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 Side:ラブ



 どこの国でも禁止されている<ブヌクスの香>と<アロゲイナの葉>が商人の馬車から出てきた。

 どう考えても駄目だろうに、でも商人達は北から移動してきている。

 そして北には国境の砦がある、んだけど………


 「北には両国の砦があるのに、この商人は咎められずに来てる?

 祖国に<ブヌクスの香>と<アロゲイナの葉>の生産拠点があるとして、国境の砦が無事に越えられた理由はなんだろう?

 秘密の抜け道でもあるんじゃ……」


 そう言いながら商人を見ると、あからさまに目を逸らした。

 ある意味で分かりやす過ぎると思うんだけど、どうしてこう……下手なんだろうね?

 色々な意味でこの商人は駄目すぎると思う。

 吐かせるのは簡単だろうけど、本当に犯罪が出来ないタイプだよ。


 「あからさまに目を逸らしたという事は、秘密の抜け道とやらがあるという事だ。

 貴様にはしっかりと吐いてもらわねばな。

 この者は拷問をしても構わん。全て吐かせるぞ!!」


 「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」


 兵士達が護衛と商人を連れて、駐屯している場所へと引っ張って行きました。

 アレだけの人数の兵士に囲まれていたら、流石に逃げる事も抵抗する事も出来ないでしょう。

 拷問を受ければすぐにでも吐きそうな気がしますが、同時にしぶとく嘘を言いそうでもある。


 ああいうタイプは最後までしぶとく抵抗するか、それとも簡単に口を割るかのどちらかしか居ません。

 しぶといのだと面倒でしょうが、そういう性格だとどうしようもないんですよね。

 昔、我が家にもそんな下男が居ましたから。


 小さな額の金銭を懐に入れるヤツでしたけど、最後の最後まで嘘ばかりの者でした。

 当然ながら辺境伯家に対する嘘です。

 死罪になると聞き慌てて全て話しましたけど、その時にはもう遅いのです。

 その男は処刑されて終わりましたけど、ゴネるように嘘を吐く者って本当に居るんですよね。


 「居るねえ、そういうヤツ。

 往生際が悪いというか、最後までゴネればどうにかなると思ってるヤツってさ。

 素直に言ってりゃ死ななくて済んだものを……って思った事は何回かあるよ。

 特に王都のスラムで見たね」


 「王都のスラムってマシだって聞くけど?」


 「マシだからさ。

 だから悪い事をしても、なんとか誤魔化して居座ろうとするんだよ。

 結局スラムの連中に始末されて終わりさ。

 下らない嘘なんか吐かなきゃ死ななかったっていうのに、ああいうヤツほど理解しないんだ」


 皆は解体をして荷車に積み込みながら雑談に興じています。

 ぼくもそうですけど、ファイアリザードってかなりの大きさなんですよ。

 肉だけでも相当の重さになりますので、雑談でもしながら解体しないと、重いし疲れるしで大変で仕方がありません。本当に。


 「皆で解体しているからまだ早いけど、切れにくい事も含めて本当に大変だよ。

 新しいナイフが出来ていればもっと切れるんだろうけど、鉄のナイフじゃ厳しいね」


 「仕方ないわ。

 新しいのが出来るまでの辛抱だけど、今すぐ欲しいという気持ちも分かる。

 それぐらいには切れにくくて大変。

 それなりに美味しいって聞くけど、統率者だからこうなのかしら?」


 「じゃないの?

 かなりの大きさの<混沌の種>だったし、あそこまで大きいなら切りにくいのも納得するけどね。

 強さも段違いだったし、兵士達の剣も碌に効いてなかったもの」


 「だったわね。あそこまでだと、どうにもならないわ。

 アッシュが居てくれなければ、村が壊滅していたのは確実でしょう。

 そのアッシュは運んで行ってしまったけど」


 「一度にアレだけ運べるのもアッシュだけだろうさ。

 凄いけど、色々とズレ過ぎなんだよねえ………。

 アレだけの男だから惚れるヤツも多いだろうけど、ズレてるだけに大変だと思うよ」


 「でしょうね。

 アレだけの男なら、普通は女の方が突撃して離さないでしょうけど………」


 「男のワシらでも分かるが、アレに惚れると苦労しかせんと思うぞ。

 まず色仕掛けが通用せんのだからな。

 それが通用せん時点で、かなりの制限を受けるであろう。

 そのうえで………じゃからな」


 「良い悪いは別にして、男なんて体使われたらあっさり陥落するもんなー。普通は」


 「そうそう。女性に体を使われて勝てる男は居ないわな。

 まあ、その後に逃げるようなクズも居るけど」


 「そういうヤツは結局どこかで刺されるって聞くけどね?

