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05-03-0189




 Side:ラブ



 ぼく達は盗賊の塒(ねぐら)であろう洞窟へと入っていきます。

 少しずつ慎重に、足音をさせずに歩いてきますが、これといって何かが聞こえてきたりはしません。

 あまりにも静かなので、もしかしたら盗賊の塒(ねぐら)ではないのかも。

 そう思えて来るぐらいです。


 一番前を歩いていたアッシュさんが止まります。

 この暗闇で一番見えているのはアッシュさんであり、その後ろにラフィルさん、そしてぼくが洞窟の中に入っているメンバー。

 マーヤさんとジャネスさんは暗闇が見えないので、今は洞窟の入り口を見張ってくれています。


 流石に見えない御二人は危険ですし、灯りが付けられないので連れてもいけません。

 灯りが見えると盗賊にバレますし、ある程度の数を減らすか女性を助け出すまではバレたくないのが本音。

 だからこそ御二人も素直に引きました。


 「ここから奥には複数の支道があり、その先は小部屋になっているようだ。

 数人がそこで寝ているのが確認できる。

 しかし部屋に比べて人数が少ない。おそらくは女性達の所に居るのだろう。

 となると女性達は生きている可能性が高い」


 アッシュさんが小声で現在分かっている事を説明してくれました。

 確かに部屋に比べて人数が少ないなら、女性が生きている可能性は高いと思います。


 でも盗賊は女性達に結構殺されたはず。

 だとすると、それ以上に少ないという事でしょうか?


 先頭のアッシュさんが曲がり角を曲がり、その先へと進んで行きます。

 そして支道の一つに入りその先へ。

 すると「ンゴゴゴゴォ、ヒュゥゥゥゥ」という凄い鼾(いびき)が聞こえてきましたが、これなら確実に寝ているでしょう。

 それ以外には考えられません。


 ぼく達は部屋の外で待ち、部屋の中へとアッシュさんが進みます。

 そして短剣を抜き、鼾(いびき)を掻いている盗賊の口を左手で塞ぎました。

 次の瞬間には右手の短剣が喉を突き刺しており、捻って抜いたアッシュさんは口だけを塞ぎ続ける。


 男は何とかしようと必死にもがきますが、既に喉を突き刺されたので呼吸が出来ません。

 結局はパニックのまま動きが弱々しくなり、そして最後は動かなくなりました。


 アッシュさんは盗賊から離れると、指環の力で綺麗にして移動。

 次の支道へと進みます。


 ぼく達も後ろからついていきますが、次の部屋には三名が寝ています。

 ちょうど同じ数なので、慎重に移動して盗賊の傍へ。

 そしてアッシュさんが合図を出すのでそれに合わせます。


 3、2、1、ゼロ!!


