04-56-0181
Side:ラフィル
ガルセンツ王国の王都に来て3日。
早いのか遅いのか分かりませんが、ここ王都の神殿の者がやって参りました。
色々綺麗な言葉を吐いていますが、本音はたった一つ。
「自分達についてこい」というもの。
「では、参りましょう」
「私は参るとは申しておりませんよ? 貴方が聞いたのは幻聴でしょう。
そのような方から聞く言葉などありません。
即刻お帰り下さい。話す事もありませんので」
「貴方には無くとも我らにはあるのですよ。
さあ、参りますよ」
「何を意味の分からない事を言っているのでしょう?
このような者ばかりとなっているのであれば、それは神々も愛想を尽かされて当然。
まことに嘆かわしい事です」
「「「「「………」」」」」
私の所に来た神殿の者達は射殺さんばかりに睨んでいますが、大した事はありませんね。
連中にされた事の方が遥かに苦しく痛みを受けるものでした。
それから比べれば、彼らの視線など生温いものでしかありません。
下らない。
「あまり我々の手を煩わせない方がいいぞ?」
「今まではそうやって脅せたのでしょうね。今までは。
しかしあの異なる場所の神様が暴露してしまわれました。
今の神殿が碌なものではないという事を。
さて、横暴に振る舞う神殿の者を見て、民はどのように感じるのでしょうね?」
「「「「「………」」」」」
自分達の言い分を潰されると睨んで圧力を掛ける。
やっている事が幼稚過ぎて話になりませんね。
この時代の神殿の者が、ここまで堕落してしまっているとは……
本当に嘆かわしい事態になっていますが、コレを見ると神殿に行かなかったのは正解だとしか思えません。
「いつまでここに居るつもりなのか知らないけど、ここは酒場でしかも昼食を食べてるのよ?
幾らなんでも非常識に過ぎるでしょ。
これが神殿のやり方? だとしたら神殿内の全てが<ソードモラ教>と変わらないって事になるわね」
「「「「「!?」」」」」
マーヤさんが茶々を入れる感じで言うと、神殿の者達は慌てて周りを見回しました。
周りからどう見られるか?
これは神殿にとって大事な事だったのですが、今や体面すら気にしない組織に成り下がったようです。
神殿は弱者の味方である。その建前は守らねばならないものでした。
言い方は悪いですが、そうする事によって権力ではどうこう出来ない強さを得たのです。
民の拠り所であるが故に手を出せない。
そうやって神殿は立場を確立してきたというのに……
「そのような事も知らないようで。情けないやら恥ずかしいやら。
後の世の神殿の者がこの程度とは思いもよりませんでした」
「仕方ないわよ。そいつらどうせ貴族家か分家の連中でしょ。
お金欲しさにそういうヤツを入れるから、神殿内部で醜い争いを始めるのよ。
もはや人々の拠り所じゃなく唯の権力争いの場になってるんでしょうね。
だから腐った貴族と同じ事をする」
「なんだと!?」
「腐ってない立派な貴族や分家だっていうなら名前を出しなさいな。
“オレンジ髪”で“妖精族”のわたしが聞いてあげるから。
お宅の神殿に入ってるヤツどうなってんの? てさ」
「「「「「………」」」」」
昔もそうですが、今も変わらず【生魔法】使いは地位が高いようですね。
神殿の者達の顔色が随分と変わりました。
マーヤさんの顔を見ていても、髪の色までは見ていなかったようで。
【生魔法】使いの、それも妖精族を敵に回すのはマズい。
それも相当にマズいですからね。
彼らの方が実家から切り捨てられるでしょう。
俗世の事を神殿内に持ち込んでいるのでしょうが、愚かとしか言い様がありません。
「どのみち私はハンターという立場ですので、貴方がたが命じたとして、それに従う義務など無いのですよ。
………この通り、ハンター証も持っていますので」
「「「「「なっ!?」」」」」
「ハンター協会が先に保護の為に動いたのさ。
お前達みたいなマヌケが出て来るのは分かっていたからねえ。
神殿の名前を自分の為に使い、恥を晒す。
本当に愚かとしか言い様が無いし、自分達の首を絞めてそんなに楽しいのかい?」
「これで手を出せばハンター協会から正式に抗議が行きますし、そうすると貴方達の神殿内での名は地に落ちますね?
