↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/186

02-01-0019




 Side:アッシュ



 馬車を乗り継ぎ、国境までは商人の馬車の護衛のついでに乗せてもらう事で辿り着けた。

 最初は銅3級という事で軽く見られていたが、一緒に居た銅9級の人達よりも強かったからか、馬車の中でも微妙に浮いてしまったな。


 普通なら嫌がらせの一つでもされるのだろうが、私が新人で巡回狩人に任命されて移動していると聞くと、途端に同情の色のみになるのが何とも……

 そして商人からはハンターを止めて専属の護衛にならないかと言われてしまう始末。

 まあ、裏切れないので断ったが。


 そんな微妙な空気の馬車旅も終わり、やっと国境の村であるヴェルイーに着いた。

 まずはハンター協会に寄って手紙を預けよう。

 そう思って馬車を出ると、近くに居た子供にハンター協会の場所を聞く。

 外から来た人が珍しいのか、子供達は馬車を見てはしゃいでいた。


 「すまない、ハンター協会の場所がどこか知ってるかい?」


 「あっち!」


 「あっちに行ったらね、けんとたてのかんばんがあるよ!」


 「そうか、ありがとう」


 私はそう言って子供達に小銅貨を渡す。

 ハバン殿が言っていたが、何かを聞いたお礼に小銅貨を渡すのはよくある事らしい。

 何も渡さないとケチだと思われるので、子供相手にも渡しておけと言われている。

 特に子供は家の中で親に話すからだそうだ。


 見知らぬ相手に嫌われている。

 よくよく話を聞いていくと子供が原因だった、というのはよくある事らしい。


 だから子供とはいえ舐めない方が良い。

 そう言われたので私は子供相手でもきちんとしておく。

 嫌われても得など無いからな。


 「「ありがとー」」


 そう言って子供はパルデオムに近づいて行った。

 あれが見たかったらしい。


 私は子供に聞いた方向へと向かい、そして剣と盾の看板を見つけた。

 なかなかに大きい建物だが、どうやら2階が無いらしい。

 支部長の部屋も1階にあるのだろうか?


 ちなみにハンター協会は各国が運営しているが、雛形となった物は狩人ギルドというらしい。

 それが過去にあったのだが、国を跨(また)いだ大規模な組織になり、危険になり過ぎたので解体。

 各国が管理するハンター協会に変わったんだそうだ。


 まあ、ハンターなんて武装集団だ。

 そんな連中が国に忠誠も誓わずにウロウロしてるんじゃ危険視されて当然だろう。

 国が国以上に武力を持ってる連中を認める訳が無い。

 そんな事はあり得ないし、それは私でも分かる事だ。

 だから各国は狩人ギルドを潰した。


 今はハンター協会となったが、元々の狩人ギルドとほぼ変わっていないらしい。

 貢献度での査定も取引も。

 更には儲けが良い所に偏るのも変わっていないんだとハバン殿は言っていた。

 もちろん呆れながらだったが。


 ギィィィィィッ!


