02-11-0029
Side:アッシュ
様々に話し合いを行ったものの、結局はドーヴァルを少しずつ減らすという結論になった。
とにかく静かに数多くのドーヴァルを狩る。
年に複数回出産するとはいえ、そう簡単に増えるという訳ではない。
それに300という数なら、増えたり減ったりを繰り返している段階だとのこと。
それならこちらが数を減らしてやれば、ドーヴァルの数は減少に転じる可能性が高い。
それにドーヴァルといえど魔力だけで生きていける訳もなく、食料はどうしたって必要になってくる。
そうなると狩りに出ざるを得ない。
そして狩りに出ざるを得ないとなれば、当然そこを我々が狙って殺してしまえばいいとなる。
あの大きなドーヴァル、統率者だけはマズい。
あれが出て来たら逃げるしかないが、果たして逃げられるのやら? と言ったところだ。
「それこそ逃げる際にはドーヴァルの睾丸を投げつけてやればいいわ。
奴らの睾丸って、そもそも奴らにとっても臭い物なのよ。
特に切り取った中身は猛烈な悪臭なのよね。
だから生きているより、殺して切り取った睾丸の方が臭いわけ」
そういえば確かにそうだ。
生きている時のドーヴァルも臭いが、切り取った後の睾丸は本当に臭かった。
あれは切り取った中身が臭かったからか。
もしかしてボス狼もそれで負けた?
鼻がバカになっていたら、あの大きなドーヴァルに勝てなかったのも分かる。
「とりあえずは数を減らしに出るぞ。
慎重にせねばならんが、騎士団に応援を要請しても来るまでには時間が掛かる」
「要請に対して派遣する軍の規模を決めて、実際に派遣する者達に通達。
そして食料や武具などの準備を整えてから出発。
最短でも5日ぐらいは掛かるわね。
ここからウェドン町まで徒歩で3日ほど掛かる事を考えたら、早くても10日以上は掛かるでしょ」
「つまりオレ達は10日以上に渡って耐えなきゃいけないわけですね。
……10日かぁ、出来そうな出来なさそうな日数だ。
果たして大丈夫なんだろうか?」
「さあな。ただし全力でやるしかないだろう、じゃなきゃ村が壊滅しちまう。
それに、ここは国境の村だから必ず助けが来る。
言葉は悪いが、国境近くに村は絶対に必要だからな。
見捨てられたりはしない」
「隣国が攻めて来た時は国境の砦で防がなくちゃいけないし、その砦への補給を考えたらヴェルイーは絶対に死守しなきゃいけない。
そういう理由から見捨てられる事は無いだろうね。
だからこそ近隣に比べて規模が大きいんだし」
なるほど。私は詳しくないが、そういう理由があって村が大きいのか。
確かに畑も大きいからな、あそこで作った物が国境の砦の兵士の食事になっていると。
そう考えると確かにヴェルイーが無くなると困るのだな。
それに食料が必要なのは兵士だけじゃない。
ここを通る商人にも必要だし、そうなってくると村の規模も当然に思えて来る。
ここまでの規模の村がないと、商人の商売も国境の砦も維持できないのだろう。
塩が主だと聞いたが、それでも塩だけじゃないだろうし、そういう収入だって貴族の大事な収入だ。
それに騎士団を維持するにも相当掛かっているはずなので、そういう意味でも騎士団を派遣はしてくれるだろう。
ただし最短で10日後。そこまでは我々で頑張らないとな。
気合を入れてドーヴァルの駆除を行おう。
…
……
………
村で早い昼食を食べた後、私は荷車を牽かずに歩いて右の山へ。
再び森の中へと入り、そのまま鼻を頼りにドーヴァルを探す。
臭いので分かりやすいはずだが、やはり入ってすぐの場所では臭いにおいを感じない。
なのでゆっくりとだが奥へと進む。
周りの気配を探りながらも慎重に進んで行き、臭いにおいを嗅いだらそちらへ。
ちょうど1匹で何かをしているドーヴァルを発見した。
なにやら下を向いて膝をついた状態で何かをしているらしい。
私は呼吸から力を取り込みレッドオーガとなると、一気に接近して左手で首を鷲掴み。
そして、そのまま握り潰して始末。
ドーヴァルを仰向けになるように地面に静かに下ろす。
これで出来るだけ音を出さずに殺害できたと思う。
ナイフを使うと汚れるし、返り血を浴びないようにするにはコレが一番だ。
どうせ切り取る際に汚れるが、それでもなるべくなら汚れたくはない。
それよりもドーヴァルはしゃがんで何をしていたんだ?
