02-54-0072
Side:ラブ
どこの国でも禁止されている<ブヌクスの香>と<アロゲイナの葉>が商人の馬車から出てきた。
どう考えても駄目だろうに、でも商人達は北から移動してきている。
そして北には国境の砦がある、んだけど………
「北には両国の砦があるのに、この商人は咎められずに来てる?
祖国に<ブヌクスの香>と<アロゲイナの葉>の生産拠点があるとして、国境の砦が無事に越えられた理由はなんだろう?
秘密の抜け道でもあるんじゃ……」
そう言いながら商人を見ると、あからさまに目を逸らした。
ある意味で分かりやす過ぎると思うんだけど、どうしてこう……下手なんだろうね?
色々な意味でこの商人は駄目すぎると思う。
吐かせるのは簡単だろうけど、本当に犯罪が出来ないタイプだよ。
「あからさまに目を逸らしたという事は、秘密の抜け道とやらがあるという事だ。
貴様にはしっかりと吐いてもらわねばな。
この者は拷問をしても構わん。全て吐かせるぞ!!」
「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」
兵士達が護衛と商人を連れて、駐屯している場所へと引っ張って行きました。
アレだけの人数の兵士に囲まれていたら、流石に逃げる事も抵抗する事も出来ないでしょう。
拷問を受ければすぐにでも吐きそうな気がしますが、同時にしぶとく嘘を言いそうでもある。
ああいうタイプは最後までしぶとく抵抗するか、それとも簡単に口を割るかのどちらかしか居ません。
しぶといのだと面倒でしょうが、そういう性格だとどうしようもないんですよね。
昔、我が家にもそんな下男が居ましたから。
小さな額の金銭を懐に入れるヤツでしたけど、最後の最後まで嘘ばかりの者でした。
当然ながら辺境伯家に対する嘘です。
死罪になると聞き慌てて全て話しましたけど、その時にはもう遅いのです。
その男は処刑されて終わりましたけど、ゴネるように嘘を吐く者って本当に居るんですよね。
「居るねえ、そういうヤツ。
往生際が悪いというか、最後までゴネればどうにかなると思ってるヤツってさ。
素直に言ってりゃ死ななくて済んだものを……って思った事は何回かあるよ。
特に王都のスラムで見たね」
「王都のスラムってマシだって聞くけど?」
「マシだからさ。
だから悪い事をしても、なんとか誤魔化して居座ろうとするんだよ。
結局スラムの連中に始末されて終わりさ。
下らない嘘なんか吐かなきゃ死ななかったっていうのに、ああいうヤツほど理解しないんだ」
皆は解体をして荷車に積み込みながら雑談に興じています。
ぼくもそうですけど、ファイアリザードってかなりの大きさなんですよ。
肉だけでも相当の重さになりますので、雑談でもしながら解体しないと、重いし疲れるしで大変で仕方がありません。本当に。
「皆で解体しているからまだ早いけど、切れにくい事も含めて本当に大変だよ。
新しいナイフが出来ていればもっと切れるんだろうけど、鉄のナイフじゃ厳しいね」
「仕方ないわ。
新しいのが出来るまでの辛抱だけど、今すぐ欲しいという気持ちも分かる。
それぐらいには切れにくくて大変。
それなりに美味しいって聞くけど、統率者だからこうなのかしら?」
「じゃないの?
かなりの大きさの<混沌の種>だったし、あそこまで大きいなら切りにくいのも納得するけどね。
強さも段違いだったし、兵士達の剣も碌に効いてなかったもの」
「だったわね。あそこまでだと、どうにもならないわ。
アッシュが居てくれなければ、村が壊滅していたのは確実でしょう。
そのアッシュは運んで行ってしまったけど」
「一度にアレだけ運べるのもアッシュだけだろうさ。
凄いけど、色々とズレ過ぎなんだよねえ………。
アレだけの男だから惚れるヤツも多いだろうけど、ズレてるだけに大変だと思うよ」
「でしょうね。
アレだけの男なら、普通は女の方が突撃して離さないでしょうけど………」
「男のワシらでも分かるが、アレに惚れると苦労しかせんと思うぞ。
まず色仕掛けが通用せんのだからな。
それが通用せん時点で、かなりの制限を受けるであろう。
そのうえで………じゃからな」
「良い悪いは別にして、男なんて体使われたらあっさり陥落するもんなー。普通は」
「そうそう。女性に体を使われて勝てる男は居ないわな。
まあ、その後に逃げるようなクズも居るけど」
「そういうヤツは結局どこかで刺されるって聞くけどね?
