05-22-0208
Side:ラブ
ぼく達はウォーターリザードの斜め後ろから攻撃を開始します。
正面はアッシュさんと飛べるマーヤさんで受け持ってくれているので、比較的楽に近づく事が可能です。
あのアッシュさんが受けたブレスを考えると、やはり簡単なモンスターではありません。
それに大きさがそこまでではないという事は、このウォーターリザードはステージ2の限界まで<混沌の種>を食べているはず。
というより、だからこそアッシュさんも武器を変えたのでしょう。
大した相手でもないのであれば、わざわざ武器を変えたりしません。
ドン!!
ジャネスさんが先制して槍で突きましたが、相手の鱗で止まってしまっています。
やはり総鋼鉄製でも限度があるのでしょう。
ステージ2限界である属性系リザードには効かないようです。
普通のリザード系なら効くのかもしれませんが、相手はウォーターリザードですからね。
仕方ありません。
バシィン!!
そこにラフィルさんの鞭も炸裂しますが、やはり表面を攻撃しただけに止まっているみたいです。
予想以上に鱗が硬く、簡単には突破出来そうにありませんね。
ぼくは先端を尖らせた杭を血で作り、それでウォーターリザードを攻撃します。
キィン!!
が、表面で滑って突き刺す事は叶いませんでした。
本当にこいつに攻撃が通るのか疑問に思えてきましたね?
アッシュさんなら届くでしょうが、後は………
キン! キキン! ゴッ、ギィン! ゴン
駄目ですね。
シャムナさんも<烈華>の攻撃も効いてません。
しかしその攻撃の手数に、ウォーターリザードはイラ立ったのかこちらを向きます。
おそらくブレスは吐いてこないと思いますが、それでも噛み付かれる危険があるのでサイドへ。
ズドォン!!
「ゲピィッ!?」
こちらに向かって口を開いたウォーターリザード。
しかしその瞬間アッシュさんが攻撃した一撃は、どうやら深々とウォーターリザードの首に突き刺さったようです。
アッシュさんが斧を抜きましたが、ウォーターリザードの首からは血がダラダラと流れ出ています。
「キュァァァァァァ!! ギィッ!?」
いきなり鳴き声が変わったので何かと思ったら、マーヤさんがウォーターリザードにくっついています。
おそらく魔力を奪っているのでしょう。
「うぐぅえ?! 気持ちわる!!
こいつの魔力、邪気で汚染されてるじゃないの! もう!!」
そう言って離れましたが、よく考えれば前にも<混沌の種>から吸収したんですし、その時にも同じ事になったのでは?
なんか同じ失敗をしたような気がします。
自分じゃないので、構わないと言えば構わないのですけどね。
それはともかく、ぼくはアッシュさんが切り裂いた斧の傷に向かって血の杭を突き刺します。
ズドッ!
「ギュピッ!?」
「おお、効いてるねえ! 流石に傷つけられたところからは肉に到達するかい。なら!」
ジャネスさんはかなりの魔力を込めるようです。
強い【身体強化】で無理矢理に突破しようって事でしょうけど、その武器で果たして大丈夫ですか?
「でやぁぁぁぁぁ!!!」
ズドォン!
アッシュさんの一撃と比べれば軽い感じですが、それでも大きな音が鳴り、そこには深々とウォーターリザードの腹に突き刺さった槍が見えます。
どうやら成功したようですね。
「ギィィィァァァァァァァ!?!!?」
「おお、流石はジャネスだな。
私も負けられん!」
そう言ったアッシュさんは、自らの体を青くしてから攻撃
ズドォォォン!!!
