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 Side:マーヤ



 わたしが目標を言ったのにも関わらず、なんだか2人とも微妙な顔をしてるわね?

 自分の名を歴史に残すなんて簡単な事じゃ無いのよ?


 それこそヒドラやグランリザードを倒さなきゃ無理よ。

 片や毒沼の王と呼ばれるモンスター、片や川辺の王と呼ばれるモンスター。

 それらを倒すくらいじゃないと、歴史に名を残すなんて不可能なのよ。


 何より【生魔法】の使える妖精族なんていう残り方はしたくないの。

 それだけは本当にイヤ。

 だって持って生まれたものから、まったく進歩していないみたいじゃない。


 「ああ、そういう事ですか。それなら分かる気がします。

 最後まで辺境伯家の三男として死ぬのは御免ですからね。

 ぼくは辺境伯家の三男ですけど、同時にぼくです。

 決して辺境伯家の三男という存在ではありません」


 「そうよ! アッシュなら22年の奴隷闘士をしていたヤツ、で終わっちゃうってこと。

 他に何かあるでしょ、何も無いなんてあり得ないわ。

 でも誰かの記憶とか記録には、そういうものしか残らないのよ。

 でもそれはイヤなの、だから魔力を大量に持っている者が欲しかったわけ。

 最悪は私が守ってやればいいかと思ってたんだけど……」


 「その魔力を大量に持っている私が、普通に戦える者だったというわけか。

 だからラッキーなんだな」


 「そういうこと。

 長く探してたのよ? 魔力を多く持つ者なんて早々は居ないもの。

 だから各国をウロウロとしてたんだし、その間に色々なのと出会ったわ。

 こう見えて知り合いは多いから、何かあった時は任せなさい。

 多分だけどこっちの話は聞いてくれるわ」


 「まあ、聞く聞かないの決定権は相手であってマーヤさんじゃないですからね。

 それは仕方のない事でしょう。

 それはともかくとして、これからはヒドラとかグランリザードを倒しに行くんですか?」


 「もちろんよ! ただし簡単に勝てる相手だなんて思ってないわ。

 それにアッシュもラブも、せめて銀級でないと恰好がつかないしね。

 だからまずは色々な所を巡るわよ。

 アッシュの<混沌の種>を消せる力も有効に使えるはずだし」


 「ええっ!? 僕もですか!?

 い、いやー……ぼくはそういうのは、ちょっと……」


 「何を言ってるの! ヒドラやグランリザードを倒したとなれば、辺境伯家なんて目じゃないわよ。

 むしろ辺境伯家がラブに気を使わなきゃいけないくらいになるんだから!

 それぐらいして見返してやりなさい! 私達がいれば出来るわ!!」


 「う、うーん………」


 悩んでるって事は脈が無いって訳じゃないわね。それなら時間を掛けて引きずり込めばいいだけ。

 それよりも問題はアッシュなのよね。

 わたしが言っても何も感じてないみたいだし、こう、リアクションが無いのは困るわ。


 「アッシュはどう考えてるの? 自分が生きていたって証を残せるのよ?」


 「それは凄い事なのだろうが、そもそも私は巡回狩人だ。決められた場所に行くだけでしかない。

 その私にそれを言われても困る。ハンター協会の事情もあるだろうしな。

 そもそも私は普通の暮らしが出来るだけで十分だ」


 しまった。

 アッシュは奴隷暮らしが長かったから、普通の暮らしでも良い暮らしになるのかー………

 そこは計算外というか、うっかりしてて忘れてた。

 とはいえ、それならそれでやりようはあるのよねえ。ハンター協会にとっても都合が良いから。


 「そこは問題ないわ。

 何故ならハンター協会においても、自分の所に所属している者が快挙を達成したら名が売れるもの。

 それも大きく名が売れるから反対はしないはずよ。何より、今すぐに行くわけでもないしね。

 さっきも言った通り、2人が銀級、もしくは金級まで上がってからよ」


 「うぇぇぇ………銀級でも無理かなと思ってたのに、金級なんてもっと無理ですよ」


 「出来るわよ。銀級になる試験もそこまで難しくないしね。

 大事なのは基本がしっかり身に付いているかどうかよ。

 それはこれから教えてあげるわ。

 何より覚えておいて全く損は無いし」


 「まあ、知識として得られるのであれば……」


 「そうだな。学ぶ事は決して損にはならない。

 昔の奴隷仲間も言っていた。身につけた技と知識は誰にも奪えないと。

 だから技と知識は努力して身につけておけ、それが生き延びる為の秘訣だとな。

 その本人はその2年後に病で死んだが」


 「流石に病はどうにもならないわね。

 それでも努力して生き延びていたのは立派だと思うけど」


 「ですね。知識と技は奪えない、か……

 確かにそうですし、それなら頑張ってみてもいいかな?

