05-05-0191
Side:ジャネス
まったく………
怒る気にもならないとは、この事さ。
マーヤが元チームメンバーを治してくれた後、あたし達は辺境伯領の最西端の町に向かって歩いている。
そこまで遠くはないはずだから、野宿一回で辿り着けるはずだ。
「それにしても情けない。
敵が退いて行くからって突っ込むとか……銅級の連中じゃないんだから、情けないって言うしかないよ。
もうちょっと慎重だったと思うんだけど、あたしの勘違いかい?」
「ジャネス。リーダーだったあんたが抜けてから色々とあったんだよ。
あの頃はあんたがリーダーだったからついていくって形だったけど、今は皆で決めてる。
正直に言って今さら誰かがリーダーになんてなれやしない」
「私達は補佐だったからね。
いきなり全て決める立場になっても、誰もやった事が無いんだから無理だったんだよ。
それに合ってないっていうのもある。だから合議制にしたの。
重要な事は多数決で決める形」
「それでも素早く決めなきゃいけない時には、合ってないってのが事実なのさ」
まあ、何かあった時に全体を決めてたのはあたしだ。
それは間違いのない事実だけどねえ………
あたしだって上手く出来ていたとは言い難いんだよ。
なんか勘違いしてないかい、こいつら?
それに……
「そもそもあんた達は故郷に帰るって言ってなかったかい?
だからあたしは意地でもハンターやっていく為に解散したんじゃないか。
にも関わらずハンターやってるってどういう事さ」
「故郷に帰る前に、帰って駄目だったら結成した町に戻るって約束してから帰ったんだよ。
そしたら知り合いは結婚して子供が居るわ、地元の自警団には空きが無いわってね。
結局ハンターに戻るしかなかったんだ」
「皆そんな感じだよ。私達の居場所は結局ハンターしかないって。
それで皆が戻って来たから、再び<烈華>を結成したの。
で、その後にチームメンバーとして勧誘したのがウェリムス。
そう見えて男なんだよ」
「えっ? 男………?」
マーヤが首を捻ってるけど、あたしも同じだ。
どう見ても少女みたいにしか見えないけど、これが男かい?
しかも盗賊どもにヤられてたんじゃ………って事は、ケツを掘られてたってわけか。
「お尻を掘られても生きてるだけマシでしょ。
それより女のチームに男一人って、侍らしてるか喰われてるかのどっちかよね?」
「それは無い。
そもそもウェリムスは男にしか興味ないからね。
だから組んでるのさ」
「ああ、そう」
マーヤが急に投げやりになったけど、あたしも放り投げたいよ。
何でそんなのを仲間に引き入れたんだか……って思うけど、それはコイツが珍しい髪色だからか。
「このウェリムスってのが緑と茶の髪だから引き入れたね?
気持ちはよく分かるけど、よく入ってくれたもんだ。
緑と茶って事は、植物の神の加護だろう?
普通は村や町に置いておこうとするだろうに」
「ウェリムスが嫌がったからだよ。
一人でハンターになろうとしてたんだけど、危なっかしくてね。
アタシらも心機一転だったから丁度いいとなったのさ、それで勧誘したってわけだ。
特に森では強いからね、だからこそ突っ込んだとも言えるんだけど……」
「なるほどねえ。で、結果として退いた相手の罠に嵌められたと。
仕方がないとは思うけど、確かに自分達が有利だと「行け行け」になっちゃうのよねえ。
そこで止まれるかどうかが、一流と二流の差なの。
貴女達は………どうなのかしら?」
「一度の失敗で全てが決まる訳でもありませんし、今は禁薬の症状も無くなっています。
なら、やり直すのは可能ですからね」
「たまたまであり偶然ですけど、それでも助かったのは運ですしね。
上に行ける方って、そういう運の良さを持つらしいですよ。
ですので次に同じ失敗をしなければ行けるのでは?」
ラブが言ってるのは間違ってないと思う。
だけどこいつらって、甘やかすとすぐに調子に乗るんだ。
少しぐらい凹ませておくので丁度いいんだよねえ。
まあ、もう責任は無いから放り投げるけども。
「ここで会ったのも何かの縁だし、戻ってきなよ。ジャネス」
「は? あたしが戻るわけ無いだろ。
今は皆と共に居るんだし、チームメンバーは決まってる。
一度解散した以上は復帰なんてしないよ」
「でもアタシ達より弱くて大変そうじゃないか。
アタシ達と居た方が上にあがれるよ?」
「冗談はお前の猪面だけにしな」
「なんだってぇ!?」
「まあ、まあ。
今は既にそれぞれ活動しているんですから、今さら元に戻るという事も出来ないのでしょう。
そんな簡単に出たり戻ったりするものでもありませんしね」
「あんたみたいなチビっ子はジャネスが頼りなんだろうけど、そういうのは嫌われる元だから止めときな」
何も知らないヤツが五月蠅いよ、まったく。
ラブはそもそもあたしを頼りにしてないっての。
自分の力だけで戦えるんだから何の問題もない。
っていうか、お前らが戦ったら殺されるって気づかないもんかね?
