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Side:ラブ
ぼく達はデルナル地方を目指して移動しています。
特に何も無く、マーヤさんもジャネスさんも会話はあまり続きません。
とはいえ会話する内容が無いので仕方がないんですけどね。
ぼくは御者をしていますので、景色を眺めているぐらいです。
ちなみにずっとやらされているわけではなく、交代でやっていますので押し付けられている訳ではありません。
パルデオムも元気が無いのはどうにかしてほしいところですが、ぼくが揉んでも綺麗にしてやってもあんまり喜ばないんですよね。
仕方なくマーヤさんが【生魔法】で回復させたりしてますけど、やっぱりアッシュさんほど喜ばない。
いったい何をやってたからパルデオムがこうなのか……と思うも、特別な何かをやっていた訳ではないんですよ。
その割には……
ガタン!
「っと、すみません。
轍の跡が沢山固まってるみたいで、ガタガタしています。
この後も揺れるかもしれません」
「まあ、仕方ないんじゃない?
……っていうか、前の馬車の轍に合わせなさいよねーって思うぐらいかしら。
なんでこんなバラバラに進んでるのか知らないけど」
「そういえば轍の跡が妙に多いね?
どんな進み方をしたのか知らないが、面倒な事さ。
その所為でガタガタ揺れちまう」
「デルナル地方に行くのはいいけど、簡単には解決しなさそうな感じねえ。
<ソードモラ教>との関りは見つからなかったらしいけど、ヘイデルス子爵いわく<ソードモラ教>の事は噂でしか知らない。
だものねえ……」
「まさかアレだけ言われてる<ソードモラ教>、その実態を誰も知らないなんて思わなかったよ。
こうなってくると最初から考え直さなきゃいけなくなる。
暗殺はともかくとして、デットリス伯爵は何故毒ワインを飲んで死んでいたのか。
なぜ家族や家の者が居なくなっていたのか」
「その辺りから、しかも思い込み無く始めなきゃいけないわ。
デットリス伯爵は、本当にお酒の事で死んだのか。
実はそれにかこつけて別の理由で殺された、なんて事もあるかもしれない。
単にお酒の事で男爵を動かしたのは都合が良かったとか」
「それもありますけど、デットリス伯爵家に金目の物が何も無かったという話も気になります。
近くの者が言うには、誰も貴族の家に勝手に入ったりなどしていないとのこと。
じゃあ、誰が金銭や宝石などを持って行ったのでしょう?」
「デットリス伯爵が借金塗れで貧しい暮らしをしていた、とは言われていないようだしね。
アドマグス伯爵もヘイデルス子爵もそんな事は言ってなかった。
にも関わらず、屋敷内には金銭も宝石も無い。
なら持ち出したって事なんだろうけど……」
「誰にもバレずにどうやって? と思いますし、何より働いていた者達はどこへ行ったのか。
そもそも家族が居る者も多いでしょうし、その者達の家族も含めて居ないようですしね。
いったい何があったから、そうなったのやら?」
「訳が分からないけれど、行って調べるしかないのよねえ……
こうなってくると事前情報はむしろ無駄よ。盛大に見誤る可能性があるから忘れた方がいいわ。
領都ワクストンに行く前の町でも情報収集した方がいいわね。
どこかで目撃されてるかも」
「逃げ出した連中がこの辺りを通った?
