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Side:アッシュ
マーヤが治療を終わらせたものの、何故か私達も騎士団のモンスター討伐についていく羽目になった。
と言っても正式に依頼をされた形なので、私としては貢献度も貰えるため受理する事に。
代わりに女性陣やガーンド達に女性達を私が雇う形で人数を増やしたが。
「ワシらがアッシュに雇われたのは、ヴォークソンを運ぶ為か……」
「すまないな。ヴォークソンの睾丸から作られる媚薬は高く売れるし、女性からの需要が大きいと聞く。
私達にとっても良い収入になるし、この領としても良い収入になる。と説明したら許可が下りたんだ。
そもそも騎士団はモンスターを討伐するだけで、死体は捨てているそうだからな」
「もったいない話だねえ。
特にヴォークソンの媚薬は他の粗悪な物と違って体に悪影響が無いから、貴族女性に人気なんだよ。
もちろんあたし達にとっても人気だけど」
「そうねえ。
粗悪なのはそれっぽいだけで効果が無かったり、体に悪い物が含まれてたりするのよ。
そういう意味ではヴォークソンの巣はずっとあってほしいんだけど、ヴォークソンも害獣だもの。
流石に村の近くに巣があるのは困るわ」
「ヴォークソンは人里を襲うものねえ。
ドーヴァルとか山狼も襲ってくるけど、強さがちょっと違うからさ。
出来れば襲われる前に潰しておきたいかな。
やっぱり安全には代えられないし」
「ヴォークソンの巣が無くなっても、おそらくヴォークソン自体は居なくならないんじゃないかな?
前から目撃情報はあったし、国境の砦近くでも出て来るって聞くしね。
国境の砦で暮らしている錬金術師が、確かそんな事を言ってたはず」
「って事は、村から国境の砦までの幅広い範囲に生息してるのかね?
ここらは山と森だから簡単に把握できないのは仕方ないんだけど、それでも把握したくなるよ。
上手く見つければ媚薬を定期的に手に入れられるからさ」
「そうですね。
男性は精力剤が無いと3~4回で駄目になるので、出来れば精力剤込みで欲しいです」
ガーンドとそういう関係になった山髭族の女性がそう言っているが、当のガーンドは遠い目をしているな。
そして周りの仲間達が同情している。
アレはおそらく、女性陣じゃない女性を選んだのに結果がああだからだろう。
あの山髭族の女性、あっという間にシェリア殿達の同類になっているし。
「なんていうか、どいつもこいつも変わらないわねー。
どうしてそうなのかしら?」
「田舎の女なんてこんなものさ。
それぐらいしか娯楽が無いんだから仕方ないんだよ」
「酒場で賭け事したり、ボードゲームしたりしてるじゃない。
面白い遊びが無いわけじゃないでしょうに」
「私達は気持ちイイ遊びがしたいのよ」
「あっそ……」
シェリア殿の一言にマーヤが呆れた声で返事をした。
とはいえ臭い女どもも似たようなものだったので、別に田舎の女だけではないような……
「アッシュさん、何か言いたい事でもあるんですか?
何か微妙な表情をしてますけど……」
皆で荷車を牽きながら雑談しつつ移動していると、横にいたラブが私の顔を見つつ聞いてきた。
なので私はそれに答える。
周りに騎士団の兵士達もバーナンド様も居るが、特に聞かれて問題になる話ではない。
ちなみに愚か者と取り巻きは、私が牽いている一番大きな荷車に乗せられて無理矢理に連れて行かれている最中だ。
手足は縄で縛られているので、逃げ出す事は出来ない。そのうえ私の後ろには怪我をしていた兵士達が監視している。
もちろんしょけ……尊い犠牲の為にだ。
「私はかつて騙されて奴隷闘士を22年させられていた。
それは言ったが、その時に臭い女の相手もさせられていたのだ。
ちなみに臭いと言っても香水のにおいが臭いという事だがな。
どいつもこいつもキツいにおいを振り撒く者ばかりだったのは、今でも覚えている」
私がそう言うと、バーナンド様も「うんうん」と頷いている。
どうやら私だけではなく、誰もが臭いと思うものらしい。
「その女どもの相手は22年もの間、2日に1度は必ずあったのだ。
私が覚えている限りにおいて、100を超えている数が来ていた。
なので田舎の女性だけではないと思ってな。
仮面で顔を隠した女ばかりだったが、体型なり声が違うので別人だと分かるのだよ」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
「兵士達が羨ましそうに見てるけど、自分からは何も出来ず、女に奉仕する事を強要されるんだよ?
