04-48-0173
Side:アッシュ
私達は宿を出て朝食を食べた後、デットリス伯爵の屋敷に居るヘイデルス子爵家の文官に挨拶してから町を出た。
目指すはアドマグス伯爵家の領都であるマグナスだ。
ただし途中にあるヘイデルス子爵家の領都であるヘデルに寄る。
その際に何を言われるか分からないので死体を2つ持って来たのだ。
デットリス伯爵の屋敷に居る文官には、どこに居たモンスターの死体かは教えてある。
なので調査に行くだろう。
私達が依頼を請けたのはアドマグス伯爵なので、そちらを優先するのは当然の事である。
ついでに爵位も上なので、尚のこと優先する必要があるのだ。
それはともかく久しぶりのパルデオムに挨拶し、指環で綺麗にしてやると私の顔をベロベロと舐めて来た。
おそらくは親愛の証なのだろうが、顔がパルデオムの唾液だらけになってしまい、思っていた以上の臭さに顔を歪めそうになる。
もちろん我慢しながら宥めた後、私は御者席に乗る為に後ろを向いた瞬間、指環を使って綺麗に落とした。
その後は出発して移動できる所まで進み、町で一泊。
そんなのんびりした帰り道になるはずだったのが、この日、世界に激震が走る。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…………!!」
「しっかりしろ、邪神の!
しっかりするのだ!!」
「何故ここまでになるまで、誰も気づかなんだのだ!
誰かが気づいておれば………!!」
「アンタが言うな!!
アンタだって気づいてなかった内の一柱だろうが!
偉そうに言える立場か!!」
「くっ………!! 知識のはどうした!?
アレがこんな事を見逃すはずがあるまい!!」
「忘れたのか! 知識の神はもう随分前に下界の者に愛想を尽かして星を離れたろう!!
その所為で気づかなかった……いや、違う。我々の怠慢だ」
「そうだ。
浄化の女神が言っていたように、我らで多少なりとも負担していればこうなってはおらん」
「このままではマズいぞ。
邪気は下界の者どもが無尽蔵に生み出すものであり、邪神がおらねば集める事も出来ぬ。
我らの権能は集めるという権能ではない」
「このままでは星が邪気まみれになってしまい、取り返しがつかぬ事になる。
下界の醜き生き物どもめが、星を穢す事しか考えておらぬ」
「それよりも今は邪神だ。
どうにかしなければ本当にマズいぞ!」
「ぐぅ……はぁ、はぁ。わ、我を砕け。
……我を砕くのだ!」
「何を言うのだ、邪神よ。
お前は正気か!? そんな事をすれば……!」
「我を砕いて邪気を切り離し、そして神核だけを、使って、邪気を集めるのだ。
それなら……浄化の女神の力で、なんとかなる」
「そんな事をすればお前は終わりだぞ!」
「そ、それでも、我は神として、為すべき事を為さねば……」
「し、しかし……」
「鬼神よ。盟友たる、お前にしか、頼めぬ……
い、一撃で我を砕け。
そうすれば被害は、最小限に」
「しかし下界に影響が出るぞ」
「この際だ。多少は、被害を被ってもらう。
それでも、星が滅ぶよりはマシ、だ」
「確かにそれはそうだが……」
「鬼神よ、我が盟友よ!
頼む! 我を、砕け!!」
「う、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「イヤァァァァァァァァァッ!!!」
「ひひひひひひ、ソードモラ教、万歳!!
知識の神万歳!!」
「邪神などという卑しき神は砕かれた。
我らの【知識魔法】は全てを記す知識の神から与えられたもの!!
我らはそれを使って不老不死となり、世界の全てを安寧に導くのだ!!」
「我らが下に世界の全てが従うのだ!
その為には不老不死とならねばならぬ!!」
「さあ、邪神などという卑しき神の女官で始めるのだ。
我らが不老不死になる実験を!
卑しき神の女官など世界に腐るほどおるのだ、幾らでも実験が出来る。
卑しきでも神は神、我らの不老不死の役に立とう」
「ぐぼぉぇ! げぇ! がぶぇ!!」
「ひゃっひゃっひゃっひゃっ!!
