04-58-0183
Side:アッシュ
私達はラフィルが王都の副神殿長に呼ばれたので、一緒についていく事にした。
何が起こるか分からないという事もあるし、力で神殿に留めようとする者も現れるかもしれない。
気を付けるに越した事はないので一緒に、となった訳だ。
神殿に着いたので見てみるが、外からでも本当に大きい建物だと思う。
王都だから仕方ないし、象徴となる物も必要だ。
更に神様を祀っている場所なのだから、みすぼらしい建物でいいはずが無い。
ないのだが………
「ここまで立派な建物が必要かしら? とは思うわね。
流石は王都の本神殿という気はするけど、この神殿を建てるのにどれほどの費用が掛かったかを考えると………。
それに維持費も相当に掛かるだろう事は見た目で分かるわ」
「とはいえ、王都の神殿はその国の本神殿です。
みすぼらしい見た目では笑われてしまいますし、それは神様を侮辱される事と変わりません。
そのような事は決してあってはいけないこと。なので豪華にする他ないのですよ。
私も何度も思った事ですが……」
「まあ、神様を愚弄させる訳にはいかないだろうさ。
それなりの見た目はしていなきゃいけないし、見た目で判断するヤツってのは多いからねえ。
そんなバカにも分かるようにするには、立派な建物は必要だろうとは思う」
「王城が立派で豪華なのも、その国の象徴だからですしね。
その国の象徴が貧しい小屋に住んでいたら、それだけでその国はバカにされますよ。
それもまた、あっていい事じゃありませんからね」
「そういう意味では、ラフィル殿が葛藤するほど豪華でなければいけないのだろうな。
今の神殿は知らないが、かつては清貧を旨としていたようだし」
私がそう言うと、副神殿長は何とも言えない顔をした。
神殿では特に何かを禁止している訳ではないので、酒をかっ喰らったりとしているからな。
それが清貧か? と思うような事もある。
違法闘技場のあった、あの町の神殿の連中もそうだった。
「清貧を旨とするというのも、今や建前のようなものです。
元貴族の者は、どうしても質素な食事では納得しません。
それに、多くの寄付があるのも事実なのです。
それをあの者達も知っているので……」
「自分達の親が寄付したものなんだから待遇を良くしろって言ってくるわけね。
それは面倒臭いでしょうよ。
貴族の寄付っていうのがどれほどの物かは知らないけどさ。
でも神殿の一人頭って考えたら、大した物にはならないと思うけどね」
「そういう事を言う者は、自分の親の寄付を自分にだけ寄越せと言いますよ。
逆を言えば、そういう事を言い出さない者ほど上にあげるべきだと思いますが………隠しているだけの場合もありますしね。
難しいところでしょう」
「とかく心の内とは分からぬもので………そういった失敗というのもありました」
「仕方ありません。
かつてはそのような素振りも無かった者が………という事はあります。
その場合は地位が問題なのですよ。
その地位に着いたからこそ、欲に負けたという事はありましてね。
その地位に左右されないかどうかは、なかなかに難しい問題なのです」
「結局は自分さえ良ければいいってヤツなんだし、すぐに切り捨てればいいと思うけどね?
全体が腐るよりは遥かにマシだし、そんな奴らを神殿に置いといても仕方ないだろうに」
そんな話をしながらも神殿を見て回るが、特にどうこうと思う事も無かった。
前に毒を治してもらった浄化の女神の像は、前回見た時と変わっていない気がする。
が、リビ殿は邪神以外がどうでもよくなっていると言っていたしな。
それで助けてもらえたのだろう。
言い換えれば、必ず邪神の復活を為せという事だ。
そういえば………私は三柱の神の子なのだよな?
その割にはコッカトリスの毒でやられた訳だが………あの毒は神でさえ殺せる毒なのだろうか?
それとも百万分の一まで弱くなっているから耐えられなかった?