恥を晒したマヌケとなれば出世の道も何も無くなるでしょうけど、そもそも下らない事をしにきたのが悪いんです。
ですので自分を罵倒すればよいと思いますよ?」
「「「「「………」」」」」
その後、結局彼らは去っていきました。
そもそもハンターですから無理矢理に連れて行く事は出来ませんし、それをすると王都のハンター協会を敵に回します。
あのマスターと呼ばれた女性は貴族。そのうえ王と親しい子爵です。
神殿には寄進もありましたが、同時に運営の多くは領地貴族や王城から頂くのです。
そのお金で運営している以上、国に反するわけにはいきません。
国の無視できない民の拠り所であり、同時に国に従うので運営の援助をお願いする。
要するにどちらが上だとかは無く、持ちつ持たれつの関係。
これがちょうど良いのですよね。
お互いに無視できないからこそ、お互いに協力する。
だからこそ成り立っていたのですが、権力側から多くの者が入ってきて構造が変わったのでしょう。
「多分そうでしょうけど、それにしたって情けない連中だったわ。
平民は命じたら従うだろうっていうのが、完全に透けて見えてたじゃない。
あまりにも無様でしょうよ、アレは」
酒場に他のお客さん達がいるにも関わらず、堂々と言っていますね。
とはいえ今の時代の神殿がアレでは、擁護する気にはなりません。
あまりにも情けないですし、アレでは助けようという気すら起きません。
それにあの者達は気づいてなかったのでしょうか、私が邪神様の加護を持つと言う事を。
いえ、今はもう邪神様の加護を持つ者は生まれないと聞いたので、今の時代の者では見分けがつかないのでしょうね、
邪神様が砕かれた後の事ですから、どうしようも無いのかもしれません。
それよりも食事も終わりましたので、午後の狩りに行きましょう。
まだ私は木の2級でしかありませんし。
「木の2級って言っても、獲物の解体は出来るし戦いもできるじゃない。
普通の駆けだしに出来る事じゃないんだけどね。
解体が出来るなら解体所で働くし、村の自警団なんかに所属しててもラフィルのように強い者はいないわよ。
っていうか戦いに慣れすぎ」
「古くから神殿の者はモンスターと戦ってきましたし、その肉を頂いてきましたからね。
僻地にある神殿を維持するには、自分で何でもできなくてはいけません。
私も若い頃は僻地に行きましたし、そこで生き抜いてきました。
それが当たり前だったのです」
「そりゃ今の神殿の連中が相手にならないはずよ。
そもそも今の連中なんて神殿に篭もってるだけなのが多いし、何してるか分からないもの。
神に祈りを云々とか聞いた事あるけど、神様に見放された連中の言う事なんて信用ならないしね」
「そういやそうだね。
神を讃える儀式があるとか聞いた事があるけど、そういうのも今思えば怪しいもんさ。
何もしない事を儀式だとか言ってんじゃないかと思うよ。
さっきの連中を見てるとね」
「確かに酷かったですからね。
ついてきて当たり前という態度でしたし、思い通りにならないと睨むって………
どう考えても完全に子供ですよ。
あの者達には全く自覚が無かったようですけど、あまりにも小さい者達でしかありませんでした」
「上から呼んでこいと言われていたにしたって、あまりにもお粗末な連中でしかない。
アレをお使いに出すという時点で駄目でしょ。
まあ、欲に濁った感じがしたから、実際には勝手な事をしただけでしょうけどね」
「ついでに勝手な事をした奴らで切り捨てられるだろ。
あんな失敗をしたんじゃ、どのみち使えない奴らでしかないし」
使えないかどうかは知りませんが、少なくともまた接触してくる気なら切り捨てるでしょうね。
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