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 Side:マーヤ



 まさかヴェルイーの村に戻ってきたら、ファイアリザードなんていうのが襲ってきてたとは思わなかったわ。

 ピンクヴォークソンを倒して「やれやれ」と思っていたらコレなんだもの。

 本当にどこかのヤツが裏で糸を引いているとしか思えないわね。


 そんな愚痴を心の中で溢していると、錬金術師が心臓近くから<混沌の種>を取り出した。

 けど、あの大きさは流石にちょっと無い。

 ステージ3の色にまではなってないけど、それでもステージ3にいつ進んでもおかしくない大きさをしてる。


 あれがステージ3になると、今度は小さくなって意味不明な色に変わっていく。

 魅入られる者もいるくらい、不自然でおかしな色になるのよ。

 私も一度だけ見た事があるけれど、見る角度によって色が変わるという意味不明さなのよねえ。

 それが大きくなるとステージ4となるわ。


 ステージ4の時点で金級が何人も必要なほどの強さとされているけれど、実際に銀級の上位と金級の間に実力の差はほとんど無い。

 いえ、それぞれのハンターによって実力はバラバラと言うべきかしら? 強いのも居れば弱いのも居る。


 それでも銀級まで昇れる強さはしているのよ、その中で強いのと弱いのが分かれているだけで。

 ちなみにわたしはそこまで強くはないけど、中央ぐらいには居ると思う。

 実際に【生魔法】だけじゃ戦って来れないわけでね。当然それなりの戦闘能力は持ってる。


 そのわたしでさえアッシュには勝てないんだから、既にどれだけ強いか分かるってものよ。

 それはともかく<混沌の種>を持ったラブを連れて、私達は村の入り口近くで話している皆の下に行く。

 ピンクヴォークソンなどに関しては錬金術師に任せるしかない。


 「皆が揃ってここに居てくれるから助かるわ。

 ラブが持っている<混沌の種>を見てちょうだい。

 これステージ2の中でも特に大きいわよ。

 狂った色になってないからステージ3までは到達してないけど、もし<混沌の種>をもう1つか2つ食べてたら、おそらくステージ3に到達してたと思う」


 「それはまた………よく生き残れたのう、ワシらは。

 アッシュの御蔭じゃが、同時にアッシュの所為でピンチではあったがな。

 とはいえ今は笑い飛ばせるが、戦いの最中は気が気ではなかったわい」


 「まあなぁ……

 あそこまでとんでもないとは思わなかったが、あそこまで強いとも思ってなかったよ。

 ピンクヴォークソンが地面と平行にブッ飛んでいくのを見た時には、思わず目が点になったぜ。

 意味が分からなさ過ぎて、今思い出すと変な笑いが出そうだがな」


 「分かる。とんでもなさ過ぎて、荒唐無稽な冒険小説を読んでいるみたいだったよ。

 凄まじい音の攻撃だったけど、それに耐えられたピンクヴォークソンも十分におかしいけどね」


 「アレは皮膚が硬いし、弾力もあるからだと思うけどな。

 それに、本当に耐えられてたのかは疑問があるぜ?

 オレ達には耐えられているように見えたけど、今思い出してみると碌な反撃が出来てなかったと思わないか?」


 「確かにそうだな。

 アッシュの攻撃は凄まじいものだったし、それでボコボコにされてからは、なんか必死で抵抗してただけって感じ。

 それもアッシュには効いてない感じだったしさ。

 そこまでの<混沌の種>でもアッシュには勝てないってこったろ」


 「何より、あの時のアッシュは素手だったんだ。

 あの時の力が自分で出せるなら………って思ったけど、今度は耐えられる武器が無いね?

 鋼鉄で出来たハンマーなら耐えられるかってところだろうさ」


 「その時点でメチャクチャなんだけど、あのパワーは見た者しか分からないわよ。

 実際、それでも耐えられるかは分からないんじゃない?

 場合に寄ったら赤鉄か聖鉄の武器が必要かもね。

 どれだけお金があれば買えるのか知らないけど」


 「そんな高値の物を買うぐらいなら、黒銅か硬銅の武器の方が良いんじゃないの?

