02-55-0073
Side:アッシュ
ファイアリザードが村を襲ってきてから10日ほど経った。
既に領軍は帰っており、村はいつものというか平穏無事な状態だ。
私の魔力は回復に2日ほど掛かったが、今は完全に回復しきっている、
マーヤいわく、あれだけの量の魔力が2日で回復するなら十分に早いとのこと。
ただし、今後はもっと早くなるかもしれないとも言っていた。
今までは澱のように固まっていたから回復も遅かったかもしれないが、これからは魔力が正しく循環するようになる。
それはつまり回復も正しくなるという事であり、そうなると今まで以上の回復速度になるかもしれないのだそうな。
私も分からないが、そもそもマーヤも分からないらしい。
種族に関係なく澱のように沈殿した魔力など初めてなので、今後どうなるかは全く分からないと言われたのだ。
それならそれで一つずつ把握していけばいいだけなので、特に気にする程の事でもない。
私達は1日にある程度の所まで行き、巡回という形でモンスターを探している。
もちろん日によって行く場所を変えているが、なかなかモンスターというのを見なくなった。
もちろん居るには居るのだが、前の様に居る訳ではないので探さねばならない。
私は鼻で探す事が出来るが、他に可能なのは犬人族のロットぐらいだ。
それもあって男性達と女性陣は一緒に狩りをしている。
そして女性達4人のうち、山髭族の女性は女性陣のチームに入った。
理由はヴェルイーに定住する為だ。
他の女性達は、お金も貯まったし狩りも自分達で出来るようになったので、領都であるウェドンに行った。
やはり都会に行きたいという思いがあったようで、領軍と共に行ってしまっている。
まあ、あの女性達としても自分達には男が居ないというのもあったのだろう。
山髭族の女性だけ付き合っている男性が居るというのも色々あるのだ。
女性同士のチームならではの問題らしい。
「仕方ないわ。誰か一人だけが幸せだと、どうしても妬ましいものよ。
そうなるとチームなんてすぐに亀裂が入って瓦解するわ。
中には気にしないっていうチームもあるけど、そういうのは稀よ。
男性だけのチームなら、そんな事は無いんでしょうけどね」
「そうなんですか? 同じ事がありそうですけど……」
「男性だけのチームの場合、付き合ってる云々で解散なんて聞かないわ。
むしろ弱くなったとか戦えなくなったとかで解散するのはよく聞くもの。
おそらく強さというか、命の危険が大きくなると組めないって事でしょうね。
後は儲けが減ると駄目なんだと思うわ」
「それはまあ、そうでしょうね。
安全な方がいいですし、儲かる方が良いのは当たり前です。
ただ、普通は長年一緒にやってきたメンバーだからこそ、安全であり儲かると思うんですが……」
「そうでしょうけど………解散するんだから、限度というものがあるんじゃない?
年齢とかで衰えてくると、どうしても駄目になっていくでしょ」
「ああ、そういう理由ですか。それなら分からなくもないですね。
どの種族も年齢で衰えるのは避けられませんし、それは絶対です。
である以上は、いつか別れる時が来るんでしょう。
それが何時かは知りませんが……」
「わたし達の場合は、アッシュが衰えたらでしょうね。
ただしアッシュの種族が分からないから、それが何時やってくるのか分からないけども。
オーガと同じなら後100年は確実に大丈夫でしょ」
「オーガと同じなら……ですけどね。
それはともかくとして、そろそろ戻りましょうか。
今日も大鼠とか山兎ですけど」
「いいじゃない。
2人とも銅10級まで上がっちゃってるし、急いで級位を上げる必要も無いもの。
血だって山兎なら問題ないんでしょ? 文句言いながらも大鼠の分まで飲んでるけどさ」
そう。
山鹿や山狼が減った影響もあり、小さなモンスターが色々と出て来るようになった。
本来ならそこに山鹿も加わるはずだったのだが、巣を潰しているので結構減ってしまったようだ。
鼠や兎のモンスターは基本的にどこでも居るらしいので、国境近くが正常に戻った証でもあるだろう。
私達は日々を適当に過ごしているが、今は気楽なので特におかしな事も無い。
怒涛のように統率者などと戦ったが、今はのんびりとしたものである。
ずっとこれなら気楽でいいなと思うが、いつまで続いてくれるのやら?
ラブはここ最近、村長の家に行って本を読ませてもらっているらしいので、特に暇では無いようだ。
特に気に入っているのが、歴代の村長が手書きしてきた記録と聞いた。
なんでも様々に試した事が書かれているらしく、それを想像しながら読むのが楽しいらしい。
私にはサッパリ理解できないが、本人が面白いと思っている事に口を挟む事はしない。
そもそも本人が面白ければ何でもいい訳で、他人が口を出す事ではないのだ。
だからこそ放っている。口を出して怒っても困るしな。
大鼠と山兎を持って帰った私達は解体所に売り、そしてハンター協会で一応の報告を行う。
そして宿に帰り、後はそれぞれが好きなように過ごす。
私はここ最近、ひたすらに【身体強化】の練習をしている。
あの時に使った一瞬だけの強化だ。
アレなら魔力を大幅に節約できるし、あの統率者のファイアリザードの鱗を潰せるのだ。
二度と魔力を枯渇させない為にも、こういう技術は練習しておいて損は無い。
何故かラブは血を操る練習はしないようだが……アレは気になったからだろうか?
気になった時にしか練習しないというのもどうかと思うが、寿命が900年以上だとあんなものなのかもしれない。
気になった時だけする。
それでも一定の実力は得られるはずだ、寿命が長いのだし。
さて、そんな事を考えておらず、私は私の練習に励むか。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ファイアリザードが村を襲って一ヶ月ほど経った。
特に国境に異常は出ておらず、モンスターもおかしくなっていない。
そんな日々を過ごしていると、村のハンター協会に一通の手紙が来たらしい。
送って来たのはマスターであり、王都に戻ってこいとの事だった。
「どうやら他の地域に行かせる前に、アッシュから国境で起きた事を直接聞きたいようですね。
王都では細かい事が分からないからでしょうけど、大きな事であれば記録に残さないといけないからでもあります。
本部は指令を出す場合もありますから、古い情報でも大事なものは残してありますし」
「それは楽しみです。
ここの本も全て読んでしまったので、そろそろ新しい本が読みたかったところですし」
「本当にラブはブレないわねえ。とことんまでに本が中心じゃない。
まあ、それが目的でこっちに来たんだし、別に悪い事ではないけどね。
それにモンスターとも戦えるようになってるし」
「そうですね。普通に山狼までなら倒せるようになりました。
なので村に来た当初とは全く違います。
段々とコツも分かってきましたから、その分だけ強くなっていますしね」
「それは凄いな。私はどうにも上手くいっていない感じだ。
早過ぎても遅すぎてもいけないみたいでな。
その所為で少ない【身体強化】で最大の威力が実現できていない。
かわりに動きに【身体強化】を混ぜる事は出来るようになったが」
「あの変態的な動きね?
やたらに動くのが速いんだけど、それってステップだけなのよ。
近接戦闘では有利なんでしょうけど、見ている分にはちょっと………ていう動きなのよねえ。
なんだか虫みたいだし」
虫みたいと言われても困るが、代わりに今までの20分の1以下まで魔力の使用量は落ちている。
使いっぱなしの方が強いので、あくまでも魔力の節約技術ではあるのだがな。
それでも魔力がその分だけ長く続くのだから、悪い事ではない。




