04-32-0157
Side:アッシュ
「こちらの声は聞こえるか? ……こちらの声は聞こえるか!!」
「GGTJJWBGRWKBYONKEK!!!」
私は声をかけてみたが、それが耳障りだったのか触手を三本もこちらに向かわせてきた。
タイミングが同じだったのでシールドバッシュで弾き、接近して触手を根元から切り落とす。
本体はキノコの姿なので、攻撃はしやすいのだ。
「ETHERRVG!? NETNTERERER!!!」
触手を切り落とされて困ったのか痛かったのか。
怒ったような感じのキノコは更に触手で攻撃をしてくる。
しかしながら私は全て盾で防ぎ、攻撃の合間にある隙を使って触手を根元から切り落としていく。
「ERGRTBH!! TEWRTBGWV!?
GTWERTBHTWR!!!」
更に切り落とされて怒り心頭なのか、残り三本となった触手をさらに向かわせてくる。
しかし2本を切り落とすと、今度は悲鳴を上げて逃走し始めた。
「TGBRTーBRWBWR!? TWBWRT!!!
GHGHBNWRTBRWーーー!!!」
それなりに速い速度で逃げていくので、私もそれを追っていく。
すると途中で口伸び狼が居たのか、キノコは口伸び狼に噛み付かれる。
それも胴体に噛み付かれたからか激しく暴れるが、それでも口伸び狼は離さなかった。
私はどっちを殺すか迷ったが、先に口伸び狼の頭に斧を振り下ろして始末する。
するとキノコも横に倒れて動きが極端に悪くなった。
触手が近づいてきたので切ろうと思ったのだが、口が開くだけで何もしてこない。
困った私は先程食べていたのを思い出し、単に腹が減っていただけなのかと解釈。
リビ殿から頂いた食べ物を一つ口の中に入れてやった。
それを飲み込んだ触手は地面に落ちたので、満足して死んだかなと思ったのだが、キノコの胴体部分が割れて中に女性が居るのが確認できた。
私は慌てて女性を引きずり出すも、その女性は全身が灰色の皮膚をしていて普通の種族には見えない。
女性の肉体に見えるものの、額の所に三つ目の目があり、更には股間に男性の物も付いている。
いったいどういう事なのかは分からないが、とにかく私は彼女を外に出し、そしてキノコに対して祈りを捧げて崩壊させる。
すると、女性の皮膚の色が普通の者と変わらなくなった。
おそらくは邪気で汚染されていたのだと思うが、もしかしたら今なら話が出来るかもしれない。
とはいえ気絶しているから、まずは下の階の休める場所まで運ぼう。
…
……
………
女性を運んでから水を飲み、少しウトウトしていると女性が目を覚ました。
なのでこちらから声をかけてみる。
「う………?」
「こちらの言葉が聞こえるか? 理解できるか?」
「………」
やはり駄目なのかと思ったものの、私は相手が攻撃的に出るまで待った。
「…………貴方は誰ですか?」
「良かった、話が出来そうだな。
私はアッシュ、鉄1級のハンターだ。貴女はここで唯一助けられた者となる。
自分が何故ここに居るか分かるか? それとも分からないか?」
「ここ……? ここはわた、うぶっ、うおぉぇぇぇぇぇぇえぇぇっ!!!」
女性が急に吐き出したが、もし実験の何かを思い出したなら当然だろう。
私は女性の背をさすりつつ、浄化の女神に祈りを捧げる。
すると、吐き気は急速に治まったらしい。
「ゴホッ、ゲホッ……ありがとうございます。私は……ふぅ………。
私はウェッドリーベル国の王都にある神殿の神殿長で、ラフィル・ウド・ミーシャンと申します」
「ウェッドリーベル国? ………すまないが、そんな国の名は聞いた事が無い。
ラブが居れば分かるかもしれないが、私は聞いた事が無い国名だ」
「そう、ですか………
ところで貴方が助けてくれたと思うのですが、貴方は何故それほどまでに強い邪神様の力と気配を纏っているのです?」
「それに関しては分かっていない。
ただ、私は<混沌の種>を吸収できるのだ。
それ故……なのだとは思う」
「<混沌の種>? それはいったいなんでしょう?」
私は<混沌の種>の事を色々な言葉で伝えてみた。
モンスターが強くなる物、生き物が体に入れると死んでしまう物、そして砕かれた邪神そのものだと言った時にようやく伝わった。
「なんと……! 邪神様の力そのもの、もしくは邪神様の肉体とも言われるアレをですか?