どちらにしても神の子だからと言って、毒を受けても問題ないという事は無いのだろう。
今までと同じように、気を付けて戦うしかないな。
毒消しがあったら買っておいた方がいいかと思うも、並の毒消しでは治せないだろうしな。
それに異空鞄に入れていても、肝心な時に薬効が無くて使えないのでは話にならない。
なので事前に買うのは無しだ。
おそらくジャネスみたいに、毒消しを無視して先行するなんて事をしなければ大丈夫だろう。
毒消しが出来てから狩りに向かえばいい。
問題は殺し屋とか盗賊とか、そういう連中が使う毒だ。
あいう連中は強力な毒を投げナイフなどに塗って投げつけたりするからな。
【集魔法】を使って確実に防がねば。
………うん? 【集魔法】? 今思ったんが「アッシュ!」だが……
「なに浄化の女神の像の前でボーッとしてんのよ。
向こうで呼んでるから行きましょ」
「え? あ、ああ………。そうだな、行くか」
「何か気になる事でもあった?」
「前に毒を受けたのを思い出してな。
三柱の神の子だろうと、コッカトリスの毒じゃ死ぬようだ。
なので、なるべく受けないように【集魔法】で防ぐしかないと思っただけだよ。
後は【集魔法】で敵のバランスを崩させるとかな」
「あー、引き付けるから?」
「そうだ。いきなり引き付けられればバランスも崩れよう?
そう言う意味でも使える魔法だと思ってな。
まさかそんな加護魔法だとは知らなかったが」
「誰も使えないなら、記録から無くなるのも仕方ないわよ。
使える者が出て来なくなって千年も経ってるんじゃね」
私と肩に乗っているマーヤは皆が集まっている場所に着いた。
ちょっと待たせてしまったみたいだが、見ていたのが浄化の女神の像だったからか何も言われなかった。
邪神と対を為す神だからか、それとも前回の事を覚えていたのか。
何故か浄化の女神の女官も居るが、彼女はいったい何の為に居るんだろうな?
他にも大柄の男性が居るが………
「皆さん、ようこそ。
そして古き時代の方、ありがとうございます。
私は王都の神殿長を務めているボルガントムと申します」
「私は古き時代、ウェッドリーベル国の王都で神殿長をしていたラフィル・ウド・ミーシャンと申します」
ラフィル殿を筆頭に私達も挨拶をし、それが終わったら一室へと通された。
そこは資料庫のような場所だったが、そこにあるテーブルの上に複数の本が並べられていく。
どうやら儀式関連の書物らしい。
「申し訳ありませんが、これらが重要な儀式に関する書となっております。
それなりに多いですが、宜しくお願いします」
「分かりました。
といっても、私の生きていた時代はもっと多かったので構いませんよ。
簡略化されたり廃された儀式もあるのでしょう。
私が神殿長の時にも儀式が多すぎると問題になっていましたので」
「儀式が多すぎるって………それが神殿の仕事でしょうに」
「そうなのですが、全ての儀式が必要な訳ではないのです。
いつから始まったかは明確に分からないのですが、中には古い時代に思い付きで始まった儀式などもありましてね……」
「いや、思い付きって………なんだか急にバカバカしい話になってきたわね」
「そこまでバカバカしい話ではありませんよ。
渇水状態でしたが恵みの雨が降って作物が豊かに育った。
これは神の思し召しに違いない、なので盛大に祝わねば。
となって始まった儀式などがあるのです。
決して意味が無かったり、無駄な事という訳ではありません」
それなら重要では? と思ったのだが、よくよく考えると儀式をせずとも豊かな年は豊かかと思い直す。
つまり神様は関係なく運が良かっただけ。
それで神様を讃える儀式をするのは、おかしいという事なのであろう。
そういうのが多くなれば、確かに儀式が多すぎるという形にもなるか。
儀式をするにもお金が掛かるしな。
ブックマークありがとうございます




