02-18-0036
Side:アッシュ
次の日。
再び支部長と共に右の山に来たが、ここ数日ドーヴァルを狩っているからか、数が減っている気がする。
ドーヴァルにとっても急激に仲間が殺されている訳で、それは警戒もするだろう。
特に群れの数が減ってきたならば敏感にもなるだろうし、そうなるとこちらに感づかれる可能性がある。
流石にマズいかと思うものの、ドーヴァルを殺して睾丸を手に入れつつ今日も巣まで進む。
そして支部長と確認したのだが、ドーヴァルの巣は昨日に比べてピリピリしているようだ。
やはり数が減っている事が影響しているのだろう。
私と支部長はそれを確認すると、バレないように静かに離れた。
私達自体は睾丸を持っているので、おそらくにおいでバレたりはしていないだろうと思う。
そもそもドーヴァルはそこまで鼻が良いモンスターでもない。
自分の臭さが分からないぐらいだし。
幾ら自分のにおいに慣れるとはいっても、限度というのはあるだろう。
それに睾丸のにおいはドーヴァル達でさえ嫌がるほど臭いらしいし。
ただ、もしかしたらドーヴァルも睾丸の臭さに慣れていないだけかもしれない。
体臭とは別種のにおいともなれば、慣れる事は無いだろうしな。
私と支部長は、今後ドーヴァルに対しては慎重に狩りをする事で一致した。
流石にピリピリしているあの状況では、バレると村へと攻めてきかねない。
私達は山狼と争わせたいのであって、ドーヴァルと正面から戦う気は無いのだ。
村での防衛を考えても難しいとしか言えないしな。
今度は左の山へと行き、森の中に居る山狼を2頭狩る。
その後は少々北に運んでから山狼の首を切り、その血を出したまま右の山へと運んでいく。
血の量が減って出なくなると山狼をその場に置き、もう1頭の山狼の首を切って血を流させる。
苦労した甲斐があり、結構な距離に血を撒く事が出来た。
そして、その血を辿って1頭の山狼が来たので鼻面を金棒でブン殴って倒す。
それが終わったら首を切り、再び血を流しながら右の山へ。
3頭目で右の山に到着する事が出来たので、そのまま森へと突入する。
後は可能な限りドーヴァルの巣へと近づくだけだ。
これで仲間が殺られた山狼が攻めてくれると思うのだが……
血が出なくなった山狼をその場に捨てると、私と支部長はその場を離脱。
既に昼を回っていたので村へと戻った。
錬金術師の店で睾丸を売ると、これ以上持ってこられても買い取る金が無いと言われた。
どうやら精力剤が売れないと赤字らしい、なのでシェリアさん達に言っておく事を頼まれる。
流石に錬金術師の店を潰したい訳でもないだろうから、村の人達も買ってくれるのではなかろうか?
