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01-18-0018




 Side:アッシュ



 私はファングボーアの木札を提出したのだが、それなりに長く待たされている。

 何故かと思っていたら、銅1級になるのでプレートを作っているとのこと。

 どうやら銅級からは銅のプレートに変わるらしい。

 ちなみに級を表しているのは線だ。


 ハバン殿のプレートを見せてもらったが、そこには4本の縦線と、それらを貫く横線が書かれていた。

 これで5を意味するらしい。

 その右側に3本の縦線が彫られているので8級なのだそうだ。

 私は刻まれるのを見る事も無く銅級に上がったので教えてもらった。


 「木級で一度も級位を上げずにランクアップしたのはマスター以来か?

 運と実力が無ければ飛び級みたいな形にはならんからな。

 試してみた阿呆な新人は出て来るが、本当に出来るヤツはまず居ない。

 その2人目を見られるとは思わなかったぜ」


 「悔しい気持ちは無い訳じゃねーが、新人の頃に150の体高のファングボーアは無理だな。

 むしろよく倒せたと感心するぐらいだ。いや、今でも大変か?」


 「ハバンさんが手伝ってくれれば出来るだろ」


 「オレは何もしてないぞ、手伝ったのはその後ぐらいだ」


 「手伝ってるんじゃないですか」


 「アッシュが突撃してきたファングボーアの頭に棍棒を振り下ろしてブッ飛ばしたんだよ。

 それで瀕死に追い込んだまでは良かったんだが、アッシュの持ってるナイフじゃ切れなくてな。

 で、オレの短剣を魔法使って切れ味を上げて切ったんだ」


 「ああ、切れなかったからか。

 という事は戦闘自体、完全にそこの新人がやったって訳ですね」


 「ああ、そうだ。

 というより棍棒が割れる程の一撃だったんだぜ? その一撃をよく出せたもんだよ。

 サイクロプス用の棍棒が一撃で割れて終わりだからな、オレもビックリだったぜ。

 その日の朝に買った棍棒が昼前には割れるんだから、当然だがな」


 「マジかよ。サイクロプス用の棍棒が割れるとかシャレにもならねえ。

 どんだけのパワーしてやがるんだ……」


 「マスターはとんでもねえ魔法だが、新人はとんでもねえ怪力かぁ。

 っつーか、サイクロプスでも当日に割るって難しくねえか?」


 「難しいっつうより無理だろ。そのファングボーアの突進も凄かったんだと思うぜ?

 それでも新人の怪力が無かったら撥ね飛ばされて死んでるだろうけどな」


 「だな」


 何か私の渾名(あだな)が<怪力>とかで決まりそうな気がする。

 それでも<灰>と呼ばれるよりは遥かにマシだが。


 「お待たせしました、アッシュさん。

 銅級のプレートです」


 「これが銅級のプレートか……。思ったほどの感慨が無いな?」


 「いきなり上がったんだから感慨があるわけないだろ。

 それよりも終わったんだから昼飯に行くぞ。まだ食ってないんだしな」


 「あ、オレも行きますよ。オレも食ってないんで」


 「オレも、オレも」


 何故かハバン殿を慕う者達と昼食に行く事になり、私は「ワイワイ」と騒がしいながらも楽しい昼食を満喫した。

 色々な事を話してもらえたので、様々に知る事が出来たのも大きい。

 こういうのは本当にありがたい事だ。


 何故か巡回狩人になるという事への同情からだったようだが、知識が得られたのは本当に助かる。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 あれから10日。私もモンスターを狩るのに慣れて来た頃、マスターからの呼び出しがあった。