 自分がそうじゃないから分からないけどさ」


 「本当に逃げ切るヤツと、殺されるヤツに分かれるね。

 噂なんかで聞く限りじゃ、大抵どっかで殺されてるよ。

 自業自得だから魚のエサにでもなってろとしか思わないけどさ」


 容赦ないなと思いますけど、最低な者の死に様がそれなら留飲も下がるでしょう。

 そんな事を考えているとアッシュさんが戻って来たので、また解体した部分が積まれていきます。

 解体所の人達は大丈夫でしょうか? あっちの方が大変な気が……


 「それにしても……改めて見ても、やっぱり大きいわね。

 コレが攻めて来て、よく誰も死ななかったわよ。

 最初に村に来た時に撃退できて良かったけど、アレってどうやったのかしら?」


 素朴な疑問という感じでアッシュさんの肩に居るマーヤさんが言いましたが、そういえばそうですね?

 このファイアリザードを普通の村人がどうやって撃退したんでしょうか。

 アッシュさんが居ないと勝てないほどなのに……


 「そら簡単だ。山狼が村に来た時にも使うんだが、お酢を顔にブッ掛けてやりゃ逃げてくんだよ。

 それをこのファイアリザードってヤツにもやっただけだ。

 皆の家にもお酢ぐらいあるからな、それを持ちよりゃ撃退ぐらいは出来るさ」


 「田舎の知恵ってヤツだが、最悪は酒をぶっかけてもいいぞ。

 モンスターの中には酔っぱらうヤツも多いし、酒に弱いのも多い。

 覚えておけばどこかで使えるかもな? モンスターには酒がよく効くってな。

 ワハハハハハハハ………」


 「モンスターに飲ませる無駄な酒などありゃせんわい。

 意地でも普通にブチ殺して、代わりにワシが飲む。

 そうせねば酒に失礼というものよ」


 そう言うガーンドさんの横で、山髭族の女性も「うんうん」と頷いています。

 本当にドワーフというのは酒飲みばかりですね。

 ドワーフが本当に愛しているのは、妻や夫ではなく酒だと言われるはずです。

 聞いた時には酷いと思いましたが、実物を見ると仕方ないとしか思えません。


 それぐらいに酒が中心なんだなと思えてきますし、酒がドワーフの男女を繋いでいるのでしょうね。

 それもそれで……と思わなくはありませんけど。


 再びアッシュさんが運んでいきましたが、他の人達も出発していきます。

 とにかく荷車で運んで終わらせないといけませんからね。

 僕は血を飲んでいるので大丈夫ですが、このままだとお昼を過ぎてしまいます。

 他の方はお腹が空いて大変でしょう。


 「流石にちょっとペースを上げようかい。

 このままだと昼を随分と過ぎてから昼食を食べる事になっちまう」


 「それはイヤねえ。

 今日は疲れてるし、だからこそ頑張って終わらせましょうか。

 お昼を過ぎてから昼食を食べるのも嫌だし、中途半端だと夕食に響くのよねえ。

 帰ってひと眠りもしたいし、頑張りましょうか」


 「そうね。夜の為にもひと眠りしておかないと大変だわ。

 疲れてる時に無理にしても盛り上がらないし、せっかくするのにそれじゃ勿体ないもの。

 ヤるならしっかりヤらないと」


 何故そこに気合を入れるのか知りませんけど、女性陣の気合は入ったようです。

 先程までと違いテキパキと動きますが、欲に塗れているというのもどうなんでしょう?

 何だか、こう……締まらない感じがしてくるんですけど。


 しかもぼくだけじゃなく、村の人も何だか微妙そうな顔を………って思いましたけど、そういう顔をしているのは村でも男性だけですね。

 女性の方は特に何とも、という感じです。


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