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02-10-0028




 Side:アッシュ



 荷車を牽いて急いで戻るも、私以外のハンターには会わなかった。

 もしかしたら左の山の方に行っているのだろうか?


 そう思いつつ戻っていると、ちょうど昨日の女性達と女性陣が狩りに出かけるところだった。

 ついでに鉄級の面々も居る。

 あの女性達4人が厄介だがどうするか……


 「アッシュ! 随分と急いで戻って来たようじゃが、何かあったか?」


 「確かに随分と急いでるねえ。

 何かあったっていうか、何も無いとそんなに急いだりはしないだろうさ。

 重要な事なら話しな」


 私は立ち止まったものの、どうするか迷ってしまう。

 迂闊(うかつ)に情報を広める訳にもいかないし、何より女性達4人はヴェルイーの村出身じゃない。

 最悪は逃げて、その先で妙な噂を撒き散らされる可能性がある。


 「この子達なら大丈夫ですよ。

 逃げる場所が無いというか、村には戻れませんし、町まで行くお金もありませんからね」


 「そうだな。さっさと話してしまった方がいい」


 流石にそこまで言われては仕方ない。

 私は一度大きな息を吐くと、話を始めた。


 「昨日、鉄級の4人が荷車を置いていた所から森に入って行った。

 そしてモンスターの臭いを嗅ぎつつ調べていくと、山の中に谷になっている場所を発見。

 そこはドーヴァルの巣になっていた」


 「ドーヴァルの巣ですって!? ……厄介な事になったわね。

 あれらが繁殖を始めると、数を頼りに勢力を築かれて膨れ上がってしまうわ。

 巣の数にもよるけど、殲滅できる間に殲滅してしまうべきね」


 「数はどれぐらいだったんだ? オレ達でなんとか出来そうな数か?」


 リザードマンのウィスが聞いてきたので、一応皆の顔を見回してから答える。

 私の知識ではおそらく多いと言われる数の筈だ。


 「私の目算では200は居たと思う」


 私がそう言った途端、女性陣のリーダーであるシェリアが天を仰いだ。

 やはり多かったらしい。


 「最悪。まさか200以上も居るなんて、完全に巣じゃないの。

 それにそこまで大きいなら統率者が生まれているはずよ。

 ドーヴァルに一際大きいのが居なかったかしら?

 それこそアッシュぐらい大きなドーヴァル」


 「私以上の大きさの者が巣の中心に座っていました。

 更には昨日のボス狼を殺して喰らっていましたね」


 「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」


 流石に鉄級の5人も女性陣4人も絶句している。

 それはそうだろう、昨日のあのボス狼もシャレにならない風格を纏っていたというのにだ。

 そのボス狼が今日は食われているというのだから、シャレにもなっていない。


 「それは駄目ね、騎士団を呼んでもらわなきゃいけないレベルよ。

 それに私達でなるべく数を減らさなきゃいけないわ。

 でないと騎士団が来るまでに村が襲われるかもしれない」


 「巣に居るのが200なら、仮に出かけているのも100ぐらいは居るだろうね。

 合わせれば300を超えてる。とてもじゃないけどハンターだけで対処できる数を超えてるよ。

 王都とかハンターが多い所なら大丈夫なんだろうけど、国境の村じゃねえ……」


 「村が襲われたとして、村の周りにある堀でどこまで防げるか……」


 「木の柵もあった方が良いんでしょうけど、贅沢は言ってられないわ。

 可能な限りの準備もしなければいけないわね。

 村が大きいから柵を張り巡らせるのは無理だし、どうしようかしら?」


 「石かレンガなら木ほど補修を考えなくていいから大丈夫だけど、レンガを焼くのに木が要るし……堂々巡りなのよねー、いつも」


 「そんな事は言ってられないけどね。とりあえずは、あたし達も戻るよ。

 支部長と相談しないといけないし、他のハンターの手も借りてドーヴァルの数を減らすしかない」


 皆が急いで戻り始めたので私も一番後ろについて戻る。

 村まで戻ったら荷車屋に荷車を返し、その後に早足でハンター協会へ。


 すると昨日の男3人が協会の掃除をさせられていた。

 どうやら違反金の返済は奉仕活動となったようだ。


 「皆が揃ってどうかしましたか? 随分と慌てているようですが……」


 「支部長、最悪だ。

 アッシュが森の中でドーヴァルの巣を見つけたって事で戻って来た」


 「何ですって!? ドーヴァルの巣!?

