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 Side:ラブ



 ぼく達はデルナル地方の領都ワクストンに到着しました。

 が、町の中はピリピリしていますね。


 未だに後釜が決まっていないからでしょう。

 いきなり領主が自殺、一族が行方不明ですからどうにもなりません。


 一応は隣の領主であるヘイデルス子爵が、部下を数名常駐させて監視をしているらしいので、今までと変わらず文官は仕事をしているらしい。

 それはいいんだけど、やっぱり町の者達は落ち着かないんだろう。

 なのでピリピリしてるのは、ある意味で普通の事です。


 「まあ、町の者からしたら、貴族なんて誰でもいいってぐらいだろうさ。

 どうせ誰が来たって構やしない、それより早く決めろって思ってる程度だよ。

 決まらないから落ち着かない、落ち着かないからピリピリする。

 ラブの言う通りだろうねえ」


 「ここに来るまでにもそれなりに掛かったけど、何でこんな場所を領都にしているのかしら?

 茶葉の産地の割には栽培していない山だし、なんでこんな山を領都にしたのかしらね?」


 「山城なら分かるんですけど、こんな所に山城や城下町を作っても意味は無いでしょう。

 あくまでも小山ですし………それに変じゃないですか?

 何だか山の方に向かって町を作っているような気がするんですけど」


 ぼくがそう言うと、マーヤさんもジャネスさんもちょっと悩み始めました。

 まだ夕方前ですし、町の全体は見えてるんです。


 それを見て感じたのは、町が山の方を向いているという不思議な光景でした。

 普通は山の外を向くはずなんですが……


 「確かに変だね? まるで山から何かが来るみたいな、そんな感じに作ってある気がするよ。

 だけど、いったい何が来るっていうんだろう? だってあれ禿山だよ?

 何かが来たってすぐに分かるようになってる」


 「むしろ禿山にしたっていう方がしっくり来ない?