 どうやら私が行く所が決まったらしい。


 私の今の等級は銅3級だ。

 あれからさらに色々と狩り、順調に等級が上がっている。

 私が一人だからこその上がり方なんだそうだ。


 やはりチームを組むより一人の方が査定は高くなるらしい。

 一人でやっていける者というのは有望なので、下に置いておいても仕方ないという事情があるとのこと。

 なので早めに上に上がれるんだそうな。

 それでいいのかと思ったものの、それに対する答えは簡単だった。


 簡単に上に上げても鉄級の試験で止まる、そこを上手く進めても銀級の試験で止まる。

 なので何も問題は無いらしい。

 本当の一握りの実力者しか銀級には上がれず、金級は選ばれし者の領域だと言われた。

 その内の一人はドーヴァルを虐めて遊んでいたのだけどな……


 「アッシュ。

 お前に最初に行ってもらうのは、アックソス地方にあるヴェルイーという村だ。

 北の国との国境近くの村だが、北の国であるガルバスがおかしな事をしてくる事は無いだろう。

 あそこは我が国から食料を買っているくらいだからな」


 「ガルバス………確か北に海というものが広がっていて、塩を大量に作っている国でしたっけ?

 だから我が国は塩を輸入しているとか何とか……」


 「ああ。よく知っているな。

 我が国にも岩塩の採れる山は複数あるが、岩塩はいつか尽きる。

 それとガルバスからも何か輸入せねば、貿易の不均衡を招く。

 そんなところから戦争にもなりかねん。

 だからこそ塩を主に輸入している国だ。塩は腐らんのでな」


 「確かに塩は腐りませんね。それに色々な事に使いますし」


 「そういう事だ。

 そのガルバスとの国境がある地方、それがアックソス地方となる。

 そしてヴェルイーは最北であり国境の村だ。

 実は近くに高い山が複数ある場所でな、そこのモンスターが度々下りて来て困っていると報告にある」


 「行く場所と何をすればいいかは分かりました。

 が、どうやって行けばいいのでしょう?」


 「アックソス地方までは馬車で行けるだろう。

 軍資金として大銀貨2枚を渡しておく。おそらく半分でヴェルイーまで行けるはずだ。

 馬車が無いなら徒歩で行くしかないがな。

 国境の村だけあって普通の村より規模は大きい。当然ハンター協会もある。

 なのでついでにこの手紙を届けてくれ。お前の事を頼むとも書いたのでな」


 「分かりました。手紙と大銀貨、頂いていきます」


 「ちょうど今日アックソス地方への馬車が出る。それに乗って移動するといい。

 長く掛かるがな、そこは諦めろ」


 「はい。では出発します」


 「ああ。頼んだぞ」


 私はマスターの部屋を辞し、そしてハンター協会を出て馬車乗り場へと移動する。

 馬車乗り場はスラムにあるが、王都のスラムはそこまで汚くもない。

 なぜなら仕事をしている者達が多く、ちゃんとお金をもらっているからだ。


 それと騎士や兵士も巡回しているので、怪しい連中などが入り込みにくくなっている事もある。


 そのうえスラムの住民も仕事を失いたくないので団結していて、そういう怪しい連中は率先して騎士や兵士に知らせている。

 なので入り込めないのだそうだ。


 私は馬車乗り場へと着くと、御者であろう人物一人一人に行先を聞いていく。

 するとアックソス地方行きがあったのでお金を払って乗り、そこで出発まで待つ事にした。


 馬車と言っても牽くのは馬ではなく、パルデオムという馬に似た六本足の生き物だ。

 こいつは馬より足が遅いが馬よりも力強く、更には体力が多い。

 何と言っても雑食なので何でも食べるうえ、水を一度飲むと結構な期間耐えられるそうだ。

 なので維持費が馬のように高くないらしい。


 出発まで暇なので御者と話していると、新たにアックソス地方に行く者がやってきた。

 オーク族の女性だったので驚いたが、理由は一瞬デュジュ氏に見えたからだ。

 よく見たらまったく違うので見間違いだと分かったが。


 他にゴブリン族や人狼族が乗って来て出発となった。

 いったい私が行く場所とはどんな所なのだろうか?

 あの町を出た事が無かった私が、北の果てまで行くとはな。

 生きていると何が起こるか分からないものだが、楽しみでもある。


 王都も楽しかったが、生きている者が多すぎてゴチャゴチャしているという印象も強かった。

 今度は大きい村だ。

 それなりに長閑(のどか)な場所だろうし、それもまた楽しみでもある。


 楽しみがあるというだけで、自分が生まれ変わったかのような気分になるのだから不思議なものだ。

 私は私なのにな。


次話から第2章です

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