04-54-0179
Side:マーヤ
昨日宿で休んだ私達は、王城へと進んでいる。
ハッキリ言って足取りは重いんだけど、行くしかないのよねえ。
まあ、私は自分の足で歩いてなくてアッシュの肩に乗ってるだけだから、足じゃなくて気分が重いだけではある。
他の皆は足取りが重い感じねえ。
ラフィルも別に喜んでなくて面倒臭そうな感じかしら。
元々は神殿長なんだし、王族との面倒臭い折衝もやってきたんでしょうしね。
足取りが重いのも分かるわ。
私達は王城を守る兵士にアドマグス伯爵が宰相へ宛てた手紙を見せ、それを確認した兵士が中へと聞きに行った。
しばらくして戻ると、兵士から中に入る許可が出たわ。
外でいちいち待たされるんだから面倒で仕方がない。
だから来たくないのよ。
そのまま王城の入り口まで行くと、案内の兵士が居たのでついていく。
すれ違う度にジロジロと見てくるけど、鬱陶しくて仕方ないわね。
特にメイド、お前らよ。
こっちの服装をチェックしてるのが丸分かりだけど、庶民がドレスなんぞ着ているわけが無いでしょうが。
にも関わらず薄く笑うって、何なのかしらね、まったく。
王城で働いている者って貴族家の出身ばかりだからこうなるんでしょうけど、本当に鬱陶しくて仕方ない。
お前らに値踏みされる筋合いは無いっての。
っていうか、招かれた客を不快にさせるって、メイド失格なんだけどね?
それすら分かってないお前らは何なのよ。
コンコン
案内の兵士が宰相の部屋をノックして中に確認すると、許可が出たので扉を開ける。
どうやら執務室みたいだけど、今回はここで話すようね。
何故か王も居るけど、元々からして宰相と王の執務室は同じ部屋みたい。
その方が移動も無くて楽なのでしょうね。
「よう来てくれたの。
流石にあの神様の夢もあったし、アドマグス卿からは重大な話がされると文にあった。なので執務室とした訳じゃ。
そなたらもその方が都合が良かろうからな。
それはともかく座って報告を頼む」
わたしはアッシュの肩から離れ、ソファーに座ったアッシュの膝の上に座る。
ちょっとジャネスが睨んでくるけど気にしたら負けよ。
寿命の事で何かする気だろうし、私が有利なところは徹底的に利用しないとね。
「報告を始めますが、宜しいですか?」
「うむ、構わぬから始めよ」
王様がそう言ったから始めたけど、忙しいのかこっちを見ないわね。
ま、一国の王ともなれば、一日に捌かなければいけない書類も膨大でしょうしね。
顔を向けている暇も無いか。そういう仕事だし。
「まず初めにアドマグス伯爵の領都であるマグナスへ。
そこで領地の副騎士団長を含めた五名の騎士と共に、次のヘイデルス子爵の領都ヘデルへ。
そこの酒場で大きな問題が発生しました」
「問題?」
王様が顔を上げたわね。
まさかデットリス伯爵家の領都ラクストンに行くまでに問題が発生するとは思わなかったのでしょう。
驚く気持ちも分かるわ。わたし達だって驚いたんだし。
「酒場で揉めた相手が居たのですが、そもそもそいつらは私を標的にしていたようです。
私が邪神の生まれ変わりかもしれないという事を知っていましたので」
「………つまり、誰かが漏らしたという事か。
続けてくれ」
「はい。
酒場で歌い手の邪魔をした者と諍いになり、その後は兵士に連れて行かれたのですが、何故か神殿へ。
そして神殿にて白に紫の髪の神官から罵倒、その後は揉めていた内の一人の者の所へと連れて行かれました」
「そもそも兵舎などに連れて行って調べるはずであろう? なぜ神殿なのやら………
この時点で話の雲行きが怪しいな」
「まったくです。嫌な予感しかしません」
「その男は赤髪だと思っていたのですが、実は染めているだけであり、本当は空色の髪の者でした。
そして暗闇へと転移させられたのです。
その後はランタンを取り出して進むも、長い手足に虫のような胴体が付いている者を発見。
これが邪神の女官でした」
「「は?」」
「邪神の女官です。
