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 Side:アッシュ



 私とラフィル殿が説明しつつの案内は終わった。

 そして壺型モンスター2つと口伸び狼2つ、それと鼠の死体を2つ持って帰っている。

 これで終わりだが、それなりには疲れた。

 案内そのものは別に疲れないが、毎回倒した元女官の説明もしたからだ。


 あまり思い出したくはないのだが、それでもどこでどんな風だったかは説明しておくしかない。


 戻って来た私達は宿へと行き、2人部屋と3人部屋で一泊を頼む。

 そして私は雑貨屋へと行き、書く物と紙を購入。宿へと戻った。


 戻った私は一枚一枚に元女官の姿を描いた絵と、どのような者だったかという説明を書いて行く。


 それを同室のラブが興味深そうに見ていたが、その後は私が出した本を読み始めた。

 その後も私はせっせと書いていき、終わったのはちょうど夕方だったので酒場へ。

 食事と酒を終えたら宿へと戻る。


 ラフィル殿は久しぶりの酒だったのか、ゆっくりと噛み締めるように飲んでいた。

 元山髭族だけあって酒好きなのは間違いない。

 ただし大量に飲むタイプではなく、ゆっくりと長く楽しむタイプらしかった。


 神殿でもお酒は造っているので、実際に自分達で飲んだり販売していたりはする。

 どこの神殿のお酒が美味しいかなど、色々と争いというかライバルの神殿もあったそうだ。

 ちなみにラフィル殿の居た神殿は、お酒で結構儲かっていたと自慢していた。


 私は部屋に戻った後で箱型魔道具を取り出し、部屋の隅で服を脱ぐと綺麗にしていく。

 ラブが首を捻っているので説明しながら、服なども綺麗にしていく。

 最後に処刑剣を取り出し綺麗にすると、外側の赤黒い塊が剥がれるように落ちていく。


 「それ、おそらくですけど<チザクラ>って言われる金属じゃないですか? 王都の図書館に載っていましたよ。

 東の方にある島国では不思議な金属が使われているって。

 製法は一子相伝であり、作れる者以外の誰も知らないそうです」


 「これがその不思議な金属なのか?

