04-59-0184
Side:ラブ
ぼく達は王都の神殿に居ますが、今は資料庫の資料をラフィルさんが読んでいます。
色々な本があるので読んでみたいのですが、流石に他国の、それも本神殿の資料を勝手に読むわけにもいきません。
周りに沢山の神殿関係者も居ますしね。流石に無理なので諦めます。
とはいえ、そうするとやる事が碌に無いぼく達は手持ち部沙汰になってしまい、仕方なく資料の片づけの手伝いなどをする事に。
それでもラフィルさんに何も無いようにと警戒するのは続けています。
神殿に対する「貴方達には渡しませんよ」というアピールでもありますので、続けなければいけません。
向こうも分かっているでしょうが、愚かな方達が二度も来ましたからね。
流石に信用は出来ません。それもまた理解しているとは思います。
神殿長と副神殿長は。
それより下の纏め役には愚か者が多かったと聞いていますから、流石に信用をするのは無理です。
女官の方々もどこまで信じていいのやら?
この方達も色々なパワーバランスの中にありそうですからね。
筆頭女官とか居ますし。
「ところで、そちらの方は邪神の生まれ変わりとお聞きしましたが………本当ですか?」
いきなりな言葉を言って来たのは女性でした。
しかも頭に花を模した飾りを着けているので女官ですね。
どの神かは別にして、女官は布で作られた花の飾りを着ける決まりがあります。
普通の女官は色無しの白い布で、そして筆頭女官だけは自身に加護を下さっている神様の色に染める事が決められている。
そう、かつて祖国の神殿の女官に聞きました。
光の神の女官だけは白なので、その者が筆頭の場合は飾りが2つ付くそうです。
で、目の前の方は花飾りが一つなので、何かの神の女官というだけです。
筆頭でない事は分かりますが、何故あっさりと聞いてきたのやら……
「クーレイア女官、また貴女ですか。
神が加護をお与えになるのは神の意思によるものです。
下界の者が知る必要の無い事ですし、聞かれても答えようが無いでしょう」
「フィウルエル副神殿長。
しかしですね、この方の髪には青白さも混じっているのです。
なれば浄化の女神様の加護も得ているということ。
もちろんダブルやトリプルという事もあるでしょう、それこそ神殿に所属していただくべきでは?」
「神殿が勝手に他者の所属先を決めるなど、貴女はいったいどれほど傲慢な事を申しているのか理解していますか?
神殿というのは自ら門を叩かねばならない場。
決して望まぬ方を無理矢理に引き入れる場ではありません」
「副神殿長、それとこれとは違うでしょう。
もし邪神の加護を持つなら、神殿に属して<助官>として働いていただかねばなりません。
神々をお祀りするのが神殿であるのならば、当然全ての神をお祀りするべきでしょう。
邪神の像を祀るのは絶えて久しいのです」
「貴女はそれを自分の功績にしたいだけでしょうに。
己の欲で勝手な事を言うのはお止めなさい。
神罰が落ちても知りませんよ?」
「神罰が落ちるなどあり得ません。
そもそも私は欠けている邪神を祀る者を復活させようとしているのです。
褒められこそすれ、神罰を受けるような事をしてなどいません。
流石に副神殿長といえども失礼ではありませんか?」
どっちが失礼かと言えば、いきなり来て神殿に所属しろと言っている方が失礼ですよ?
この方は若くして神殿に入ったのでしょうかね?