邪気などという穢れに強い程度にしか役に立たんのだ!!
さっさとゴミを喰らえ!!!」
「あはははははは、胃液まで吐いておるぞ。
これだから卑しき物の女官など穢らわしいのだ!
使えなくなればゴミとして処分してしまえ。
……いや、別の実験に使えるかもしれん。閉じ込めておけ」
「ぐぎぃっ! ごぼぇ!!
がふっ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「不老不死の実験の為には手足を切り落としてみねば分からぬからなぁ!!
ははははははははははは………!!!!」
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Side:リビ
「さて、下界の諸君。今見てもらったのは、この星の記憶だ。
私の名はリビョルシエヌラトモエド。異なる星の……まぁ、元神だ。
ここと同じく下界のゴミどもが醜すぎてね、それで愛想が尽きて離れたのさ」
私は今この星の全ての知性体にこの思念と記憶を届けている。
たまにはこういう神っぽい事をするのも楽しいねえ。
「君達も見たろう?
君達の同胞が如何に醜く卑しい、無様で憐れなゴミなのかをね。
そして我々神が愛想を尽かすのも最もだと思うだろう?
既にこの星では半数以上の神がこの星を離れたようだ。
残りは少ないが、いつまで君達は庇護を受けられるのだろうね?」
大げさな身振り手振りを用いて行っているが、特に然したる意味は無い。
嘘っぽく見えようが寸劇に見えようがどうでもいいのだ。
私にとっては等しく価値が無いのだからね。
「さて、それでは伝えよう。
残った神々は今も増え続ける、君達が生み出す邪気にほとほと困り果てていた。
なので私は力を貸す事にしたのだ。
下界の者が邪気を生み出すならば、下界の者に与えればいいとね。
どういう事か分かるかい?」
私は更に大きな手身振り手振りで、この思念を見ている者達に教える。
「ソードモラ教とかいうのが不老不死を追い求めていたろう?
愚かに過ぎるが、神がその不老不死を与えようという事だ。
ただし不死者としてね。
つまり自我もなく、肉体が腐り果てても生き続ける肉の塊にしてやろうという事さ。
喜びたまえ!!」
私は大きく喜ぶべき事のように伝える。
これこそが神の決定だとして。
「良かったねえ、君達は卑しき肉の塊として生きられる事になったぞ。
そうそう、居ないとは思うのだが、不老不死になった者を殺したいなら浄化したまえ。
不死者を浄化するとは即ち邪気を浄化するということ。
つまり、お前達が出したモノは、お前達が責任を持って片付けろという事だ。
分かったか、下等生物ども」
私は顔と声を怖くして伝えたが、果たして伝わったかな? 神の怒りが。
「邪神という神は邪気を集める神であり、邪悪でもなんでもない。
そもそも神が悪徳に染まるなどあり得んのだよ。醜いのは貴様らであり、神ではない。
貴様らが邪神に見ていた醜さは、貴様ら自身の醜さ。
即ち貴様らは鏡に向かって悪態を吐いていたという事だ。
それも分からぬからこそ、貴様らは下等生物なのだよ」
ま、こう言っても伝わらないし、伝わっても忘れるんだけどね。
だってこいつらは無様で憐れなゴミだから。
だからこそ神も最後には“救わなくなる”。
「さて、この星の神の頼みは叶えた。
邪気で滅ぶなり生き抜くなり好きにしたまえ。
穢れた生物どもよ」
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Side:アッシュ
「………リビ殿が夢に出て来るとは思わなかったが、何故か仮面を被っていたな?
表情がコロコロ変わる不思議な仮面だったが」
バッ!
「………アッシュさん。
アッシュさんも見ましたか? 夢を」
「ああ、ハッキリと見た。邪神が砕かれたところも、ソードモラ教が最低最悪なところもな。
そして白に紫の髪の神官。あれがおそらくソードモラ教の連中だ」
それで間違いないだろう。
しかし、そうなってくると事前情報と色々違うぞ?