村の中央の井戸で手を洗ったら、私と支部長はその足でハンター協会へ。
そして木札を出すと銅6級に上げてもらえた。
「流石にそろそろ上げておかないとマズいですからね。
飛び級の事もありますし、簡単に上げるとアッシュの腕に疑いが出てきます。
癒着とか不正を疑われても面白くありませんし」
「巡回狩人ですから不正と癒着は出来ませんけどね。
一定の期間が過ぎると別の場所に移動しますし、何より巡回狩人というだけで多少は警戒されます。
中央の紐付きですから当然なんですけどね。
邪険にはされませんが、距離は空きますよ」
「急に情報が出て来たのも、距離がマシになったからですかね?」
「そうですね。
良い悪いは別にして、どうしても何かをされるかもしれないと警戒はします。
どこもそうですが、何かの騒動を起こしたい者などほぼ居ません。
巡回狩人はその騒動を起こしかねないと思われます。
実際に愚か者が絡んだりしたでしょう?」
「私からではありませんけどね」
「ええ。とはいえ揉め事は揉め事、それに関わりたくないと思う者は多いのですよ。
アッシュさんが起こした揉め事でなくとも、アッシュさんが来たから起こった。そう解釈する者も居るという事です。
そもそもハンター協会の者もしょせんは雇われですからね。
揉め事が起きないならそれでいいという者も居るのですよ」
「なんだか妙に辛辣ですね?」
私は気になったので、ついつい余計な事を聞いてしまった。
こういうところが揉め事を起こす元なのかもしれない。
「私は元々領都の出身なのです。
で、向こうでもハンター協会の職員をしていたのですが、その時に色々と見てきました。
だからこそ色々と知っているんですよ」
「なるほど、そういう事だったんですね。
通りで説明をしてもらえるはずです。
それはともかく、明日からはドーヴァルを狩っても死体は捨てておくしかありませんね。
もしくは山狼との戦いが起きた時の為に溜めておきますか?」
「瓶に入れておけば溜めておけるでしょうが、そこまでする必要があるかどうかは謎ですね。
最悪は錬金術師から買い取って使えばいいと思いますよ。
それで山狼を退ける事は可能でしょう」
「アレはよく効くでしょうが、代わりに悪臭過ぎて騎士団が来たら嫌がられるでしょうしね。
あまり使う事は考えない方がいいかと思います」
「私達もなるべくなら使いたくないですし、お金も出したくないですからね。
あくまでも最悪の場合ですよ、最悪の場合」
だろうな。私もアレは最後の手段にしたいくらいだ。
ドーヴァル相手でも効くだろうが、戦う私達も厳しいと言わざるを得ない。
なるべくなら使わない方がいいし、においも嗅ぎたくないしな。
今日も辛かったし、そろそろ止めたかったのもある。
デュジュ殿でさえ休みの日にしか狩らないモンスターなのだから、どの級になったとしても厳しい事に変わりはない。
しかもデュジュ殿は自分で使ったり、王様に渡すからこそ狩っているのだ。
お金の為に狩っている訳じゃない。
少なくともお金程度じゃ長続きしないぐらいに厳しいのも事実。
そんな臭さがあのドーヴァルの睾丸でもある。
「とにかく今日の結果がどう出たか、明日確認するしかありませんね。
上手くいっていれば、今日の夜辺りから山狼とドーヴァルの争いがある筈です。
ですので、出来れば上手くいっていてほしいですね」
「たぶん大丈夫だと思いますが、こればっかりはどうなるか分かりませんしね。
駄目なら明日も山狼を狩って血を流していくしかないでしょう。
とにかく騎士団到着まで時間を稼がないと」
「ええ」
その後は少々話して協会を出たが、そういえば男3人が居なかったな?
今日は掃除を免除されているのか、そろそろ何かを狩りに出たんだろうか?
奉仕活動はあっても、それだけじゃ収入が無いので生きていけないだろうしな。
どこかで狩りをするしかないだろう。
あの連中が真面目に狩りをしているとは考えにくいが、それでも迷惑さえ掛けて来なければ何だっていい。
特に今おかしな事をされると最悪の状況になりかねない。
そしてそんな事をする可能性のある連中だ。
だからこそ見えないのが気がかりなんだが……。
あまり悪い風に考えても仕方ないか、それよりも宿に行って体などを洗おう。
それが終わったら昼食だ。
流石に臭いまま酒場には行けない。
私は宿の部屋をとるのと同時に、洗濯の為の球体も借りる。
そして服を脱いで体を洗い、その後に服を洗濯する。
今日は山狼を担いで血を流していたからか、服にも割と血が付いていた。
仕方なく揉み洗いなどを繰り返して綺麗にし、その後に洗濯の球体に入れて洗濯していく。
2度の濯ぎを終えて乾燥させ、濡れた褌と服を身につけたら酒場へ。
昼食を注文して待ち、食べた後は宿へ。
今日は鉄級のチームや女性達とは会わなかったが、たまにはこんな日があってもいいだろう。
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