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 Side:マーヤ



 何か面倒な女官が絡んできたけど、自分の正義に酔ってる感じのヤツねえ。

 これが<ソードモラ教>とそっくりって事なんだけど、コイツは全く理解していないわ。

 頭が悪くて困っちゃうわね。

 こういうヤツって自分の頭が悪いって理解してないのよ。


 「最初に勘違いって言ったけど、その通りで貴女は勘違いしてるのよ。

 何度も言ってるけど、貴女の正しさは貴女と神殿の正しさでしかない。

 でも世の中は貴女と神殿しかない訳じゃないの。

 つまりそれ以外には、それ以外の正しさがあるのよ」


 「そもそも正しさとは一つではありません。

 貴女の正しさ、副神殿長殿の正しさ、そして神殿長殿の正しさ。

 同じ神殿に所属していても、それぞれの方の正しさは別なのです。

 貴女の正しさは絶対のものではありません」


 「むしろ自分は間違っているかも? そう思えないヤツはマズい。

 自分が正しいと信じて疑わないなんて、それこそ<ソードモラ教>の連中と同じじゃないか。

 あんたがやってるのは、そういう事だよ?」


 「私は<混沌の種>を無理矢理に食べさせるなどしていません。

 私がいつ他者の手足を切り落としましたか?

 勝手な事を言うのは止めてください」


 近視眼的な物の見方しか出来ないのか、それとも自分に都合の悪いところは見て見ぬフリをしているのか。

 そこは分からないけど、根本的に間違えている部分があるわね。


 ここはマーヤちゃんが指摘して、しっかり抉(えぐ)ってあげましょう。


 「貴女、論点をズラすのが好きねぇ?

 ジャネスは自分が正しいと信じて疑わないこと、それを<ソードモラ教>と同じだと言ったのよ。

 にも関わらず、貴女は<ソードモラ教>がやった事を挙げる事で反論した気になっている。

 実際は全く違う事を言ってるだけだから、反論にすらなっていないわ」


 「自分が正しいと信じて疑わない。

 この事に対する反論をしなくてはいけないのに、何故か<ソードモラ教>がやった事を持ち出してきた。

 答えになってませんね?

 なぜなら自分が正しいと信じて疑わないこと、その事に関しての反論になっていないからです」


 「なぜ貴女は自分が正しいと信じて疑わないの?

 そこに関してちゃんとした反論をしてちょうだい」


 「………」


 流石に黙ったわね。

 当然だけど、明確に反論なんて出来ないわ。なぜなら客観性が求められるから。


 しかしこういう自分が絶対正義のヤツって、基本的に客観性とは無縁なのよ。

 だから何を言ったところで通じない。

 そこまで行ってないなら大丈夫なんだけど………


 「何を言われようと、神殿にとっては正しのですから神殿の所属にするべきです」


 「それはこっちにとって正しくなどないのだから却下ね。

 何一つ良い事も無いし、所属するなんて無意味でしかない。

 なにより王から国内の様々な所を巡ってくれと言われてるから、通じないんだけどね」


 「それなら丁度都合がいいですね。

 神殿の所属になって大々的にアピールされればいいでしょう」


 「いい加減にしなさい、クーレイア女官。

 貴女は自分の言っている事がどれほど傲慢な事か、未だに分からないのですか。

 誰がどこに所属するかなど、本人の自由でしかありません。

 その自由を奪う権利は誰にもありませんよ」


 「その通りでもあるんだけど、そもそもアッシュはかつて違法闘技場で無理矢理に奴隷闘士をさせられていたのよ。

 子供の頃からね。

 貴女の言っている事は、その奴隷闘士を無理矢理にさせていたヤツと同じ。

 所属を勝手に決め、自分の都合よく利用しようとしているんだしね」


 「私は違法な事などしていませんし、同じにされるのは迷惑です」


 「また論点をすり替えているわね?

 所属を勝手に決めるのは、アッシュを違法に奴隷にした連中と同じだって言ってるの。

 つまり貴女が言ってる事は、違法奴隷を持つヤツと同じなのよ。

 アッシュの所属を決める権利はアッシュにしかないわ。つまり貴女に口を出す権利は一切無い」


 「ならば所属すればいいだけです、簡単な事でしょう?」


 あ、コイツ断られるなんて微塵も思っていないわね。真正のバカじゃないの。

 自分の思い通りに全て上手くいくとでも思ってるんでしょうけど、頭が悪すぎるわ。

 幾らなんでも、ここまで分からないって事ある?


