04-50-0175
Side:マーヤ
わたし達は途中の村にも寄りつつ、<混沌の種>がないかを聞いて回る。
あればアッシュが吸収してしまい、なければ補給だけして通り過ぎる。
それらを繰り返して、ヘイデルス子爵家の領都ヘデルまで戻って来た。
子爵家に行く前に宿をとり、副騎士団長が子爵家に言っている間にわたし達はハンター協会へ。
そして支部長に説明して<混沌の種>を吸収する。
この時点で支部長はアッシュの事を何となくで理解したらしい。
もちろん口には出さないけれど。
吸収し終わったわたし達は宿に戻ったんだけど、その時には既に副騎士団長が戻ってきていた。
どうやらすぐに会いたいみたいね。
わたし達は子爵家に移動し、執事から客間に案内された。
既にヘイデルス子爵も待っていたので、早速話を始める。
「まずは私から。
私は兵士達に連れられて行きましたが、何故か連れて行かれたのは神殿でした。
そして神殿内に居た、白に紫の髪の者の前へ。
その者は邪神と<混沌の種>をゴミと言い、私を不浄の者と言っていました。
おそらくはアレが<ソードモラ教>の者だと思われます」
「…………白と紫の髪だといっても、全てがそうではあるまい?」
「ええ。
私もエスウェナル様にお会いした事がありますが、あの方はそのような方ではないと思います。
なので神殿内の者に限ってでしょう。
神殿内に<ソードモラ教>はあるようですし、神殿の者以外は知らないのでは?」
「うむ、おそらくはそうだろうな」
「その後、赤に染めた空色の髪の者に転移させられ、私は領都ワクストンの山の内部へと移動。
その中で<ソードモラ教>の実験で変貌した元邪神の女官に遭遇、そして殺す事になりました」
「なに!? 女官を殺しただと!?」
「変貌した、元女官です。
体は虫のようになっており、異常に長い手足で移動していました。
というより、変貌した元女官は大半が元生き物とは思えないような姿に変わるのです。
その中で唯一助けられたのが、そこにいるラフィル殿ですね」
ラフィルが子爵に頭を下げて挨拶したので、その後も話は続く。
んだけど、やっぱり引っ掛かるみたいね。
「助けたという事は、他の者も助けられたのではないのか?」
「お言葉ですが、見てもいない方には分かりません。
助けていただいた私でさえ、アレは殺す以外に救いが無い。
そうとしか思えませんでしたので。
私は運が良かっただけです。
その運が良かった私でさえ、かつての山髭族の姿からは程遠くなってしまっています」
「山髭族………」
あまり風貌の違いに驚いてるようね。
わたし達は詳細に聞いたから知ってるけど、もはや奇怪な存在というしかないのよね。
邪気で狂ってしまった者って。
むしろラフィルが生きていた事が奇跡なだけ。
「そうですね。ラフィルさんが生きていたのは奇跡でしょう。
それ程までに邪神の加護が強かったから、人型を保てたんだと言えます。
他の方は邪気に呑まれて変貌してしまった。
実際に人型の体なんて、どこにも残ってなかったそうですし……」
「ラフィルはキノコみたいな見た目に変貌していて、その軸というか茎? の中に体が残っていたらしいんだよね。
それでも触手が生えていたりという奇怪な姿だったそうだけど」
「そんな姿に……」
「それだけではなく、丸虫の姿であったり、触手の生えた魚だったり、円柱の肉だったりと形容しがたい姿形でした。
おそらく邪神の持つ神力が邪気で歪んだまま入ったからでしょう。
強すぎる神の力は、微量でも生き物にとっては毒なのだと思います」
「なるほど……」
ヘイデルス子爵も愚かではないんだろうけど、愚直なタイプだから「助けられたかも」って思うのでしょうね。
でも、その場に居なかった者が文句を言ってはいけないわ。
何も出来なかった者に文句を言う資格は無い。
「そこを調べ回り、全ての元女官を殺して鎮めた後は、様々に探して脱出路を見つけました。
そこから脱出するとデットリス伯爵家の客間の暖炉に繋がっており、そこで仲間達と合流。
後はそこに居た普通のモンスターを持って帰ってきています」
「モンスターを? それに何の意味があるのだ?」
「私が飛ばされた場所では邪気が濃く、その所為かおかしなモンスターが居たのです。
壺のような形をした肉に、口が異様に前方に伸びる狼、胸の辺りから触手が出ているコウモリが居れば、目が四つもある鼠も居る。
普通のモンスターとは姿形が違い過ぎるのです」
「モンスターまで、そんな奇怪な見た目になっておるのか。
しかし元女官達ほど変貌していないのは……」
「おそらく神力を吸収してはいないからだと思われます。
外で見つかる<混沌の種>以上に邪気で汚染されているのでしょう。
もしくは微量の神力も無いから、そういった変貌をするのかもしれません」
「統率者は微量な神力で変貌した個体って事ね。
おそらくだけど、モンスターの方が耐える力はあるんでしょう。
だから統率者になる……いえ、なれるんだと思うわ」
「邪気に対する耐性が無い生き物は容易く狂ってしまうって事ですね?
