02-52-0070
Side:アッシュ
傷口を広げていく皆は凄いが、ファイアリザードの顔の前に居たラブがこちらにやって来た。
そして傷口に顔を突っ込むと、牙を突き立てて生きたままの血を飲んで行く。
ファイアリザードの顔には闇が掛かっているので、今のうちにという事だろう。
「ンクッ、ンクッ、ンクッ、ンクッ、ンクッ、」
ラブが飲む速度が速いが、それだけ血を消費したんだろうなと思う。
しかし、この大きさのファイアリザードの血を全て飲み干してしまいそうな雰囲気を感じるのは私だけか?
そう思い周りを見ると、周りの皆も微妙な表情になっている。
「ギィッ、ギャッ。……ギュー……!」
段々と弱い声になっていたのだが、ここで一気に声に力が抜けて来た。
おそらくラブが血を飲み始めた所為で、体中の血が足りなくなっているのだろう。
このまま倒せるならそれが一番良いんだが………
そう思っていると顔の闇が晴れた途端、ファイアリザードは最後の力をふり絞るかのように口を大きく開き
「【魔通矢】! 【魔通矢】! 【魔通矢】ぁぁぁぁぁ!」
「ギョボッ!?!?!!」
口の中にマーヤの【魔術】が連続で突き刺さり、ブレスを吐くどころではなくなったファイアリザード。
そしてその隙に一斉に離れた魔法組。
それが最後の抵抗だったのだろう。
ファイアリザードの体から力が抜けると、首から上が地面に倒れた。
ドスゥン!
「やったか!?」
「倒したか!?」
「勝ったんじゃないのか!?」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
皆が固唾を飲んで見守る中、ファイアリザードは「ピクリ」ともしない。
どうやら私達はやっと勝ったようだ。
この戦いで一番活躍したのは間違いなくラブだろう。ブレスを阻止して血を一気に抜いてくれた。
なので、それだけの活躍なのは誰もが認めると思う。
「やったー!! 勝ったぞーーーーっ!!!」
「勝ったぁ!! オレ達は勝ったんだ!!!」
「うぉぉぉぉぉっ!! あのファイアリザードに勝ったぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」」」」」」」」」
騎士や兵士やガーンド達が大声を上げて喜ぶ。
ここまでの大きさのモンスターともなれば、普通は銀級が複数必要だと思う。
騎士団や並の武器では傷も付かないくらいだしな。
とはいえ騎士団の装備は鉄製の物なので、攻撃が通らなくても仕方がないとは思う。
武具屋でも鉄製と鋼鉄製は分かれているが、これは分けて呼ばれているだけで同じ物だ。
ただし鋼鉄製と呼ばれている物の方が、格段に質が良い物となる。
だから当然、鉄製より鋼鉄製の方が高い。
騎士団が使う物をそんな立派な物に出来るはずもなく、騎士団で使う物は全てまとめて鉄製らしい。
そもそも騎士や兵士は沢山居るんだし、それを考えると鉄製でも凄い費用が掛かる。
少しでも安くしたいのは当然だろうな。
「ンクッ、ンクッ、ンクッ、ンクッ、ンクッ、」
「もうそろそろ飲むのを止めなさい。いったい何時まで飲む気よ?
これだけの大きさだから血は多いだろうけど、放っとくと干乾びるまで飲んでそうじゃない。
流石にそれは売れないから困るの。ファイアリザードの肉も食べられるんだからね?」
「分かりました。
とはいえ魔力が多いのと、なんかポカポカしてくる血だったので、つい………」
ラブが服を真っ赤に汚しながらも、若干満足気な感じで言っている。
そこから察するに、アレだけの血を飲んでもまだ満足はしていないらしい。
どこまで飲めるのか知らないが、やはりヴァンパイア族はとんでもないみたいだ。
「とりあえず倒したファイアリザードを運ばなきゃいけないんだが………。
コレはどう考えても切って運ばないと駄目だな。
荷車を借りてきて、バラして運ぼう。
私は斧を返さないといけないから行ってくる」
「ぼくも行きます。服とか洗わないといけないので」
「わたしも行くわ。暇だし」
暇という理由はどうかと思わなくもないが、それでも勝利したという達成感で自然に笑いも出て来る。
皆は地面に座ったり横になったりしながら休むようだ。
あれだけの戦いで大変だったからな。
村の人達に手伝ってもらって運ぶしかないだろう。
私も身体強化が使えないし、そうなると素の力だけで運ぶしかない。
そう考えると、暴走した時の私はどれだけの身体強化をしていたのだろうか?
