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 Side:ラフィル



 神殿から来て派手な失敗をした者達が帰った次の日。

 なぜか宿に神殿の者が押しかけてきました。


 なぜ自分達が恥の上塗りをしていると気付かないのでしょうか?

 幾らなんでも頭が悪すぎる気がするのですがね?


 「私達はご説明したように貴女の力を必要としています。

 なので神殿にお越しください」


 「申し訳ありませんが、お断りします。

 私には神殿の助力が必要ありませんので」


 「えっ?」


 どうやら今度は純朴な者を寄越したようですが、もしかして昨日酒場に愚か者が訪ねて来たのを知らないのでしょうか?

 知っていてこの者を遣わしたのであれば、胡散臭(うさんくさ)い事このうえないのですがね。

 相手にどう思われるかという認識すらありませんか。


 「何故ですか? 私達は平民を救う事もしているのですよ」


 「ああ、その物言いの時点であり得ません。

 神殿が救う者に平民も貴族も貧民も無いのです。

 貴女のその物言いで、今の神殿が駄目だというのもよく分かります。

 どうぞお引き取りを。私に今の時代の神殿は必要ありませんので」


 「しかしで「もう止めたら?」すね……」


 「あんた達は要らないって言われてるの。

 まだ分からないの? それとも言われなきゃ分からない?

 昔と違って、今の神殿は腐ってるって言われてるの。

 そもそも<ソードモラ教>なるものがあるんだしね」


 そうマーヤさんが言うと、我が意を得たりと口を開く女性神官。

 なぜそこでそういう態度になるのか全く理解できません。

 普通は「一緒にしないで」とか「神殿は関係ない」と言うところでしょう?


 「私達もアレには困っているのです。

 民が訪ねて来てはアレは本当なのかと聞いてくるのですからね。

 そもそも異なるほしの神とかいうのが分かりませんし、あのような者を神と信じる事など出きぬというのに……」


 「ならば即刻お帰りを。

 私はあの異なる星の神様は間違いないと信じておりますので。

 貴女のような者がいるから神々が愛想を尽かされたのだとよく分かります」


 「な!? なんという無礼な物言い!!」


 「無礼はアンタでしょうが。お願いする立場で何様のつもりなのよ。

 昨日も貴族家か分家の者が来てたけど、同じぐらいに頭が悪いわね。

 神殿ってバカしか居ないの? それともバカしか上にあがれなくなってんの?」


 「なんと非礼な者達なのでしょうか!?

 必ずやお前達をお父様に言いつけて潰してやりますからね!!」


 「どうぞ、どうぞ。

 “オレンジ髪”の“妖精族”である私を潰せるなら、実家の父親に泣きつきなさい。

 いつでも掛かってきていいし、何なら暗殺者を嗾(けしか)けてもいいわよ。

 その時にはお前と実家が終わるから」


 「………」


 口をパクパクさせていますが、オレンジの髪色である事に気づいたようですね。

 スゴスゴと帰って行きました。


 とはいえ当然です。

 貴族家であれば、娘の愚かな行動よりも【生魔法】使いの方が優先度は上ですからね。


 娘はしょせん貴族家の一員でしかなく、それよりも当主の方が優先されるのは当たり前。

 ならば当主のもしもの時の為に切り捨てられるのは仕方がありません。


 何故ああも愚かな者達が次々と来るのかと思いますが、どうやら本気で権力争いのようなものがある様子。

 昔も全く無いとは言いませんが、そもそも貴族家や分家の者が神殿に入って来る事はありませんでした。

 神殿のお勤めもまともに出来ない者達ばかりでしたからね。


 それに神殿は全ての者に対して開かれています。

 なので貴族のような特権階級とは根本的に合いません。

 にも関わらず、神殿の中にまでそんなものを持ち込むとは………


 本当に見放されたのは、そういう部分ではないでしょうか?

 もちろん<ソードモラ教>の事もあるのでしょうが、本質はそこでは無い気がします。


 …

 ……

 ………


 あれから2日後。今度は副神殿長という者が謝罪に参りました。

 何故か疲れ切った顔で。


 「申し訳ございませんでした。

 まさか愚かな事をしておきながら、それを隠蔽(いんぺい)するという子供染みた真似をするなど……

 いい大人であるという自覚すら無いようでして。

 本当に申し訳ございません」


 「まあ、言葉は悪いのですが、あんなものとしか思っておりません。

 が、そもそもどこで私の事を知ったのでしょうか?

