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 Side:ラフィル



 ここがガルセンツ王国とやらの王都ですか………

 見た事も無いので、やはり私が知る時代ではないのでしょうね。

 とはいえ懐かしいとか帰りたいなどとは全く思いませんので、どちらかと言うと観光気分でしかありませんが。


 まだまだ子供達が小さい頃ならば帰りたいと願ったのかもしれませんが、既に子供達の半数を見送った後ですからね。

 今更という気持ちしかありませんし、残りの子供達を見送らなくて良かったとしか思えません。


 流石に親より先に子供が寿命で逝くのを見るのは辛いものがあります。

 実際に老いて亡くなっている以上、病が原因でも寿命は遠くなかった。

 私が山髭族の寿命の半分を生きた辺りで、人間族の子供達は寿命だったのですしね。

 何とも言えない思いは今でもあります。


 伴侶が多い場合は何度そうやって見送るのか分からないくらいですから、それに比べれば私の方がマシなのでしょうけれど。


 馬車が王都の中に入って行きますが、私はその景色を見ながら色々と納得します。

 景色が変わり、国が変わっても、生きている者達は然して変わらない。

 地上の者が生きるという事は、時代が変わっても変わらないのだと安心しました。


 生きるという事に違いが無い以上、ここは私の生きた時代から続いている場所なのだと分かります。

 そんな中、貸し馬車の店に行き返却するのですが………パルデオムが名残惜しそうにしていますね。

 別れなのは理解しているようですが……


 アッシュ殿が首を撫でたりして落ち着かせてから後にしましたが、幾らなんでも懐かれ過ぎな気がします。

 何らかの理由はあるのでしょうが、神子(みこ)だからというのが一番妥当なのでしょう。

 考えても無駄な気がしますし。


 私達は宿をとった後、酒場へと行って夕食をとります。

 ここまでの間にも<混沌の種>を吸収してきたアッシュ殿は、思っている以上に魔力が伸びませんでした。

 ある程度以上は頭打ちになるのかもしれません。


 魔力を扱う修行をすれば増えるかもしれませんが、今まで魔力を使うのは【身体強化】ぐらいだったそうですから、そこまで鍛えられてもいないのでしょう。

 実際に魔力も鍛えなければ伸びませんし強くもなりません。


 アッシュ殿は神子(みこ)なので規格外なのでしょうが、それでも神様の子だと考えればそこまで多い訳ではない。

 魔力の多い妖精族の大凡(おおよそ)で三倍というところ。

 神様の持つ魔力としては少なすぎると言わざるを得ません。


 もちろん神々がどれほどの魔力を持たれているかなど存じませんが、流石に下界の者の三倍では少ないとしか思えないのです。

 百万分の一にまで抑えられている………というのが影響しているのであれば、あれぐらいなのかもとは思いますけどね。


 「妙に五月蠅いけど、何かあったのかねえ?」


 「急に騒ぎ始めたわね。いったい何があったのかしら?」


 私もそちらを見ますが、少々離れているので細かいところまでが聞こえません。

 周りも五月蠅いので余計に聞き取り辛いのです。

 それでも聞こうとしていると、外から入って来た者が大きな声で叫びました。


 「不死者だ!! 夢で言われた不死者が出たぞ!!」


 「なんだって!?」


 「神殿の浄化の女神様の女官が頑張ってるけど、とにかく不死者には手を出すなってさ。

 なんでも切っても刺しても潰しても、全く効かねえらしい。

 それどころか幾らでも治るんだとよ!」


 「幾らでも治るって………それって死なないって事か!?