 それはいったいどこです?」


 「村を北から出て右の山です。

 山の森になっている所へと踏み込んだんですが、谷みたいになっている場所にドーヴァルが巣を作っていました」


 「あそこですか………

 私も資料にあったので一度見に行った事がありますが、その時にはモンスターが居るなんて事はありませんでした。

 しかしドーヴァルが巣を作れる広さはあったと記憶にありますね。

 丁度木々が邪魔で遠くからは見えない場所なんです。それで利用されたのでしょう」


 「それだけじゃないわ、アッシュの話だと統率者が生まれてる。

 だから最悪だと言ってるの」


 「と、統率者まで、ですか……」


 「あたし達がモンスターが多いなと思うだけで見過ごしてきたからだろうね。

 しっかりと調べていりゃ、もっと早くに発見できたはずなんだけど……」


 「それは言っても始まりません。

 それを言われると、自分達は何をしていたんだという話にしかなりませんし」


 「そうじゃの、鉄級のワシらが情けないという話にしかならん。

 とりあえずアッシュが見つけてくれた巣、そこから出ている奴らの間引きをするしかあるまい。

 300ともなれば騎士団が出なければいかん数だが、何もせん訳にはいかん」


 「そうね。

 幸い森の中だから誘(おび)き出して殺すか、それとも出来るだけ音を出さずに始末する方向でいきましょう。

 少しでも数を減らして、こちらに来るヤツを阻止しないと。

 それと、錬金術師が居るから睾丸は買い取ってもらえるわよ」


 「あの男も可哀想だけど、これも精力剤の為だから諦めてもらおうかい」


 「なぁに、村の女連中で睨めば文句も言わずに量産してくれるよ」


 「それぐらいの楽しみがないと、やってられないものねえ。

 ドーヴァルの駆除なんて」


 「そうね。玉を切り落として奪ってやらないと」


 随分と乗り気になっているなと思っていたら、そこに水を差す者達が現れた。


 「あの、オレ達も行きます! 役に立てますから!!」


 「無理に決まっておろうが。

 お前達は木の4級でしかないから知らんのだろうが、森はそれだけで危険な場所だ。

 迷ったら最後、出て来れなくて遭難するだけじゃぞ。

 お前達は森をきちんと歩けるとでもいうのか?」


 「「「………」」」


 「森の歩き方も知らない足手まといを連れて行くわけが無いだろう。

 そんな事をしていたら自分が死んじまうよ。

 勝手に死ぬなら好きにすりゃいいけど、周りに迷惑をかけるんじゃない」


 「そもそもだけど、この子達はドーヴァルに勝てるのかい?

 普通に殺される程度でしかないと思うんだけどね」


 「無理でしょ。

 そもそもドーヴァルに勝てるなら、木級で燻(くすぶ)ってるわけが無い。

 銅級にあっさりと上がってるよ、アッシュみたいに」


 「そういえばアッシュも新人だけど、どのくらいハンターをやってるんだい?」


 「私は一ヶ月も経っていません。

 王都の近くの森で、体高150くらいのファングボーアをほぼ一人で狩ったんです。

 それで銅級まで一気に上がりました。

 森のヌシとか言われていたヤツです」


 「流石はアッシュとしか思えんな。

 新人なのに木級をほぼスキップする形で超えおったとは……」


 「君達は勘違いしないようにね。

 アッシュほどの強さが無ければ死ぬだけだから」


 「「「………」」」


 奉仕活動をさせられていた3人から、あからさまに敵意の篭もった視線が浴びせられる。

 とはいえ弱い者に幾ら睨まれても、私には残念ながら効果は一切ない。


 むしろ効果が全く無いと分かったからか、更に強い敵意を向けて来た。

 それでも大した事がないのだから、彼らはその程度なんだろう。


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