05-23-0209
Side:アッシュ
皆は森の中へと退いていった。
言葉は悪いが、皆ではブレスが直撃したら死んでしまう。
なので居ない方が戦いやすい。
あまり数が多いとこちらへの誘導も出来ないしな。
私なら耐えられるが、皆を死なせるわけにもいかない。
私は素早く腰の異空鞄にウォーターリザードを仕舞おうと試す。
すると、あっさりと入ったので、慌てて斧を再び取り出した。
「ギュイイ! ガッ!! ギョギュゥゥゥゥゥ!!!!」
「何が言いたいのかはサッパリだが、怒っているというのだけは分かるな」
「そうね。完全に怒り狂ってるって感じかしら。
……で、どうするの?」
マーヤは<混沌の種>の邪気まで吸ってしまったのか、気分が悪そうにしていた。
だが、私の右肩に乗ってから回復したのか、今は問題なく話も出来るまでになったようだ。
気分が悪い時には話もし辛いが、今はそうでも無いのが分かる。
「ゆっくりと皆が居ない方向へと下がろう。
あいつを池の外に出さねばならんし、アレを見逃すという事もしない。
池に何もしなければ手を出して来ないかもしれないが、邪神の欠片は返してもらわないとな」
「そうね。
砕かれた邪神の欠片である以上、モンスターに奪われたままはマズいわ。
それこそ<狂愛の女神>に何をされるか分かったもんじゃないし」
「それでは少しずつ下がるぞ。
既に池に頭を突っ込んでいるが、どのみちブレスを喰らえば大幅に下がらざるをえんのだ」
「確かにそうだけど、わたしは受けたくないから隠れさせてもらうわね」
マーヤはそう言って私の背中へと回った。
肩の上に居たらウォーターリザードのブレスを受ける恐れがあるからな。
私の背中側に回れば安全だろう。
感触だけで考えると、背中に引っ付いているというか張り付いているようだ。
そんな事を考えていると、池の中のウォーターリザードが顔を出し、そしてブレスを一気に噴射してきた。
ズドドドドドドドドド!!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
ズザザザザザザザザザザザザ………!!!
足で踏ん張っているのだが、土と草の上を滑らされてしまった。
やはりアレほどの力では踏ん張って耐えるのは無理か。
しかし上手く離れられたので、おそらくコレで上がって来る筈だ。
ついでだから離れたこの場所にオスのウォーターリザードを置いてやろう。
流石に池の中に潜られては困るので、挑発としてオスのウォーターリザードの死体を出して置いたのだが、効果は覿面だった。
「ギュォォォ!! ゲシュ! ギィィィィィィッ!!!!」
ザバァァァァ!! ドスドスドスドスドスドス………!!
池から上がって来たメスのウォーターリザードは、私になど目もくれずオスのウォーターリザードに駆け寄る。
が、私は再びオスのウォーターリザードを異空鞄に収納した。
完全な死体だとバレると池に戻ってしまうかもしれないので、嫌がらせで怒らせようという事だ。
「ガッ!! グェア! ゲェェェェッ!!!」
「さっきまでよりも水分と醜い鳴き声に変わったな? それがお前の素か?」
「やーねー、死体に対して可愛いフリでもしてたの?
オスに対してやる事はウォーターリザードのメスでも変わらないのかしらぁ?」
「ギュアッ!!! ガアゥ!! グゥオアアア!!」
ドスン! ドスン! ドスン! ドスン!
バカにされているというのは分かるのか、大きな足踏みをしてイラ立っている姿を見せている。
余程に腹立たしいのか私に向かって噛みつきに来たが、私はそれを盾を使って防ぐ。
その後に反撃として顎を斧で攻撃。
突き刺さったものの大きなダメージにはならなかったようだ。
それでも【身体強化】で傷つけられるのは分かった。
ならば後はオスと同じ方法で傷つけて倒してしまえばいい。
私は斧を構えて敵の出方を探る。
すると池に戻ろうと振り向こうとした為、私はブルーオーガになって足をぶった切る。
ズドォン!!
