↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/186

02-35-0053




 Side:アッシュ



 そんな話の最中もベリ殿とバナンはテーブルの下でゴソゴソとしている。

 おそらくは互いに手を握ったりだなんだとしているのであろうが、食事を待つ間ぐらいゆっくりしたらどうかと思う。

 おかしな事はしていないみたいなのでいいが……


 「さっきから横で聞いていたんだけど、ヴォークソンが石を投げて来たって事は居るのよね?

 それって巣があった?」


 「ええ、ありましたよ。

 ドーヴァルが蓋のようになっていた御蔭でこっちまで来なかったようです。

 山狼の巣の左奥のほうに山鹿の巣が、そしてドーヴァルの巣の更に奥にヴォークソンの巣があります。

 そこも谷の中に作られていました」


 「ドーヴァルが居てくれたから出て来なかったというのも微妙な話ねえ。

 とはいえヴォークソンの巣があるって事は媚薬が作れるって事じゃない。

 楽しみだけど、もう売った?」


 「売ったわよ。

 でも錬金術師はお金を払ってないのよ、手持ちの貨幣がもう無いって言ってね。

 だから明日来る商人に売るそうよ」


 「なんだって!?」 「「「なんですって!?」」」


 「ストックがあるから、ゆっくり使えばいいかと思ってたのに、商人に売るってどういうつもりなのやら。

 あいつめ……村の女性達を全員敵に回す気かい?

 それだけの覚悟があるなら受けて立とうじゃないか」


 「それ以前に貨幣が無い、つまりお金が無いって言ったでしょうに。

 錬金術師だってお金がなければどうにもならないわよ。

 それに外から村の中に貨幣を入れる事は悪い事じゃないわ。

 そういう意味でも仕方ない事でしょ」


 「それはそうかもしれないけどね、でも納得はいかないさ。

 とはいえお金が無いと困るのも確かだし、他の村の女性達にも言っておかなきゃいけないね。

 あいつが売る前に買っておかないといけないよ。

 ドーヴァルの巣は壊滅したんだしね」


 「そうよ、これからはまた補充しなくなっちゃうじゃない。

 それは駄目ね、今の内に買っておかないと後で絶対に後悔するわ」


 「ええ。私は食事が終わったら行くつもりよ。

 明日なんて言ってたら売り切れるかもしれないし」


 「それはあるかも。

 マズいわね、私も食べてさっさと行きましょうか」


 「「「「「………」」」」」


 「「「………」」」


 あの女性陣には性欲しかないのだろうか?

 そう思えるくらいには酷いというか本能に忠実だ。

 私が来るまでは、そうではなかったはずなのだが……いや、それまでにバナンはベリ殿に喰われていたのだったか。

 となると鉄級のチームが来たのは最近になるな?


 「ガーンド達がこの村に来たのは最近なのか?」


 「ああ、そうじゃぞ。アッシュが来る二ヶ月ほど前だったかだ。

 それがどうかしたか?」


 「いや。

 5人がもっと前から居たなら、私が村に来た時点で喰われた後でないとおかしいなと思っただけだ。

 あの女性陣を見るに遅かれ早かれ喰われていただろうが、その割には私が村に来てからだったからな。

 時間的に変だなと思っただけなんだ」


 「なるほどのう。

 まあ、確かに4人は狙われていたのであろうよ。

 そして見事に喰われたという訳じゃの。

 酒の肴にちょうどよいわ、ウハハハハハ……!」


 「なんとも言えなくなるから止めてほしいが、オレ達は狙われてたので?」


 「それはね。私もそれなりには歳をとってるし、そろそろ子供も欲しいのよ。

 とはいえ子供が出来たら逃げ出すようなのは困るし、ここは国境だからなかなか良い男は来ないわ。

 穴場の狩場ではあるんだけど、町ではないからでしょうね」


 「やっぱり田舎よりは都会がいいってのは多いからねえ。

 そこに関しては諦めるしかないんだけど、でも男を諦める必要はないでしょ。

 だから待ってたってわけ」


 「田舎の女ってそういうものよ。

 都会であればチャンスがあるんでしょうけど、田舎だとそのチャンスは奪い合いなの。

 こうも見事に綺麗に分かれるって、なかなか無いのよ。

 当然チャンスがあるなら食べるに決まってるわよね」


 「そこは好きにしてもらっていいんですが、後で揉めないようにお願いします。

 まだ騎士団が来ますし、その後は討伐の流れになるでしょうから」


 「そこはあたし達じゃなくて男の甲斐性ってヤツじゃないかい?