 だから不死者なのかよ!」


 ざわざわ……ざわざわ………


 周りで様々に話が飛び交い始めましたが、不死者がそのまま死の無い者とすれば厄介でしょう。

 夢の中であの神様は浄化せよと仰(おっしゃ)られていました。

 なので下界の邪気を減らすという事と、邪気を浄化するという事をやれば問題ないはずです。


 ただし世界規模でしなければいけないので、それは容易な事では無いでしょう。

 必ず自分達には関係ないと無視する者達が出るでしょうし、それを考えると神様方が下界の者を見捨てられるのも当然だと思えてきます。


 「不死者っていうのも厄介ねえ。

 まさか潰しても死なずに回復するとか、メチャクチャじゃないの。

 それに浄化するしか方法が無いっていうのも厳しいわ。

 仕方ないんでしょうけどね」


 「【浄化魔法】が使える者もそこまで多くはないからね。

 場合によったら争奪戦になるかも。

 村から絶対に出さないとか、神殿には渡さないっていうのも増えるだろうね。

 貧しい村から神殿に入るってのもあるけど、村が渡すかを考えると………」


 「難しいとしか言えませんね。

 そもそも今でも村から出さないという所はありますよ。

 【浄化魔法】は作物を綺麗にできますので、農業でも重宝されたりしますからね。

 付いている汚れが綺麗に取れますから、良く育てるには便利ですし」


 「それで酷使される子供も居るから、神殿が保護したがるのも間違ってはいないのよ。

 ただ、今まで以上に出さないか、それとも髪を染めさせるかもね。

 それこそ村人にバレないようにする為にも」


 「あー……そっちの可能性もあるか。

 自分の子供が村に酷使されたんじゃ、やってられないだろうからね。

 村は協力しなきゃいけないけど、その協力は強制である事も多い。

 碌な目に遭わない子供が増えそうだね」


 「問題になれば国が動くかもしれないし、国が先に法を作るかもね。

 【浄化魔法】を使える子供を保護するってさ。

 領主の所に集めて派遣。この形が一番良いと思うわ。

 子供の間は家に居させて、大人になったら各地に派遣する所で働く。

 それなら悪い事にはならないと思う」


 領主が後ろに居れば、横暴な村長や町長などは撥(は)ね退(の)けられます。

 流石に貴族相手に大きく出るほどの愚かさは持っていません。

 そんな事をすれば首が飛びかねないのですから、大人しくするでしょう。


 かつての時代には自分達が従わなければ困るだろうと、領主に食って掛かる村長も居たと聞きます。

 が、末路は村長一家の皆殺しでしたからね。


 可哀想という意見もありましたが、それらは小さな声でしかありませんでした。

 何故なら領主に反旗を翻(ひるがえ)すとは反逆罪に該当するからです。


 それを知らなかったからそんな愚かな事をしたのでしょうが、愚か者の末路を辿るだけなのですよね。


 「ま、とにかく神様方が言われたのだから、わたし達は従うのみよ。

 「下界の者が生み出した邪気は、下界の者が何とかしろ」と言われたんだもの。

 何とかするしかないでしょ」


 「そもそもだけど、不死者ってヤツも何故不死者になったんだろうね?

 邪気ってそもそも何さ?」


 「邪気とは負の感情などから生み出されるとされています。

 特に誰かが殺されたりなどすると、多くの邪気が生み出され、る。

 かつてはそう言われていましたね」


 危ない、危ない。昔のように喋るところでした。

 今の時代にとっては千年前なのですから気を付けないと。

 昔ならば当たり前の常識であっても、千年後の今も常識とは限っていないのです。

 なるべく無難な話し方をするしかありません。


 皆さんも何かを感じたのか、話を合わせてくれるようです。


 「そうなのね。

 となると………誰かを殴ったり蹴ったり、あるいは殺したりしたヤツが邪気に染まって不死者になった?

 それとも誰かを怨み憎むあまりに不死者になったとか?」


 「どうでしょう? どちらの可能性もあると思います。

 それに邪気が集まってきたのかもしれません。

 邪獄樹になる木のように、何かしら邪気が集まる物というのはあります。

 その不死者になった方も、邪気が集まる要因があったのかもしれません」


 実際に私が生きていた頃でも、なぜ邪獄樹に邪気が集まるのかは分かっていませんでした。

 もしかしたら【集魔法】で邪気を集められるかもしれませんが、この事は公に言わない方が良いでしょう。

 もし言えばアッシュ殿が都合よく利用されるだけです。


 神子(みこ)である方が下界の者に都合よく利用されるなど、絶対にあってはいけません。絶対に。


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