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02-02-0020




 Side:アッシュ



 ハンター協会を出た私は、荷車を借りようかどうしようかを悩んで止めた。

 まずは狩場を調べるのが先だし、どんな獲物が獲れるかも分からないのに先走っても仕方ない。

 もし獲物が獲れたら縄で縛って持って帰ってくればいいだろう。


 荷車を借りるにもそれなりの金銭が掛かるからな、無理をする必要は無い。

 お金はあるが、散財していいわけでもないのだ。

 どれだけ獲れるかも分からないのに無駄使いしても仕方ない。

 まずは情報を得るのが先だ。


 私は左右に聳(そび)えている山のうち、まずは右の山に向かって歩く。

 いつも通りに金棒を杖代わりにして歩いているので、そこまで歩くのに苦労をしない。

 やはり杖代わりになる物があれば楽に歩ける。

 それにいざとなったら縄を結んで背負えばいい。


 私は杖として地面を突きつつ歩いていくが、思っているよりも近いのか?

 そこまで遠くないような気もしてきた。


 それは遠くにハンターらしき者達が見えているからだ。

 もしかしたら大分手前で狩りをしているのかもしれないが、そんな所では大した獲物も獲れないだろう。


 そう思いつつも近づいていくと、向こうもこちらに気づいたのか警戒し始めた。

 なので、私はこちらから話しかける。


 「おーい、私もハンターだ。

 そこまで警戒しなくてもいいし、少し話が聞きたい」


 私は努めて明るい感じで喋ったのだが、向こうはまったく警戒を解かない。

 国境のハンターとは騙したり裏切られるのが基本なのか?

 流石にあまりにも警戒し過ぎな気がするがな?


 私はそれなりに近づいたので話を聞こうとしたのだが、それでも警戒を解かないハンター達。

 それどころか余計に警戒度が上がったぞ?

 いったい国境とはどういう所なんだ?

 王都でもこんな事は無かったぞ。


 「すまない。少し話が聞きたいんだが……」


 「話す事なんて何も無い!! とっとと失せろ!!!」


 「いや、話を聞くだけなんだが?」


 「五月蠅い!! さっさと失せろって言ってるだろ!!!」


 「そうだ!! しつこいようなら、殺すぞ!!」


 「分かった、分かった。

 それにしても、国境とはどうなってるんだ?

 ハンター仲間を殺すのが当たり前の場所なのか?

 そうであれば、中央にはそう報告するが……変なところだ」


 私は意図的に分かりやすくそう言ってから離れた。

 これで私が中央から来た事が分かるだろう。

 良い悪いは別にして、私が中央から来た巡回狩人である事は間違いないのだ。

 地域に溶け込むのは必要だが、最初からアレではな。

 どうにもならない。


 狩りをしていたハンターのチームから離れた私は、更に先へと歩いていく。

 先程のチームは男性3の女性4だったが、王都には8名のチームもあったので、多すぎるという事は無い。

 メンバーが増えれば増える程に分配は減るが、それだけ安全性も増す。


 なので安全を優先するチームは大人数になりやすいらしい。

 ハンター協会としては怪我無く長生きしてほしいので、安全志向の者達は歓迎すべきハンターとなる。

 もちろん長生きを求めるのは長い期間、少しでも多くの獲物を狩ってほしいからだ。


 この世のモンスターの多くは繁殖するが、モンスターの大部分は魔力を食べていると言われている。

 もちろん魔力以外を食べなくても良い訳ではないそうだが、魔力だけでもある程度は生きられるらしい。

 それがモンスターが常に大繁殖する理由なんだそうだ。


 ちなみにモンスターと普通の生き物を分けている理由も、魔力だけで一定期間生きられるかどうからしい。

 魔力だけである程度は生きられる者をモンスター、無理な者を生物と分けている。

 なので私達は生物という分類になり、モンスターの括(くく)りには入らない。


 この世の多くの場所にはモンスターが生きており、生物が生きている場所の方が少ないぐらいだと言われている。

 だからこそハンターがモンスターを狩らなければいけない訳だ。

 かつて生物はモンスターと戦い、勝つ事で生存圏を広げて来た。

 しかし、一定以上には広がらないままだとハバン殿に聞いた。


 私が生きているこの国、ガルセンツ王国もまた、国土の半分ぐらいがモンスターの生息域となっている。

 つまり、生物は国土の半分ほどにしか住めていない。

 それぐらいモンスターは繁殖し、生物を容易く殺すぐらいに凶暴だ。

 それを狩る仕事がハンターとなる。


 警戒するのは分かるんだが、警戒するなら普通はモンスターだと思うのだがな?