というか、アレが<混沌の種>と呼ばれているとは……」
「我々がそう呼んでいるだけで、神殿でどう呼んでいるかは知りませんが………」
「神殿では名を付けてなどいません。
アレは邪神様の玉体。
なればこそ………あのような愚か者どもが利用するなど!」
何やら怒りを持つ事があったらしいが………彼女は神殿長だし灰色の髪だという事は、邪神の加護を持っているよな?
と言う事は、もしや………
「貴女はもしかして、千年以上前の方なのか?
だから私は国名を知らない?」
「えっ? 千年………?」
私は憶測のまま彼女と様々に話し、そして私の考えが間違いではない事を知った。
「まさか邪神様が砕かれた後、様々に争いがあったとは……
その結果、かつての国が今はもう無いとは思いませんでした。
しかし、あのような国など無くなった方が良いでしょう。
邪神様の玉体を地上の者に食わせて無理矢理に寿命を伸ばそうなど……頭がおかしいとしか思えません」
「ん? ………寿命を延ばす?
強くしようとしたのではないのか?」
「えっ? 違いますよ、寿命を延ばす研究………のはすです。
私が聞いたのはそうでした」
「寿命を延ばす、ねえ………
その事の是非はともかくとして、そんな事の為に邪神の肉体ともいえる<混沌の種>を利用したのか。
それで女官を集めて非道な実験をしていたとは」
「女官を集めて?
私はやってもいない罪をでっち上げられ、邪神様の玉体を無理矢理に口に入れられたのです。
邪神様の加護が強かったので耐えられると思われたのでしょう。
それ以降の記憶は無く、その後は貴方が助けてくれたというものです」
「となると、千年ほどに渡ってここを彷徨っていたのかもしれないな。
もしくは、いつの時代かに押し込められたかだ。
ここに居たのだけは間違いないからな」
「確かにそうなのでしょうね。
……ところで何故目を閉じておられるので?
何か理由でもあるのですか?」
「この目は下の方の階層に居た元女官。
狂っていた者達の中で、唯一まともだった者に切られたのだ。
私は目で見ようとせずとも暗闇が見えるとしてな。
で、実際に見えたので今もこのままだと言う訳だ。
血などは不思議とあまり出ていないのだが、目は全く見えん」
「そうですか。元女官が………」
「ああ。
ここでは実験を無理矢理させられ、おかしな姿に変貌して狂ってしまった元女官達。
その女官達が閉じ込められているのか、それとも押し込まれている。
貴女もその中の一人だったのだ」
「そう、でしたか………。その女官達は?」
「私が殺した。それ以外に助ける術が無かったからだ。
浄化の女神に祈りを捧げると、その肉体は崩壊して塵の様に消えていった。
ただし<混沌の種>は残るがな。
私はそれを吸収して自らの力にしつつ進んできたという訳だ」
「………」
私がそう言うとラフィル殿は考え込んでしまった。
私が言っている事が本当かどうか分からないのと、こんな暗闇の洞窟で………暗闇?
「少しいいか?
ラフィル殿と呼ばせてもらうが、ラフィル殿は何故この暗闇が見えているのだ?」
「えっ? それは私が山髭族だからですよ。当たり前ではないですか」
「髭が無いし、額には三つ目の眼があるのに? 山髭族?」
「…………!?」
急に慌てだしたが、となると元々ラフィル殿は山髭族だったのか。
山髭族の女性にしては背が高いのか160近くはあるが……それ以前に三つ目の種族など聞いた事が無いしな。
となると……邪神の力か邪気の所為で変貌したのだろう。
それでも生き残っているだけマシだが。




