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 Side:アッシュ



 解体所で獲物を売った後、私達は宿に行って2人部屋をとる。

 マーヤと2人ならば1人部屋でいいのだが、流石にラブが居るなら2人部屋にしなければいけない

 お金もあまり持っていないようだし、ここは私が出すしかないだろう。

 血抜きを手伝ってもらったのもあるし。


 「2人ともお疲れさまだ。

 今日と同じように、とりあえずは領都の騎士団が来るまで間引きを続ける事になる。

 それでお金を稼ぐ事になると思うが………これからは全部纏めて三等分にしようと思う。

 それぞれで役に立つ分野が違うのだしな。同じ査定は出来ないだろう?」


 「そうですね。僕は血を操るのと血抜きに、後は知識でしょうか?

 何かお役に立てる事はあると思います」


 「私は小さくして持ち運びやすくしたり、【魔術】を使って敵を倒す役ね!

 【生魔法】は使えるけど、アッシュと居ると出番が無さそうで助かるわ。

 見せると「使え、使え」って五月蠅いヤツが多くて嫌になるのよ。本当」


 「唯一の治療が出来る魔法ですから仕方ないでしょう。

 実際に【水魔法】使いなども「洗ってくれ」とか頼まれるそうですし、本人はそういう商売をしていないにも関わらずです」


 「髪の色を見ればわかるからだろうな。

 相手の事も考えず、髪の色でこういうヤツだと決めてかかっているのだろう。

 だから青い髪のヤツは洗って当然、オレンジの髪は治療して当然と決めつける。

 そもそも相手が使ってくれるかも分からないのにな」


 「そう! 本当にそうなのよ。

 あいつらわたしがオレンジの髪だからって、治してくれて当たり前だと思ってるのよね。

 だからこそお金を取る事にしてるの。

 そういうバカなヤツはお金を払おうとしないか、思いっきり安値を払って終わりにしようとするの。

 だから高い値でしか受けないし、先払いしか認めてないわ」


 「そうなるのも仕方がないだろうな。

 そもそも使ってもらう立場なのに、なぜ上から目線で言ってくるのか意味が分からない。

 誰だってそんな事を言われたら嫌がるに決まっているし、反発を受けて当たり前だ。

 とはいえ、とことんまでに自分の事しか考えていないという者は居る」


 闘技場はそんな奴らで溢れていたからな、もはや言葉も通じないような連中でしかなかった。

 そんなのを散々見て来た身としては、連中の愚かさ加減はよく知っているつもりだ。


 私達は今までの事などや身の上を話しながら仲を深め、そして夕食を食べに酒場へ。

 色々とあったのでお腹も空いているし、今日はガッツリ食べるか。

 そう思いながら多めに注文するとラブが驚いていた。


 「いや、よくそんなに食べられるなと思いまして……。

 ぼくがヴァンパイアだからか知りませんが、ぼく達はそんなに多くを食べられる種族ではありません。

 なので驚いたのですよ」


 「そうなのか、ヴァンパイアは小食………?」


 「アッシュは血を飲んでる時の事を考えてるんだろうけど、ヴァンパイアの主な食事って血の方なのよね。

 そっちが十分に摂れてるなら、基本的にヴァンパイアは普通の食事は小食なの。

 そう考えれば分かるでしょ」


 「なるほど。だからアレほどの勢いで飲んでいたのか。

 そもそも血を失ったと聞いたが、それもあったのだろうな。

 凄い勢いで飲んでいたし」


 「あの時は身を守る為に様々な血を使った後だったんです。

 その所為で大幅に体の中の血がなくなってしまい、それで周りへの意識が届いてない時に投石を受けたんです。

 で慌ててコウモリになって逃げました」


 「それしかなかったでしょうし、逃げて正解だったわね。

 でなければ食い殺されていたかもしれないわ。

 実際に相当弱っていたのは事実だし、気を失っていたもの。

 あのままなら追いつかれて喰われてたわね」


 「本当に危なかったんだな。まあ、これからは大丈夫だろう。

 私も血抜きには困っていたし、お互いに都合がいいとはこの事だな」


 そのような会話をしつつ食事をしていると、2階から女性陣と男性達が下りて来た。

 相変わらずガーンドは居ないが、おそらく借りている家だろう。

 そう思っていたらガーンドが酒場にやってきた。


 「おっ、アッシュも来ておったか!