あの澱のような魔力がほぼ無くなるというのは尋常ではない事だぞ。
とりあえず村へと戻った私は、ラブと分かれて真っ直ぐ荷車屋へと行く。
そしてファイアリザードが死者なく倒せた事と、代わりに斧の刃がボロボロになってしまった事を伝え、賠償を申し出ると笑われた。
「なに言ってんだ。斧の刃がここまでになったって事は激戦だったんだろう。
だったら細かい事は気にするな。
むしろ斧の刃程度で皆の命が助かったのなら安いもんだ。
そうだろ?」
私はその言葉をありがたく受け入れ、そして荷車の事と人手が要る事を伝えた。
すると、村の人達に声を掛けて総出で行くと言い出す。
もしかしたら助かった事がキッカケで騒ぎたいだけなのかもしれない。
田舎は娯楽が少ないと聞くしな。
「自分達の命が助かったから、派手に騒ぎたいんでしょうね。
酒でも飲みたいんじゃない?」
どうやらマーヤも同じ事を思ったらしい。
私もそういう風に見えたが、解放されたのだから分からないでもない。
相変わらず酔えないので、私としては酔うというのが分からないが、それでも派手に騒いで不安を晴らしたいのは分かる。
私達はそんな荷車屋を後にして、解体の為に現場に戻った。
すると、未だに動かずにダラダラと休んでいる皆が見える。
私はとりあえずバーナンド様の所に行き、村で話した事を伝える事にした。
「なるほど、村の者達がな。それでは我らはこのまま休憩としよう。
ヴォークソンの巣から連続だからな、流石に堪えた。
アッシュは未だ体力があるみたいだが、全員が全員そこまでの体力を持つわけではないのだ」
「私達は解体を手伝いますが、元々騎士団の方の仕事には含まれていないはずです。
ゆっくりと休んでください」
「すまないが、そうさせてもらうよ。
我々も休まなければ大変だし、休息が終わったら武具の手入れをしなければいけない。
ファイアリザードの所為でこうなったからね」
そう言ってバーナンド様が見せてきた鉄の剣の刃はボロボロだった。
どうやら鱗より柔らかいといっても、肉もそれなりの硬さをしていたらしい。
と思ったら、ファイアリザードが動くので鱗に当たってしまい、その所為でボロボロになってしまったそうだ。
私達は礼をして離れた後、村の人達が来るまでガーンド達と待とうと思ったのだが止めた。
なんだか女性達と妙な感じなので離れておく事にしたのだ。
正気に戻るまでは駄目そうなので、それまでは2人で居る事にする。
「なんか今にもおっ始めそうな雰囲気ねえ。
このファイアリザードが特に大きくて強そうなのは分かるけど、あんなに盛り上がった感じだと、全部無視して村の酒場の2階に行きそうよ。
どう見ても」
「同じ苦難を乗り越えると盛り上がると聞くが、そんな感じではないのか?
離れていたが、女性陣も女性達も援護をしていたからな。
それで盛り上がるというのなら、そういう事ではないのかと思うが………」
「まあ、でしょうね。
それはともかくとして、ファイアリザードの解体って本当に出来るのかしら?
傷つけた所が多数あるから、そこを基点にして内側から切れば大丈夫かな?
あと、鱗はスケイルアーマーに使いそうだから、残しておかないといけないわね」
「鉄の斧の刃がボロボロになるくらいだ。相当の硬さの鱗だろうからな。
どこに売るのかは知らないが、良い防具になるんじゃないか?
それよりも<混沌の種>があるかの確認をしないといけないな。
もちろん支部長が来てからだが」
「そうね。それは確認しておくべきよ」
その状態によって、どれだけ強くなっていたかが分かるだろう。
ブックマークありがとうございます




