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Side:ラブ
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
咆哮を上げたアッシュさんは、凄まじい速さでピンクヴォークソンに接近。
足首を掴んだかと思ったら、片手で振り回して地面に叩きつけた。
顔ごと地面に叩きつけられたピンクヴォークソンは悲鳴のような声を上げるけど、アッシュさんは完全に無視してる。
「がぁっ! ぐるぁ!! ごぉあっ!!!」
ズドン! ドゴン! ドガァン!!
「ギェッ!! ギャッ!? プギッ!!!」
音が凄まじいだけじゃなく、それなりに離れているのに地面に振動が来てる。
相当にとんでもない力で叩きつけられてるのが分かるけど、流石は統率者と言えるんだと思う。
アレだけ叩きつけられているのにも関わらず、未だに死んでいないんだ。
アレほどのパワーで叩きつけられてるのにも関わらず、死なずに悲鳴を上げているだけっていうのも凄い。
ある意味でとんでもない者同士の戦いだと言える。
「プギィ!!」
ガシィッ!!
アッシュさんが掴んでいる手を蹴ったピンクヴォークソンは、何とか叩きつけから脱出する事が出来た。
しかし顔はボコボコで、血が何ヵ所からか出ている。
それでもその程度で済んでいるんだから、流石はピンクヴォークソンの統率者と言うしかない。
「プギュッ、ピギュッ、ヒューッ……ヒューッ……」
呼吸がし辛そうにしているけど、それでも息を整えたピンクヴォークソンは全力で走って攻撃。
アッシュさんの数メートル手前からジャンプして蹴りを放つも、アッシュさんの片手で防がれてそのまま地面に落ちる。
しかし素早く立ち上がるピンクヴォークソン。
とはいえ、それを黙って見過ごすアッシュさんではなく。
右腕を地面に水平にするようにして突進、ピンクヴォークソンの首を刈った。
ドゴォン!!
二の腕で喉を攻撃されたピンクヴォークソンは足が地面から離れて、首の部分から吹っ飛んだ。
それでも全力で殴った時ほど飛ばなかったんだから、あの地面と水平に飛んで行ったパワーはとんでもなかったと分かる。
そもそもアレを喰らっても死んでいないピンクヴォークソンもおかしい。
統率者が多いというのは分かっていたけど、皆が知っているよりも遥かに多く、このピンクヴォークソンがそれらの<混沌の種>を食べてた?
<混沌の種>は食べると大きくなっていくけど、限界を超えると今度は小さく圧縮されていくらしい。
そしてその後は不可思議な色に変わっていくと王都の本に書いてあった。
なんだか奇妙で、見ていると気持ち悪くなってくる不可解な色なんだそうだ。
挿絵がついていたけど、その絵を描いた者も紙には表現できない色だったと書いていたしね。
あくまでも挿絵は不完全な物しか出来なくて、絵師も納得いっていなかったみたい。
そんなおかしな色にまで到達しているんじゃ……
「がぁっ!!!」
アッシュさんが手の平を開いて、相手の顎を下から突き上げた。
思いっきり突き上げたからか、派手に宙に飛ぶピンクヴォークソン。
上へと飛び上がり、そして地面に尻から落ちた。
「プギュ!! ……ギュビュアーーーーッ!??!!?」
変な声だなと思って見ると、ピンクヴォークソンの口から大量の血らしき物が出て来た。
どうやら舌を噛んでしまったようだ。
いや、あの量だから舌を噛み千切ってしまったのかもしれない。
それぐらいに溢れてきているので、ぼく達も離れないと。
「貴方達、ゆっくりとでいいから離れなさい。
ピンクヴォークソンの血が落ちている以上、風に乗って興奮作用が流れて来るかもしれないわ」
マーヤさんがそう言うと周りの方々も「ハッ」としたのか、すぐに離れる。
もちろん音を出来るだけ立てずに、ピンクヴォークソンだけではなくアッシュさんにも見つからないようにだ。
流石に興奮作用で暴走しているアッシュさんはマズい。見境なく攻撃してくる可能性がある。
安易に近づくと、地面と平行パンチが飛んでくるかもしれない。
あんなの統率者のピンクヴォークソンだから耐えられたのであって、ぼく達じゃ一撃で死ぬだけだよ。
絶対に死ぬから、絶対に受けたくない。
「ぐぉあっ!!!」
ズドォン!!
