01-05-0005
Side:アッシュ
「さて、サポートすると言った以上、しっかりとせねばならん。
ちょうどそろそろ戻ってくるだろうからな、お前の教育はハバンに任せる。
ヤツならしっかりと教えてくれるはずだ。実力もかなり高いからな」
「ハバンさんは銀8級ですから相当の腕前ですよ。
普通はそこまで高位の方に教えてもらうなんて事はまず無理なんですが……」
「銀8級?」
「狩人には貢献度と強さで査定が決まっているのだ。
それぞれのモンスターが強い場所でも査定が変わるので、一定以上には成れぬ地域もあるがな。
一番下が木1級であり、一番上が金10級となる。
これ以上は存在せん。
ちなみに国内の金級は2名しかおらんからな」
「一人はマスターで、もう一人は国の近衛騎士となっておられます。
なので現役のハンターには金級が一人も居ないんですよ。
まあ、金級まで昇ってもハンターを続ける方というのは多くないですから……」
「金級まで上がれる実力があるなら、遊んで暮らせるからな。
実際には遊ぶ事も出来ず、国に取り込まれるしかないのだが」
「それでもまだマシだとは思われますよ?
かつて村を焼き尽くした罰を受けずに済むんですから」
「まあ、それはな……」
村を一つ焼き尽くしたのは事実だったみたいだが、その罰の代わりにハンター協会のマスターをしているのか。
しかし子爵だと言っていたし、国も貢献には報いているんだな。
いや、国がマスターを使う為の建前なのか、罰の代わりというのは。
「とりあえず新人ハンターは、ハンター協会の横にあるタダの宿舎を使えばいい。
あそこは金の無いヤツが雑魚寝をする為の所で、木級のハンターであれば利用できる。
だからアッシュは問題なく利用できるから使え。
まずは金を溜めるのが先だろうからな」
「その事で相談があるのですが、どこかに安い武器を売っている店がありませんか?
奴隷闘士ではありましたが、大した金銭を持っていないので……」
「…………22年も奴隷闘士をさせておいて、大した金銭も渡しておらんとは。
余程のクソが経営していたようだな?」
「ここ王都に来るまでに14日もありましたし、道中の食事は切り詰めたんですが……」
「というか、切り詰めてそれでは尚の事ダメでしょうに。
どれだけメチャクチャな事をしていたのやら………」
「アッシュ、お前は奴隷闘士の時にどんな武器を使っていた?」
「これぐらいの幅の広さで2メートル程度ある剣です。
切れ味は全く無かったのですが、当たれば敵を潰せましたので都合が良かったのもあって使っていました」
「「………」」
なぜかマスターと受付嬢が黙ったが、私が言った事は変だっただろうか?
「お前の種族が分からんが、それはオーガだサイクロプスだと言われるはずだ。
普通はそんな大きな剣を振り回したりはせん。
むしろそんな剣を振り回して、よく小型で足が速いフーダを100体も倒せたな。
お前は明らかに強さがおかしいぞ」
「奴隷闘士だとかいう以前の問題ですね。
普通はそんな馬鹿げた大きさの剣なんて使いません、というか振り回せませんよ。
それが出来て、しかも戦えるって………」
「闘技場のクソ経営者がアッシュを留め置こうとしたのも分からなくはないな。
その割には差別を助長しておったと報告にあるが、普通は花形闘士にしていないとおかしいだろう」
「ですね。
スター選手であれば十二分に稼げるはずですが………意図的に蔑ませて荒稼ぎしていた可能性もあります。
そもそも王国法違反をしていましたし」
「王国法違反だと?」
「ええ。彼は審査官の事を知りませんでした。
突然契約で奴隷闘士にされ、その時に22年だと言われたそうです」
「…………そのクソは処刑するか。
未だにそんなゴミが世の中に居る事が驚きだが、クソは始末しても文句など言われまい」
「駄目ですよ。
きちんと明るみにして、王国法で処刑せねばなりません。
まあ、審査官を通していなかった時点で処刑は確定ですが」
「当たり前だ。かつてどれだけの者がそうやって奴隷に落とされたと思っている?
未だに暗黒時代と同じ事をしているなど虫唾が走るわ。ゴミめ!」
私と同じように騙されて奴隷にされた者が多かった、そういう時代があったのだな。
だからこそ今もやるヤツが居るのか、それとも欲に塗れた者とはそんなものなのか。
その辺りは流石に分からないが、おそらくは……
「ま、とりあえず話は終わりだ。
まだ食事をする金銭があるなら、明日は訓練場の武器を持っていけ。
あそこの武器なら備品扱いだからな、緊急的に貸し出しても文句は言われん。
ただしあそこの武器は頑丈なだけの物なので注意しろ、と言いたいところなのだがな」
「切れ味の悪い大きな剣を振り回していたみたいですしね、あの頑丈さだけが取り柄の重い剣も使えるでしょう」
「だな。今日は王都の中を見て回るのと、それのついでに武具屋もあるから見てこい。
町中に案内板が立ててあるから、それを見ればハンター協会には戻って来れる。
どのみち自分の足で歩かんと道など覚えんからな」
「分かりました。では私はこれで」
「ああ。今日中にハバンは戻ってくるだろうから伝えておく」
「はい。それでは失礼します」
そう言って私は一礼し、マスターの部屋を出た。
王都観光というものが出来るみたいだが、私は見て回りたい所など無い。
というか、そういう目的で王都に来ていないのだよなぁ。
…………困った。
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Side:ルザワンズ
「……それにしても変なヤツだったな。
いや、あの大きさの剣を本当に振り回せるのだろうが、それよりもヤツの髪を見たか?」
「ええ、見ましたが………それが何か?」
「光妖精族と闇妖精族のハーフは灰色の髪だ。ただし輝くような灰色だと言われている。
それとは違いヤツの灰色の髪はくすんでいるうえ、若干だが青さが混じっていた。
輝く灰色ではなく、黒に寄った灰色のうえ青が混じるとはどういう事だ?」
「………確かに、言われてみれば青っぽさがあったような?」
「ヤツの種族はおそらくオーガでもサイクロプスでもない。
あの2種族には共通したところがある」
「あまり頭が良くないという事ですね。
種族的なものですから仕方ないのですが」
「しかしアッシュの頭は悪くなかった。
私の機嫌が悪くなったと見るや態度を改めていたし、それに場に合わせた話の仕方も出来ていた。
終始周りを見て合わせる事が出来ていること自体が、ヤツの頭が悪くないという事の証明だ」
「となると………どの神の加護を得ているのかは、ちょっと分かりませんね。
マスターのように稀な事もあるかもしれませんし」
「私は炎狼族だが、何故か紫色を持って生まれたからな。
私のように突然別の神の加護を持って生まれる事もある。
アッシュもその可能性がありそうだが………しかし元の種族が分からんのが厄介だ」
「仕方がないのでしょうが、物心が付いた時には既に闘技場に居たとも言っていましたので……」
「それではおそらく誰も知るまいな。っと、そろそろ仕事を再開せねばならん。
とりあえずハバンが戻ってくるまでは後回しだ」
「分かりました。それでは受付業務に戻ります」
「手伝ってくれてもいいのだぞ?」
「受付業務に戻ります」
ギィ…………バタン
相変わらずだが、別にサブマスターが受付業務をせんでもいいと思うのだがな?
どうしてああも現場に拘るのかは知らんが、単に部屋に居ると暇だからか?
まだ何かしらの変化がある場所の方が暇ではないのかもしれん。
だとすると私も下で仕事をした方が捗るのかもしれんな。
行くと五月蠅いから行けないが。




