04-55-0180
Side:ラブ
デットリス伯爵の妻がセルメンタ教国の方だとは知りませんでしたが、ようやく色々なものが繋がってきましたね。
その中心にあるのはセルメンタ教国ですが、そう簡単にこちらの言う事を聞くのでしょうか?
「セルメンタ教国に問い合わせてみるが、おそらく適当な返事をしてきて終わりであろう。
そなた達を派遣する訳にもいかぬし……困った事だ。
そもそもだが、そなたには国内の<混沌の種>を消してもらわねばならん。
特にアレが邪神の肉体の欠片となればな」
「夢では邪気に耐えられなくなったとありましたから、<混沌の種>とは相当の邪気に汚染されているのでしょう。
問題はそれが分かっただけに、悪さをする者が出かねぬということ。
神の力を取り込めるやもなどと考えて、愚かな事をしかねませぬ」
「そなたらの話を総合すれば、邪気に強い女官ですら耐えられなかったものであろう?
モンスターは耐えられるみたいだが、我ら生き物に耐えられるものではあるまい。
とはいえ、愚か者は関係なく手を出しそうではあるがな」
「でも今までに成功した事は無いって聞くわよ。
もしかしたら<ソードモラ教>は成功したのかもしれないけど、でも下っ端は知らない感じなのよね。
<混沌の種>を不浄なゴミと言っているくらいだし」
マーヤさんが言った事に対して王様と宰相様が考え込んでいますが、どうかは分からない事なので、すぐに考えるのを止めたようです。
あくまでも想像ですし、意図的にワザとそう言っただけかもしれませんからね。
アッシュさんいわく、狂った者の感じがしたそうですが……それもそう見せているだけもしれません。
頭のおかしい集団の者ですから、元々おかしいですしね。
だからこそ、そういう狂った雰囲気などがあるのかもしれません。
だからといって、その相手が狂った言動と行動をとり続けるとは限っていません。
アッシュさんの前では狂った姿でも、それ以外では冷静な姿かもしれないのです。
一部の事にのみ、やたらに激しい反応を見せる者というのは居るので。
「とりあえず、そなたらには先に国内の<混沌の種>を消して回ってもらいたい。
セルメンタはまず書簡だな。
どうせまともな返事などしてこんであろうが、流石に怪し過ぎる。
その神官とやらも含めて問い合わせねばな」
「はっ。ですが、まずは調査内容が届いてからですな。
それから外務方と文言の調整をせねばなりませぬ。
あの国も一言一句に五月蠅いですからな。
己らは曖昧に受け取れる言葉しか使わぬ癖に、こちらには断定しろだ何だと喚いて来ます」
「あそこはそういう国だ。
敵には厳しく追及し、己らが攻められると避けて逃げる。
または、のらりくらりとかわす。左様な事しかせん」
「さて、指針が決まりましたので手を動かしましょうか?
でなければ遅れるだけですぞ」
「………はぁ。とりあえず御苦労であった。
報酬はハンター協会より受け取れるはずだ。
そうであったな?」
「はっ。既にハンター協会に預けてあります」
「では、これで終わりだ。今回の事は本当に御苦労だった。
我は執務を終わらせぬと自由な時間も無いのでな、急がせてもらう」
忙しそうですし、何より長居したくないですからね。
挨拶をしてすぐに出たぼく達は、そのまま王城も出て貴族街から平民街へ。
そしてハンター協会へと移動します。
中に入ってサブマスターに話すと、何故かマスターの部屋へ。
嫌な予感がしますね………
「ご苦労様だったね。
伯爵からの依頼だったと言っても、実態は国からの依頼だ。
どうだったかの報告を頼むよ」
「またぁ?
ヘイデルス子爵、アドマグス伯爵、そして王にも同じ報告をしてきたんだけど?