「ギュピィ!?!!」
口の中の痛みに鳴いていたピンクヴォークソンに対し、アッシュさんは顔を蹴り飛ばすという行動に出た。
興奮作用が一時的に治まっている?
最初の様に荒い息を吐く事は無くなっている気がするけど、何かあったんだろうか?
そう思っていると、アッシュさんの肌が紫色から青色へと変化していく。
もしかしたら身体強化のし過ぎで魔力が無くなった?
「ぐぉ………ぐぅ、なんだ? どうなってる?」
「アッシュ! 正気に戻ったのね!?
それより目の前のピンクヴォークソンを倒しなさい!
相当に魔力が減ってるわ!!」
「う? マーヤか………なに?
澱のようになっていた魔力がほとんど残っていない?
チィ! このままでは身体強化が切れる!!」
「プギュ! プギュ!
…………ギィィィィィィィィッ!!!」
立ち上がったピンクヴォークソンはアッシュさんに向かって走り出し、殴りかかってきました。
アッシュさんは相手の拳を止めるべく左手を出し、違う!?
ピンクヴォークソンは手を引いて蹴りに来た!
そう思った瞬間、アッシュさんは膝でピンクヴォークソンの足を迎え撃った。
ピンクヴォークソンの脛にアッシュさんの膝が直撃すると、ピンクヴォークソンは悲鳴を上げて跳び上がる。
「ピギャァァァッ!!!」
流石にあそこに硬い膝が直撃したら痛いだろうと思う。
脛は絶対に鍛えられない場所の一つであり、だからこそピンクヴォークソンであろうとも痛いだろう事が分かる。
その跳び上がったピンクヴォークソンに対し、接近したアッシュさんは背後に回って地面に押し倒す。
ドスンッ!
「ギュペッ!?!??」
地面に押し倒して何をするのかと思ったら、アッシュさんは右手でピンクヴォークソンの顎を持ち、左手はピンクヴォークソンの蟀谷付近に添えた。
そして………
ボギュッ!!
くぐもったような音がした途端、アッシュさんは身体強化を止めて素早く離れた。
どうしたんだろうと思っていると、ピンクヴォークソンはピクピク痙攣するだけで起き上がって来ない。
「ああ、やっぱり暴走している時より冷静なアッシュの方が強いわね。
まさか素早く首を圧し折るとは思わなかったわ。
確かにそれなら確実に始末できるでしょうし、暴走している時みたいに殴る蹴るじゃねえ……」
マーヤさんが言うには、先程の音は首の骨が折れた音らしい。
そして首の骨が折れた生き物は、まず死ぬしかないという。
つまりピンクヴォークソンが痙攣しているのも、死の間際にあるからなようだ。
「ラブ、このピンクヴォークソンの血抜きは出来るか?
駄目なら無理矢理に運んで何とかするしかないが……」
「勘弁して下さい。ピンクヴォークソンの血は強力な興奮剤に使われる物です。
ヴァンパイアのぼくでも流石に飲めませんよ。そんな危険物」
「ああ……そういえばそうだったか。
すまない。何と言うか、頭が少々上手く働かないようだ」
「でしょうね。興奮がとんでもない事になってたし、暴走して暴れてたわよ?
それでも敵だけ執拗に狙うのは、実にアッシュらしいとは思うけど」
「私らしい?」
「ええ。
多分だけど、暴走している時のアッシュは闘士として戦っていた時と同じだったんじゃないかしら?
とにかく自分の敵を殺す。それして頭になかった感じだったもの。
私達が視界に入っても無視してたくらいだし、確実に敵だけ狙うんだと思うわ」
「敵だけとなると助かるんですけど、暴走していると敵味方が関係無くなる恐れも大きいですからね」
アッシュさんの場合、それが本当に大きいんですよ。
一歩間違えば死ぬっていう怖さがね、どうしても無くならないんです。
暴走していると。