あえて王都に近づく事で煙に巻くっていう可能性もあるか」
「普通は王都から離れる形で逃げるでしょうからね。
その前提で物事を考えると間違うわ。
分からないなら、分からないとする。基本だけど大事な事よ。
今一度しっかりと持っておいた方がいいわね」
マーヤさんの言う通りでしょう。
分からないけど、きっとこうだ。などと思い込むと正解から遠ざかる。
物語の中にもそういうのはあります。
これ見よがしなキャラクターを出しておいて実は全く関係なく、調査がふりだしに戻る。
そういう作品があるんです。
そういった作品だと考えると、最初から決めつけた形なのは間違った答えにしか辿り着きません。
極めて危険なので止めた方が良いでしょう。
それよりも、一つずつ話を聞いていった方が上手くいくと思います。
ま、今は移動中ですし、まだデルナル地方にも入っていませんが。
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Side:アッシュ
ラフィル殿に、ここのモンスターのおかしさを確認してもらった。
なので危険もまた伝わったと思う。
それを機に私は右の通路の先へと進んで行く。
どこまであるのかは知らないが、それでも進んで行けばそのうち出口に辿り付くだろう。
その程度の気持ちで居た方がいいと思い、今は焦らず確実に進む事を目的にする。
ラフィル殿を守らねばならんので、特に注意しなければいけない。
注意し過ぎて自分が怪我をする、なんて事も無いようにしなければな。
慎重に進んで行き、ある程度の距離を進んだ段階でモンスターを発見した。
感知範囲に壺型モンスターが見えている。
やはりアレはまだ居たらしい。
ただし壁にはくっ付けないのか、ここの壺型モンスターは地面に縦になっていた。
「ラフィル殿、曲がり角の先に壺型モンスターが居ます。
私がそう呼んでいるだけですが、このモンスターは壺の形をした肉みたいなもの。
そしてその壺の口から針を発射してきます。
危険ですので私が呼ぶまでは角で待機していただきたい」
「分かりました。
針を飛ばして来るなどというのは危険ですしね。
流石にアッシュ殿のように全身を隠す盾でもなければ、まともに戦えません」
「では行ってきます」
私はそう言うと、曲がり角から盾を出しつつ通路へ。
そして針が撃たれていない事を確認して前へと出る。
壺型モンスターは三匹居て、その三匹とも上を向いているだ……けじゃないな、天井に居る。
まさか天井の硬い部分に張り付いているとは……先に発見できて良かった。
下に集中していると上から針を撃たれるとは、やってくれる。
私はゆっくりと天井の壺型モンスターに近づいていく。
そしてある程度の距離まで接近したら、天井のがこっちに撃ってきた。
カカカカッ
天井のヤツを先に倒さなきゃいけないんだが、天井を攻撃するのは骨が折れる。
高さ的には3メートルくらいなので杭は届く。
なので倒すこと自体は可能だが、思っているよりも時間が掛かるな。
それでも安全の為には仕方ないか。
カカカカッ
私は盾で防ぎつつ、相手が針を撃ち切るまで待つ。
他にモンスターも居るだろうし、大きな声を出してモンスターを引き寄せてしまったら目も当てられない。
もしかしたらこっちを見ているかもしれないが、見ていたらラフィル殿にも理解できるだろう。
流石に遠距離攻撃は危険なので、こちらに来ないでくれると助かる。
そんな事を思いつつも防ぎ続け、そして針が飛んでこなくなったら地面の連中に近づいて行く。
地面の壺型モンスターは上を向いて立ったままだったので、こちらに針を撃ってこないであろう位置から斧を振り下ろして殺していった。
三匹を殺したらラフィル殿の居る方へと戻り、ラフィル殿を連れて行く。
「あの天井に張り付いているのが壺型モンスターです。
そして地面に落ちているコレ、これがこいつらの撃ってくる針なんですよ」
「思っていたよりも長いですね? 細い針ですから刺さりやすそうですし、これは思っている以上に厄介な物でしょう。
迂闊に踏むと歩けなくなりそうですし、避けて通るのも大変ですね」
「すみません。何か履物を持って居れば良かったんですが……」
「いえ、流石にそれは高望みが過ぎるというもの。
異空鞄を持っていても、なるべく無駄な物は持ち歩かないものです。
異空鞄とはいえ限度というものがありますからね」
ラフィル殿はそう言うが、この異空鞄は未だに容量の底が見えてはいない。
なのでブーツはともかく革のサンダル程度は入れておくべきだった。




