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02-29-0047




 Side:アッシュ



 ドーヴァルの巣を調べたものの、これ以上は何も無かった。なので次は山狼の巣へ。

 左の山に入り、森の中を進んで行って到着。


 そこには何も無くなった川辺だけがあった。

 どうやら山狼も何もかもが喰われたようだ。

 流石はスライムとしか言い様が無いな。


 「スライムが居る以上、死体は確実にこうなります。

 それはともかくとして、山鹿も見当たりませんし、彼らの巣はこの辺りにはありませんね」


 「昨日も遠くからやってきた感じでしたし、山狼が繁殖し始めた辺りで逃げ出したのでは?

 その後に統率者が現れたのか、それとも統率者が居ても勝てなかったのか」


 「相手は山狼なんですから、統率者になっただけでは勝てないのでは?

 だからこそ争い合っているのを利用した」


 「その辺りが答えっぽいわね。それで、山鹿の巣も探すの?」


 「私ではどうにもなりませんが、アッシュなら何とかなるのでは?

 領都の騎士団を呼んでいますからね、何も無いとなると遠征費を請求されかねないのですよ。

 ですので騎士団が動くに足る理由が欲しいというところです」


 「それでは探してみましょう。

 とりあえず川の匂いは分かりますので、ここまでは帰って来れますし」


 私はそう言いながら周囲の臭いを嗅ぎ、何かの獣臭がするほうへと移動していく。

 果たしてこちらが本当に山鹿の巣なのかどうかは分からないが、まずは色々と確認していくしかないだろう。


 私が進んでくと2人も後をついてくる。

 そうやって進んだ先に居たのは山鹿だった。

 となるとこの臭いは山鹿で確定だな。


 「【魔通矢】」


 それだけであっさりと鹿の足を潰すと、私が一気に走って山鹿の頭に金棒を振り下ろす。


 ドゴン!


 この一撃で山鹿は倒れ、起き上がれなくなった。

 なので私はナイフを抜き、素早く首を切りつける。

 後は血抜きが完了するまで待とう。

 それにしても、いきなりだったので合わせられなかったな。


 「流石に合図もなくやらせるのは酷では?」


 「私は足を潰したかっただけで、別にそこまでは思ってなかったわよ。

 足さえ潰せれば、逃げられる事はまず無いもの。

 なら後は好きに出来るでしょう? その為にも足は潰しておかないとね」


 「まあ、確かに逃げられる前に足を潰したのは正解でしょうけど……」


 祖部長は若干不満そうだが、マーヤはどこ吹く風と言ったところだ。

 血抜きが終わると小さくしてもらい、私が持っている布で包(くる)んで持ち運ぶ。

 距離が開けば開くほど必要な魔力は増えるらしく、それが限界の距離なのだそうだ。


 マーヤの最長距離は50メートルほど。

 なので実際に使える距離は半分の25メートルぐらいならしい。

 なのでそれより距離が離れると、手放すしかないとのこと。

 なので今は私の肩に乗っている。


 「魔力を頂く際にも便利だから、誰かに乗ってる方が楽なのよねえ。

 別に頭の上でもいいんだけど、頭って結構動くから大変なの。

 だから肩とか、後はポケットかしら? そういう安定する所に居ると楽なのよ」


 「何と言うか、楽をしたいだけの言い分ですね。

 とはいえ色々な物を小さくして運べるとなれば、それぐらいは構いませんか……」


 「それでも増えれば増えるほど魔力が要るし、それは補充させてもらわないと困るけどね。

 自分の持ち物は魔力の通りが良い物が多いけど、通りが悪いとそれだけ消費する魔力も増えるわ。

 なので、その辺りも注意が必要なの」


 「そう簡単に楽して運ぶというのは無理なんですね。

 それでも条件さえ揃えば楽に運べるのは魅力的です」


 「ん? ………向こう、臭いが一気に濃くなりました。

 もしかしたら向こうに巣があるのかもしれません」


 私は濃い山鹿の臭いを捉えたので、そちらに向かって進んで行く。

 それなりに木々を掻き分けて進んだ先では開けた場所があり、そこには大量の山鹿が群れを成していた。

 しかも、あのライトニンゲディアーというのがまだ居る。


 「もしかして………統率者が2匹いた?