 随分と軋(きし)んだ音が出るなと思いつつ、私はハンター協会の中に入る。

 すると、そこには受付嬢が一人だけいた。なので私は丁寧な挨拶をする事に決める。

 マスターやデュジュ殿には嫌がられたが、それ以外の女性には悪く思われていないので、こちらの方が良いのだろう。


 「申し訳ありません。

 自分は銅3級のアッシュと言いますが、ここの支部長殿への面会をお願いします」


 「………銅3級程度が支部長に何の用ですか? 用などないのでは?」


 「自分は王都のハンター協会本部より、マスターからの手紙を預かっています。

 それはこの支部の支部長宛の物。

 当人に渡さなければいけない物ですので、私が御会いしなければいけません」


 「…………分かりました、受け取りましょう」


 「は?」


 「気づいていないようですが、私がここの支部長であるマリナンです。

 これを見れば分かるでしょうが、現役の銀3級でもありますよ」


 「これは失礼しました。

 こちらがマスターからお預かりした手紙です」


 まさか受付嬢のように座っている人物が支部長とは思わなかったな。

 声の感じからだと気分を害した訳ではなさそうなのが救いか……


 「………中央も思い切った事をしますね、まさか新人を巡回狩人にして育成しようなど。

 普通なら役立たずを送ってくるなと叩き返すところですが、立ち居振る舞いを見てもそうは見えません。

 詳細は貴方に聞けとなっていますが……貴方は戦いの素人ではありませんね?」


 「はい。自分は22年の奴隷闘士を務めました。

 ですので戦いについては素人ではありません」


 「なるほど、それで新人なのに巡回狩人にした訳ですか。

 ですが奴隷闘士とはいえ、その本質は興行。本当に殺し合いをする訳では無い。

 ですが中央付近から漏れ聞こえて来る、男爵の妹の不正事件と突き合わせると……」


 「その事がもうここまで伝わっているのですか?」


 「情報とは商人が扱う商材、つまり情報も彼らの売り物なのですよ。

 当然、定期的に買っています。

 何よりここは国境、愚か者では支部長は務まりません」


 ああ、そういう事か。

 この人は国境をマスターから任されるくらいに優秀な方というわけだ。

 もしかしたら受付嬢のフリをしているのもワザとか?

 サブマスターも似た事をやってたしな。


 「実力はまあ申し分ないのでしょう。

 とはいえ戦闘能力だけで務まるほど、ハンターというものは甘くありませんよ」


 「それは分かっています。

 出発までにはハバン殿から教えを受けていましたので」


 「ああ、あの者ですか………。

 アレの腕が良いのは間違いない事です。腕はね」


 なんだか妙に含みのある言い方だな。

 この方とハバン殿の間に何かあったのだろうか?


 「ああ、いえ。特にどうこうはありませんよ。

 ただあの男が女を買うのを何度も目撃しただけです。

 別におかしな事ではありません。おかしな事ではね」


 その一言で私も分かった。

 少なくともこの方はハバン殿に好意を持っていたのだろう。

 王都でもハバン殿に好意を持つ女性は多かったしな。


 ハバン殿は一見すると軽いように見えるが、実際はかなり真面目な人物であり義理堅い。

 だからこそ好意を持つ女性が多いのは分かる。


 「ゴホンッ! ……まあ、それはいいのです。

 それよりも貴方にしてもらいたい事は、国境近くの山から下りて来るモンスター退治です。

 主に下りてくるのは山鹿にビッグボーアにドーヴァル、極稀に山狼が出てくるので気を付けて下さい」


 「山鹿と山狼は罠ですか?」


 「いいえ。

 最近の山鹿は罠に慣れてしまったのか、ここ最近は全く獲れなくなっています。

 おそらくですが、直接で狩らないと無理でしょう。

 そうなると弓矢が使える者が望ましいのですが……」


 「申し訳ありませんが、自分は弓矢は多少しか扱えません。

 奴隷闘士の時に全ての武器を一通り練習させられましたが、あくまでも手加減した矢しか撃てませんでしたので……」


 「手加減?」


 「私が力を篭めて弦を引くと切れるのです。

 強弓だという弓を持ってこられた事もあるのですが、それも私の力には耐えられませんでした。

 なので石を投げる方が得意です」


 「………そうですか。

 まあ、その右手に持っている金棒を使うくらいです、それだけの怪力なのでしょう。

 とにかく山から下りて来る獲物を狩って下さい。

 もちろんこちらから山に行ってもいいですよ。行けるのであれば」


 これはアレだな。

 私の先程の言葉が信用できないので、急に投げやりになったのだろう。

 ここはいちいち反論しても仕方ないし、実際に証明した方がいい。

 言葉で言っても意味は無いだろうからな。


 「ところで、この村で荷車を借りられる場所はありますか?

 王都にはあったのですが……」


 「あります。

 村の北側に行けば荷車を貸してくれる店があるので、そこでお金を払って借りるといいでしょう。

 農作業などでも使うので、割と田舎の方が荷車屋は多いですよ」


 「なるほど、そうでしたか。では行ってみます」


 「ええ。モンスターが来る山は、北の街道の両脇に聳(そび)えています。

 村からも見えるので分かりやすいでしょう」


 「村に来る際にも見えたので分かります。

 それなりに遠いですが、あそこに行く方は居るのですか?」


 「1チームのみ遠征しています。それ以外は無理ですね。

 その者達のみ鉄級ですから当然なのですが」


 「分かりました。それでは行ってきます」


 私はそう言って、さっさとハンター協会を出た。

 こちらを信用しない者と話しても無駄だからな。

 実力を証明しない限り、まともに話も聞けないだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。