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05-01-0187

この話から第五章が始まります




 Side:アッシュ



 女官がスライムに変貌して3日経った今日、ハンター協会に来るとサブマスターから呼ばれた。

 どうやら私達が派遣される場所が決まったようだ。


 なのでハンター協会の受付から、2階のマスターの執務室へ。

 そしてマスターから話を聞く。


 「今回お前さん達に言ってもらうのは東の辺境だ。

 つまり酒の話をしているローデオン商国の近くだね。

 お前達も知っている通り、我が国は4つの方角に辺境伯家がある。

 北はお前達も知っているファゼード辺境伯家」


 「西はオルモート辺境伯家であり、その向こうはヴァダイ魔国。

 そして南はロインリア辺境伯家であり、その向こうはセルメンタ教国。

 そして東がリュージャ辺境伯家であり、その向こうがローデオン商国です」


 つまり私達はリュージャ辺境伯家の領地に行くわけか。

 ………うん? ちょっと待て。どこに行くか言われてないぞ?


 「で、東の辺境伯家に行くのはいいんだけど、その辺境伯家のどこまで行けばいいのよ?」


 「最東端の町までさ。その町の名はフェイジャ。

 アンタ達にはそこまで行って、周辺で狩りをしてもらう。

 実際に東の国境からモンスターが来る事も多く、人員不足に悩まされている場所でもある。

 それに、ちょっとした問題も抱えてるんだよ」


 「問題ってのはなんだい? 出来るだけ先に言っておいてくれないと困るよ」


 「慢性的な問題と言えばいいのですが、リュージャ辺境伯領における優秀なハンターは、その大多数がローデオン商国に行って戻って来なくなります。

 理由は向こうの方が儲かるからでして、そこはどうにもならないのですよ」


 「要するに物や金や女で釣られるって事ね。

 優秀なハンターはどこの国だって欲しいもの、隣国から手に入れれば弱体化も出来て尚よしってところでしょうね。

 商売人らしい発想で笑うけど」


 「笑うんですか? 上手い手だと思いますけど……」


 「上手い方法よ? ただしコケると一気にコケるけどね。

 一つの事で複数の利益を出そうとするところは実に商人らしいと思うわ。

 ただし幾つもの得を手にしようという方法は、失敗した時に連鎖して失敗が広がるのよ」


 「アレも駄目、コレも駄目、ソレも駄目……という形になるからですか」


 「そう。複数の事を絡め始めると際限が無くなるの。

 こっちの得であっちを、あっちの得でそっちを、そっちの得でアレを……

 そうやって際限なく相互が絡んで行く。

 そして一ヶ所が駄目になると、そうやって絡んでいた物全てが駄目になるってわけ」


 「つまりアレもコレもソレもと欲張るなって事さ。

 どれか一つが駄目になったら連鎖的に崩壊するんだ、だからある程度で纏めておけって事だよ。

 全て繋げる訳でもなく、一つ一つを独立させる訳でもない。

 ある程度に分散しておけばいいのさ」


 流石に話が横道に逸れてるので修正するか。


 「それは横に置いておいて下さい。

 それよりも私達がするのはローデオン商国の監視ですか? それとも引き抜きの阻止?」


 「いや、引き抜きの阻止をする必要は無い。

 そもそもだけど、そんな事をしても反発されるだけさ。

 更に言えばハンターがどこに行くかは自由だ。

 行って損するも得するもソイツの生き方だからね。

 そこに口を挟むような事は無いさ」


 ならば何をせよという事なのだろうか。

 ローデオン商国が絡んでいる事なのは間違いないようだが……


 「貴方達にしてほしいのは、いつも通りの巡回狩人の事が一つ。

 そして、それとは別に噂を集めてほしいのです。

 ローデオン商国とはお酒の話が進んでいますが、それとは別に不穏な物の売買の話も聞こえてくるのです」


 「不穏な物の売買ねえ………」


 「つまり禁制の品ってわけか」


 「その通りさ。

 どうにも各国にまたがって蠢(うごめ)いている連中の一部が、大々的に資金を集めているみたいなんだ。