 なぜああもハンターを警戒するのだろうか。

 その辺りに何かしら巡回狩人が上手くいかない理由があるのかもしれない。


 そう思いつつ移動していくと、今度は4名で組んでいる女性ハンター達を発見した。

 声を掛けるかどうしようか悩むが、妙な警戒をされない為には声を掛けた方がいいか。

 私はいつもの丁寧な声掛けを女性達に行う。


 「すみません。少し話を聞きたいのですが、いいでしょうか?」


 「あん? ……まあ、別に構わないけど下心でもあんのかい?」


 「いえ、そんな事はありませんが……? 何かありましたか?」


 「いや、女だけのチームに声を掛けて来るなんざ、大抵が下心満載だからだよ。

 お前さんは違うようだけどさ。とはいえ見た事が無いねえ」


 「自分は今日ヴェルイーに来た、銅3級のアッシュです。

 王都のマスターから巡回狩人になってヴェルイーに行けと言われまして。で、今日着いたわけです。

 早速山から下りて来るモンスターの調査に来たんですけど、何故か向こうのチームにやたら警戒されて話が聞けませんでした」


 私がそう言うと、他の女性達3人も集まって来て話に加わってきた。

 どうやら今は暇ならしい。

 女性は会話が好きだからな、分かりやすい。


 「向こうねえ………もしかして向こうの連中って男3の女4で組んでなかったかい?」


 「ええ、そうでしたけど……それに何かあるんですか?」


 「ああ、やっぱり。その子達は木の4級の子達だよ。

 まだまだ新人だから警戒し過ぎるほどに警戒してるんだろうさ。

 まだハンターになって一月じゃねえ、誰も彼もを警戒しても不思議じゃないよ。

 他のヤツの獲物を奪おうってのも居ないわけじゃない。

 こんな田舎でもね」


 「そうなんですか。

 王都ではそんな風にあからさまな警戒は受けた事がなかったのでビックリしましたよ。

 もちろん警戒はされますが、それとなく分からないような感じで警戒されますので……」


 「そうなんだね。流石は王都、警戒もスマートにするとは……。

 ここのバカな男どもにも見習ってほしいもんだ。

 田舎には田舎の男しか居なくて嫌になるよ」


 「都会の男が必ず良いって訳でもないけどね。

 あたしも昔王都に居たけど、それはそれで面倒な所さ。

 正直に言って田舎の方が気楽だよ?」


 「それでも行った事の無い者は憧れるものだよ。

 それはともかく聞きたい事ってなんだい?」


 「自分はマスターから巡回した所の問題を可能な限り解決しろという事と、詳細な情報を報告しろと言われていまして。

 その為に情報を聞きたかったんです。

 モンスターがどうかとか、ヴェルイーの状況とか」


 「そんなの支部長が送ってるんじゃないのかい? ……って、そういう事か。

 中央は支部長を信じてないって事ね」


 「いえ、そうではありません。

 ですが、支部長に報告されない事もあるでしょう?

 大した事が無いだろうと見逃されている情報とか。

 そういったものを送れと言われています」


 「………もしかして、中央は北が攻めて来ると考えてる?」


 「そこまでは……。

 ただその可能性も含めて報告しろとは言われていますね」


 危ない、危ない。私は現地の支部長とは別の報告者なんだ。

 支部長が信用できないというより、支部長を信用する為の報告窓口。

 それが巡回狩人でもある。


 表向きはハンターの少ない所へ送る人員だが、実際にはハンター過疎の場所の為の情報収集も兼ねた者だ。


 これに関しては他の巡回狩人もしている。

 実際、表向きにも報告の義務があるのが巡回狩人だ。

 なので報告する事自体はおかしな事じゃない。

 もちろん支部長を含めたハンター協会全体も報告内容の一つになるのだが……


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