01-06-0006
Side:アッシュ
王都の案内板を見れば分かると言われたので、ハンター協会の近くにあった案内板を見ている。
どうやら王都というのは丸い形をしているらしい。
で、一番外側にあるのが庶民街、その内側が貴族街、そして真ん中にあるのが王城となっている。
そして東西南北に騎士団の駐屯地があり、王城の手前に近衛騎士団の建物があるようだ。
特に王城の守りは堅くしなければいけないから当然なんだろうが、各騎士団が守っているのも王都の入り口だから重要な場所だろう。
それでも庶民街と貴族街には差があるような気がするし、なんだか対立もありそうな気がするな。
とはいえ私には関わりの無い事だし、関わらないように逃げればいいだけか。
まずはぐるっと外側を回ろう。どのみち貴族街には入れない。
ハンター協会は南の貴族街への門の前にある。
ちなみにこの門は貴族門と言われていて、王城の前の門は普通に城門らしい。
それらの違いはどうでもいいが、まずは東に向かって進み、ぐるっと一周してみる気だ。
ちなみにスラム街もあって、それは庶民街の外側にある。
壁などが無い為にモンスターに襲われる可能性があって危険だが、それでも王都には仕事が沢山あるので集まるんだろう。
かつて居た町とは違って、仕事が沢山あるのは良い事だと思う。
東に進んで行くものの、住宅が並んでいるのが見えるだけで特段に特徴は無い。
もちろん住んでいた町とは違い、建物も2階建てや3階建てまである。
ただし狭い敷地に犇めきあっている感じで、なんだか狭苦しく感じてしまう。
ああいう建物に庶民は住むのだろうが、あれが羨ましいのだろうか?
もちろん私が居た牢屋よりは断然良いだろうが、王都の割には広々とした建物ではないのだよなぁ。
その所為か微妙な気分になってくる。
そんな気持ちを持ちつつ見て回っていると、ちょうど東の案内板に商業区と書いてあった。
どうやらこの辺りが物を売っている地区になるらしい。
なので早速とばかりに武器屋へと見に行くのだが………
「武器はやはり高いな………ここまで高いとは思ってなかったぞ」
私の今の所持金は小銀貨1枚に大銅貨が8枚だ。
そして闘技場で使っていた大きさの剣は無いが、普通の剣があったので手に持つ。
すると、そのあまりの頼りなさにコレは無いと戻した。
その後も色々な剣を試すが、両手剣とやらまで大した重さでなくて困る。
これではモンスターに大した傷などつけられないぞ。
いったい王都のハンターはどうやって戦っているのだろうか?
仕方なくその店は諦めて別の店に行く。
店主に聞かれたので答えたが、両手剣すら軽かったのでどうにもならない。
これでは攻撃した段階で、剣が折れてしまう。
先程の店の店主も私を見て理解したのだろう、怒る事まではしなかった。
とはいえ「ウチには合うのは無いから別の店へ行け」と言われてしまったが。
なので別の武器屋へ来たのだが、やはり私に合う武器は無かった。
ただし「大柄の種族用の武器屋があるからそっちへ行け」と言われて、店の場所を教えてもらう事が出来た。
普通の種族用とはいえ大型のハンマーすら片手で振り回していたら、そうも言われるのかもしれない。
とはいえ大型のハンマーはヘッドが重たいので、手から抜けそうになって怖いのだ。
私の力ですっぽ抜けたらとんでもない事になりかねない。なので危ない武器は使えないしな。
教えてもらった大柄種族用の武器屋には、確かに私が闘技場で使っていたような剣があった。
かわりに恐ろしい値がついていて、とてもではないが買う事は無理だったが。
一本で大銀貨3枚とはなんなのだろうか? とてもではないが高くて買えない。
その中をウロウロして確認していると、木で出来た大きな棍棒を発見。
