02-46-0064
Side:マーヤ
「「「「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」」」」」」
準備の整ったわたし達は、咆哮を上げながら突入していく兵士達の後ろをついていく。
そして奥に居たピンクヴォークソンをわたしが牽制。
そこから戦いが始まった。
わたしが気を付けなければいけないのは投石。
アレだけは当たるとマズい。
なので回避しなければいけないんだけど、兵士達の咆哮と怒号に随分と意識が向いたみたい。
やっぱり兵士は違うわね、こういう訓練もしっかりしてるんだから流石よ。
こういう大きな声は伝令的な意味もあるし、同時に別動隊の為の引き付けにも使われる。
大きな声を出す事によって相手の目を自分達に向け、その間に別動隊が敵の背後を突くとかね。
そういった作戦の為にも引き付け役には必要な訓練なのよ。
そういった事もしっかりと訓練されているみたいだし、バカが居た割には練度は高いみたい。
流石は辺境伯家の軍だと思うわ。
そしてそんなバカどもは女性陣に剣や槍を向けられながら来た。
こいつらはピンクヴォークソンに暴走させられて死ぬ。
そういう処刑法に決まったからよ。
ついでに暴走していれば意識なんて無いもの。
気づいたら死んでいるという事になるでしょうし、せめてもの慈悲ってところかしら。
既に縄は解かれてるけど、武器を持っていないので女性達に抵抗する事も出来ない。
なによりわたしも上から監視しているしね。この状況でどうにかするなんて不可能よ。
そう思ってたんだけど、こういう時に限ってしっかりと連携するのよねえ。
「ふざけるな! 死んでたまるものか!! やれぃ!!」
「「「「「おぉっ!!!」」」」」
腐っても騎士や兵士と言うべきか、女性達の武器を素手で奪おうとしたけど、流石に予想されてるんじゃねえ……
当然武器を一斉に引かれるに決まってる。
素手で槍を奪おうとしたり、襲って来た兵士達を叩きのめす女性達。
2対1の状況を作り出して戦い、足を攻撃して切り裂き突き刺す。
「「「「「「ぐあぁぁっ!?!?!」」」」」」
「バカかい? あんた達がそういう行動に出るのは予想済みだっての。
あたし達が何の対策も無く、無様にやられるとでも思ってんのかい。バカバカしい」
「貴方達のようなのって、分かりやすい行動しかしないのよねえ。
だから予想がつきやすいし簡単に対処できる。
訓練はしっかりとやってきたのかもしれないけれど、おつむの方が良くなかったみたいね」
「そもそも頭が良いなら、辺境伯家の方に楯突いたりしないだろ。
やってる時点でバカ丸出しさ」
「なんだと、貴様!!
私の血筋こそが真なる辺境伯家の血筋なのだぞ!! 無礼者めが!!!」
「ははーん。となると、さっき言ってた当主との間には生まれなかった、跡取りになれなかった側の子孫か。
下らないねえ、継げなかった時点でその程度の血筋でしかないっての。
所詮は敗者の血筋だ。国からも認められてないって事は、そういう事だろうに。
自分に都合の良い事だけ言うんじゃないよ」
「貴っ様ぁ!! 絶対にゆるっ!?」
愚か者が急におかしくなったけど、言い合いをしていた間にピンクヴォークソンが近づいて来てたのよ。
足をやられた奴らは気づいてなかったみたいだけど、あそこまで近づいたら手遅れよ。
既に匂いの範囲に入っているし、後は暴走して狂うだけ。
「ぐっ、こん………たしは、しぬわ………ぐぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「「「「「がぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」」」」
愚か者どもが暴走を始めたからか、女性達も険しい顔で見ているわね。
足を攻撃して怪我をさせているとはいえ、暴走したら怪我なんて関係なく動き回る可能性が高い。
そしてその予想は当たっていたわ。
いきなり立ち上がったと思ったら暴れ始めた。
「ぐぅぅぅぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「「「「「うおぉぉぉあぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」
なんだけど………こいつら同士討ちを始めたわね?
急に殴り合いを始めるなん、ゲッ!?