 そんなバカな事がと思うけど、これ、明らかに人為的に作られてるわよね? どう考えても統率者の数が多すぎるわ。

 私を拉致していた奴らは違うでしょうけど、原因を突き止めておいた方がいいと思う」


 「ですね。

 これが本当に何者かの仕業であれば、国境の町を壊滅させようとする行為です。

 ただし、我が国とガルバスに戦争をさせたい国がやっているのかもしれませんし、そういった争いが起こる事を望んでいる者達が裏に居るのかもしれません」


 「裏にですか? 2国間で戦争を起こさせて、いったいどんな利益が………」


 「一つは傭兵団ね。

 あいつら自分達の名を上げる為には悪さなんて平気でするし。

 そして次は商人よ。

 こいつらも自分達が儲かるなら平気で他者を犠牲にする。

 信用と名前を大事にする奴らばかりじゃないってこと」


 「3つ目は貴族ですね。

 権力争いの一つとしてなのか、目線を逸らせる為なのかは分かりませんが、可能性としてはあります。

 後は怪しい組織とかですかね?」


 「そうじゃない? とはいえ、誰がやったのかは明確に分からないと思う。

 やったヤツが近くに居るとは思えないし、<混沌の種>は与えて放っておけば済むからね。

 既にここから遠く離れてるでしょ」


 「でしょうね。

 そもそも留まっても意味はありませんし、無駄に疑われるだけでしょう。

 なので遠くに行っていると思いますが………今の状態は失敗とも言えるのですよね。

 それをどう考えるかですが……」


 もしかしたら<混沌の種>を撒いたヤツが戻ってくるかもしれない?

 失敗していたら困るのであれば、戻って来てまた同じ事をするかも……。

 となると再びヴェルイーを訪れる可能性は高い。

 とはいえ後4日ほどで騎士団が来るはずだ。


 犯人がそれを知らないなら戻ってくる可能性もあるが、失敗でも成功でも戻ってこないとは思う。

 仮にこの状況で戻ってくるなら、とんでもないマヌケか、それともここの辺境伯に恨みがあるかだ。


 「アッシュが言うので正解じゃない?

 そこまでして騒ぎが起こってくれないと困るなら、それはもう貴族に恨みがあるとかぐらいでしょ。

 もしくは計画か何かがあって、その通りにならないと困るとかね。

 それぐらいしか考えられないわ」


 「予想は幾らでも出来ますが、まずは一旦離れましょう。

 今までで一番多いですよ、ここは」


 そうだ。支部長が言う通り、山鹿の数が尋常じゃない。

 凄い数に膨れ上がってるが、これを討伐するのは大変だぞ。

 時間を掛けて減らしていくか、それとも騎士団などが数で一気に倒す。

 そのどちらかしかないだろう。


 おそらくあそこだけで300は超えているはず。

 そのうえ外に出ている奴らも居るのだから、山鹿が多いと村の人が言っていたはずだ。

 単にヴェルイーの方に来なくなっていただけなのだろう。


 「ですね。あそこまでの数が居たとは思いませんでした。

 しかしここ最近、急に山鹿を見かけなくなりましたからね。

 となるとドーヴァルか山狼か、どちらかが村の近くまで移動して来た。

 それで山鹿が近くに現れなくなったというところでしょう」


 「ま、そこはいいわよ。

 それよりドーヴァル、山狼、山鹿。

 流石にもう無いでしょうね?

 もし何かの巣がまだあるなら、見つけておいた方がいいわ。

 という事で、アッシュ。探すのよ!」


 「それはいいんですが、臭いが無ければ分かりません。

 そこは間違えないようにお願いします」


 私はそう言いつつ周囲の臭いを嗅ぐ。

 山鹿の臭いは分かるので、それ以外の物を探っていくのだが………

 他の臭いは感じられなかった。

 おそらくだが巣があっても遠いのではなかろうか?


 ヴェルイーを狙っているなら村の近くだろうが、国境の砦を狙っているなら近くではない。

 しかし村の近くであれだけ統率者が確認された以上、おそらくだけど仕掛けたヤツの狙いは村のはず。


 なら巣があってもドーヴァルの方か?


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