 ワシも酒を飲もうとやってきたのだが、そこの坊主は飲んどらんようじゃな。

 ガハハハハハハ、早う酒が飲めるようになれよ!!」


 「別に飲めない訳じゃないけど、あんまり好きじゃないだけだよ。

 飲むなら蜂蜜酒か葡萄酒くらいかな? それもそこまで飲んだりしないけど」


 「そうなのか、残念なヤツじゃのう。

 酒はこの世に生まれ落ちた者の楽しみじゃぞ。

 ちゃんと味合わねばのう、ガハハハハハハハ……!」


 そう言ってガーンドは歩いて行ったが、その後ろには女性が居た。

 といっても若い女性達の中に居た山髭族の女性であり、こっちもガーンドに負けず劣らずの髭を生やしている。

 山の中では空気が悪く、その所為で髭が女性でも生えるのだろうか?


 何でも空気の良くないところでは髭などが濃くなる、という話は聞いた事がある。

 それが単なる噂話程度のものなのか。

 それとも根拠のある話なのかは知らない。


 「山髭族って皆あんな感じよねえ。

 女性も同じだから、本当に男女変わらない種族だと思うわ。

 女性は細かい物が割と得意だけど、どっちみち女性も指が太いから細かい細工とかは無理なみたいよ」


 「それでも山髭族が書いた本は沢山ありますし、そういうのは女性がやっていると聞きました。

 なんでも男性は感覚派なので、どうしても女性は理論派にならざるを得ないとか……」


 「まあ、鍛冶って感覚が大事だから、どうしてもそうなっちゃうんだとは思うわよ。

 大工の方は違うと思うけど、こっちは女性が主にやってるのかしらね?

 感覚と理論で対立もありそうだけど、種としての数は多いんだから上手くいってるんでしょう。きっと」


 「そうだろうねえ。

 それはともかく、妖精族の人は別にして少年はなんだい?」


 「今日、森の中で助けたのよ。

 コウモリ状態で飛んでたんだけど、地面に落ちちゃってね。

 で、わたしが【生魔法】で治療したってわけ。

 そしたら修行の旅で来てたみたい。

 ただしヴォークソンの投石を受けて死にかけてたんだけど」


 「ヴォークソンのかい。

 あれ結構な力してるから危ないだろうに、【生魔法】使いが居てくれて良かったよ。

 じゃないと死んでたね」


 「ええ、本当に助かりました。

 命を助けてもらった恩は、頑張って返したいと思います。

 ところで何か本を持っていませんか?」


 「は? 本? ……なんだい急に?」


 「ラブは本が好きなそうなのよね。

 で、ガルセンツ王国に来たのも知らない本を読みたいからみたいよ?」


 「それはまた……いつものセットね! 変わった子だねえ。

 あたしの持ってる本なんて官能小説と女の為の本と、妊娠した時用の本ぐらいだよ。

 どれも男が読むもんじゃないし……バナンは?」


 「申し訳ないですが、そもそも本を持ってません。

 それなら武具の手入れの品とかを買うので……」


 「そうですか。すみません、不躾(ぶしつけ)にお聞きして。

 女性が読む本にも興味はありますが、そういう本を借りる訳にもいきませんし……」


 「っていうか、あたしが貸すなら読むのかい?

 また、変わった少年だねえ……」


 「本を読むのが好きっていうのはさ、大抵においてこんなものじゃない?

 活字中毒っていうのかしら? 本と言うか、字さえ読めればそれでいいっていう連中はいるのよ。

 昔、商店の台帳を読んでいたバカも居たもの。

 字が書いてあれば何でもいいって言ってたようなのがね」


 「それは完全に活字中毒ですね。ぼくは流石にそこまでじゃありませんよ。

 字だけじゃなく為になるとか面白いストーリーなら読みますけど、字であれば何でもいいとまでは……」


 「まあ、普通はそうだろうさ」


 だな。流石に文字であれば何でもいいというのは、色々とおかし過ぎる。

 しかも商店の台帳なんて読んで意味があるのか?

 読ませた店側も凄いが、読んだヤツも凄いな。


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