 頑張って貰わないとね」


 その男性陣は目線を合わせて頷きあったが、どうも逃げるという雰囲気じゃないな。

 となると村に残るんだろうけど、上手く躾(しつけ)られただけのように見えなくもない。

 女性陣の手管の方が上だったという事かな?


 私はそんな風に解釈しながら食事を終え、宿の部屋に戻って魔力を扱う練習をする。

 寝る前の日課みたいになっているが、ブルーオーガも完璧ではない。

 なので更に自分の奥底に沈殿している魔力を動かす必要がある。


 その練習をしているのだが、なかなかどうして底に溜まった澱(おり)のような魔力は動いてくれない。

 まるで澱(おり)のような魔力の表面を、動く方の魔力が撫でるだけのような感じだ。

 まるで手応えが感じられない。


 頑張っているのだが、ここからは相当の難易度になる予感がしている。

 私自身の感覚でも、コレは今のままじゃ動かせない。そんな気しかしないのだ。


 「確かに動いていない魔力があるけど、それを考えたら私より多いわね。

 種族が全く分からないけど、恐ろしいまでの魔力を持っているわよ。

 それで身体強化しか出来ないというのは、ちょっと悲し過ぎるけどね。

 代わりに強いんだけどさ」


 「それだけ強く強化できると思えば、別に悪い事では無いのではないですか?

 ヴォークソンも簡単に倒せるくらいですし」


 「簡単ではないのだけどな。

 一応は身体強化を使っていなかったが、相手に膝を突かせただけで殺す事は出来なかったくらいだ。

 今までのモンスターに比べて、ヴォークソンはやはり強い」


 「身体強化なしの一撃で追い込んでるのよ? それだけで十分でしょうに。

 そこから身体強化なんだから、とんでもない威力になるでしょうし、それはわたしに着けられた乱魔鉄の首輪も潰せるはずだわ」


 「乱魔鉄の首輪!? そんな物を着けた者がいるのですか!?」


 「この村で拷問でも受けたと思うけど、どっかの組織がわたしを拉致して利用しようとしたみたい。それでよ。

 というか、今だに腹立たしいのよね。

 わたしがお風呂に入ってる所に乱入してきたのよ? 最低だと思わない?」


 「それは無いですね。性犯罪者じゃないですか。

 極刑にすべきですよ、極刑に」


 確かに無防備な状態で襲われたんだから怒るのも分かる。

 ついでに裸の女性が居る所に乱入したのも怒って当然だ。

 とはいえ、お風呂という事は結構な宿に泊まっていたのではないのか?

 だとすれば宿の連中もグルなんじゃ……


 「それは分からないわ。

 私はガルバスのアレイヤという町の宿に泊まってたの。

 ついでに小さな桶にお湯を貰ってね、そこに漬かってたのよ。

 普通は体を拭く布を洗う為の物だけど、わたしは小さくなれるから」


 「その状態で?」


 「ええ。乱魔鉄の首輪を押し当てられて大きくなってしまったのよ。

 そしたらその後にあっさりと着けられたってわけ。

 で、夜の内に宿を出されて、後はずっと馬車の中。

 美味しくない食事しか出ないわ、本当に腹立たしかったわ」


 「それでも助かったのなら良かったじゃないですか。

 それに……アレイヤと言えば実家の隣の領地の領都ですし、あそこの子爵は悪い噂ばかりなんですよね。

 知ってたら行かないような所ですよ」


 「そうなの? どのみちもう行かないけどね。

 当面の目的であったアッシュは見つかったし、これからは適当にフラフラするぐらいかしら」


 「アッシュさんが目的?」


 「わたしは魔力の多い人物を探してたのよ。<妖精のキス>を使えば魔力を吸収できるからね。

 それを相棒にしてお金を稼いだり色々な事をしようと思ってたってわけ。

 ところが筋骨隆々なのに大量の魔力を持ったのが見つかって、ラッキーっていう状態なの」


 「それは分かるが、なぜ魔力を大量に持つ者が必要なんだ?」


 「それは簡単。

 やがてはヒドラやグランリザードを倒して、わたしの名を轟かせるのよ!」


 それは胸を張って大きな声で言う事か?

 あまり詳しくない私でも極めて強いモンスターだと分かるぞ。


 確か功名心だけで倒そうとして、何千人も何万人もが犠牲になったと言われるモンスター。

 それがヒドラやグランリザードと言われるモンスターだったはず。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。