 銅っていっても、あそこまでになれば強力だよ?」


 「だねえ。

 アッシュがどれだけお金を持ってるかは知らないけど、王都に戻ったら専門の武具屋に行った方がいいよ。

 ハンター協会に紹介状を貰えば、貴族街の専門店に行けるようになるさ」


 専門店ねえ。確かにああいう店の武器じゃないと、アッシュの力には耐えられないかも。

 とはいえ専門店の武器は高いのよ。それだけ強力な物だから当然なんだけどさ。

 ここで出来る限り稼いでからじゃないと買えないと思うわ。


 「そんな店があったのか……。とはいえ今は買いにも行けないのだから、意味は無いだろう。

 仮にファイアリザードが攻めて来たとして、勝てる策を考えておかないと駄目じゃないか?

 攻めて来ないという保証も無いのだし」


 アッシュがそう言うと、辺境伯家のバーナンドが頷いて肯定したわ。

 確かにそれは考えておかなきゃいけないんだけど………誰が考えても答えは1つだけなのよねぇ。


 「結局はアッシュを中心にして、騎士団とワシらで何とかするしかないのでは?

 ファイアリザードで怖いのは恐らくブレスでしょう。ですから接近して戦うしかありますまい。

 でなければ丸焼きにされてしまいます」


 「そうね。私達は魔法で支援するしかないわ。

 騎士団の邪魔になっても困るし、私達の力じゃ攻撃が通る事も無いでしょう。

 そうなると足手まといにしかならない。

 アッシュは………アッシュは金棒なのよねえ」


 「そうだが………駄目なのだろうか?」


 「金棒は楽だろうけど、それではファイアザードに有効な攻撃は無理だと思うのよ。

 最悪は一番良い伐採斧を借りて来た方が良いかも。

 アッシュなら身体強化しなくても使えるでしょうし、ファイアリザードを倒せるなら貸してもらえるはずよ」


 「そうだね。死んだり村を放棄する事になるよりマシだろ、斧が壊れてもさ。

 むしろそれだけで済んだなら、よくやったと褒められるくらいだよ」


 「アッシュが使うのならば戦闘用に作られたポールアックスの方が良いのだが、今それを言っても始まらぬか。

 それと……大きさにもよるが、尻尾の攻撃も十分に脅威だ。場合によっては手足が骨折する恐れもある」


 「確かにそうだね。

 となると……「シャァァァァァァァァァッ!!!」………やっこさん、お出でなすったようだ。

 皆、気合入れて全力でやるよ!! ここで死ぬなんて事は許されないんだからね。

 なぁに、死ななきゃ何とかしてもらえる!」


 チラリとわたしの方を見て来たけど、勘弁してほしいわね。

 とはいえこの状況でお金の事とか言い出しても仕方ないし、戦いの前に士気を下げるなんて事もしたくない。


 「いいけど、死ぬんじゃないわよ!

 死んだらそこで終わりなんだから、絶対に死なないようにしなさい!!」


 「「「「「「「「「「おーっ!!」」」」」」」」」」


 「私は急いで荷車屋に行って斧を借りて来る。

 それまではすまないが、皆で頑張ってくれ!!」


 「急いでくれよ!」


 「待ってるからな!!」


 それぞれが自分の武器を片手にファイアリザードの声が聞こえた方へ行く。

 そういえばファイアリザードがいきなり突然出て来るなんて、どう考えてもおかしいわよね?

 もしかしてアッシュの居た違法闘技場に運んでいたヤツと同じ【転移魔法】使いが居る?


 そうでもなければ、いきなり国境の村にファイアリザードなんて送り込めないはずよ。

 どこかで必ず目撃されるし、そこから情報を辿(たど)って行けば出所は分かる。

 でも【転移魔法】を使われたら全く分からない。


 実際、借金のカタなんかで連れていかれる空色の髪の子は居るし、そういうのが裏の世界で便利に使われていたりする。

 わざわざ髪を剃ったり色を染めたりして誤魔化すのよね。

 特に黒色は染めやすいから。


 「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」」」」」」


 「【閃光波】!!」


 「【強風塊】!!」


 「【闇落】!!」


 敵に向かって閃光が飛んで目を潰し、その顔に風の塊が飛んでいって殴られたように飛ぶ。

 更には闇がファイアリザードの顔の近くで広がる。

 これで完全に見失ったでしょうから、今のうちに近づいて攻撃を始めないといけない。


 目が治ったり闇を払われると、確実にブレスを吐いてくる。

 そうなる前に接近しておきたいんだけど……近づくだけでも苦労するわね。


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