04-49-0174
Side:ラブ
ガタガタガタガタガタガタ………
馬車は進んでいますが、まさかあんな夢を見るとは思いませんでした。
そのうえ夢の中で神様が言っていた通り、下界の全ての者に伝えられたようです。
朝食を食べようと酒場に行ったら大騒ぎになっていましたので。
まあ、それ以前に朝から町も騒がしかったのですが。
「アレがアッシュとラブが出会ったっていう神様だったのね。
白い仮面を顔に着けてる黒い神様だったけど、冗談でもなんでもなくヤバいのが分かったわ。
アレが神様と言われたら、あっさり納得するぐらいにヤバいのが伝わってきたもの」
「ああ、アレは勝つとか負けるとかじゃない。
間違いなくヤバいのだよ。
そして夢の内容、まさか邪神様が砕かれた理由を見る事になるとは……」
「私でさえ存じ上げなかった鬼神様という盟友がおられたとは。
新たに知る事が出来て良かったです。
これだけで千年後に正気を取り戻して良かったと思えますね」
それはそれで、どうかと思いますけどね。
それはともかく、アッシュさんの元となった神様がアレとは……ちょっと納得しました。
「リビ様ですかね? あの神様がアッシュさんの事をこう仰ってました。
浄化の女神の肉と、鬼神の肉を与えられたと。
でも邪神の事については何も言われなかったんですよ」
「それは簡単さ。彼の根源は邪神の精だからね」
その声が聞こえた所には、またあの黒い人型が居ました。
神様ってどこにでも現れるんですね。
初めて知りました。
「「「!!!」」」
「あー、驚くのは分かるけど静かにね。
ま、音が広がらないようにしてるから、五月蠅くはならないけどさ。
それより私もこの星を離れる事になったから、君達に挨拶をと思ってね。
こう見えて私は律儀なんだよ」
「は、はぁ……そうなんですね」
「そうなんだよ。
あとさっき邪神の精って言ったけど、浄化の女神は邪神との交わりで精を腹に得ていた。
それと自分の肉に鬼神の肉を混ぜて君を創造したというわけだね。
時間が掛かったのは、邪神を砕いた鬼神も邪気に汚染され、長い期間を封印されていたからだ」
「封印ですか?」
アッシュさんが御者席から問うと、神様がそれに答えられました。
「そう、かなりの邪気に汚染されてしまったのさ。
砕かれた邪神は飛び散ったけど、それを一番前で受けたのが鬼神だった。
なので封印し、少しずつ浄化の女神が浄化していたらしい。
そして浄化が完了して封印を解いた鬼神に頼んだみたいだね。
鬼神も快く了承し、君が創られたというわけだ」
「つまりアッシュは三柱の神子ってこと?」
「そうなるね。
そして彼が邪神の一部を浄化して吸収し、それは彼を通して邪神の神核に送られている。
私が邪神は弱いながらも復活するといった理由はそれさ。
神核に十分な量が送られれば復活出来るという訳だ。
そしてその時を浄化の女神は待っているという訳だね」
「………女の意地? もしくは執念って感じかね?」
「甘い、甘い。アレは大事な物を失って初めて気づいたという類のものさ。
あえて名を付けるなら「狂愛」。それが一番正しいだろう。
あの神にとって、もう邪神以外はどうでもいいのだろうね」
「「「「「………」」」」」
まさかそこまでのものだったとは………
ジャネスさんが重い愛だとか言っていましたが、そんな程度の低いものではなかったのですね。
尋常ではないと言えますが、そこまで待たされたとも言えるのでしょうか?
「うん、君の思った通りだよ。彼女は待たされすぎた。
だからこそ、あそこまで拗らせたのだろうね。
彼を作り出して優遇する程度には周りが見えてないよ。
はははははははは……復活に失敗したら、この星は滅ぼされるかもしれないから気を付けてねー」
「「「「「………」」」」」
神様はその一言を残して消えられましたが、不穏な言葉を残さないでほしいです。
もちろん頑張りますが、ぼく達の頑張りが世界の命運を分けるとか……。
なんでそんな重い物を背負わされるんでしょう?