これならば買えるだろうと思って値を見てみると、そこには小銀貨1枚と大銅貨5枚と書いてあった。
これを買うと食事すら満足にとれなくなるな……。
結局、一番安い棍棒すら買えなかったので、訓練場の武器とやらを明日借りる事に決めた。
当面の目標は木の棍棒を買う事だろうか? それを目指して頑張ろう。
長さが1メートル50センチほどだが、殴る部分の太さは直径で40センチほどあり、持ち手から先に行くほど太くなっている棍棒。
あれならモンスターでも叩き潰せるだろうし、十分な威力が出せるはず。
片手で振れるかは分からないが、駄目なら両手で振ればいい。
元々王都に来たのもそれなりの時間だったので、商業区の酒場で食事をとり、終わったらハンター協会へと戻る。
明日どれだけ稼げるかで変わってくるが、なるべくなら多く稼ぎたいものだ。
ハンターは夢のある職業でもあるし、稼げる職業でもある。
新人が多くを稼ぐ事は難しいだろうが、かといって私も長く戦って来た自負がある。
なので大丈夫だろう。
ハンター協会の横にある建物に入り、受付で登録証を見せると中に入る事が出来た。
そこは大きな部屋で、皆が雑魚寝をするだけの場所となっている。
ちなみに男女で分けられており、邪な事をした者は切り落とされるそうだ。
その事は受付で念を押された。
あそこまで念を押すという事は、そういう事をする愚か者が居るのだろう。
呆れて来るが、どこにでも悪い者は居るという事か。
とんだ新人も居たものだ。
私は一番端に行くと、自分の大事な物を抱え込むようにして壁の方を向いて寝る。
私が着ているのは貫頭衣であり、他の者も大して違いは無い。
そもそもお金の無い者の着る物なんて変わらないのだろう。
下着だって褌だしな。
この褌というのは、東の方にずっと行った所にある島国から伝わったらしい。
金持ちはともかく、貧乏人には丁度良くて普及している物になる。
なんといっても布が少なくて済むので安いのだ。
それと、女性受けが妙に良いので一部の貴族男性も履いていると聞く。
臭い女も私の尻がセクシーだと言っていたが、いまいち意味が分からなかった。
女性の心理と言うのはよく分からないものだ。
もしくはあれは臭い女限定なのだろうか?
まあ、下らない事を考えてないでさっさと寝よう。
…
……
………
「ぐあぁぁぁぁぁっ!?」
「ん? ………ああ、すまんな。
奴隷闘士の頃からの癖で、寝ている時に近づいてくるヤツは握り潰そうとしてしまうのだ。
離れた方がいいぞ」
「ぐぅぅぅぅぉぉぉぉぉっ!!!」
私が握り潰したか握り潰そうとしたヤツは腕を抑えて呻いているが、私の知った事では無い。
それよりも眠かったので、私は再び目を瞑って寝る。
眠りにつく少し前は五月蠅かったが、それでも私の睡魔の方が勝ったらしい。
「こいつ、オレの巾着を持ってやがる!
皆起きろ! こいつは盗人だ!!」
「なにっ!? 盗人だと!?」
「盗人!? すぐに金があるか確認しろ!!」
…
……
………
「ん? …………ふぁ~あ! もう朝か。
昨日一度起こされたからか、あまりちゃんと眠れなかったな」
「おお! 起きたか! お前の御蔭で助かったぜ、ありがとうよ!!」
「お前さんが握り潰してくれた御蔭で、皆の財布も無事戻って来たんだ。
感謝してもしきれねえよ!」
「そうそう。お前さんの御蔭で助かったぜ!」
「??? ………すまん、何を言っているのかよく分からない。
どういう事なんだ?」
その後、詳しく教えてもらってやっと分かった。
どうやら夜中に腕を握り潰してしまったヤツは、こそこそ盗みに入っていた盗人だったらしい。
ハンターでもなく近くに住んでいる泥棒で、定期的に夜中に侵入しては盗んでいたようだ。
ハンター同士で取った取ってないと揉めるので、そいつにとっては楽な商売だったらしい。
昨日までは。