 何かが山から出て来る、それを見張る為に禿山にして見やすくした。

 そんな感じに見えるのよねえ……」


 確かにマーヤさんの言う通り、あの禿山も作ったものでしょう。

 だとすれば、何を恐れていたのかって事になります。

 それが不思議ですが、まずは宿に行きましょう。


 ここまでは来れましたが、ここからがどうなるか分かりません。

 アッシュさんが居てくれると心強いのですが、居ませんからね。

 ぼく達だけで頑張らないと。



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:アッシュ



 「………!!! ……はぁっ、はぁっ///

 すみません、こんな事をお願いして」


 「いえ、理由は分かりましたし、仕方がないでしょう。

 謝る事ではありませんよ」


 私はラフィル殿をゆっくりと地面に寝かせる。

 ラフィル殿は荒い息を吐いているが、それは絶頂の余韻(よいん)でだ。


 ちなみにだが、私はあくまでも男性の性欲解消法をラフィル殿相手にやったに過ぎない。


 何故こんな事になっているかと言うと、ラフィル殿が私に問いかけて来たからとなる。

 異様に強い性欲に翻弄されていたのを告白されていたのだが、そういえば男性のも付いていたな? とその時に思い出した。


 それはよいのだが、話を聞いていくうちに私の中で一つの仮説が成り立った。

 もしかしたらラフィル殿は男性と女性の両方の性欲を持ってしまったのではないかと。

 それを話してみると、ラフィル殿は悩んだ末に男性はどうやって一人で解消するのか教えてほしいと言われたのだ。


 というか、ここには私とラフィル殿しか居ないからな。

 他に聞ける者も居ない。


 実は一番上の階を探してから二日、未だに外への道を発見できていないのだ。

 詳細に調べていっているのだが、もう残っているのは一番下しかない。


 そんな状況で戻って来たのだが、どうにも連日の強い性欲に疑問を抱いたラフィル殿が言ってきた訳だ。

 今までの女性であった自分とは明らかに違うらしいので、それでとの事だった。


 流石に男性の性欲に関しては男性に聞くしかない。

 ラフィル殿も知らない事だからな。


 私は自分の生きて来た事を踏まえ、自分が特殊な状況で普通の男性とは違う事を伝えたのだが……何故か変に同情されたな。


 私自身は違法奴隷の状況が普通だったので、周りから思われるほど苦労した訳ではない。

 もちろん苦労はあったが、死んだら死んだ時としか思っていなかったので、追い詰められて狂った訳でもないのだ。


 その辺りを勘違いされた気はするが、とりあえず男性がどのように解消しているのかは分かったはずだ。

 というか私も他人の、正しくは同性のモノなど触りたくも無かったのだがな。

 とはいえ教えるには実際にやるしかない訳で………なんか変な苦労をしている気がするぞ?


 私は箱型魔道具で綺麗にすると、ラフィル殿も箱型魔道具で綺麗にする。

 それはいいのだが、一応言っておくか。


 「ラフィル殿は気づいていないのかもしれませんが、自分で処理した後、猛烈に女性の発情した臭(にお)いがするので気を付けてください。

 鼻の良い種族には気づかれます。

 寝る前に箱型魔道具を出しておくので、使ってから寝た方が良いですよ」


 私がそう言うと、ラフィル殿は口をパクパクさせた後、顔を伏せながら口を開いた。


 「//////……分かりました、気を付けます」


 「ええ。

 恥ずかしがって伝えなかった場合、外に出てから襲われる可能性もありますので」


 私がそう言うと、すぐにラフィル殿は顔を上げた。

 恥ずかしがっている場合じゃないと気づいたのだろう。


 「あっ……確かにそうですね。

 そういう輩は昔も居ましたし、気を付けねばならないのは確かです。

 男性のモノが付いているとはいえ、何も出ないので臭(にお)いは大丈夫だと思っていました」


 「女性が男性の臭(にお)いに敏感なように、男性は女性の臭(にお)いに敏感ですからね。

 自分ではないからこそ分かると言えば、ラフィル殿も理解できるでしょう」


 「よく分かります。

 男性の中でも臭(くさ)い方は沢山いました。

 まさか自分が言われる側になるような事をしているとは………」


 なんだかガックリと肩を落としているが、私しかいない状況で気づけて良かったと思う。

 私は誰かに言う事も無いし、恥にはならないだろう。

 外に出たところで言う相手も僅かにしか居ないしな。


 それに今いる場所がどこかも分からないんだ。

 外に出れてもそんな話をする事も無い。


 それよりも眠っておき、体力を回復する事を優先しないと。

 それじゃ、さっさと寝よう。


 …

 ……

 ………


 私達は最下層に進み、そこで様々な場所を探していく、するとラフィル殿がとある場所を発見した。


 「アッシュ殿、ここを見て下さい! 裂け目が出来て向こうが見えています!!」


 「分かりました! すぐ行きます!」


 裂け目が出来ているという事は、長年の浸食で削れたという事だろうか?

 となると外に繋がる場所があるという事になるが……果たして。


 「………確かに外側がかろうじて確認できます。

 どうやら向こう側も通路のようですが、まずは崩してしまいましょう。

 それにしても、まさか最下層だとは思いませんでしたよ」


 「ええ、私も驚きです。

 なんだか悪質な嫌がらせのように思えてきますね」


 ラフィル殿の言うように、悪質な嫌がらせのようだな。

 まさか階段があるにも関わらず脱出は最下層など、ふざけているにも程がある。


 どのみち元女官達は全て救わなければいけなかったので丁度いいのだが、それでも外との通路を最下層に作るとか。

 嫌がらせ過ぎるだろ……


 ガツッ! ガツッ!


 「いや、上から掘ってきていたが、何かの時に上が崩落したのか?

 なので石や岩の多い下からの通路を改めて掘った。

 そう考えると、上があるのに下が出口に繋がっているのは普通の事となる」


 「確かにそうですね。上が先で下が後ならば自然な事です」


 ガツッ! ガラララ……


 よし、崩れた。

 後はこれを広げていくだけだ。


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