だからそれはやり過ぎでしょう、というぐらいの一撃を見舞いましたね。
左の前足の付け根に深々と斧の刃が突き刺さっています。
それを力で引っこ抜きましたが、結構な血が出てきたので慌ててアッシュさんは退避。
離れました。
「ギュギ! ギヒィ!! ギュァァァァァァァァ!!!」
何か分からないものの、何かを喋っている感じがしたので周囲を警戒。
その間にもジャネスさんが腹の傷を広げようとしており、シャムナさんも剣を突き刺して手伝っています。
エグい攻撃に見えますが、傷口を広げて出血を促さないと殺せません。
このままでは硬い鱗が突破できないので仕方ないのですが、そもそもそれなりに体は大きいのですよ元々から。
なので出血死を狙わないと、簡単には終わってくれないわけです。
しかしここで予期せぬ事態が起こります。
それは大きな池の中から、気持ちの悪い色をしたウォーターリザードが出てきたからです。
つまり、このウォーターリザードは番だったということ。
体の特徴からおそらくオスだと思っていたのですが、池の中から出て来た大きい個体は、丸みを帯びているのでメスだと思われます。
流石にマズいと思ったのか、アッシュさんがすぐに新しいウォーターリザードの前に出ました。
が、ウォーターリザードは即座に水のブレスを吐いてきます。
ズドォォォォォォォォォォォ!!!
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………!!」
凄い勢いで噴射されたブレスは、アッシュさんを後方に押しやってしまいました。
しかしそれでも壊れていないのですから、邪獄樹の盾とはとんでもない強度をしています。
おそらく総鋼鉄製の盾でも潰れているでしょう、それぐらいの音でした。
アッシュさんが無事なのを見たからか、マーヤさんが素早く上空から池のウォーターリザードを【魔術】で攻撃。
気を引きます。
「ボサっとすんじゃないよ! 今の内にコイツを倒すんだ!!」
そうです。こっちのウォーターリザードを倒さないと苦しいままでしかありません。
ぼくは首筋の傷跡を広げるように血の短剣を突き刺して切り裂きます。
首の傷にいつでも攻撃できるのは、ぼくしか居ません。
ならあそこの傷口を広げるのは、ぼくの役目でしょう。
皆で必死になって攻撃し、ジャネスさんも強めの【身体強化】で攻撃していると、ウォーターリザードがこちらに向かってブレスを吐こうと水を飲み始めました。
「マズい、こっちにブレスを吐いてくる。
こっちのウォーターリザードを盾にするんだ!!」
ぼく達はそのジャネスさんの言葉に集まり、すぐに池のウォーターリザードから隠れるように動きます。
池からはオスのウォーターリザードが邪魔でブレスは放てないはず。
そう思っていたのですが、甘かったようです。
ズドォォォォォォォォォォォォォ!!!
「ギェピーーーーーーー!!?!?!!」
まさかオスが居てもお構いなしに放ってくるとは……。
流石に計算外と言いますか、番じゃなかったのかと言いたくなりますね。
ドスン!
「ピギュ………」
オスのウォーターリザードは頭を地面に落とすと、弱々しく鳴きました。
コレ、おそらく死にかけてますね?
「ギュォォォォォォォォ!!!!」
池のウォーターリザードが怒ったような鳴き声を上げますが、仮に死んだのであれば殺したのはお前でしょう。
それで怒るのは理屈が通りません。
モンスターに言っても仕方ないのかもしれませんが、しかしこっちに怒るのは間違えているでしょう。
少なくとも殺したのはぼく達じゃないんですし、勝手にこっちの所為にされても困るといったところです。
「しかし困ったな? 池にずっと居られてはこちらから手を出せん。
ウォーターリザードの死体を別の場所に移動させたら出て来るか?」
アッシュさんが戻ってきましたが、確かに池から出て来ないとなれば、こちらから攻撃する方法がありませんね。
ぼく達は顔を見合わせ、一度森の中へと退避するべく走りだします。
そもそもアレのブレスを真正面から耐えられるのはアッシュさんしか居ません。
流石にオスのウォーターリザードという盾が無くなれば、ぼく達に防ぐ術はありませんからね。
出来得る限り早く逃げなければ……