口からは意味不明な言葉しか聞こえませんが、心の声のようなもので「殺して」と言われました。
自分は邪神の女官であり、無理矢理に<混沌の種>を食わされて変貌したと。
だから殺してほしいと頼まれたのです」
「「………」」
「私は頼まれた通りに殺し、そして残った<混沌の種>を吸収しました。
その後は先に進んで行き、似たような見た目の元女官を倒し先へ。
途中で焚火のような物をしている人物を発見しましたが、それがあの夢の中に出てきた神様である、リビョルシエヌラトモエド殿でした」
「………つまり、お主は夢で見る以前に、あの神と会っていたと?」
「はい。
この下界を見守る神が減っていること、更に邪神が砕かれたのはこの星を見守る神の怠慢である事も教えられました。
その後は気づいたら消えられており、私は暗闇の中を再び出発。
元女官を殺し、おかしなモンスターを討伐していきます」
宰相も王も、執務の手を止めて真剣に聞いてるわね。
実際に真面目に受け取らないと困る事でもあるから当然だけど。
「その後、更に進んで行くと、キノコに触手が生えた姿の者を発見。
持っていた食料を触手に食べさせると、何故か軸の中からここに居るラフィル殿が出てきました」
「出て来た?」 「出て来るとはいったい……?」
「初めまして、宰相閣下に国王陛下。
私はウェッドリーベル国の王都で神殿長をしていた、ラフィル・ウド・ミーシャンと申します。
邪神様の加護を持つ者であったが故、あの夢の<ソードモラ教>とやらに実験をされた者の一人です」
「「!!!」」
「助けられたのはラフィル殿だけでした。
ラフィル殿の体はキノコの軸に残っていたのですが、他の女官の中には元の肉体がありませんでしたので……」
「そうか……それでも御一方を救えたのだ、十分であろう。
あの<ソードモラ教>とやらが如何に狂っておるかは、夢の内容だけで十分に分かる。
あそこまで悪逆非道な者がおるとは思わんかった」
「私もだ。
流石にアレは幾らなんでもな、「外道」以外に表す言葉が無い。
知識の神に愛想を尽かされたと見たが、当然だとしか思えなかったわ。
アレで神から祝福されておるなどと口走るのだから、常軌を逸しておる」
「その後は脱出口を探して右往左往しましたが、何とか脱出路を見つけて脱出。
するとデットリス伯爵家の屋敷の客間に繋がっていました。
そこで運良く休んでいた仲間達と合流。事の仔細を話します」
「アッシュが出て来てビックリしたけど、デットリス伯爵が<ソードモラ教>と関りがあったのは間違いないわ。
ヘイデルス子爵の領都に居た神官と【転移魔法】使いは、その前にデットリス伯爵家の領地に居たそうよ。
そこで【転移魔法】使いが転移地点を記憶したんでしょうね」
「【転移魔法】はその場を正確に思い描かんと転移出来ぬと聞く。
で、ある以上は、必ず一度は訪れた事がある場所となる。
となると、その時で間違いあるまい」
「その神官と【転移魔法】使いは、南のセルメンタ教国から来たんですって。
そうヘイデルス子爵が神殿から聞き出していたそうよ。
だからそいつらは既にセルメンタ教国まで戻ってるかもしれないし、デットリス伯爵家の家族もついていった可能性があるわ。
なんでも上品な仕草のお付きも居たそうよ?」
「………宰相。確かデットリス伯爵の妻は、セルメンタ教国の司祭の家の者ではなかったか?」
「はい、私もその事を思い出しておりました。
もしかしたら、デットリス伯爵の死亡にも関わっておるかもしれません。
それどころか、最初かそのつもりでの婚姻であったやも……」
伯爵の妻って外国の者だったの?
しかもセルメンタ教国って、あまりにも繋がり過ぎでしょうよ。
………とはいえ、仮に今までの事が計画通りでも、セルメンタ教国の所為だとバレるわよねえ?
セルメンタ教国から来た神官なんて怪しまれるに決まってるし。
にも関わらず、伯爵を毒殺するかしら?
なーんか、腑に落ちないわねえ。
どこかが違うっていうか、歯車が嚙み合ってない感じ。