いや、本当に背負っているのはアッシュさんですけど。
「まあ、諦めるしかないんじゃない?
だってアッシュが生まれた時点で決まってるんだし、そもそも三柱の神の子だもの。
過酷な道なのは仕方ないでしょ」
「違法な奴隷闘士が終わって、やっと自由になれたと思ったら、どうやら最初から自由では無かったらしい。
まあ、私としては自由に旅が出来る理由が生まれたので、別にいいのだが」
「いいんですか……
まあ、色々な物を見て回るのも面白そうですしね。
これから先も長いですし、百年や二百年ぐらい見回るのも悪くないかなと思います」
「あたしはそんなに長生き出来ないから、旅の間に死ぬだろうね。
そこまで旅が続くなら、だけどさ」
「「「………」」」
「そうそう、忘れてたんだけどさ」
「「「「「!!!」」」」」
「おおー、そんなに驚くんだねえ。
ちょっと面白いけど、コレが本当に最後だよ。
長生きしたければ、彼に神力を注いでもらうといい。
そうすれば生物の寿命なんて容易く超えるよ。
神の力だからね」
「神力を注ぐ? それはどうやってですか?」
「そんなもの手を繋ぐなり抱きしめたりすればいいだけさ。
その時についでに神力も一緒に注げばいいんだよ。
相手が男なら尻から注いでもいいかもね。じゃ」
そう言って神様は消えました。
本当にあれが最後なんでしょうけど、馬車内を微妙な空気にするのは止めてほしいです。
というか、ジャネスさんは都合の良い言い分を手に入れたのかな?
なんだか表情を見ていると、そんな感じがします。
「………まあ、それはともかくとして、これからの目的は<混沌の種>の確保と吸収ね。
さっきの町でもハンター協会に寄ってたし、領都ワクストンでも吸収してたけど、これからはそれがメインで狩りはサブかしら」
「そうですね。
邪神の復活を目指す必要がありますし、そうしないと下界が滅ぼされかねません。
ちゃんと励まないと……」
「ええ、頑張りましょう。
といっても吸収するのはアッシュ殿なので、私どもはその助力というぐらいですが……」
「とはいえ、あたし達にも出来る事はあるから、それを一つずつしていくしかないんじゃないかい?
旅をするにはお金も要るし、なら狩りを頑張るしかないからねえ」
「まずはヘイデルス子爵に会って説明をしないとな。
信用されないだろうと思っていたが、リビ殿があんな夢を下界の者全てに見せたからな。
おそらく信用されると思う」
「というか、アレを見ても疑うヤツはまともじゃないわよ。
必死に否定するのはそういう連中でしょうから分かるけど、疑うのは頭がおかしいわ。
これだけ多くの者が同じ夢を見たっていうのに、それを疑うなんてねえ」
「そのような事、神の御業でもなければ不可能ですからね。
そして、神殿の中にあれほど悪徳な者達が居たとは………」
「あれはねえ………完全に狂ってたわ。
まさに悪徳の権化と言わんばかりだったじゃない。
寿命の事も、結局は自分達が支配者になりたいという欲からよ。
あまりにも野蛮過ぎて呆れるわね」
「真っ先に知識の神様が愛想を尽かして去ったと言われてましたからね。
ああいう連中なら愛想を尽かすのも当然だと思います。
嫌気が差すのを通り越して、悍ましい連中でしたからね。
まさに本物の邪悪でしたよ」
あれほどの悪をぼくは見た事がありません。
今後、神殿には相当に厳しい目が向けられるでしょう。
<ソードモラ教>も神殿内の組織だったようですしね。
そうなると、神殿内の邪神を見下している連中が殺された話も、疑わしいとしか言えません。
実際にはそうではなく、単なる権力争いとかそういうものである可能性が高くなります。
権力の亡者っていう感じがしましたしね。