 寿命を考えても先は長いし」


 アッシュが分からないけど、ラブは先が長いからね。

 アッシュの種族がオーガの亜種だとして、オーガと同じ寿命なら後100年は生きるわ。

 そこまでの時間があれば余裕で金級まで到達する。


 そもそもアッシュの実力なら確実に金級まで行けるわ。

 後は礼儀作法とかダンスを修めれば十分よ。

 わたしはそれが面倒だから金級にならないんだけど、2人が銀10級まで上がってきたら頑張ろうかな。

 それまでは別にいいでしょ、面倒臭いし。


 「当面の目標はアッシュが言っていた騎士団を待っての掃討ね。

 わたし達が出る事になるかどうかは知らないけど」


 「どういう事なんだ?」


 「騎士団にもプライドがあるわ。

 当たり前だけど、ハンターに協力を要請してくる事は多くないの。

 騎士団の者はどうしてもハンターを下に見るから」


 「そうなのか……」


 「騎士団って常に訓練しているような連中よ、それが仕事でもあるからだけど。

 逆に言えば、それだけ自分達の実力に自信があるわ。

 だから足手まといは邪魔だと考える者は多いのよ。

 ハンターは生きる為にモンスターを狩ってるだけで、訓練を毎日している訳じゃないしね」


 「それは確かにそうですね。

 だからこそ騎士の実力は高いのですし、だからこそ恐れられるわけで」


 「しかし蜂起があった際に、農民に殺される程度でしかないのだろう?

 そういう小競り合いで死ぬ事もあると聞くが……」


 「それはアッシュが戦場を知らないからよ。

 戦場ではどれだけ鍛えた者でも死の可能性からは逃げられないの。

 多数の者がぶつかり合うのが戦場よ?

 どこから矢が降ってくるか分からない、そしてその矢が致命傷になる可能性があるのが戦場」


 「四方八方から攻撃されれば、達人であっても殺されてしまいます。

 戦場では必ず死ぬ可能性があり、だからこそ農民の蜂起でも死ぬ騎士は出てくるのです。

 それに騎士が一番嫌がるのが農民の鎮圧ですからね。

 死ぬ可能性があるのに、褒美も出ないし栄誉も無い戦いですから」


 「なるほど、戦場とそうではない場所の戦いは違う訳か……。

 私は奴隷闘士としての戦いしか知らないからな、確かに戦場の事は分からない」


 「大多数と戦った事は無いでしょ? だから分からないのは仕方ないわよ」


 「そうですね。そんな戦いなんて、普通は日常に起こりませんし。

 氾濫か大氾濫の時ぐらいですかね? 数多くのモンスターと戦わねばならないのは」


 「そうね。そういう時には一人で100体のモンスターと戦うヤツとか出て来るわ」


 「私は奴隷闘士としての最後の試合で100体のフーダと戦ったが………

 アレは多かったのか?」


 「「えっ!?」」


 …………100体のフーダ? 本気で……言ってるみたいね。

 その闘技場の経営者は頭がおかしいのかしら。

 どう考えてもアッシュを殺す気しか感じられないわよ。


 それに、よくもまあ100体もフーダを集めたわね。

 幾ら小さいとはいえ素早いモンスターをそこまで集めるなんて、大変なんてものじゃないわ。


 っていうか、どうやって集めたのかしら?

 明らかにおかしいし、普通はそんな事をしたらバレるし噂にもなる。


 闘技場に運び込むのも大変でしょうに………【転移魔法】が使われた?

 それなら可能性はあるけど、わざわざあの魔法が使えるヤツが下らない事なんてするかしら?


 幾らでも儲けられる奴らなのに?


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