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 Side:ラフィル



 「流石に雑談が過ぎましたね。そろそろ先程の話に戻しましょう。

 私としてはラフィル殿には待っていてほしいと思っています。

 私が使っている装備は私にしか使えませんし、流石に危険すぎますからね」


 「私は別に戦えない訳ではありませんよ?

 盾と棍棒を持って戦ったり、時にはモンスターに槍を突き立てたりとしていましたからね。

 神殿に属する者とはいえ、戦いが出来ませんなどと言えるはずもない。

 当然一通りの武器は扱えますとも」


 私がそう言うと、アッシュ殿は考え込んでしまいました。

 何か考える事でもあったでしょうか? 別に変な事を言った訳でもないはずですが……


 「私が連れて行きたくなかったのは、守るとなると身動きがとりにくくなるからです。

 ハッキリと言えば、足手まといを連れて戦いに行くわけにはいかないという事なんですが………

 いえ、やっぱり待っていてもらいましょう」


 「問題ありませんし、自分の身は自分で守れますよ?」


 「装備があれば納得するのですが、私の装備を貸すにしても………私の装備は邪獄樹で出来ている物がほとんどなのです。

 それ以外となると短剣やナイフしかない。

 それではとても守れないうえに、しかも貫頭衣しか着ていません。

 流石にそれではね……」


 「しかし崩落などの危険性を考えたら、ここも安全とは限っていませんよ?

 それに邪獄樹であれば私も使う事は出来ます。

 私は濃い灰色の髪を、つまり邪神様の加護を持つの、ですよ……?」


 「どうかしましたか?」


 「貴方の髪は濃い灰色ではありませんね?

 その髪色なのに邪神様の生まれ変わりを名乗るのですか?」


 「私の髪色は浄化の女神の加護も混ざっているので、こういう色になっているわけです。

 実際に青白さも入っていますからね」


 「……確かに青白さも含まれていますね。

 浄化の女神といえば、邪神様の伴侶であり唯一の番(つがい)とも言われる神。

 もしかしたら、浄化の女神様が復活を望まれアッシュ殿を創られたのかもしれません。

 本当に邪神様が復活されるのでしたら、それを何よりも望まれるのは浄化の女神様でしょう」


 「なるほど、やはりそれほどの神が浄化の女神なんですね。

 …………とりあえず、コレを持ってみてくれますか?」


 アッシュ殿は私の言っている事に頷きつつ、腰の鞄から何やら棒を取り出しました。

 鞄よりも大きい物が出て来た時点で、アレが異空鞄だと分かります。

 が、灰色の異空鞄など初めて見ました。


 ………まさか!?


 「その異空鞄、もしや邪気に塗(まみ)れているのでは!?」


 「そうみたいですね。

 悪意を持ってこの鞄に触れると、子供でも悪夢を見ますよ。

 手癖の悪い子供が触れたようですがすぐに倒れ、起きたら絶叫を上げて走って逃げましたから」


 「それはまた、恐ろしいですね」


 私はそう言いつつ、少し気合を入れて棒を持ちます。

 邪神様の加護がある私でも、邪獄樹製の物は気合を入れなければいけません。

 そうでなければ邪気に呑み込まれますからね。

 ですので気合を入れなければいけないはずなのですが………?


 「変ですね? この邪獄樹は気合を入れなくても、問題無く持つ事が出来ます。

 いったい何故でしょう?」


 「………もしかしたら私が持ったからかもしれませんね。

 前に邪神の像や盾が邪気を放っていたのですが、私が触ると霧散しましたので。

 ですが棍棒の時には、私が持った後に普通の者が持ちましたが暴走したんですよね。

 となると、ラフィル殿が加護を持つからか、もしくは邪神の神力を多少は取り込んだのかもしれません」


 「まあ、邪神様の御力を私が?

 それは………良い事なのでしょうか?

 下界の者がそのような大それた事をするなど……」


 「自分で持とうとした訳でもないですし、千年は苦しんだというかメチャクチャにされたのですから良いのでは?

