02-34-0052
Side:アッシュ
解体所で獲物を売った後、私達は宿に行って2人部屋をとる。
マーヤと2人ならば1人部屋でいいのだが、流石にラブが居るなら2人部屋にしなければいけない
お金もあまり持っていないようだし、ここは私が出すしかないだろう。
血抜きを手伝ってもらったのもあるし。
「2人ともお疲れさまだ。
今日と同じように、とりあえずは領都の騎士団が来るまで間引きを続ける事になる。
それでお金を稼ぐ事になると思うが………これからは全部纏めて三等分にしようと思う。
それぞれで役に立つ分野が違うのだしな。同じ査定は出来ないだろう?」
「そうですね。僕は血を操るのと血抜きに、後は知識でしょうか?
何かお役に立てる事はあると思います」
「私は小さくして持ち運びやすくしたり、【魔術】を使って敵を倒す役ね!
【生魔法】は使えるけど、アッシュと居ると出番が無さそうで助かるわ。
見せると「使え、使え」って五月蠅いヤツが多くて嫌になるのよ。本当」
「唯一の治療が出来る魔法ですから仕方ないでしょう。
実際に【水魔法】使いなども「洗ってくれ」とか頼まれるそうですし、本人はそういう商売をしていないにも関わらずです」
「髪の色を見ればわかるからだろうな。
相手の事も考えず、髪の色でこういうヤツだと決めてかかっているのだろう。
だから青い髪のヤツは洗って当然、オレンジの髪は治療して当然と決めつける。
そもそも相手が使ってくれるかも分からないのにな」
「そう! 本当にそうなのよ。
あいつらわたしがオレンジの髪だからって、治してくれて当たり前だと思ってるのよね。
だからこそお金を取る事にしてるの。
そういうバカなヤツはお金を払おうとしないか、思いっきり安値を払って終わりにしようとするの。
だから高い値でしか受けないし、先払いしか認めてないわ」
「そうなるのも仕方がないだろうな。
そもそも使ってもらう立場なのに、なぜ上から目線で言ってくるのか意味が分からない。
誰だってそんな事を言われたら嫌がるに決まっているし、反発を受けて当たり前だ。
とはいえ、とことんまでに自分の事しか考えていないという者は居る」
闘技場はそんな奴らで溢れていたからな、もはや言葉も通じないような連中でしかなかった。
そんなのを散々見て来た身としては、連中の愚かさ加減はよく知っているつもりだ。
私達は今までの事などや身の上を話しながら仲を深め、そして夕食を食べに酒場へ。
色々とあったのでお腹も空いているし、今日はガッツリ食べるか。
そう思いながら多めに注文するとラブが驚いていた。
「いや、よくそんなに食べられるなと思いまして……。
ぼくがヴァンパイアだからか知りませんが、ぼく達はそんなに多くを食べられる種族ではありません。
なので驚いたのですよ」
「そうなのか、ヴァンパイアは小食………?」
「アッシュは血を飲んでる時の事を考えてるんだろうけど、ヴァンパイアの主な食事って血の方なのよね。
そっちが十分に摂れてるなら、基本的にヴァンパイアは普通の食事は小食なの。
そう考えれば分かるでしょ」
「なるほど。だからアレほどの勢いで飲んでいたのか。
そもそも血を失ったと聞いたが、それもあったのだろうな。
凄い勢いで飲んでいたし」
「あの時は身を守る為に様々な血を使った後だったんです。
その所為で大幅に体の中の血がなくなってしまい、それで周りへの意識が届いてない時に投石を受けたんです。
で慌ててコウモリになって逃げました」
「それしかなかったでしょうし、逃げて正解だったわね。
でなければ食い殺されていたかもしれないわ。
実際に相当弱っていたのは事実だし、気を失っていたもの。
あのままなら追いつかれて喰われてたわね」
「本当に危なかったんだな。まあ、これからは大丈夫だろう。
私も血抜きには困っていたし、お互いに都合がいいとはこの事だな」
そのような会話をしつつ食事をしていると、2階から女性陣と男性達が下りて来た。
相変わらずガーンドは居ないが、おそらく借りている家だろう。
そう思っていたらガーンドが酒場にやってきた。
「おっ、アッシュも来ておったか!
