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02-15-0033




 Side:アッシュ



 次の日。私は起きると身支度を整え、そして酒場に移動して朝食を食べる。

 少しゆっくりとした後でハンター協会に行くと、既に装備を整えた支部長が待っていた。

 他の受付嬢が居るので、やはり支部長が受付嬢のフリをしていただけらしい。


 「準備は出来ていますね? それでは出発しましょうか。

 まずはドーヴァルを倒さないといけません。なので右の山です」


 そう言う支部長と共に出発するのだが、村を出た後ですぐに練習が始まった。


 「アッシュはまず体内の魔力を感じる事から始めましょうか。

 おそらくは初歩の初歩すら学んでいないのでしょうから、そこから始めなければいけません」


 支部長が手を出すように言うので出すと、私の手を握り突然何かをしてきた。

 私は反射的に腕を払い飛び退いたが、支部長はそれを見越していたのかサッと手を離したようだ。


 「ビックリしたようですが、先程のものが魔力です。

 そしてそれは貴方の中にもあるものなのですよ。

 自分の体に意識を向けてみなさい。そして自分の体の内側にあるものを感じるのです。

 最初は魔力の認識であり、ここから全てが始まると言っても過言ではありません」


 「魔力の認識……」


 私は私自身の魔力が分からない。そんな事は習ってきていないからだ。

 しかし考えてみれば当たり前の初歩だという事が分かる。


 そもそも自分の腕力が分からなければ、どれだけの重さの武器が適正か分からないからだ。

 だからこそ自分の腕力を理解するのは当たり前となる。


 それと同じなんだろうと思った私は、ゆっくりと自分の内側にあるものとやらを探す。

 おそらくそれが魔力なのだろうし、それこそ外から取り込まなくても良かった私にあるもの。

 ………のはずなのだが、いったい何が魔力なんだ?


 「ふふふふ……最初は誰だって分からないものです。

 もし何の指針も無しに発見できたら天才の類ですよ。

 多くの者は先達に魔力を流してもらって把握するのです。

 先程のようにね」


 「ああ、さっきのは魔力を把握する為のものだったんですか。

 ではいきなり来たのは……アレが魔力?」


 「ええ、そうです。アレは私の魔力ですね。

 それがアッシュの中に入ろうとしたので、驚いて飛び退いたのですよ。

 まあ、その判断自体は間違ってないですし正しいです。

 他人の魔力が入ってくるとは、攻撃でもありますので」


 そんな攻撃があるのかと思うも、ただ武器で戦うだけが戦いじゃないとも思い出す。

 魔法だって立派な戦いの道具だし、それを使われると私は不利だ。

 魔法が使えない者にとっては、魔法は敵に回すと厄介でしかない。


 それでもレッドオーガになれば対抗できるのは、それが魔力由来だからだろう。

 そういう意味でも魔力を認識して使えるようにならないと。


 歩きながら自分の魔力の把握に努めるものの、まるで分からないのは何故だ?

