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 Side:ラブ



 到着した次の日。ぼく達は朝食を終えるとデットリス伯爵家の屋敷に行きます。

 そこは兵士によって入れなくなっていましたが、ぼく達はアドマグス伯爵からの依頼書を見せました。

 効果は劇的なもので、すぐに通されましたので中へと入ります。


 屋敷の一角ではヘイデルス子爵家から派遣されている文官が仕事をしていました。

 なのでぼく達はアドマグス伯爵からの依頼書と、ヘイゲルス子爵からの手紙を見せます。

 その結果、屋敷内は自由に調べてもいいという許可が出ました。


 アドマグス伯爵家の副騎士団長も居るので、ぼく達が間違いなく依頼を請けていると信用されたわけです。

 副騎士団長が居ないとマズかったかもしれません。

 唯のハンターというだけじゃ入れない場所ですからね。

 まあ、そもそも依頼でなければ来ない場所なんですが。


 「さて、まずはこの屋敷を調べるんだけど………

 手分けする? それとも全員で固まって調べる?」


 「まずは全員で固まって調べましょう。

 同じ物でもそれぞれによって見方は異なります。

 話し合いの為にも、一通りの確認が終わるまでは全員が同じ場所に居た方がいいでしょう」


 「そうだね。

 相談する際や自分の意見を言う場合にも、皆が一緒に居ないと忘れる事もある。

 それに、その時に言わないと記憶から抜け落ちるなんて、よくある事さ」


 ぼく達の指針は決まったので、まずは近くの部屋から調べて行きます。

 特にどうこうという部屋でもありませんが、伯爵家の邸宅としては小さめですね?

 建て替えとかはしていない感じでしょうか?


 「確かに伯爵家の屋敷って考えると小さいのよねえ。

 とはいえ年季が入ってる感じがするから、おそらくは古くからある屋敷を手直しして使ってるんでしょうけど」


 「総石造りの屋敷というのも珍しいですけどね。

 長持ちするでしょうけど、どちらかというと砦っていう見た目ですよ。

 レンガの屋敷も多い中、何故か総石造り………幾ら古い時代って言っても、この屋敷は必要なんでしょうか?」


 そうぼくが言うと、副騎士団長さんが口を開きます。


 「戦乱の時代であれば、この屋敷はありがたいと思うがな。

 なんと言っても防御に優れるし、火をかけられる心配は無い。

 篭もる場所としては十分だと思う。

 が、普通は貴族家の御屋敷と砦を兼用したりはせん」


 「昔ならば特にしませんね。

 昔の貴族は住む場所と戦闘時に篭もる場所とはキッチリと分けるものです。

 むしろ今の時代の方が兼用にしたりするぐらいですから」


 「そうだな。

 いつの時代か知らないが、見栄を張らねばならない貴族としてコレは無い。

 なので屋敷がこれだけの防御をしている必要があったというところだろう。

 しかし…………何を想定したら、この石造りの屋敷になるのだ?」


 ぼくもそこが引っ掛かるんですよね。

 わざわざ総石造りにしてあって凄くお金が掛かってます。

 更には山の方を向いている町。

 奇妙だと思う事は沢山ありますが、どうにも繋がらない感じです。


 ぼく達は他の部屋も見回っていきますが、どれもこれも普通の部屋でしかありません。

 伯爵が毒の入ったワインを飲んだという執務室も見ましたが、特に変な場所はありません。

 いったいどういう事でしょう?


 見回っても何も得られなかったぼく達は、邪魔にならないように一階の客室で話し合いをする事に。

 とりあえず適当な椅子に座って話し合いを始めます。


 「調べて回ったけど、特に気になる物とかは無かったわね。

 ヘイゲルス子爵が派遣した文官も、怪しい物は発見できていないみたいだし……」


 「どういう事だろうね?

