02-28-0046
Side:マーヤ
支部長への説明が終わったわたし達は、そのまま宿へ移動。
アッシュが一人部屋をとったので、そこにわたしも行く。
そもそもわざわざ部屋をとるなんて無駄だからね。
「といっても、私がとった部屋なんですけどね」
「気にしない、気にしない。
魔力の扱いとか色々教えてあげるから良いでしょ」
「まあ………それならいいですかね」
「そもそも小型化しているなら、わざわざ一人部屋をとる意味が無いのよ。
お金の無駄使いでしかないし、そんなスペースも要らないもの。
わたし自分の寝具は持ち歩いているしね」
「寝具………ですか?」
「そうよ。わたし専用の毛布だけどね。
分厚いから机の上とかの硬い所でも下に敷けば眠れるのよ。
上から被る用の毛布も持ってるし、これで冬も寒くないわ。
今は春から夏の間だから出さないけど」
「今出しても暑いだけでしょうしね。
それより魔力を知る事はなんとなく出来ていると思うのですが、これが魔力で合ってますよね?」
アッシュがそう言ってくるので魔力を感じると、確かにアッシュの魔力が動いているのが分かる。
それはいいんだけど………相変わらず魔力が多いわね?
増えてるのかどうかは分からないけど、淀んでいる魔力が多いわ。
ただし悪い意味での淀みじゃなく、長く使われなかったから固まってしまっている感じね。
何度も使い続ける事でゆっくりと柔らかくなるでしょうけど、これ下手したらわたし以上の魔力持ちなんじゃないの?
体は大きいから巨漢系の種族なんでしょうけど、それらは総じて頭が悪く魔力が少ないはず。
にも関わらず、アッシュの頭は悪くないし魔力は非常に多い。
となると巨漢系の種族じゃないとなる。
たまたま体が大きく生まれ育っただけかしらね?
でも、妖精族の中でも魔力の多い、わたしと同じかそれ以上となると………心当たりが全く無い。
いったい何の種族なの?
<混沌の種>の事といい、アッシュの種族に何かしらの秘密がありそうね。
今は分からないけど。
私はアッシュに色々と教えてたんだけど、微妙に臭いので指摘した。
するとアッシュは服と体を洗うといって出て行く。
別に急かした訳でもないんだけどね。
とはいえ臭いのは事実だし、あのまま放っておいても本人の為にならないわ。
宿の井戸の近くで服を脱ぎ体を洗い始めたので、私は近くを飛んでアッシュの種族を紐解くヒントがないかと探す。
「何をしてるんですか?」
「アッシュの種族が分かるような特徴が無いかと思ってね。
でも残念ながら無かったわ」
「ああ、そうだったんですね。すみません。
前に女性陣に鑑賞された事があるので、てっきりそれだと思ってました」
「わたしはそんな趣味なんて持ってないわよ。
他の種族だと違うのかもしれないけど」
そう言ってわたしは飛んで離れるけれど、危なかったわ。
まさかついでに鑑賞していた事がバレかけているとは………。
アッシュを鑑賞する時には気を付けた方がいいわね。
とはいえ、随分と筋骨隆々の割にはスマートな体だったわね?
それに筋肉のバランスが良かったし、何よりビックリするほど大きかった。
モノが大きな種族なんて無いから、あれも偶然なんでしょうけど………サッパリね。
体のついでに服も綺麗に洗ったアッシュは、ある程度乾燥させた下着や服を着こんで練習を開始。
私も付き合う形で魔力を動かし、身体強化まで含めた練習を夕方までした。
夕日が出て来たので練習を止め、私達は酒場へと移動。
わたしもアッシュと似たような物を注文する。
というより、どこの酒場も似たようなメニューしかない。
良い悪いは別にして、そこで採れた物しか料理に使えないもの。
どうしても似通る。
それは仕方ない事だし、食べられるだけマシでしょう。
私はアッシュと同じ席に居るけど、運ばれてきた料理を小さくして食べる。
お酒も飲んでいるんだけど、何故かそれを知ったアッシュが驚いていた。
「酒に酔った所為で小型化が解除されるとか無いですよね?