 邪神が復活した後に返さなければいけないなら、その時に返せばいいだけだと思いますよ?」


 「そう……ですね。

 そもそもお返しする方法も分かりませんし、今はお返しする方がおられません。

 ですのでこのままお預かりしていた方が良いでしょう」


 「それじゃ、そろそろ行きましょうか。

 あまりダラダラと話をしていても仕方ないですし、上のモンスターが下りて来るかもしれません。

 ここまでは石なんですが、この上の階層からは土です。

 硬いですけど、アースワームが出て来るので気を付けて」


 私はその言葉に心臓が跳ねました。

 アッシュ殿はそのまま歩くので気づいていないのでしょう。

 なので私は言っておく事に。


 「アッシュ殿。アースワームが居るという事は、崩落する恐れがあるということ。

 アースワームは土を取り込んでしまいます。

 言い換えれば柔らかくなるように耕している、つまりいつ崩落するかは分かりません。

 特にアッシュ殿が行くとなると……」


 「私が行った所為でアースワームが活発に動き、その所為でより土が柔らかくなる?」


 「その通り。その所為で崩落する恐れが出て来るのです。

 アースワームの餌は土の中に居る小さな虫。それらを食べる為に土ごと取り込むのですね。

 そして虫などの食べる物だけ胃へ、そして残りは後ろから出してしまうと聞きました」


 「という事は、早めに出た方がいいですね。行きましょう」


 上の階への階段を上がっていくと、確かにアッシュ殿の言う通り地面が土でした。

 石より歩きやすいので助かりますが、早めに履く物が欲しいですね、贅沢は言いませんが。

 あと、棒だと思っていた物は杭だったようです。


 使えるので構いませんが、気づいた時にはビックリしました。

 まさかでしたからね。


 誰が作ったのか知りませんが、まさか邪獄樹で杭を作るとは……

 アッシュ殿は最下層に像の破片などと一緒にあったと言っていましたか。


 となるとコレは像が持っていた武器なのでしょう。

 他に斧があったと聞きましたし、もしかしたら他にもまだあるのかもしれません。

 探してみましょう。


 上の階に上がり歩いていくものの、モンスターの姿は見えませんね?

 アッシュ殿が倒してきたからでしょう。

 そう思っていると何やら狼の姿のモンスターが倒れています。


 「ここです。

 ここでラフィル殿が出て来たんですよ、キノコの中から。

 それで慌てて先程の地底池の所まで戻ったんです」


 「なるほど、私はここで……」


 といっても覚えていないので何も感慨などありませんがね。

 そう思っているとアッシュ殿が歩き始めました。

 今度は慎重に歩いていますので、ここからは未知なのでしょう。


 「針を飛ばしてくるモンスターがいるので注意してください。

 もしかしたらこの階層には居ないかもしれませんが、岩の階層には結構な数が居ました。

 それこそが、ラフィル殿を連れて行こうとしなかった主な理由です」


 「針を飛ばす、ですか。そんなモンスターは見た事がありませんね」


 「そうですか、やは………」


 アッシュ殿が私の方に向かって手を押すように動かします。

 私はアッシュ殿の後ろで待つのですが、アッシュ殿は腰の異空鞄から斧を取り出して待つようですね。

 前方には右に曲がる通路がありますから、そこから来る者に先制で攻撃する気でしょう。


 ズドォン!


 アッシュ殿が斧を凄い速さで振り下ろすと、一撃で頭が割られたのか狼は倒れます。

 それにしても凄い音でしたね。

 あれだけ大きな音がすれば、他のモンスターも気づいたでしょう。

 とはいえ一撃で倒すには仕方ないのかもしれません。


 「ラフィル殿、こちらに来てください」


 私はアッシュ殿に呼ばれたので近づきますが、アッシュ殿は狼の口を持って伸ばしています。

 ………なんですか、このモンスターは? 口が伸びるなど意味が分かりません。


 「やはりラフィル殿も知りませんか。

 この洞窟のモンスターは色々とおかしいのです。

 私が歩いた所は綺麗になっているので、もしかしたら長年の邪気でおかしくなっているのかもしれません」


 「なるほど。それは確かにあるのかもしれませんね。

 少なくとも私は口が伸びる狼など聞いた事がありません」


 そもそも、そんな奇怪(きっかい)なモンスターが居るという事すら驚きです。

 聞いたところで冗談だとしか思えませんよ、自分の眼で見ていなければ。


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