 近々抗争でもする気なのかもしれないけど、禁制の物をバラ撒かれるのを見ているわけにもいかない」


 「こちらにも被害が出ますからね。

 特に依存性の高い薬物関連は、せっかくの優良ハンターを駄目にしてしまう猛毒です。

 ハンター協会としても、これを放っておくわけにはいきません」


 「という事でアンタらを派遣しての調査となったわけだ。

 ついでに国内の<混沌の種>も減らしていっておくれ。

 そこまで時間は掛からないだろうけど、移動で手間取るかもしれないね。

 まあ、乗合馬車を使ってゆっくり行けばいい。急ぎじゃないからさ」


 「それは助かるけど、色々な所を巡らなきゃいけないから時間が掛かるのは諦めるしかないわね。

 東の辺境伯領に着くのもいつになるのやら」


 「そこまで時間が掛かったりはしないだろうさ。

 協会のある村は聞き込めば分かるし、協会が無い僻地へ行く必要は無い。

 仮に<混沌の種>があったとしても、最寄りの協会に送られる事になってるからね。

 アタシ達は保管業務も行ってるから」


 私達の目的も<混沌の種>だから、言い換えればハンター協会の無い場所へは行く意味が無い。

 ならば問題は無いか。


 「それでも巡る場所は多いだろうけどね。

 まあ、一度はやらなきゃいけない事なんだから、諦めるしかないんだけど」


 それはそうだ。

 私が<混沌の種>を吸収する事は、下界を守る意味でも重要な事になる。

 復活が叶わないとなれば、浄化の女神が何をされるか分からん。

 それこそ本体で直接降臨などという事になったら、下界が崩壊して全ての者が死に絶える。


 それでも<混沌の種>を集めて邪神を復活させる為となれば、浄化の女神はされかねんのだ。

 それだけは何としても阻止せねば。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 王都にてマスターから命じられて一ヶ月。ようやく私達は東の辺境伯領に入った。


 これだけ時間が掛かったのは、各地の町や大きな村を回って<混沌の種>を集めて吸収して回っていたからだ。

 その量は思っている以上に多かった。


 なので吸収していったのだが、最近は澱(おり)のような魔力を吸収しても魔力総量が増えない。

 むしろ総量の中に、強制的に澱(おり)の魔力が入って来るぐらいだ。

 なので器が拡張されない感じがする。


 マーヤやラフィルが言うには、魔力を扱う修行をしないと無理だと言う。

 実際にジャネスの魔力が多いのは、色々な血を実家が取り込んでいた以上に、本人が魔法を使って努力したかららしい。


 だからこそオーガ族とは思えない魔力総量をしているわけだ。

 それもあって毎日眠る前の修行を欠かさず行っている。

 その一環として【集魔法】での邪気集めもやっていて、移動距離も含めて結構な範囲を綺麗にしてきた。


 下界の者が責任をとれと言われたが、その下界の者に私も入っているからな。

 出来るだけ広い範囲の邪気を吸収して浄化。

 それを毎日しているので、綺麗にはなっていると思う。


 【集魔法】は使えているし効果もあるようだ。ラフィルがそう言っていた。


 そういえばラフィルと呼び捨てにしているが、お互いに仲間なのでそうする事に決めた事が理由だ。

 流石に仲間に対してのものではないからな。

 だからこそ呼び捨てになったのだが………ラフィルは変わっていない。


 どうも神殿長だった時の癖が抜けないので、このままの方が楽だとなってしまったのだ。

 私だけが呼び捨てに変わった事にちょっとモヤモヤするが、まあ、気にしても仕方がないので諦めよう。


 乗合馬車の中で適当に遊んでいると、突然馬車が止まった。


 ガタンッ!


 「キャッ!!」


 「なんだい、いったい?」


 「何かありましたかね?」


 「私達しか乗っていないからな。何かあれば御者が言ってくるだろう」


 <内なる目>の範囲には何も無いので、おそらくはそれより外側だ。

 となると盗賊か何かか?


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