自分がそうじゃないから分からないけどさ」
「本当に逃げ切るヤツと、殺されるヤツに分かれるね。
噂なんかで聞く限りじゃ、大抵どっかで殺されてるよ。
自業自得だから魚のエサにでもなってろとしか思わないけどさ」
容赦ないなと思いますけど、最低な者の死に様がそれなら留飲も下がるでしょう。
そんな事を考えているとアッシュさんが戻って来たので、また解体した部分が積まれていきます。
解体所の人達は大丈夫でしょうか? あっちの方が大変な気が……
「それにしても……改めて見ても、やっぱり大きいわね。
コレが攻めて来て、よく誰も死ななかったわよ。
最初に村に来た時に撃退できて良かったけど、アレってどうやったのかしら?」
素朴な疑問という感じでアッシュさんの肩に居るマーヤさんが言いましたが、そういえばそうですね?
このファイアリザードを普通の村人がどうやって撃退したんでしょうか。
アッシュさんが居ないと勝てないほどなのに……
「そら簡単だ。山狼が村に来た時にも使うんだが、お酢を顔にブッ掛けてやりゃ逃げてくんだよ。
それをこのファイアリザードってヤツにもやっただけだ。
皆の家にもお酢ぐらいあるからな、それを持ちよりゃ撃退ぐらいは出来るさ」
「田舎の知恵ってヤツだが、最悪は酒をぶっかけてもいいぞ。
モンスターの中には酔っぱらうヤツも多いし、酒に弱いのも多い。
覚えておけばどこかで使えるかもな? モンスターには酒がよく効くってな。
ワハハハハハハハ………」
「モンスターに飲ませる無駄な酒などありゃせんわい。
意地でも普通にブチ殺して、代わりにワシが飲む。
そうせねば酒に失礼というものよ」
そう言うガーンドさんの横で、山髭族の女性も「うんうん」と頷いています。
本当にドワーフというのは酒飲みばかりですね。
ドワーフが本当に愛しているのは、妻や夫ではなく酒だと言われるはずです。
聞いた時には酷いと思いましたが、実物を見ると仕方ないとしか思えません。
それぐらいに酒が中心なんだなと思えてきますし、酒がドワーフの男女を繋いでいるのでしょうね。
それもそれで……と思わなくはありませんけど。
再びアッシュさんが運んでいきましたが、他の人達も出発していきます。
とにかく荷車で運んで終わらせないといけませんからね。
僕は血を飲んでいるので大丈夫ですが、このままだとお昼を過ぎてしまいます。
他の方はお腹が空いて大変でしょう。
「流石にちょっとペースを上げようかい。
このままだと昼を随分と過ぎてから昼食を食べる事になっちまう」
「それはイヤねえ。
今日は疲れてるし、だからこそ頑張って終わらせましょうか。
お昼を過ぎてから昼食を食べるのも嫌だし、中途半端だと夕食に響くのよねえ。
帰ってひと眠りもしたいし、頑張りましょうか」
「そうね。夜の為にもひと眠りしておかないと大変だわ。
疲れてる時に無理にしても盛り上がらないし、せっかくするのにそれじゃ勿体ないもの。
ヤるならしっかりヤらないと」
何故そこに気合を入れるのか知りませんけど、女性陣の気合は入ったようです。
先程までと違いテキパキと動きますが、欲に塗れているというのもどうなんでしょう?
何だか、こう……締まらない感じがしてくるんですけど。
しかもぼくだけじゃなく、村の人も何だか微妙そうな顔を………って思いましたけど、そういう顔をしているのは村でも男性だけですね。
女性の方は特に何とも、という感じです。