ワシも酒を飲もうとやってきたのだが、そこの坊主は飲んどらんようじゃな。
ガハハハハハハ、早う酒が飲めるようになれよ!!」
「別に飲めない訳じゃないけど、あんまり好きじゃないだけだよ。
飲むなら蜂蜜酒か葡萄酒くらいかな? それもそこまで飲んだりしないけど」
「そうなのか、残念なヤツじゃのう。
酒はこの世に生まれ落ちた者の楽しみじゃぞ。
ちゃんと味合わねばのう、ガハハハハハハハ……!」
そう言ってガーンドは歩いて行ったが、その後ろには女性が居た。
といっても若い女性達の中に居た山髭族の女性であり、こっちもガーンドに負けず劣らずの髭を生やしている。
山の中では空気が悪く、その所為で髭が女性でも生えるのだろうか?
何でも空気の良くないところでは髭などが濃くなる、という話は聞いた事がある。
それが単なる噂話程度のものなのか。
それとも根拠のある話なのかは知らない。
「山髭族って皆あんな感じよねえ。
女性も同じだから、本当に男女変わらない種族だと思うわ。
女性は細かい物が割と得意だけど、どっちみち女性も指が太いから細かい細工とかは無理なみたいよ」
「それでも山髭族が書いた本は沢山ありますし、そういうのは女性がやっていると聞きました。
なんでも男性は感覚派なので、どうしても女性は理論派にならざるを得ないとか……」
「まあ、鍛冶って感覚が大事だから、どうしてもそうなっちゃうんだとは思うわよ。
大工の方は違うと思うけど、こっちは女性が主にやってるのかしらね?
感覚と理論で対立もありそうだけど、種としての数は多いんだから上手くいってるんでしょう。きっと」
「そうだろうねえ。
それはともかく、妖精族の人は別にして少年はなんだい?」
「今日、森の中で助けたのよ。
コウモリ状態で飛んでたんだけど、地面に落ちちゃってね。
で、わたしが【生魔法】で治療したってわけ。
そしたら修行の旅で来てたみたい。
ただしヴォークソンの投石を受けて死にかけてたんだけど」
「ヴォークソンのかい。
あれ結構な力してるから危ないだろうに、【生魔法】使いが居てくれて良かったよ。
じゃないと死んでたね」
「ええ、本当に助かりました。
命を助けてもらった恩は、頑張って返したいと思います。
ところで何か本を持っていませんか?」
「は? 本? ……なんだい急に?」
「ラブは本が好きなそうなのよね。
で、ガルセンツ王国に来たのも知らない本を読みたいからみたいよ?」
「それはまた……いつものセットね! 変わった子だねえ。
あたしの持ってる本なんて官能小説と女の為の本と、妊娠した時用の本ぐらいだよ。
どれも男が読むもんじゃないし……バナンは?」
「申し訳ないですが、そもそも本を持ってません。
それなら武具の手入れの品とかを買うので……」
「そうですか。すみません、不躾にお聞きして。
女性が読む本にも興味はありますが、そういう本を借りる訳にもいきませんし……」
「っていうか、あたしが貸すなら読むのかい?
また、変わった少年だねえ……」
「本を読むのが好きっていうのはさ、大抵においてこんなものじゃない?
活字中毒っていうのかしら? 本と言うか、字さえ読めればそれでいいっていう連中はいるのよ。
昔、商店の台帳を読んでいたバカも居たもの。
字が書いてあれば何でもいいって言ってたようなのがね」
「それは完全に活字中毒ですね。ぼくは流石にそこまでじゃありませんよ。
字だけじゃなく為になるとか面白いストーリーなら読みますけど、字であれば何でもいいとまでは……」
「まあ、普通はそうだろうさ」
だな。流石に文字であれば何でもいいというのは、色々とおかし過ぎる。
しかも商店の台帳なんて読んで意味があるのか?
読ませた店側も凄いが、読んだヤツも凄いな。
リアクションありがとうございます




