02-20-0038
Side:アッシュ
翌日。私は朝食を食べに行ったのだが、その席でベリ殿にある事を問われた。
「アッシュに槍を突きつけた連中が居たのを覚えてるかい?
連中が協会から居なくなってるらしいんだけど……」
「知ってますよ。昨日ドーヴァルの巣で襲われていました。
流石に支部長と2人では助け出す事など無理なので、撤退するしか出来ませんでしたが……」
「なんか仕出かしたんだろうとは思ってたけど、まさかドーヴァルの巣に攻め込むとはね。
いや、連れ去れたのかも。
まあ、どっちにしたってそういう事なら終わりだろうさ。
そもそも助けてやる義理も無いしねえ」
「ハンターはそもそも自己責任じゃ。良い悪いは別にして、他の者に救出する義務はない。
もちろん助けられるなら助けてやるが、200以上の数のドーヴァルの巣に突撃するなど自殺行為でしかないわ。
流石にそんな事はできん」
「そもそもガーンドがあいつらに森歩きは無理だって言ったのにな?
にも関わらずドーヴァルの巣に行くとは……」
「欲しか考えていなかったのか、それとも何も考えていなかったのか。
どのみち愚か者から死んでいくのがハンターだ。
生き残るのは賢い者だけさ。
そうでなければ生き残れないのがハンターでもある。
あんた達も慎重に生きなよ?」
「「「「はい」」」」
女性達は思う所もあるのだろうが、私を睨んでくるという事は無かった。
ドーヴァル200から救い出せと言われても無理に決まっている。
流石に喰われた男達とは違い、彼女達は現実を理解しているのだろう。
無理なものは無理だと。
朝食を終えた私は協会に行き、支部長と共に右の山へと様子を見に行こうとして止めた。
ドーヴァルと山狼が争っていたからだ。
アレに介入すると三つ巴になってしまう為、流石に介入する訳にはいかない。
私は支部長と顔を見合わせ、そっと戻る事にした。
村の近くまで戻ってくると、ちょうど鉄級の者達や女性陣に女性達も出発の予定だったらしい。
村の近くに居たので話しておく事になった。
「もし貴方がたが行くのであれば注意してください。
私達が行った時には、既に山狼とドーヴァルが争っていました。
その邪魔をするのもマズいと思い、私達は帰って来たのです。
もし行くなら、こちらにモンスターが向かわないようにしてください」
「それを聞いて行くバカは居ないね。
ここ最近はドーヴァルの睾丸で儲かってるし、今日はゆっくりしようかい」
「さんせーい。たまには朝からもいいと思うわ。
錬金術師の店に寄って精力剤を買って行きましょうか? そうしたら五月蠅くないでしょうし」
「そうね。
私達が狩ってきた素材でだもの、買って行ったとて文句を言う事もないでしょ。
もしかしたら、もう売り切れてるかもしれないけど」
「その可能性があるわね、さっさと行って確保するよ!」
「「「おー!」」」
「「「「「………」」」」」
「「「………」」」
女性陣があからさま過ぎて何とも言えないのと、若い女性達も何とも言えない顔をしている。
女性達の一人は迷っている感じが見られるので、おそらく彼女がガーンドとそういう関係になった女性だろう。
見ていてもしょうがないから、さっさと宿に戻ろう。
私はハンター協会まで支部長を送ると、さっさと宿へと行って部屋を確保する。
その後は椅子に座って魔力の認識の練習だ。
とはいえ上手くいかないままに昼になったので酒場へ。
昼食を注文して待ちつつ何が悪いのだろうかと悩んでいると、2階からいつもの人達が下りて来た。
「アッシュは相変わらず早く来てるねえ。
あたしはギリギリになって気づいて慌てて支度して出て来たぐらいなのにさ」
「それで服が崩れてるんですね。ちゃんと着ておいた方がいいですよ」
「お昼を食べたらまた裸になるんだから、これでいいよ。
2階に戻るまでそれなりであればいいしね。
それに皆変わらないだろ?」