これで同じ報告をするのって4回目よ?」
「と言ったって仕方ないさ。こっちは報告を聞いてないんで知らないんだ。
報酬の為にも我慢しな。
ま、同じ報告を4回もさせられるんだから、面倒だという気持ちはよく分かるけどね。
こっちでも纏めておかなきゃいけない情報の可能性が高いんだ。諦めな」
「仕方ないわねえ」
そうは言いますが、一番大変なのはアッシュさんなんですけどね。
特に転移させられてしまいましたから。
…
……
………
「そんな事があったのかい。
それにしても碌な連中じゃないね<ソードモラ教>は。
それにそんな頭のおかしい集団が今も居る可能性が高いってんじゃ、流石にシャレになってないよ。
この情報は聞いておかなきゃいけない情報じゃないか」
「それと面倒臭いは別よ。
何回も同じ事を説明させられる身にもなりなさい。
疲れてくるのも嫌になってくるのも当然でしょうに」
「主に説明してるのはアッシュなんだし、疲れるのはアンタじゃなくてアッシュだろう。
それに、まさかあの神様に実際に会ってたとは思わなかったよ。
そのうえ、アッシュが神様の子である事が確定したとはねえ。
しかも三柱の子だ」
「鬼神とかいう聞いた事の無い神だけど、おそらく東の方にある島国の種族の神でしょうね。
向こうには鬼族という種族が居るって聞くし」
「オーガみたいな見た目だけど、オーガよりはちょっと痩せ型。
確かに言われてみればアッシュは鬼族に近い見た目だよ。
言われるまで「ピン」と来なかったけどさ。
それでも言われてみりゃ、確かにって感じだ」
「それだけではありませんし、そもそもメインは邪神の精なのでしょう?
そこに浄化の女神の肉と鬼神の肉を混ぜた………
よく分かりませんけど、下界の者とは生み出し方が違うのでしょうね。
その割には精が腹の中にあったと言っておられたそうですし、よく分かりませんね」
「まあ、神様がどうやって子を為すかはどうでもいいじゃないか。
下界のアタシ達が考えても無駄さ。
それより次に行く場所を選定するまではゆっくりしてな。
陛下からすりゃどこでも良いんだろうけど、こっちとしてはアンタ達に優先的に行って貰いたい場所とかあるからね」
「ですが、まずはラフィル殿の登録をしてしまいましょう。
でないと嗅ぎつけた神殿の者どもが、ラフィル殿の身柄を寄越せとか言ってきかねません。
ラフィル殿の知識も希少なものですからね、連中が狙ってきても何ら不思議はないですし」
「それが奴らの現実だし、だからこそ神様方が愛想を尽かしたっていうのにね。
それでも連中は自分達の権威の為に、バカな事を止めないんだろうさ」
「既にその権威も怪しいものだけどねえ。
だって神殿の愚か者の所為で多くのの神様が去った。
知識の神様が最初とはいえ、全ての神様が<ソードモラ教>の所為で去ったとは思えないよ。
その後に邪神を悪し様に言い続けてるんだ」
そういえばそれがありましたね。
神殿はずっと邪神を悪だと言い続けてますし、それは<ソードモラ教>の非道を隠す為かもしれません。
そうでなくても、神様を悪し様に罵るという事をやってきてるのは間違いないわけで………
邪神という仲間を失った神様方が、それをどう思われるかと考えれば………神殿は本当に碌な事をしていませんね。
真っ先に離れるはずの浄化の女神が離れていないのは、邪神の事があるからでしょう。
それ以外にはあり得ないと言い切っていいでしょうね。
あの神様も「狂愛」と言ってましたし、邪神以外はどうでもいいと言っておられました。
そこまで浄化の女神を狂わせたのも、神殿の連中かもしれません。
「その「狂愛」っていうの、初めて聞いたんだけど?」
「言っても仕方ない事なんで、わざわざ言わなかっただけよ。
聞かされたって困るでしょ?」
「確かに困るんだけど、今聞いちまったのは?」
「聞き耳立ててるのが悪いんじゃない?」
「普通にしてても聞こえる声の大きさだったろう!」
確かにそうですし、これはつい口走ったぼくが悪いですね。
とはいえ聞いていない事に出来ないし無理なので、諦めて下さいとしか言えませんが。




