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05-15-0201




 Side:ラブ



 「予想というよりは、正しく言うと被害を受けていたのさ。

 <烈華>は解散して再結成したけど、こいつらはローデオンに行こうとしていて、リュージャ辺境伯領の西の端で盗賊団に捕まってた。

 で、禁制の薬を使われてたんだよ」


 「それはわたしが治したから、後遺症にも苦しまずに無事よ。

 だから心配はいらないわ」


 「禁制の薬………最近の噂と照らし合わせると、裏の組織が暗躍していそうですね?

 その盗賊団もおそらくは下部組織か何かでしょう」


 「あたし達もそう思ってる。

 その盗賊団の頭は既に西の端の町の兵士に預けたから、今頃は何かが分かってるかもね。

 あたし達は結果を聞かずにこっちに来てるから知らないけど」


 「なぜ聞いてこなかったのですか? そこは大事な所でしょうに」


 「言いたい事は分かるんだけど、兵士に渡したらこっちに情報なんて来ないよ。

 それより前に拷問で聞き出す事はできるけど、それをすると兵士に怪しまれる。

 マーヤが治してくれれば見た目には分からないだろうけど、盗賊の頭がゲロったらあたし達は目を付けられる。

 色々な意味で聞き出す訳にはいかないのさ」


 「なるほど、確かに辺境伯家に目を付けられるとマズいですね。

 何も疚(やま)しい事をしていなくても、連れて行かれて調べを受けますよ。

 怪しいというだけで何をされるか分かりませんからね」


 現場の兵士は平然とそういう事をしてきますからね。

 後で叱責(しっせき)されるんですけど、そんな事は町の者達などに伝わりません。


 結果的にあそこの領主は無理矢理に捕まえるから気を付けろ。

 などという悪評が流れるんですよ。


 実際には現場の兵士が勝手にやった事であり、大体は手柄欲しさにやっただけなんです。

 そういうのはウチの領地でもあった事ですし、ウチでは大々的に発表してから解雇していましたね。

 そうしないと勘違いされたままになりますし。


 父は強制的な連行も拷問も否定していません。

 しかし実行するのは当主である父が命令した場合のみです。

 下っ端が勝手にやっていい事ではありません。


 普段は隊長や兵士長が判断。それが駄目なら騎士団長です。

 現場の兵士が勝手に捕縛してもいいのは犯行を見た時だけ。


 そうしておかないと、手柄欲しさに勝手をする者が後を絶たないからです。

 誰だってお金が欲しいのは当たり前ですし、そうなると有能をアピールしなければいけません。

 が、勝手な事をしている時点で無能なのですよね。


 有能は与えられている権限の中で、しっかりと有能な事をアピールできますから。

 つまり勝手な事をして領主家の名を落としている時点で、その兵士は唯の無能なわけです。


 「上位貴族というのは、そのように考えるのですね。

 怖いと言うか何と言うか……とは思いますが、勝手に名を下げられたら怒るのは当然ですか。

 特に貴族にとって名は重いですし」


 「まあねえ。

 確かに下っ端が勝手な事をして悪く言われたなら、貴族としては兵士の所為であり自分の所為じゃないと言いたいだろうさ。

 気持ちはよく分かるよ」


 「貴族というのも、民が思っているほど勝手はできないんですよ。

 言い方は悪いですけど、そんな事をしていたら他の貴族につけ込まれるだけですから。

 なので隙になるような事は基本的にしません。

 噂が巡るかもしれませんし、他の領主の間者が入って居ますので」


 「他の貴族を引きずり下ろそうっていうのが蠢(うごめ)いてるものねえ。

 それはともかく話を戻すけど、わたし達がやるべき事は統率者の殲滅ね。

 これが一番先」


 「その後は、禁制の薬の出所と裏組織の調査だ。

 ただしこっちは禁制の薬の調査をしていく過程で、おそらく明るみに出て来るだろう。

 私達がするべき事はそれだけだな」


 「後半の2つはあたし達がするけど、統率者の殲滅に関しては多くの手が必要になる。

 だからこそハンター達の怪我を治したわけだ。もちろんシャムナの怪我もね」