 「私に聞いているのだろうが、私はそもそもハンターだ。

 所属を変える気など一切無い。

 ラフィル殿もハンターだし、おそらくラフィル殿も変える気など無いだろう」


 「ええ、もちろんです。

 このような理解不能な勧誘をされるのですから、神殿に所属など無理なこと。

 今までに来た者達といい、何故ここまで頭のおかしい者が神殿に居るのでしょう?」


 「申し訳ございません。

 クーレイア女官は幼少の頃より神殿の孤児院で育ってきました。

 ですので神殿内の事しか知らないのです」


 「それにしても………いえ、今は僻地に行かせたりしないのですね?

 かつては修行として、僻地の神殿に派遣されて支えていたのですが……」


 「今は昔と違い、僻地の神殿も手が不足している訳ではありません。

 それに古い時代ほど厳しくないのです。

 その僻地出身の者が、地元の神殿に戻ったりしますので……」


 「わざわざ派遣する必要が無くなったという事ですか。

 私達の時代では僻地に行きモンスターを狩って肉にし、要らない木を伐っては、それを彫って神様の像としたものです。

 なので、ぞれぞれの神殿で同じ像ではなかったのですよ」


 「そのような事が………」


 「それこそが修行というものであり、恵まれた所で祈るだけが修行ではありません。

 嘆かわしい事に、過去の方々の御苦労も忘れ去られてしまったようですね。

 そうやって多くの者が修行に励んだ結果、今の様に多くの神殿があるのでしょうに……」


 王都に居る恵まれたヤツがバカな事を言っているんだものねえ。そりゃ呆れもするか。

 そしてそう言われているにも関わらず、自分に対する言葉だと思ってないみたい。

 怒る事も無く流してるわ。


 ここまで愚かだと呆れて来るというか、自分にとって都合の良い言葉しか聞こえないのでしょうね。

 見事なまでに無視してるし、それを見た神殿長と副神殿長がゲンナリしてるわ。


 「それで話は終わりでしょうか?

 ではそろそろ神殿への所属を……」


 まだ下らない事を言うのかと思ったら、突然部屋の中が眩しく光った。

 目が眩むっていうか、目が痛いんだけど何がどうなったの?


 「皆、大丈夫か!? ………大丈夫みたいだな。

 目は開けていられないが、<内なる目>で見える限りにおいては問題な……い?」


 どうしたのかしら? 目を開けても眩んだ状態だから見えないのよね。

 いったい何を見てアッシュは固まったのかしら?


 「アッシュ、いったい何があったんだい!?

 あたし達は目が見えないんだから、ハッキリと言ってくれなくちゃ困るよ」


 「あ、ああ。すまん。

 実はな………クーレイア女官の髪が透明になっている」


 「「「「「「「「「「………は?」」」」」」」」」」


 わたしも含めてアッシュ以外の全員がマヌケな声を出しちゃったわ。

 でも、髪が透明に? ……って事は、神罰!?


 「ちょっ、それって神罰じゃないか!

 あのバカな女官に神罰が下ったって事かい?」


 「神罰って事は、完全にあの女官の方が間違っていると証明されましたね。

 未だに目が眩んでいてよく見えませんが……」


 「仕方ないわよ。いきなりで、しかも強烈な光だったしね。

 おそらく浄化の女神からのお仕置きじゃない?

 透明の髪って悲惨なんだけど、それを理解してるのかしら」


 だいぶ目がマシになってきて、徐々に見えるようになってきた。

 なので見ると………


 「ぶふーっ! あはははははははは……!!」


 「くくくくくくく……わはははははははは………!!!」


 「ぷっ………くくくくくく…………」


 私達は我慢できずに笑い出しちゃったけど、アッシュとラフィルは笑ってないわね。

 アッシュは自分で確認したのだから笑った後というか、面白さは減ってるでしょうけど……ラフィルは何故?


 「頭の頂点に小島のように残されているのが気になりまして……」


 「こ、こじま………ぶふぅっ!!」


 「ははははははは!!

 こ、こじま!! こじまって!

 あはははははははは……!!!」


 「ぷくくくくくくくく………!」


 その後、結構な時間が経つまでわたし達は笑い転げる羽目になった。

 余計に笑わせるのは止めてほしいわね、本当。


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