 確かに仄(ほの)赤い金属なんて見た事は無いが……」


 「おそらくそうだと思います。

 他にも<アオイガネ>と<クロスミレ>という金属が書かれていました。

 それ以外にもあるのかもしれませんが、本にはその三つしか書かれていなかったと思います」


 「ふむ。

 で、コレがその内の一つで<チザクラ>という金属で出来ているわけか。

 <チザクラ>のチは、おそらく血の事だと思うのだが………ザクラとはなんだ?」


 「さあ? ぼくに聞かれても分かりません。

 東の方に島国があるのは書いてあるのですが、そこに関する情報は非常に少ないんです。

 ですので碌に分からないんですよ。

 オーガに似た種族が多く住んでいるそうですが、額に角があるという情報はありました」


 「額に角……なぁ」


 「僕も額に角がある種族なんて聞いた事がありませんしね。

 なので本当かどうかも分からないんです。

 確かめようがありませんから」


 「まあ、そうだな。……っと、忘れてた。

 私は使い終わったのでラブが使ってくれ。

 その後は女性陣の部屋に持って行く」


 「分かりました」


 ラブが服を脱いで私と同じように使い、私はその間に考えておく。

 部屋で使った以上はゴミが残るわけで………そのゴミをどうするか考えておかねばマズい。

 これからも宿で使ったりする事は多いだろうし。


 ラブと一緒に色々と考えてみたが、結局は箒(ほうき)と塵取(ちりと)りを買ってくるのが一番だとなった。

 それとゴミ入れでも買って来れば良いだろう。

 最悪はジャネスに焼いてもらえば済む。


 その結論が出た頃にはラブも綺麗になっていたので、私は女性陣の部屋の前へと移動してノックをする。

 返事があったので中に入ると、適当に座って雑談をしていたらしい3人が目に入った。


 「アッシュ、どうかしたかい?」


 「この箱型魔道具を渡しておこうかと思ってな。

 これの使い方はラフィル殿が知っているので任せるよ。

 ゴミに関しては部屋の隅で使って放置するしかないな。

 明日になったら箒(ほうき)なども買いに行けるが、今は無理だ」


 「そうですね。では隅で使いましょうか。

 これは……」


 説明を始めたので私は女性陣の部屋を出て、自分の部屋へと戻る。

 ラブは本を読んでいたので私はさっさと寝る事にした。

 起きていても灯りは要らなくなったが、起きていてもやる事が無い。

 ならさっさと寝てしまうに限る。


 ラブはヴァンパイア族なので夜目が利き、その御蔭で灯りを点けなくても本が読める。

 なので放っておけばいいだろう。

 どうせ眠たくなったら寝るだろうし、私が言う意味も無い。


 …

 ……

 ………


 朝、少し早くに目が覚めたと思ったら、部屋の中の椅子にリビ殿が座っていた。

 いつの間に入って来たのかは分からないが、神様の訪問を避けるなど不可能かと思い直す。


 「リビ殿、如何(いかが)されましたか?」


 私は同室のラブを起こさないように声をかけたのだが、しかしラブも覚醒寸前だったのか起きてしまった。


 「んん? ふぁ………おはようございます」


 「はい、おはよう。そこのヴァンパイア君は朝早いね。

 どこかの星のヴァンパイアならこれから眠るところだよ」


 「はぁ、そうなん…………」


 ラブがリビ殿を見て固まっている。

 そりゃそうだろう、私も朝日でかろうじて見えているが、本当に真っ黒な人型だとは思わなかった。

 黒い人型が口も無く喋っているというような感じか。


 「ははははははは…………

 そこは気にしなくていいし、声を潜(ひそ)める必要も無いよ。

 そもそも今は時間を停止させているからね、誰も聞く事は出来ない。

 だから普通に話してくれればいいさ」


 「あ、はい」


 「それよりもリビ殿、どうしたのですか?」


 「実はね、この星の連中がちょっと善からぬ事を企んでいたからさ、下界に降臨できる私が介入を頼まれたんだ。

 ちなみにこの星の神々には了承をとったから大丈夫だよ。

 観察するだけなら、わざわざ了承をとったりしないんだけど」


 いや、観察だけでも了解をとった方が良い気がするが……


 「それはともかくとして、私が来たのは渡す物があるからさ。

 まずはコレね。君に肉を与えた浄化の女神? からの物だよ」


 「は、はぁ……肉をというのがよく分かりませんが頂きます」


 「その腕輪は着けていると君の加護が強まる物だ。

 代わりにあの女神が君の中の邪神の一部に介入してくるだろうけど、そこは気にしなくてもいいだろう。

 どのみち復活の手助けなんだし」


 「なるほど、これを着けていれば邪神の復活が早まるんですね」


 「ああ、うん、その解釈で問題ないよ。……で、次はコレだ。

 これは君に肉を与えた鬼神という神から渡された物だよ。

 なんでもこの腕輪を着けていると鬼神の幻と戦えるらしい。とにかく稽古をつけてやるってさ。

 あと、私からはコレね」


 そう言って渡されたのは、箱と2つの指環だった。


 「箱の方は中に入れたゴミが分解されるんだけど、魔力を流さないと発動しないようにしてある。

 生き物は入らないものの、大事な物を間違って入れないようにね。分解されて消えてなくなるよ」


 「き、消えて………」


 ラブが恐ろしい物を見るような目で箱を見ている。

 見た目は黒い箱なんだが、入れた物を消してしまうのだから、恐ろしいという気持ちも分からなくはない。

 しかし指環は何だろう?


 「こっちの指環は箱型魔道具と同じ効果で、汚れなどを完全に落とす物だね。

 代わりにあの箱型魔道具は回収しておくから。じゃ」


 リビ殿は「じゃ」の言葉の瞬間には消えていた。

 しかしリビ殿が居た証拠は、テーブルの上に残っている。

 つまり黒い箱と指環だ。


 ラブはリビ殿が座っていた椅子を呆けた顔で見ている。

 神様だからな、そうなるのも分かる。


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