02-47-0065
Side:マーヤ
「グォァッ!! ゴアッ!! ……ガァァァァァァァァァァッ!!!
本気で怒ってるらしいピンクヴォークソンは地団駄を踏んだ後、愚か者が擦っている小さいものを踏み潰した。
ズドンッ!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?!?!」
愚か者は絶叫して転げ回るが、わたし達はなんとも言えない気持ちのまま戦闘を続ける。
なんと言っても暴走状態でアレを始めるヤツだもの、同情の欠片すら持てない。
元々わたしを舐め腐ってくれたヤツだから同情心すら無いけれども、あそこまで酷いとは思わなかった。
おそらく誰であっても同情しないだろうし、家の者に知られたら存在を抹消されるんじゃないかしら?
つまり、そんなヤツは居なかった。という事にされるでしょうよ、アレを見ればね。
いえ、人伝に聞いても同じように消されると思うわ。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!
いったい何があった、というのだ!?!?!」
あれ? 冷静になったというか、暴走状態が解けてる?
あまりの痛みに興奮作用が効かなくなったのかしら?
「あんたはさっきまで裸になって、バカみたいに自分を慰めてたのよ。
それに激怒したピンクヴォークソンが、あんたのものを踏みつぶしたわ。
そのあまりの痛さに冷静になったってわけ。
小さいものが潰されたんだし、言い訳は出来るようになったんじゃない?」
「今までは貧相なモノを隠さないといけなかったけど、これからは名誉の負傷だと言い訳できるからねえ。
今までのような貧相なモノをブラ下げる必要は無くなったんだから喜びなよ」
「やーね、ベリ。ブラ下げる事も出来ないから貧相なのよ。
ちんまいのがあっただけじゃない。
手でがっしり持つ事もできずに指で擦ってたでしょ。
その程度よ? ちんまいで丁度いいでしょうに」
「そうねえ。流石に指で事足りるのはどうかと思うわ。
そこで同士討ちして死んでる連中の方がよっぽどデカいじゃない。
外から見ても膨らみ方で分かるでしょうに」
これはこれで酷いわねえ、容赦の無い滅多打ちじゃない。
まあ、見えてしまった以上は小さいのも知られてるんだけどね。
ここで生き残ったら永遠に言われるでしょうけど、もしかして頑なに脱ごうとしなかった理由って……
「ごめんねえ、そんなに小さいものしか持ってないって知らなかったのよ。
知ってたら全裸で謝罪しろなんて言わなかったんだけどさぁ、まさかそんなに小さいのが居るとは思わないじゃない?
だから仕方ないのよぉ。ごめんなさいねぇ」
なるべく嫌味ったらしく言ってあげたけど、意味が分かったらしく、痛みに耐えながらも激怒したみたい。
器用な事をするわねえ。
「き、貴様ら、ぜ、絶対に、許さん、か、からな! お、覚えて、おけ、よ!!」
「やーよ、あんたが覚えておきなさい。それにあんたはここで終わりでしょうが。
既にここで死ぬ事は確定してるのに、いったい何を言っているの?
それだけの傷を負いながら、まだ生きられると本気で思ってるわけ?
だとしたら甘すぎるわね」
「か、必ずや、殺し、てやる! 殺して、やるぞ!!」
「プギィィィィッ!!!」
ドゴォッ!!!
ピンクヴォークソンが無視されていたからか、物凄く怒り狂った表情で愚か者を蹴り上げた。
愚か者は地面に蹲っていたんだけど、その尻から蹴り上げたわ。
あれって愚か者が押さえていた股間も蹴り上げてない?