あの愚か者、服を全部脱いだと思ったら何やってんのよ!
そんな小さいもの見せるな!!
「ぬぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
いやいや、ピンクヴォークソンの匂いで興奮して暴走してるんでしょ? なんで自分で慰めてんのよ!!
ピンクヴォークソンがその小さいのを見て、両手を左右に上げたじゃない。
しかも「はー、やれやれ」って、妙に生き物くさいモンスターねえ。
あの自分で慰めてるヤツはスルーされる有様よ。
どんな種族の精でも受精し、ヴォークソンを産むと言われるピンクヴォークソン。
それの相手すらされないって………男として価値は無いって事よね?
なんというか、意識が無くて良かったんじゃないかしら。
冗談でもなく本気で。
わたし達は同士討ちをしているバカどもを無視してピンクヴォークソンを牽制する。
他の男に対して向かおうとしていたので、私達が牽制して行かせないようにしなければいけない。
もし兵士達の所に行かれたら、相当の被害が出かねないわ。
特に最悪なのがアッシュの所に行かれる事よ。
それだけは絶対に阻止しないと。
そのアッシュは最後尾でヴォークソンを狩ってるみたい。
金棒の一撃で殴り殺せてはいないけど、あれ素の筋力でやってるんだからメチャクチャよ。
一撃で戦闘不能じゃないの。
死んではいないけど、頭への威力が高過ぎて昏倒してるわ。
あそこまでの威力なら十分でしょうに。
それでもカチ割れない事が納得いかないのかしら?
でもね、それはアッシュの一撃でも潰れないヴォークソンの頭蓋骨を褒めるべきだと思うのよ。
わたしは。
っと、余計な余所見をしている場合じゃないわ。
ここはしっかりと牽制してピンクヴォークソンを向かわせないようにしないと。
そう思っていると、突然ピンクヴォークソンが大きな声を挙げた。
「アーーーーーーーアァァァァァアァァァァァッ!!!!」
何がしたいのかよく分からないわね?
何かしらの意味があるとは思うのだけれど………
そう思っていたら、巣の外からヴォークソンが現れた。
どうやら狩りに行っていた連中を呼び戻す声だったらしい。
ピンクヴォークソンが笑っている。
「グフフフフフフ………!!」
「豚面で「グフグフ」笑われると、なんだか悪役みたいね。
まあ、豚が元になったモンスターだと言われているから、別に変な訳じゃないけども。
とはいえ豚はもうちょっと愛嬌があるわ、おっと」
わたしの言葉が理解できていたのかは分からないけど、いきなり石を投げて来たのでかわす。
ある程度の距離があれば、十分に回避する隙はあるのよ。
そんなのに当たる訳ないでしょうが。
わたしは適当に【魔弾】を放つと、ピンクヴォークソンはそれを回避した。
別にアレは回避されても問題ない。
なぜなら牽制であり、空を飛んでいる私を意識させるものでしかないもの。
簡単に兵士達の下に行けると思われても困るのよね。
強引に囲みを突破されかねないから。
その私が厄介だと思ったのだろう。
自分を慰めているバカの所に近づき、徐に腕を上げて匂いを嗅がせ始めた。
つまり更なる暴走を促す気らしい。
気持ちは分かるんだけど、そいつを更に暴走させても………
「ぬうぅぅぅぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
擦っていた右手が更に早くなったけど………他に何も無いわね?
徹頭徹尾、あの愚か者は頭がおかしいらしい。
暴走してもコレって、いったいどうなってるのかしら?
これはこれで異常よねえ?
普通は同士討ちとか、暴走して女性を犯そうとするはず。
なんで自分で慰めてるのかしら?
「グォォォォォォォォ…………ガァッ!!!」
ドゴッ!!
愚か者が役に立たないと知り、怒り狂ったピンクヴォークソンは愚か者を殴りつけた。
愚か者は派手に吹っ飛んだけど………
「ぬぅぅぅぅおぉぉぉぉぉぉあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
地面に倒れた愚か者は更に気合を入れて擦ってる。
思わず遠い目になるのも仕方ないと思うのよ。
なにこの状況?




