅ぐと、猛烈に臭いにおいが穴の奥からしてきた。

 となると、確定でこの穴には何かが居る。

 私は穴の近くに立つと、革のサンダルしか履いてない足で「ドスドス」大地を踏みしめる。

 すると何かが飛び出してきたので左手で捕まえた。


 「そりゃ大鼠だな。とりあえず、そいつとナイフを貸してみな」


 そう言われたので大鼠とやらとナイフを渡す。

 するとハバン殿がナイフの先で指し示す。


 「ここだ。ここからこういう風に血管が通ってる。

 だから切るのはここ。

 そして血が噴き出すから、最初から噴き出す方向を確認してから切る」


 ズ、バッ! ブシュー……


 「結構勢いよく噴き出すんですね?」


 「大鼠は体がデカいからな。特に血が噴出しやすい。

 なかには血じゃなくて体液を出すヤツもいる。

 特に虫系のモンスターなら大抵そうだ」


 「虫……」


 「虫のモンスターは総じて嫌われてる。

 とにかく生命力が強いからか簡単に死なねえし、首が無くなっても動いてたりするからな。

 更には妙な攻撃が多いんだよ。

 蜘蛛なら糸を吐いてくるし、甲羅や角があるヤツは突っ込んでくる。

 そのうえ大きさも千差万別だ。

 なかにはオレ達ぐらいに大きい虫も居る」


 「そんなのが突っ込んで来たら、盾も保(も)たないような………」


 「そうだぜ? だから虫系のモンスターは嫌われてるんだよ。

 ただ、アレらの甲殻は武具に加工される事が多いんだ。

 だから需要は大きくてよく売れる。

 ただし行きたがるハンターは少ないって地方だ」


 「もしや、そこに………?」


 「いや、まずはもっと地方じゃねーか? 純粋に手が足りてないって所が先だと思う。

 モンスターが弱いが田舎過ぎて手が足りてねえところ。

 いきなりモンスターが強い所に行けとは言われねーだろうよ」


 という事は、虫は強い部類に入るという事か。


ブックマークありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。