 左手で口を押えると共に、ぼくは血で作った短剣で喉を突き刺します。

 そして無理矢理に一回転させると引き抜きました。


 なるべく傷を大きくした方がいいと思ってやったのですが、効果があったのかどうかは分かりません。

 少なくとも傷口が広がったのは事実です。


 「ごふっ……がふっ……」


 口を押えているのですが、なかなかに暴れる力が強い。

 ぼくはまだ小さいですし、盗賊は大人ですからね。


 仕方がないのですが、思っている以上に抵抗が強くて焦ります。

 口を塞いでいる手が外れても、そこまで大きな音は出せないでしょう。

 とはいえ小さい方が気づかれにくいのは当然。


 だからこそ必死に抑えているのですが、だいぶ抵抗が落ちてきました。

 息が出来ないのでそろそろ気を失うと思います。


 首を切ればもっと早く倒せるのですが……

 それをすると血の臭(にお)いが広がってしまい、その所為で気づかれる恐れがあるので出来ません。


 アッシュさんが黒い箱と【集魔法】を使えばなんとかなるかもしれませんが、今度は魔力を使った事でバレる可能性が出て来てしまいます。

 【集魔法】はかなり分かりやすく魔力を使うので、それを感知されてしまうと見つかってしまうのですね。

 だから使えません。


 ぼく達は盗賊が死んだのを見届けた後、支道の方に戻ろうとして止まります。


 ドスドスドスドスドス……


 誰かがこちらに来る足音が聞こえてきたので、どうするのか迷っていると、アッシュさんはすぐに部屋の入口の傍へと移動しました。

 おそらく入って来る者を襲うのでしょう。

 ぼく達もアッシュさんの後ろへと続きます。


 入り口から中側の、その脇に控えて盗賊を待ちます。

 人数が分かりませんが、アッシュさんが襲おうとしている事から、おそらく一人なんだと思います。

 複数の足音でもありませんし、なのでぼく達の出番は無いでしょう。


 男の足音が近くなり、そして灯りがハッキリと見えてきました。

 そのまま警戒心も無く来た男は、部屋の中に足を踏み入れて声を出しました。


 「……ん~? せっかく交代に来てやったのに寝てんのか?

 だったらもどゅ?!」


 アッシュさんが背後から右手に持った短剣を喉に突き刺しました。

 そして左手は口を塞いでいます。


 盗賊が持っていたランタンが落ちますが、ぼくが血で作った布で受け止めたのでセーフ。

 床に落ちていないので音はしていません。


 そのランタンを引き寄せたぼくは、すぐにランタンの火を消して真っ暗に。

 喉を刺された盗賊は暴れていますが、それも徐々に弱くなっていきます。


 そして抵抗がほぼ無くなった段階で床に寝かせ、アッシュさんは綺麗にした後に部屋を出る指示を手でします。

 先頭で出て行くアッシュさんの後ろにぼく達が付き、それ以降も盗賊が居る支道に寄って暗殺。

 それを繰り返しながら奥へと進んで行きました。




 そして最奥を残すのみとなったのですが……

 そこからは複数の女性の嬌声が聞こえてきました。


 それ以外にも盗賊の話し声が聞こえます。

 しかしその声が言っている事を聞く為に、アッシュさんは手前で立ち止まりました。


 まだ殺されてはいないので、助ける前に情報収集がしたいのでしょう。

 ぼくも聞こえていますから気持ちは分かります。


 「仕入れた<ガットラの葉>は思っていた以上に効果があったみてえだな。

 <イヴォスの粉>と混ぜて飲ませたら、ここまで効くとは思わなかったぜ。

 これでクソ生意気なあの女どもも、ワシらの奴隷だ」


 「それなら売らずに使いましょうや。

 あいつら強いし、下の世話もさせられるんですしね。

 死んだ仲間達の分も働かせましょうぜ」


 「当然だ。まさか団の半数が殺されるとは思ってもみなかったぞ。完全に計算外だ。

 御蔭で上の抗争には参加できねえかもしれねえ。

 せっかくワシらの名を轟かせるチャンスだっつうのによぉ!」


 「どうせ最初は捨て駒なんですし、遅れて参戦なんつーのはどうです?」


 「そんな事したら上の連中に殺されっちまうぞ。

 遅れて来るマヌケなんぞ、信用される訳ねえだろうが」


 聞いた感じ、抗争を始めようとしている闇の連中の下部組織みたいですね。

 そういうのが盗賊をやっているなんて事は、よくある事ですが………

 本当に抗争があるのでしょう。そんな話をしている以上はね。


 しかしどこと抗争をするのかとか、色々と分からない事が多いです。

 それと、そろそろ女性達を助ける方法を考えないといけません。

 そう思っていると、アッシュさんがぼく達の方を向きました。


 そして自分を指さした後、部屋の中へと指を差します。

 そしてぼく達の方を指さした後、地面を指さしました。


 つまり、ぼく達は入り口を塞いで待機。

 アッシュさんが中に入って引っ掻き回すって事でしょう。


 僕はその指示に対し、頷く事で了承を示します。

 危ないですけど、中を引っ掻き回して混乱させるのは間違っていません。

 女性達を人質にとられると厳しいので、ここは混乱させてその隙を与えないのがベストでしょう。


 そして逃げて来る者達を入り口で殺す。

 それがぼくとラフィルさんの役目です。


 生かした方が情報源として使えるでしょうが、生かす余裕は無いでしょう。

 まずは女性達の救出が先ですからね。


 優先順位を間違えるわけにはいきません。


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