娼婦があんた達にやってる事と同じだと思えばいい。
それが羨ましいのかい?」
そうベリ殿が言うと、今度は逆に私の方に同情の視線を向けて来る兵士達。
何と言うか、私にとってはアレが普通だったので微妙な気分になってくるな。
「アッシュにとってはそれが普通だったんだろうけど、それが普通な時点でマズいからね?
男としてちょっと問題があるって自覚した方がいいよ。
本人は分からないんだろうけどさ」
「確かに分からないな。
私はああいうものだとしか知らないし、それ以外を知らない。
なので何とも言えないのだ」
「そう聞くと、バグロサス男爵の妹はとんでもない事をしたのだと分かる。
君が強いにも関わらず礼儀正しいのは、それだけの死線を潜り抜けて来たからだろう。
辺境伯家である我が家にも、違法な闘技場だったと聞こえてきているぐらいだ。
本当の殺し合いや、モンスターに生きたまま喰わせるなどもしていたという」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
「何よそれ!? あまりにイカれ過ぎてるでしょ!!」
「本当ですよ、信じられません!
それを見て喜ぶなんて、幾らなんでも異常でしょう!?」
「そういうのを喜ぶような者も世の中にはおる。残念ながらな」
「だねえ。とはいえ殺し合いも喰わせるのもするって、本当に昔の闘技場そのままだね。
正しくは一番最初の闘技場だけどさ」
「罪人処刑場ね。
かつての時代に、罪人を処刑するのを見世物にしたのが始まり。
それが闘技場という娯楽に繋がっているんだけど、当初は勝てば罪が許されていたのよ。
もちろん勝ち残る者は滅多に居なくて、ほぼ全員が殺されたらしいけれど」
「妖精族にも伝わってるわよ。
もしかしたら見に行った事がある者から話を聞いた事があるのが生き残ってるかも。
それぐらい古い時代の話よ」
そんな古い時代と同じ事をさせられていた訳か。
それは多くの者があり得ないと言うはずだ。
私自身、知らなかったからアレが普通だと思っていたが、普通ではなかったらしいな。
「しかも罪人なら勝ち残った瞬間、無罪放免よ。
それとは違って、アッシュはそれを22年もやらされてる。
本当によく生き残ったとしか思えないわね。
まあ、それだけ強いんだけど……」
「だが強いと思える者は沢山いたぞ?
闇妖精族で顔に黒い紋様が入っていたヤツとか、オーガ族の片眼に眼帯をしていたヤツとかも居た。
それに黒い肌のリザードマンもそうだし、赤い肌のサイクロプスも強かった」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」
何故か私の言葉に静まりかえる面々。
いったいどうしたのだろうか?
「本っ当に分かっていないみたいね。
とはいえ通りで名前を聞かなくなるはずよ。
それ、おそらくだけど全員裏の界隈で有名な連中だと思うわ」
「闇妖精族は<悪逆のドフォーグ>。
オーガ族は<戦鬼レレデオ>。
リザードマンは<死切のジャジャ>。
そしてサイクロプスは<剛腕のセッバル>でしょうね。
ぼくでも知っているくらいに有名だと思いますよ?」
「そうか。あの者達は有名だったんだな。
私に対して「知らないのか!?」と言って来たり、怒っていたのはその為か……。
とはいえ知らないものは知らないのだから、それ以外に言い様は無いのだが」
「特に<剛腕のセッバル>は相当の懸賞金がかかっていたはずよ?
………まあ、アッシュには全く入ってきていないのでしょうけどね」
「それ以前に、違法闘技場で死んだのなら表に出せないのでは?」
「表に出せない連中をアッシュに処理させてたとか? メチャクチャな事をするわね。
さっきも言ったけど、サイクロプス族の<剛腕のセッバル>は最悪よ?
その怪力で百人以上を殺してきている頭の狂ったヤツだもの」
「あの赤い肌のサイクロプスか、あいつは確かに強かった。
最後は力比べになってな、負けじとレッドオーガ状態になって全力を使ったら、相手の両腕を圧し折ってしまったのだ。
流石に可哀想な事をしたと思っていたが、唯の犯罪者だったとはな」
「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」