それも他の者よりもある邪神の女官でさえ耐えられない……」
ラブの言う通り、邪神の加護を持つ女官でさえ耐えられない。
かろうじて耐えられたのはラフィルだけ。
それを考えると、下界の生き物の邪気に耐える力は相当に低い?
「そこまで低くはないと思うがな?
むしろモンスターは邪気をある程度放出できるのではないか?
だから大量の邪気を取り込んでも無事なのだと思う。
そちらの方が話として筋が通っていると思えるのだが……」
「ですね、ぼくもそう思います。
そちらの方が自然ですし、だからこそモンスターは邪気で汚染されずに生きているのでしょう。
体に溜まったら放出する形で」
確かに邪気だけ放出できるなら微量の神力だけを受け入れられる。
でも、それでよく狂わないわね。
………いえ、微量の神力だけなら狂わない?
浄化すれば神力を生き物も取り込めるんじゃ……!
「それが事実なら、<ソードモラ教>の者達は既に確立している事になるぞ?
その割には私が会ったヤツは<混沌の種>をゴミだと言っていた。
そこと矛盾するがな」
「そうね。ただ、<ソードモラ教>の中でも一部しか知らない可能性はあるわ。
本当に神力を取り込めるなら、あの連中の欲望を刺激する事は間違いない。
それに、そういう欲深いヤツは他人に教えたりしないわ」
「それはそうであろうな。
貴族の中にもそうやって犯罪スレスレの金儲けをしている者が居る。
嘆かわしいものだがな」
ここは茶葉の産地だから、きっと他の貴族は「お前が言うな」と言ってくるわよ。
そういう事でもしないと、貴族の体裁が維持できない場合もあるしね。
もちろん口には出さないけど、こういうところは良くないと思うわ。
「デットリス伯爵家に居た文官には説明していますので、そのうちに連絡があると思います。
私達からは以上ですが、何かありますか?」
「あると言えばあるのだが……神殿にな、突入したのだ。
君達が出発した後だが、調べる為に行った」
「当然だと思いますし、私がどこに連れて行かれたかは見られていたでしょう」
「うむ。で、神殿に行くと赤く髪を染めた者が暴れていた。
お前が何かをしたのか? 話が全く聞けん」
「あの【転移魔法】使いですか?
転移させられる前に体当たりをしましたが………それ以外は特になにも」
「そうか………
その男は神罰を受けていてな、髪が透明になっていた。
そしてそれを見たのかは知らんが、朝になる前に他の者は逃亡。
既に神殿内のどこにも居なかった」
神罰を受けたか。
【転移魔法】を悪用したのだから当然だけど、やったのは浄化の女神っぽいわね。
今までにも悪用してきてるでしょうし、何故か神罰は受けてないようだもの。
空間の神は既に居ないと考えて間違いないわ。
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