無いならいいんですけど………」
「大丈夫、大丈夫。
そもそもその程度で解除してしまうなら、最初から飲もうとなんて思わないわよ。
それに飲ませて捕まえるなんて事を考える者も居るでしょうしね。
でも、お酒を飲んで捕まった事は無いわ」
「まあ、大丈夫なんだと思っておく事にします」
なんだか失礼な言い方だとは思うけど、それでも大丈夫な事は伝わったみたいね。
そもそも妖精の里でだってお酒は作ってるし、飲んで騒ぐ事もある。
それでも大人は誰一人大きくなる失敗なんてしないわ。
子供の時にやってしまってるからね。
食事を終えたわたしは良い気分でフラフラ飛ぶも、アッシュの手に捕まった。
なんでもフラフラ飛んでて危なっかしいとのこと。
わたしとしては楽が出来るからいいかと思いつつ、アッシュに部屋まで運んでもらった。
そして部屋のテーブルの上に小型化を解除した毛布を敷き、その上に寝転がる。
それじゃ、おやすみー。
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次の日。
朝早くから起きて食事をしたら、わたしとアッシュと支部長は確認に出かける。
なぜハンター協会で受付嬢をやっていたか聞くと、そういうものだと習ったとのこと。
「この国の王都の協会でも、サブマスターが受付の仕事もしていましたからね。
それでだと思いますよ」
「そうですね。
リテュナ殿からは、受付にサブマスターが居ると協会内でおかしな事をしようとする者は居なくなる。そう習いました。
現に私が赴任して受付に座るようになってからは、おかしな者が屯する事は無くなりましたよ」
「まあ、偉いヤツが居る所で屯するバカは居ないでしょうよ。
騎士や兵士の前で堂々と犯罪をする者も滅多に居ないしね。
それと同じだと考えれば分かるわ。
屯するなら酒場に行って酒でも飲んでろって事でしょう」
「実際にその方が店などへの貢献にもなりますからね。
どう考えてもそちらの方が良いに決まってます。
監視が効いていない所だと、受付嬢に良からぬ事をする者も居ますのでね。
そういう意味でも支部長である私が目を光らせている。
それをアピールする意味はあります」
そんな話をしつつ、まずはドーヴァルの巣だった所に来たんだけど………。
結構な数のドーヴァルが喰われたというか、溶かされたみたいね。
私達が来た時にもまだ動いているスライムが大量に居たぐらいだもの。
「多くはスライムに食べられたようですが、それでもドーヴァルは残っていますね。
あれらも食べられるでしょうが、こればっかりはどうにもなりません。
とりあえずドーヴァルの気配が無い事に安堵しましょう」
「ここを襲ったのは山狼ですが、山狼の側も死者は出ているはずです。
なので山狼の死体も喰われたでしょうね」
「そう考えると、最後の勝者はスライムかしら?」
「そういえば、スライムって統率者が出るんですか?」
「「………」」
いきなりアッシュがとんでもない事を聞いてきた。
もし、スライムに統率者が出ないのなら、<混沌の種>はスライムに溶かしてもらえば良くない?
それをしていないって事は、誰かが実験して失敗したのかしら。
それとも誰も実験をしてないのかも。
<混沌の種>はもう無いから実験は出来ないけど、もしかしたら<混沌の種>を捨てる事が出来るようになるかもしれないわね。
今のところは実験不可だけど、どこかに情報を上げておきましょうか。
そしたらどこかがやるでしょ。
「流石に実験は為されているでしょうし、それで確立されていないなら失敗したのだと思いますよ。
何百年も前から困っているわけですし」
まあ、それもそうか。
何百どころか千年以上に渡って溜め込まれてるんだし、そろそろ限界に………と思ったけど、その割には大問題にまではなってない。
となると……処理方法がある?