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!??!」
股間も蹴り上げられたらしい愚か者は痛みに絶叫して転げ回るも、周りの誰も助けない。
そして負傷者が出たものの、下らない事をしている間にヴォークソンは殺し終わったみたいね。
後はピンクヴォークソンだけなんだけど、ここからが厄介。
迂闊に攻めると暴走させられるし、でもわたし達女性だけでは無理。
唯でさえヴォークソンの皮は硬くて武器が通りにくいっていうのに、目の前に居るのはピンクヴォークソンなうえ統率者。
今は下らない寸劇をしているけど、本気の戦闘になったらかなりマズい。
かといって男性達が暴走すると、もっと危険な状況に陥ってしまう。
同士討ちで死んだ奴らも居るし、2個小隊が壊滅しても不思議じゃない。
一気に攻めて勝てるだけの力があるならそれで勝てるんだけど、それを持ってるのはおそらくアッシュだけ。
でもアッシュが暴走すると、治まるまでにどれだけの被害が出るか分からない。
色々な意味でアッシュが戦うのはマズいのよねえ。
「グラァッ!! ガァッ!! ゴォォォォァァァァァァァァッ!!!」
「ごっ!? がへっ!? ぐぶぉぇぁぁぁっ!??!」
ピンクヴォークソンが愚か者に八つ当たりしている最中に何とか策を考え出したいけど、こいつ私の【魔通矢】でも貫けそうにないのよね。
困った事に皮が相当に堅そうだし、筋力も相当にありそうなのよ。
愚か者も人狼族だから体は大きいんだけど、その人狼族の騎士が簡単にボコボコにされるぐらいには強い。
そうなると尚の事アッシュじゃないと無理ってなるんだけど………身体強化で任せるしかないかしら?
ズドッ!! ドゴォ!! バキィ!! ゴシャッ!!!
「グルルルルルァァァァァァァァァァァァッ!!!」
愚か者の頭が踏みつぶされ、完全に潰れてしまったわ。
元々ここで殺すつもりだったから別にいいんだけど、それよりもこれで考える時間が無くなった事が痛い。
これからどうするべきか悩む暇も無く、突然ピンクヴォークソンは走り出した。
「離れて!! 匂いを嗅いだら男は狂うわよ!!」
わたしがそう言うと、慌てて騎士や兵士がピンクヴォークソンの進路から離れる。
兵士達が割れて行った先には、なんとアッシュが居た。
つまりピンクヴォークソンはアッシュの存在に気づいていた事になる。
もしかしたらだけど、わたし達の視線の先を確認していたのかもしれない。
「アッシュ、そっちに行ったわ! 離れて!!」
「駄目だ、反応が遅れた。間に合わない!!」
前に騎士や兵士達が居たから、逆に反応が遅れたのね。
いきなり目の前が空くとは思わないもの、この場合は仕方ない。
なんて言っていられないのよ、このままだと二個小隊が壊滅する。
そう思えど、わたし達の願いは届かず、ピンクヴォークソンはアッシュの目の前に到達してしまった。
さっきの走りは妙に速かったし、おそらくワザと全力は見せてなかったんだわ。
完全に相手の手の平の上じゃないの。
「グフフフフフ………!!」
ピンウヴォークソンが腕を上げて自分の体臭をアッシュに嗅がせる。
ドスン!!
するとアッシュは金棒を落としてしまうものの、必死にレッドオーガになり抵抗する。
でも……
「アァァァァァァァァァッ!!!!」
ピンクヴォークソンは体中から何やらピンク色の霧みたいなのを出した。
アレはいったい何かしら?
「マズい! アレはピンクヴォークソンの<狂血噴>じゃ!
あれを喰らうとワイバーンでも暴走する恐れがあるという、それほどの効果を持つ危険な興奮作用のある霧だ。
アレは本当にマズい!!」
「ワイバーンでも狂うって……!」
「うぐぐぐぐぐぐ……………がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
アッシュがそう叫ぶと、ブルーオーガにまでなっていた肌が紫色に変わっていた。
いったいどういう状況か分からないけれど、アレはピンウヴォークソンなんて目じゃないくらいにヤバい!!
「ぐるぉぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ズドォォォン!!!
アッシュが凄まじい速さでピンクヴォークソンを殴りつけると、ピンクヴォークソンは派手に吹っ飛んでいった。
というか、地面に対して平行に飛んで行ったんだけど………ナニアレ?
「ふぅ! ふぅ! ふぅ!」
紫色の肌になったアッシュから湯気のような物が立ち上り、その周りの景色が蜃気楼のように歪んでいる。
正直に言ってピンクヴォークソン以上に近づけないし、この場の誰もがアッシュの異様な雰囲気に動けなくなった。
まるで蛇に睨まれた蛙のように。