 今までにもあったのだから、分からないとおかしいと思うのだが……


 「僅かにでも認識出来れば、後はそれを拡大していけば済むのですがね。

 最初が一番厄介なのです。

 この最初の認識だけは、繰り返し魔力というものをぶつけられて把握するしかありません。

 なので手を出しなさい」


 そう言われて手を出すと、やはり手を取って魔力を流された。

 相変わらずピリっとくるので手を離し、そして先程感じたものを自分の体の中から探す。


 とはいえ簡単に見つかったら誰も苦労はしない。

 それに、そろそろ森に近づく。

 ここからは練習をしている場合じゃない。


 「それでは森なので、そろそろ練習は止めて戦いに集中しましょう。

 それは繰り返しやって覚えるしかありません。

 では、行きますよ?」


 そう言って支部長は森に入って行くが、木に目印などは付けずに真っ直ぐに進んで行く。

 おそらくは【風魔法】でどうにでもなるのだろうが、最悪は私が臭いを嗅げば出られるだろう。


 森の中へと入って行き、臭いを嗅いでいるとドーヴァルを発見。

 支部長に知らせようかと思ったが、既に分かっているのか一直線にドーヴァルの下へ。

 そして風をぶつけて転倒させると、あっさりと剣で喉を貫いた。

 支部長が持っているのは刺突剣と呼ばれるタイプの物になる。


 「刺突剣は便利なのですよ、特に私のような魔法を主体とする者にはね。

 何と言っても切るという動作でなく使えるので、その分だけ魔法に意識を割けるのです。

 魔法も集中しなければ上手く扱えませんから」


 「それはそうだろうと思います。

 そもそも戦闘だって集中しなければいけない訳ですし、おざなりで勝てるほど甘くはありません。

 魔法とて戦闘中に使うものなんですから、そこは変わらないでしょう」


 「ええ、その通りです。それよりも睾丸を切っていきましょうか」


 支部長は淡々とドーヴァルの睾丸を切り取り、袋に詰めたら移動する。

 今までに何度もやってきたような、流れるような動きだったな。

 おそらくは出来るだけ素早くやる事で、臭いにおいから逃げる為だろう。


 ああいうのは私も参考になるから、どんどんと覚えて行こう。


 …

 ……

 ………


 私もそうだが、支部長もドーヴァルを5体ほど殺したので、私が見つけたドーヴァルの巣へと案内する事にした。

 支部長も一度は自分の目で見ておいた方がいいだろうしな。


 そしてドーヴァルの巣に来たのだが、その数に支部長の顔も険しくなる。


 「実際に見てみると、予想以上に多い事が分かりますね。

 やはり外に出ている者の数を減らす事が何よりでしょう。

 それに……」


 「それに、なんですか?」


 「昨日貴方が放ったというドーヴァルと山狼の死体がありませんでした。

 おそらくは悪食のドーヴァルが食べたのでしょうが、となると山狼も食べたはずですし、それで認識したはずです。

 問題は山狼の所為だと思ってくれたかですが……とりあえず離脱しましょう」


 「分かりました」


 私は支部長と共にドーヴァルの巣から離れる。

 統率者は相変わらず巣の真ん中に座っていたので、おそらくはほとんど動いていないのだろう。

 ヤツが動かないとなれば、やりようは幾らでもある


 「統率者は基本的に動きません。

 その群れの頂点ですから軽々に動いたりしないのか、それとも動かずとも下っ端が食べる物を持ってくるから動かないのか。

 その辺りは分かりませんが、巣ごと攻めて来るのでもなければ簡単には動きません。

 ですから動いた時が厄介なのです」


 「動いたら……」


 「ええ、統率者はその名の通りに群れを統率する者です。ですので下の者は従うのですよ。

 そして統率者はそれなりに頭が良い。

 だからこそ、こちらの弱点を見つけたら的確に攻めてきます」


 「それはまた……」


 面倒極まりないな。そういう意味での統率者なのか。

 通りで統率者だと聞いた皆が困り果てるわけだ。

 唯でさえ群れは厄介なのに、更にそこに統率者まで居るんじゃ危険度が跳ね上がる。

 これは余計にドーヴァルと山狼を潰し合わせないと駄目だ。


 どちらにしても、統率者込みのモンスターが攻めて来るのは相当にマズい。

 山狼も同じだけど、出来るだけ数を減らさないとやられるだけになる。

 それに山狼の方へ行く時には、ドーヴァルの睾丸を持って行かなきゃいけない。

 誤認させないと本当にマズい事になる。


 「ええ。山狼は鼻が非常に良いので、この臭い睾丸で誤魔化してしまわねばなりません。

 最悪はこれをぶつければいいので、ドーヴァルよりは、幾分か楽でしょう。

 それでは山狼の方へ行きましょうか」


 支部長の言葉に私は頷き、そして左の山の方へと向かっていく。

 まさか最初の巡回先で、こんな事になるとは思ってもいなかったな。

 普通はベテランが対処するべきだと思うような事を、ハンターになったばかりの私がする事になるとは……


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