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04-29-0154




 Side:ポルドン



 「うん? ………兵士達の中の数名が昨日から戻っていない?」


 「はっ! 単に寝坊であろうと他の者は起こしに行かなかったそうです。

 昼になっても起きて来なかったので部屋の扉を開けると、蛻(もぬけ)の殻だったとの報告があったと見つかりました」


 「ふむ、兵士数名が行方不明な。昨日の今日なので気になる話だ。

 若者が居なくなったのは昨日ではなく一昨日の晩だが、昨日から居らぬと言う事は一昨日の晩からの可能性がある」


 「はっ! それと、酒場から兵士達に連れ出されるハンターを見たという者は複数おりました。

 また、当日酒場の中に居た者もです。

 その者達の言っていた事をまとめると、確かにハンターの者は兵士らしき者達に連れて行かれたと……」


 「そういう事になるわけか」


 「はっ!」


 となると居なくなった兵士達が何らかの事情を知っているものと見て間違いなかろう。

 そしてバレれば罰を受けるのだから、発覚する前に逃げたと考えるのが妥当だ。

 しかし、若者をいったいどこに連れて行ったのだ?


 「その兵士達に連れられた若者が、どちらに行ったか分からぬのか?」


 「後ろをつけていた者が居る訳ではありませんので、確実ではありません。

 しかし確実に言えるのは、酒場を出て西に向かったとの事です。

 兵舎は東であるにも関わらず、何故かその者達は西に向かったとのこと」


 「酒場から西な。

 そもそも酒場が町の真ん中よりも西寄りにあるのだが、そこより西となると……」


 「大きな建物は神殿以外にありません。あちらは住宅地ですので」


 「………さて、面倒な事になったぞ。

 本当に連れて行ったのが神殿であっても、神殿は絶対に認めまい。

 そのうえ無理矢理に調べる事も出来ん。

 他の所なら領主権限で無理矢理にでも調べるのだが………神殿だけはそれが無理な所だ」


 「アレらは無理に何かをしようとすると、こちらの根も葉もない悪評を喚き散らしますからね。

 徹底的に嫌がらせを延々とし続けてきます。

 だからこそ神殿の連中を壊滅させた貴族も、昔からそれなりに居るのですから」


 「まあな」


 それをやると面倒な事になるものの、一度叩き潰せばそこに現れる事はもう無い。

 奴らは自分達を潰そうとするような所からはさっさと逃げ出すからな。

 しかし他所(よそ)に行ってもやる事は変わらず、嘘の悪評を垂れ流して己らを優遇しろと言い続けるのみ。


 我が領もそろそろ限界に近づいてきておる。

 近々奴らを叩き出すつもりだったのだが、ちょっと流れが変わって来たな。

 仮に本当に神殿の連中がやったのであれば、それは今までの連中とは大きく異なるという事になる。


 今まで奴らは嫌がらせはしても、決してそれ以上をしようとはせなんだ。

 しかし若者に限っては、今までの一線を超えておる。

 おそらく金を掴ませたのだろうが、連中にしては随分と思い切った事をやったな。


 「騎士団を動員せよ。神殿に対して事情を聞きに行く。

 我が領の兵士を唆(そそのか)したという嫌疑もある。

 複数の騎士を同道させても文句など言えまい」


 「はっ! すぐに準備いたします!!」


 私は騎士達の準備が整うまで待ち、そして準備が整った騎士団と共に神殿へと行く。




 追及しても、のらりくらりとかわすのだろうと思っていたが、神殿もそれどころではなかったようだ。


 「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!??!?!?!」


 「早く止めて! 無理矢理にでも縄で縛り付けなさい!!!」


 「この騒ぎはなんだ!? いったい何をしている!?」


 私は神殿に入ったが、誰も居ないし勤めも行っていないので宿舎の方に来た。

 それで訳の分かない事に遭遇(そうぐう)している。


 「いったいコレはなんなのだ? 何故あの者は暴れている」


 「こ、これは………領主様」


 「答えろ、あの者は何故あんなにも暴れている」


 「分かりません。