そう思ってしゃがんでいた所を見ると、ジャルタという芋虫がいた。
こいつは口の部分を開いて呑み込むのだが、歯などが無いモンスターであり丸呑みにしたものを選別する機能を持っている。
ようするに食べられない物は排除するのだが……
「何となくで察するに、性欲の旺盛なドーヴァルだからな。
おそらくは………」
私がドーヴァルの股間を見てみると、何かの体液らしきものがベッタリと付いていながら屹立していた。
その時点で何をしていたか分かるが、何をやっているのだか………
その性欲旺盛さに呆れて来るが、殺すのには都合が良かったので助かる。
そう思いつつ睾丸を切り落として布袋に入れると、私は立ちあがって再び移動していく。
まだ1体のドーヴァルを殺しただけだ。
300以上のドーヴァルがいるのだから、1体程度で満足している場合じゃない。
もっと多くのドーヴァルを倒さないと……
私は再び臭いにおいを頼りに探していき、そして2体のドーヴァルを発見した。
1体を殺している間に騒がれると面倒だな。
そう思った私は、金棒と袋を地面に置いて後ろから接近。
再びレッドオーガとなり、両手で一体ずつの首を握り潰してやった。
「………ふぅ。そこまで首が太い訳でもないから助かる。
ドーヴァルはそこまで強いモンスターじゃない。体もそこまで大きい訳じゃないからな。
何故か股間だけ妙に大きいが……」
それもまた彼らの性欲旺盛さを示している感じがするが、とりあえず切り取って進もう。
今日一日でどれだけ殺せるか分からないが、それでも巣の外に出ている連中はなるべく殲滅しておきたい。
…
……
………
夕方までに14体のドーヴァルを殺した私は、臭いにおいに塗れながらもヴェルイーまで戻った。
臭いにおいを持って帰ってきているので、すぐに錬金術師の所へと行く。
場所自体は既に聞いているので問題なく着き、そして右手でノックをする。
ドンドンドン
「申し訳ない。こんな時間だが買い取ってほしくて来た。
店主殿はいらっしゃるだろうか?」
…………返事が無いのでもう一度ノックしようかと思った矢先にドアが開いた。
「そろそろ店じま、くっさ!!!
……これドーヴァルか? クソっ! もう持って来たのかよ」
「あー……申し訳ない。
しかしドーヴァルの巣が見つかった以上は切り取って「知ってる」こないと……」
「そもそもこの村でシェリアさんに逆らえるヤツなんていねえよ。
あの方こそが本当の村長っていう声もあるくらいだ。
オレだって敵に回したりしねえっての。
とりあえずドアから離れろ」
そう言われたので、私は4歩ほど後ろへと下がる。
すると、錬金術師の店主は外に出て来て、店の横へと回った。
「おい、何してる。こっちへ来い」
そう言われたので行くと、店の横の少し離れた所に瓶があった。
それなりに大きいが、どうやらそこにドーヴァルの睾丸を入れているらしい。
「ドーヴァルの睾丸なんてクセーもん、店の中に入れたかないからな。
ここで受け取ってるんだよ」
「そうなんですか。
王都の錬金術師の店では普通に店の中で渡しましたけど……」
「そりゃ建物が密集している王都じゃ、外に置いておけないだろ。
近所から凄い苦情が来るだろうからな。
しかしここは田舎だ。周りっつっても離れてるからな、問題はねえよ」
「ああ、それで店の中で受け取ってたのか」
隣近所に怒られるんじゃ仕方ないだろうな。
あの店主、キーシュカ殿も大変だ。
とはいえ精力剤は良い値段で売れるらしいが……