「ギィィィィィィィィィィィ!!?!?」
足の付け根に思いっきり叩きつけたからか、抜くと勢いよく血が噴出。
慌てて後ろへと跳んで下がる。
そして上空へと飛び上がったマーヤが追撃をする。
痛がっているメスのウォーターリザードに対し、その傷に【魔通矢】を叩き込む。
「ギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!?!!」
傷口が広がったからか、更に鳴き声を上げるメスのウォーターリザード。
そしてブルーオーガまで【身体強化】をしつつ、私は同じ側の後ろ足の付け根にも一撃を加える。
ズドォン!!
「ギャァァァァァァァァァッ!?!?!」
そこまで攻撃した段階で、森から皆が走ってきた。
おそらくここが最後のタイミングだと思ったんだろう。
このままだと出血で死ぬかもしれないからな。
流石に出番無しは辛いというか、何もしなかったという負い目もあるのかもしれない。
ズドン! バシィン!! ドスッ! ザシュッ! ドス、ガン、ザクッ、ガン、ドン!
一斉に攻撃している皆を横目に、私は反対側へと回って足の付け根に攻撃する。
これは付け根部分が駄目になると身動きがとれなくなるからであり、足先だと我慢すれば動けてしまうからでもある。
私は前足の付け根に攻撃し、十分な傷を与えたら後ろ足に回る。
そして後ろ足の付け根にもブルーオーガの【身体強化】で攻撃。
そこにも大きな傷を作ってやった。
後は皆と同じように傷口を広げていると、オスと同じく「ドスン」と首を地面に下ろしたので、頭近くの首に斧を振り下ろす。
切り裂いた範囲は十分だったのだろう、ここからも一気に血が噴出したので退く。
流石にここまでやれば後は死ぬしかあるまい。
そう思って待っていると、どうやら完全に息の根が止まったようだ。
ピクリともしなくなったので間違いない。
「やったーーー!! 勝ったぁぁぁ!!!」
「やりましたね。こんなのを倒せるなんて思いませんでした!!」
「うぉぉぉぉ、凄いじゃないか!!」
「まさかステージ3の統率者が倒せるなんて思わなかったよ!
見た時には終わりかと思ったけどね!!」
「これがとんでもない強さの統率者なんですね。
まさか出会うなんて思いませんでしたけど」
「まさかステージ3の統率者を、こんな少人数で倒せるなんて……」
いや、相当に人数は多いと思うがな?
敵の種類が種類なので手こずったが、これがもっと簡単に倒せる種類なら、そこまでではなかったと思う。
それでも侮らないという意味では間違っていないので、そこは良かった。
「ステージ3か。
そこまでの強さではないはずだけど、ウォーターリザードだった所為で思ってるよりも強かったね。
ここまで手こずるとは思わなかったけど、やはり予想した通りに鱗が硬かったよ」
「北の辺境伯領で戦ったファイアリザードもそうでしたけど、属性系のリザードは鱗が硬いですね。
ウォーターリザードってそもそも湿地帯に住んでいるはずですから、こんな所には居ないはず」
「あくまでも可能性であって、この辺りに住んでないのが確実ってわけじゃないけどね。
それでも統率者の番だけっていうのは、ちょっとねえ………」
「流石に怪し過ぎますね。
幾らなんでも群れも無く番だけで居るのは不自然です。
これが自然なら、あの色になる前に子供を多く生んでいないとおかしいですし、そう考えると辻褄が合いません」
「誰かがウォーターリザードの番をここに運んできてから<混沌の種>を与えたんだろう。
そして放置した、と」
「ところが誰かを襲う事もなく、ここでのんびりしてたんでしょうね。
それでも邪神の欠片は解放しなければいけません。
モンスターに奪われたままには出来ない以上、ここの番は倒すべき敵です」
「ま、それ以前に統率者だから、町を守る為にも狩るしかないんだ。
こいつらが迷惑を掛けてるとかは関係ない」
だな。私達はこいつらを狩らなきゃいけない立場だ。
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