 半月ほど前から南のセルメンタ教国より、神殿関係者の方が来ておられました。

 高位の方らしく私どもでは分かりませんでしたが、あの暴れている方と共にやってきたのです」


 「セルメンタ教国から?」


 「はい。

 様々な国の神殿を見て回っているとの事でして、白に紫色が混じる髪色でしたので、知識の神の加護を得ている方でした。

 だからでしょう、様々な事を熱心に聞いておられたようです」


 「それで、そのセルメンタ教国より来た者達はどうした?」


 「それが…………その方を置いてどこかに行かれたようです。

 昨日の朝から既に姿が見えぬと聞いております」


 「逃げられたか!

 遅かったのは仕方ないが、そこの者は狂って暴れるから置いて行ったというわけだな?」


 「おそらくは………ただ、変なのです」


 「変?」


 変とはどういう事だ?

 そもそも狂って暴れておること自体が変だが、おそらくその事ではあるまい。

 だとしたら何であろうか?


 「この方はセルメンタ教国より来た方であり【転移魔法】使いなのです。

 にも関わらず狂っているうえ、神殿の方は置いてどこかへ行かれた。

 私どもにも何があったか皆目見当もつかず………」


 【転移魔法】使いか。

 それが狂っているとはいえ置いて行くというのも、確かに考えれば変だな?

 【生魔法】使いを探し出し治療してもらえば済むであろう。

 にも関わらず、何故か捨て置いて消えた。


 神殿なら【生魔法】使いを探すのも難しくはないし、なんなら薬の知識もある者は多い。

 なのに何故置いていったのだ?

 近くの領か王都に鳥便を飛ばすなどして【生魔法】使いを連れて来てもらえば良かろう。

 それぐらい神殿の者ならばするであろうに。


 本当に逃げ出したようにしか見えんぞ?

 仮に逃げ出したのならば、疑いを一番に向けられるは確実。

 嫌がらせが得意な連中が、そんな事も分からんなどあり得ん。


 となると、何としても素早く逃げ出す必要があったという事か?

 それとも不測の事態………そう、狂った者が出て慌てて遠ざかった?

 【生魔法】使いと同じかそれ以上に貴重なのが【転移魔法】使いだ。

 そんな者を置いて…………【転移魔法】使い!?


 「あの狂っておる者、髪の色が赤ではないか! いったいどういう事だ!?」


 「あの方は【転移魔法】使いだと知られると、何をされるか分からないので赤く染めていると。

 そう言われておりました」


 「なに? ………そなたら、あの男を拘束すするのを手伝え。

 そして髪の色を落とすのだ!!」


 「「「「「「「「「「はっ!!」」」」」」」」」」


 騎士達の手に掛かれば簡単に捕縛してベッドに括り付ける事が出来たが、こんな事にも手間取るとは……

 神殿の者は力も体力も無いな。情けない。


 ベッドに括り付けた騎士達が水を汲んできて布を濡らし、そして髪を拭いて落としていく。

 そこまでは普通だったのだが、赤いインクを落とした色が問題であった。


 「こ、これは!?」


 「透明だと!? という事は、この者は神罰を受けたという事か!

 だからこそセルメンタ教国から来た者どもは逃げ出したのだ!!

 ならば若者を拉致誘拐したのはコイツで間違いない」


 「拉致!? 誘拐!?」


 「そうだ! 王都からの命で派遣されてきたハンターが一昨日の晩に行方不明になっておる。

 そして、その次の日の朝には神殿関係者が居なかったのであろう?

 そのうえ夜には一部の兵士達が、何故か若者を神殿の方に連れて行ったのが目撃されているのだ」


 「そんな………!

 では【転移魔法】で誰かを飛ばした? だから神罰を受けた。

 という事は、それは犯罪行為だという事で間違いありません。

 ………しかし、狂っているのは何故でしょう?」


 「そこまでは私も分からん。

 しかし若者が消えた事、そしてセルメンタ教国の者と兵士達が居なくなっているのは間違いない」


 となると兵士達はセルメンタに買われたのか?

 そして犯罪がバレるのが怖くなって逃げた。

 という可能性が高そうだな。


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