そう言うので見ると、シェリア殿を始め、女性陣は悉く服が乱れていた。
どうせ脱ぐからと、きっちり着る気も無いらしい。
それもどうなんだろうと思うが、私が言う事でもないなと黙る事にした。
昼食を食べて部屋に戻ると、再び自分の魔力を認識しようとするも上手くいかない。
あまりにも上手くいかないので力を吸って取り込み、いつものように動かす。
すると、自分の中の何かが一緒に動いているのを発見。
これがおそらく自分の魔力のはずだ。
少しずつ呼吸から取り込んだ力で動かしつつ、その動かす範囲を広げていく。
その過程で気づいたのだが、どうやら私は自分の中の少しの魔力を全身に巡らせていたようだ。
つまり多くの魔力を動かせるようになれば、レッドオーガはパワーアップするはず。
それを理解した私は俄然やる気を漲らせ、今までよりも遥かに集中して細かく調べていく。
自分の魔力がどれだけあるのか、どれだけを動かせるのか。
それを調べていると夕方になっていたのか夕日が窓から見えた。
私は慌てて酒場へと移動し、注文をすると一息吐く。
そのまま運ばれてくるまで待って食べたものの、誰一人として下りて来る事は無かった。
精力剤が効いているのだろうか? 鉄級の男性陣も大変だが、頑張ってほしいものだ。
搾られ過ぎてダウンは勘弁してもらいたい。
何かあった時に戦力にならないのは流石に………。
だが、あの女性陣ならやらかしそうな気もする。
流石に戦えないのは厳しいぞと思いながらも、私は宿へと戻って再び練習を始めた。
が、夜更かしする訳にもいかないので途中からは寝る事に。
それじゃ、おやすみ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
翌日の朝。
いつも通りに朝食を食べて協会に行き、支部長と出発しようとした矢先、こちらに近づく物を見つけた。
それはパルデオムが牽く馬車のようだったが、後ろから山狼とドーヴァルが追いかけてきている。
「なぜ昨日上手くいったと思ったらこうなるのですか……。
あの愚か者の3人組も居ないというのに」
「そんな事を言われても困りますし、あれ、突っ込んできますよ?」
「村の外に出て食い止めるしかありません。
堀の無い所は死守してください。
堀の中に落とせば上がって来れないでしょうから、殺すよりも落とす事を優先して構いません」
「分かりました」
あの3人組が居なくても、こうなる結末は変わらなかったのだろう。
5日はなんとか出来たが、ここからは山狼とドーヴァルに襲われる日々の始まりだ。
残り5日、何とか防げればいいんだがな。
そう思いつつ飛び出した私は、金棒で一番近い山狼の鼻面をブン殴る。
後ろの事は支部長に任せ、私はとにかく馬車を追いかけていたモンスターを倒していく。
そうしなければ勢いを止められないだろう。
何故か分からないものの、両者ともに20体ぐらいいるので手当たり次第に殺るしかない。
とにかく当たるを幸いに金棒を回してブチ当て、近づいてきたのは左肘か蹴りの餌食にしていく。
そうして戦っていると、ガーンド達が来てくれた。
「大丈夫かアッシュ! すまん、遅れた!!」
「こっちは大丈夫だ!
それより後続は居ないようだから、今の内にこいつらを殺そう!!」
「分かった、とにかく手負いは任せろ。
アッシュはどんどんと敵を殴りつけて行ってくれ!」
後ろで誰かが助けてくれるのはありがたいなと思いつつ、私はモンスターをどんどんと殴りつける。
とにかく私が殴り、蹴り、金棒を叩きつけると、それだけで動きは大きく鈍る。
なんだったら足に叩きつけるぐらいなので、相手はあっという間に碌に動けなくなってしまっている。
そうなると後は木級の女性達に任せても問題ないくらいだ。
その調子でモンスターを倒し、何とか山狼とドーヴァル20体ずつの討伐を終わらせる事が出来た。
疲れたが、あの馬車はいったい何だったのだろう?