「オーファルにギンリカ。
オーク族やゴブリン族の恥さらしになるから、そのマヌケな面と言葉を引っ込めな。
そもそもラブは自分の力で戦えるし、そう見えて既に鉄2級だ。
見た目で侮るなって昔言ったろうが」
「「鉄2級!?」」
「その小さな体で試験に合格したのかい?
どこで試験を受けたかは知らないけど、優秀なんだねえ」
「エフィシア。ラブとそっちのアッシュは、共に王都で試験を受けてる。
つまり実力は正しく認められてるんだよ。
ケチをつけるところなんて無いのさ。
そもそもアッシュの試験は、あたしも途中から同行してるんだよ。
あれは鉄級に上がるなんていう難易度じゃなかった」
「そりゃ統率者がバンバン出て来る坑道の中の掃除だものねえ。
マスターだって銀級への依頼だって言ってたし」
「銀級への依頼が、鉄級への試験だったってこと?
そんなメチャクチャな事が本当にあったの?」
あたしの元チームメンバーの中で、唯一マシな言葉使いだったのがサンディだ。
エフィシアが狼人族、サンディが兎人族、オーファルがオーク族で、ギンリカがゴブリン族。
そこにあたしがリーダーとして居たのが、銀級間近と言われた<烈華>だ。
結局は銀級に昇級する前に解散しちまったけど、それでも鉄級上位である事は間違いない。
エフィシアがリーダーになれば上手くやっていけたと思うんだけどね?
なんだかんだ言ってサブリーダーだったし。
「アタシは残念ながらサブ止まりだよ。
ジャネスが居なくなって、それがよく分かるのさ。
誰かを支えるのは出来るけど、自分で引っ張っていく事は無理だ。
自分に合ってないのが分かるんだよ」
「ふーん……そんなもんかねえ」
「それよりジャネスの方はどうなんだい?
そっちは大変な感じがするけどね。バラバラみたいだしさ」
「そもそもあたしは今リーダーなんてやってないよ。
このチームのリーダーはアッシュだし、あたしは従ってるだけだね。
とはいえ緩いけどさ」
「「「「えっ!?」」」」
「そんなにジャネスがリーダーをしてない事に驚く?
そもそも後で加入してるし、最初はアッシュだけだったのよ。
次はわたしだしさ」
「そうですね。
その後にぼくで、ジャネスさん。そして最近ラフィルさんが加入したのが流れです。
なので仮にリーダーをするのであれば、階級から言ってもマーヤさんでは?」
「えー………。やーよ、面倒臭い」
「その小さい………っていうか、妖精族?」
「しかも、オレンジ髪って事は……」
「流石に今ごろ気付くのは駄目だと思うよ? 私達を助けてくれた方でしょうに」
今ごろ気付くって………相変わらずの駄目っぷりだねえ、オーファルとギンリカは。
戦闘は得意だけど、物事を考えるのは壊滅的に駄目かい。
こいつらがリーダーになるとか以前に、意見を採用するのも危険すぎる。
正直に言ってエフィシアとサンディで決めた方がいいだろ。
後はそこのウェリムスってのが役に立つなら加えりゃいい。
その形の方が上手くいくと思うけどね。
「そもそもマーヤさんは銀10級ですから、階級も一番上ですよ?」
「「「「「銀10級!?」」」」」
まあ、そりゃ驚くよねえ。
普通はまず会わないほどの階級の高さだ。
それが目の前に居りゃ、目ん玉が飛び出るほど驚くのが普通か。
あたしは慣れたけど、そもそもそれ以上にアッシュが凄すぎるからねえ。
【生魔法】使いの妖精族が霞むんだよ。
<三柱の神の神子>の前ではさ。