世の常識とか、そういった事に疎いのかもしれません。
というか、そう思わないと意味不明です。
別段おかしな感じはしないので、そもそもズレているのでしょう。
「なんか勘違いしてるみたいだけど、いきなり来てアッシュに神殿に所属しろって言ってる方が失礼だよ。
理解していないみたいだけどね」
ジャネスさんがあっさりと言ってしまいました。
まあ、間違ってはいないですし正しい言葉です。
それでも、こういう方がそれで納得するはずもなく………
「そちらが勘違いしておられるのでしょう。
私は全ての神様をお祀りするという正しい姿に戻そうとしているだけです。
それが失礼だなんて事はありません」
「あのねえ………なんか頭が痛くなってくるけど、それはあんたが言ってる正しさなだけ。
別に世界共通でも、誰にとっても正しいなんて事も無いんだよ。
あんたが勝手に正しいって言ってるだけであり、だから勘違いだってあたしは言ってるわけ。分かる?」
ジャネスさんが頭痛を堪えるような感じで喋ってますが、ぼくがその立場でも同じように感じたでしょう。
言っている事が完全無欠に自分中心なんですよ、この女官。
自分が言っている事は何も間違っていないと思っているのでしょう。
そうでなければ、当たり前のような表情であんな事は言いません。
普通の人を神殿に無理矢理引き込むのが正しいとか、訳が分かりませんからね。
そもそもどこに所属するのかなんて、その者の勝手です。
他者に決める権利なんてありませんよ。
流石に神殿がこういう組織だとは思えませんので、間違いなくこの女官がおかしいのでしょう。
「クーレイア女官、君は下がりなさい。
彼らがどこに属するか、それを決める権利は彼らにしかない。
無関係な者が口を出していい事ではないよ」
神殿長が当たり前の事を言って諭しますが、この女官は聞く耳を持ちませんね?
「何を仰っておられるのか分かりません。
そもそもここに居る時点で無関係ではありませんし、邪神と関りがあるなら無関係ではないでしょう。
それで無関係と言われても……」
「あのー………貴女の言い分が正しいとなると、神殿に所属していない赤髪の方は勝手に神殿所属になるのですか?
青い髪の方も黄色の髪の方も、勝手に神殿に所属する事になると?」
「それらの神々には既に女官が居ます。
なのでそうなる訳がないでしょう」
まるでぼくを小バカにしたような感じで言ってきましたけど、おかしいですね? という事はですよ……
「貴女が言う事を更に認めると、他の神殿も自分の所に所属して当たり前だと言ってきますよ。他国の神殿もです。
それはどうするんですか?」
「どうも何も、こちらが一番先に声をかけているのですから、ここに所属するのが当然でしょう。
当たり前の事を聞かないでもらえますか?」
それが当たり前なのは、貴女の頭の中だけなのですよ。
だから聞いてるんですけど………こういう者は駄目ですね。
自分が絶対に正しいとなっている所為で、何を言っても無駄にしかなりません。
まるで<ソードモラ教>の連中みたいです。
「この方………<ソードモラ教>じゃありませんよね?
そう思えるくらいに話が通じないのですが」
ぼくがそう言うと、神殿長と副神殿長が渋い顔をした。
その反応って事は、この女官もしかして……
「<ソードモラ教>ではありません。
かねてからクーレイア女官は全ての神様の像を祀るべきだと主張していたのです。
ですが既に絶えて久しいこと、そしてお祀りの仕方が分からない事で断念せざるを得なかった。
そういう事情があるのです」
「つまり、仮にアッシュ殿を神殿に招いても、我が神殿にはお祀りの仕方が分かる者が居ない。
そして仮に分かっても、あの夢があるまでは反発が相当に強かったのです。
その中でも彼女は頑張っていたのですが……」
「頑張り過ぎて拗らせちまったかい?
他の者の迷惑も考えずに勝手な事を言い出してる時点で論外だよ。
あんたは自分が正しいと示したいだけじゃないか。
それは2人を利用しようとするヤツと一体どこが違うんだ? 同じだろうに」
「私は拗らせてなど居ませんし、ずっと正しい事を言ってきただけです。
神殿には全ての神様の像が祀られるべきなのは当然でしょう」
「それはあんたや神殿の正しさであり、あたし達にとっては正しくとも何ともないんだよ。
それを分かれと言ってるのさ」
なんですけど………この類の方は理解しないだろうなぁ。