 「そうでしたか。とりあえず私もお手伝いしましょう。

 双剣が一本しかありませんが、何とかなります。

 それこそ棒を買ってきても構いませんしね。主に左は防ぐ事に使いますから」


 「双剣士って言っても、色々な者が居るからねえ。

 左の剣は太めで防御主体っていうのも居れば、両方同じで攻撃特化も居る。

 更には両方が尖ってるだけの刺突剣なヤツも居るしさ。

 本当に様々なヤツがいるのよ、双剣って」


 母はスタンダードなタイプですね。

 両方が同じで攻撃特化、防御は考えておらず回避のみ。


 母自身がそう言っていたので間違いは無いでしょう。

 どちらかと言わずとも、双剣って攻撃速度で押すタイプの武器ですし。




 食事を終えたぼく達は、宿に行って部屋をとります。

 この町に来てすぐにハンター協会に行きましたし、その後は酒場で治療です。

 なので宿で部屋を確保していなかったのですよ。


 宿で部屋をとろうとすると、生憎と雑魚寝部屋しか残っていませんでした。

 これは広い一室に多くの人が寝られる部屋です。


 仕方なくぼく達はそこを借り、皆で泊まる事に。

 何故だかあのシャムナという方も一緒ですが。


 「今までは運ばれた家で厄介になっていたみたいなんですけど、流石にこれ以上の邪魔をするのも問題です。

 それに随分と迷惑を掛けてしまったみたいですし……」


 「まあ、膿と腐った肉とで相当に臭(くさ)かったみたいだよ。

 それでも助けてもらったっていう感謝があったからだろうさ、置いててくれたのは」


 「知りませんでしたが、そんな迷惑を?」


 「それ以前に、身綺麗にしてないから今でも臭(くさ)いわよ?

 怪我は治ってそっちの臭(にお)いは無くなったけど、体を洗ってないんだから臭(くさ)いのは変わらないのよね。

 少なくとも貴女が怪我をしてから3~4日は経ってるから、当然だけど」


 「………」


 無言で自分の臭(にお)いを嗅(か)ぎ始めましたけど、鼻が馬鹿になっているのかよく分からないって感じですね。

 とりあえず体を洗うのが先だと思います。全身の毛もなんだか脂っぽい感じですし。


 「確かにそれはそうですね。

 というか、着ていたままの服の臭(にお)いで分かりました。

 流石にコレは臭(くさ)いというか、何故コレに気づかなかったのか」


 「あんた以外は全員気づいてるけど、自分は案外分からないもんなんだろ。

 もしくは熱を出していた間に鼻がおかしくなってたか。

 あんたは怪我が酷くて熱を出し、うなされてたらしいからさ」


 「とりあえず綺麗にしたいのですが、誰か洗う物を貸してくれませんか?」


 「あんた自分のはどうしたんだい?

 流石に何も持ってないわけがないだろう?」


 「鞄もやられていたらしく、お金の袋は無事だったのですが、それ以外が全く無いのですよ。

 お金は払うのでお願いします」


 と言われても男性の物を貸す訳にはいきませんし、あの臭(くさ)さだと結構汚れそうなので貸したくないのでしょうね。

 誰も貸そうとはしません。


 「ラフィル、指環を貸してやってくれ。それなら汚れは落ちるだろう。

 外でするのもアレだし、この雑魚寝部屋なら誰かに見られる事も無い。

 私がゴミは全て集める。なので部屋の外に出ている間に済ませてくれ」


 「分かりました。それが一番良いでしょうね」


 「とりあえず、私とラブは宿の裏庭に居るから、終わったら呼んでくれ」


 そう言うとアッシュさんが部屋を出るので、ぼくもついて行きます。

 流石に女性が裸になる部屋に居るわけにはいきませんし、臭(くさ)かった部屋から出られたので丁度良かったです。

 ついでですから、体を洗っておこうかな?


 「まだ早いだろう。するなら夕方前だな。

 その後に酒場で夕食を食べればいい」


 「そうですね。サッパリした後で夕食が一番いいですか。

 【集魔法】で水分を集めてもらえば乾くので楽でありがたいです」


 本当に【集魔法】が便利過ぎて羨(うらや)ましいです。

 ぼくも使えるようになりませんかね?


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