 酒の事を男爵に邪魔させたってだけだと、自殺するのには弱い気がするよ。

 貴族がそう簡単に自殺したりなんてしないし、意地でもしがみつくだろ。

 それにしては家族も居なくなってるし、執事やメイドも居なくなってる」


 「しかし伯爵家内部に何かの証拠は無し。

 何の証拠も無いなら自殺とするしかありません。

 しかし妙なというか、どう考えてもおかしな話です。

 何度考えても死ななければいけないような罪じゃない」


 「もちろん降爵はさせられるだろうし、不利益は被るだろうけどね。

 でもそんなものであって、いきなり全てを取り上げられたり、死を命じられるような事でもない。

 もちろん他国との交渉を潰そうとしたんだから問題なんだけど、それは他の国でだってある事よ?」


 「自分の領地の産業を守る為に、国の政策の邪魔をする。

 国としては迷惑でしょうが、地元の者が路頭に迷うような事は受け入れられぬのが当然。

 良い悪いは別にして、それ自体はある事です。

 今回は男爵に命じているので重いですが、それでも毒の杯(さかずき)を賜(たまわ)るような事ではありません」


 副騎士団長の言う通りです。

 露見しても毒を飲めとは言われないでしょうし、色々と不利益を被っても家が無くなるまでは行かない。

 にも関わらず、何故か当主の伯爵は毒を飲んで死んでいた。

 本人が飲んだ物じゃなくて、飲まされた?


 「自分まで辿(たど)られるのが嫌で、誰かが飲ませたという事は考えられませんか?

 それこそ家令などが黒幕で、そこまで手が伸びる恐れがあるから始末した。なんて事は?」


 「それだと粛々と受け入れた方がいいでしょ。

 その上で次の当主を上手く操ればいいだけじゃない?

 わざわざ逃げ出す必要があるかしら」


 「例えば家令がどっかの回しもんだとしたらどうだい?

 その出自がバレちゃマズいんで逃げた。

 伯爵の家族はそれを知ったので無理矢理に連れて行かれたとか」


 「その場合は家令だけじゃなく、執事やメイドも全てグルでないと成立しないと思うが……」


 副騎士団長さんが言う通りでしょう。

 家令や執事やメイドの家族まで居なくなってるんです。

 かなりの人数が移動している訳であり、相当程度の数が一気に居なくなっています。

 果たしてそんな事が本当にあるのでしょうか?


 それこそ【転移魔法】使いを何人も使って一気に移動させない限り、一晩で居なくなるなんて考えづらいのでは?


 「一晩じゃないかもしれないよ?

 先にある程度を逃がしておいて、決行当日に一気に……ってやれば分散は出来るだろうさ。

 屋敷の中の者なんて詳しく数えていないだろうしね。

 外からは分かりゃしないよ」


 「貴族の屋敷で働いている者を、全員覚えているヤツなんていないわよねえ。

 それに居なくなってても、今日は表に出ない仕事だって言われたら分からないもの。

 外から見ている者にはね」


 「そうなると本当に逃げたのかも怪しまないといけません。

 どこかで既に全員殺されているとか?

 あくまでも屋敷内に血痕などが無いというだけですから、他の場所で殺された可能性はあると思います」


 「となると、いつ、どこで、どんな方法で、何の為に殺されたのか。

 そこまで考える必要があるんだけど………いつかはともかく、それ以外は不明すぎるわ」


 「どこかは分からず、殺された方法も不明。

 さらには何の為に殺されたのかも分からない。

 といっても死体が出てない以上は、殺されたかどうかも不明なのよ。

 そういえば文官が言ってたアレはどう思う?」


 マーヤさんが文官から聞いた事を言い出しましたが、それも怪しいんですよね。

 何をしに来てたのかサッパリですし。


 「白に紫が混じった者と、赤い髪の者でしたか?

 神殿の者が来て話を熱心に聞いていたらしいですな。

 伯爵は嫌がっていたそうですが、断る事も出来ない感じだったとか」


 「普通なら犯人じゃないかって思うんだけど、そいつら何事も無く出て行ってるのよねえ。

 実際に伯爵が自殺したのはその五日ぐらい後の事らしいし」


 そう、その者達は怪しいのですが、日数が経った後に自殺してるんですよ。

 なのでその者達が直接何かをしたという事は無いはずです。

 唆(そそのか)したとかはありそうですが、それぐらいですかね。


何故か二段階認証のコードがメールになかなか来ずに遅れました。

御迷惑をおかけして申し訳ございません

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