 私は自分の素性を晒してはいないのですが?」


 「………」


 情報源は秘匿する。

 つまりこれからも下らない事に利用するという事ですか。

 副神殿長にある者でさえコレとは………


 「あの、神殿の恥ですので、どうか皆さん内密に。

 実は、神殿長が陛下より、ラフィル殿が千年の昔に<ソードモラ教>の被害を受けた方だと。

 たまたま運よく助ける事が出来た者であり、神殿には関わらせずにそっとしておくようにと話されたそうです」


 「ああ、もうそれだけで分かったわ。

 神殿長は情報を持ち帰り、重要な役職にある者に話した。

 当然よね、末端の者が愚かな事をするかもしれないもの。

 でも、その立場のある奴らは……」


 「はい。下の者に教えて終わりです。

 言い含める事もせず、それどころか実家が対立している貴族家の者にあえて流す始末でした。

 その所為で愚かな者が動いたのですが、その動きをさせて足を掬うつもりだったようで……」


 「それで? 神殿内ではお咎め無しかい?」


 「そのような訳にはいきません。

 陛下からの命をむしろ裏切る形になってしまったのです。

 早急に処分を決める為に、昨日一日ずっと会議でして。

 途中仮眠をとりつつ、今日の朝にやっと終わったので謝罪に参りました」


 「それで疲れ切った顔をしてんのかい。

 ご苦労様だと言いたいところだけど、自分達のトコの失敗だ。

 それも王様が関わってるんじゃ、支援も減らされかねない」


 「はい、まったくもって仰(おっしゃ)る通りで。

 下の者達ならばまだしも、上の纏める立場の者までコレでは………」


 「流石に今後の見通しも暗いわね。

 それで、今の内に排除してしまおうと?」


 「はい。

 とはいえどこかに飛ばすとそれはそれで現地から文句を言われますので、神殿を辞めて俗世に戻るか、それとも一番下からやり直すかを選ばせました。

 まあ、全員が実家に帰るという選択をしたので、私どもとしては助かりましたが」


 「その者達は実家に戻って果たして大丈夫なのですかね?

 正直に言って、実家も戻って来れられては迷惑では?」


 ラブ殿がそう言うと、副神殿長も多少マシになった顔で頷きつつ続きを口にします。


 「その通りです。が、神殿に戻る事は出来ません。

 今回の事は已むに已まれぬ事情での俗世への回帰ではありません。自身の失敗が原因です。

 ですので己の責においての自主的な俗世への回帰となります」


 「なるほど、そういう事ですか。

 神殿には自らの意思で俗世に戻った者は、二度と迎え入れてはならないという鉄則があるのです。

 神殿を都合の良い避難所に使われる可能性がありますので、それを潰す為のルールとなります」


 「はい。今回の者達には全て自ら俗世へと戻るという事を文書にさせました。

 これで神殿に戻そうとしても出来ません。

 俗世へと戻った者の名は回覧で出されますし、各神殿は書き取って書面にする決まりになっています。

 ですので、おそらくは防げるでしょう。

 地方の神殿でも迷惑でしかありませんので……」


 「今さら戻って来られてもっていう年齢でしょうけど、そんな愚か者が自分の血縁なんだから、どうしようも無いわね。

 素直に諦めろって言うくらいかしら」


 「ええ。

 ……あの者達の言う事とは別に、一度神殿へと来ていただけないでしょうか?

 こちらは神殿にという訳ではなく、今の儀式を含めたものが果たして正当なものなのかどうか。

 それが私達には分からないのです」


 「………もしかして<ソードモラ教>に捻じ曲げられてる?」


 「その可能性があるのです。

 だからこそ、千年前の神殿長であった方の目で確かめて頂きたい。

 そのお願いとなります」


 なるほど。あの狂った連中が儀式すら捻じ曲げたかもしれない。

 それは十分にあり得る事です。

 それを言われては、私も行かない訳にはいきませんし、これを気に邪神様の立場を回復しましょう。


 狂愛と言われたのです。

 邪神様の御立場が良くなるのであれば、浄化の女神様も御納得されるはず。


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