04-28-0153
Side:アッシュ
カカカッ
どうやらこれで打ち止めのようだ。
私は撃ち終わった壺型モンスターを一匹一匹殺していく。
斧を叩きつけ、一撃で中の水を抜くようにして殺害。
それを繰り返して全ての壺型モンスターを始末した。
これでようやく安全が確保された為、先へと進んで行く。
今までと変わらず、常に盾を構えて安全を重視し怪我をしない。
そう考えていたものの、やはり甘くは無かったようだ。
ドゴォン!
盾を構えている私に対し、物凄い速さで突撃して来た者が居る。
「GRYHJUYMREWHW!!!」
元女官だが、今回の相手は魚のような姿をしていた。
正しくは魚の両脇から細長い足が出ていて、それが動いて突撃して来たのだ。
口には櫛状に鋭利な歯が大量に並んでいるのが見える。
そして高さは私の腹ぐらいであり、今は押し倒された構図だ。
盾に突撃を受けたのだが、その突撃の威力と前へと出る力に押され、後ろへと転倒してしまったんだ。
それでも盾で噛み付きは防いだが、押されて多少引きずられた事で手の平を怪我した。
左手は盾を未だ握っているが、右手に武器は握っていなかったので地面についてしまったのだ。
その後に多少引きずられたので、その間に手の平も擦られてしまった。
擦り傷でしかないものの、汚い物が傷口から入る可能性もある。
早めに倒して箱型魔道具で綺麗にしたいところだ。
私は噛み付きに来ている魚を【身体強化】で押し返し、無理矢理に立ち上がる。
ブルーオーガになれば押し返せたが、逆に言うとそこまで力の強い相手だった。
一旦離れると、またもや突撃して来たので、私はシールドバッシュで迎え撃った。
ドゴォォン!!
敵の突撃の威力と、私の盾の突撃とが合わさって凄い音が鳴る。
私は多少後ろにズラされたものの耐えたが、魚の方は頭が潰れたらしく倒れてピクリともしなかった。
私は恐る恐る近づいて触るも反応が無かったので、浄化の女神に祈りつつ崩壊させる。
なかなかに強い相手だったが、もしかしたら突撃の威力だけに特化していたのかもしれない。
あれだけの速さが出せるなら突撃の威力も出るが、逆にそこまで耐久力は高くなかったのだろう。
現にシールドバッシュで死んでいるのだから、そこまで耐久力が高い訳ではない……はずだ。
「そういえば一度目の盾への突撃では元気だったな?
となるとカウンター気味に入ったのが結果に繋がったのか……」
おそらく同じ元女官は出て来ないと思うが、それでも似たような者は現れるかもしれないので対策は覚えておこう。
突撃してくる魚にはシールドバッシュでカウンター。
それさえ覚えておけば大丈夫だろう。
私は再び先へと進んで行くも、その先は上へと上がる階段だった。
なので分かれ道まで引き返し、今度は左の道へと進んで行く。
それなりに進んでいくと、再び「カカカカカカカッ」という音がした。
またも居る壺型モンスターが針を打ち切るまで待ち、それが終わったら後ろを向いて後ずさりしながら部屋に入る。
再び撃たれながらも針を使わせ、撃ち切ったら部屋の中の壺型モンスターを全滅させた。
もはや慣れたものではあるが、慢心するのは危険なので気を引き締めよう。
壺型モンスターを倒し終わった私は、奥にある通路を進んで行く。
反対側と同じように元女官が居るかと思ったのだがおらず、壺型モンスターがこの後も続くだけだった。
その後は3部屋あったものの、全て殲滅して終了。
なので私は戻ろうとしたのだが、最後の部屋の奥に怪しい壁を発見。
ここもツルツルしていて綺麗過ぎる壁だったのだ。
私は斧の反対側のツルハシ部分で壊し、砕いた先に空洞を見つけた。
なので更に壊して、私が通れるまで広げていく。
その作業をしながらも疑問が口をついて出た。
「神殿の関係者が、ここをゴミ捨て場だと言っていたが………
連中はこの隠された場所を発見できていないのか?
それとも奴らが壁を作ったのか?」
私は十分に壁を広げて中へと入り、奥の光景を見て絶句する。
そして奴らが最低のクズである事を理解した。
「……………とりあえず、全てを浄化しよう。
おそらく出来る筈だ、ここでは出来ているのだしな」
私はその隠されていた部屋の奥に、堆く積まれている骨に触れていく。
おそらくは実験で亡くなった者達の骨なのだろう。
それを隠すようにして壁で覆っていたわけだ。
あまりにもクズである事に、凄まじいまでの憤怒が腹から湧いてくるが、それでも何とか押し留める。
ここで暴れたところで骨が壊れるだけ。つまり被害者が傷つくだけでしかない。
私が祈りつつ骨に触れると、骨は崩壊し粉のように崩れていった。
ある程度の範囲の骨が一度に崩れたので、私は移動して骨を崩していく。
何度も何度も祈り、全ての骨を消した頃には魔力がほとんど残っていなかった。
それでも全てを浄化できたと思いつつ、私は少し黙祷をした後で部屋の中央に行く。
そこには何故か錆びてもいない剣が無造作に捨てられていた。
しかし理由は分かる。
何故ならパリパリした“ナニカ”がこびり付いており、先が無いからだ。
先が無く長方形の形の剣。
これは間違いなく処刑用の剣であり、ここの方々を殺した物だろう。
私は悩んだものの、その剣を持って行く事にした。
連中を殺す為の剣として。
実験に使った者達を殺したのなら、今度はそれを行った奴らの仲間をこの剣で切ってやろう。
それこそが丁度いい仕返しとなるはずだ。
こんな事をした連中の仲間が今も生きているのだしな。
私が嘘を暴いて必ずや………そういえば奴らから嘘の臭いがしなかったな?
その記憶が無いが、となると奴らは嘘を吐いていない?
………おかしな事を言ったヤツも【転移魔法】使いも本音だったとは思う。
しかしあの兵士達に対しては何故だ?
兵士は明らかに嘘だと思っていたが、もしかして兵士達は本物の兵士?
神殿と繋がっている連中であり、そいつらがあの芝居に乗っかっていたという事か………
私の鼻も嘘でなければ効かんからな。
たまたまなのか、それとも私が嘘を嗅ぎ分ける力を持つ事を知っていたかによって変わるぞ。
何故なら私は嘘が嗅ぎ分けられる事を、ほとんど口外していない。
つまり知っている者は物凄く限られるのだ。
あの女オーナーに知られる訳にも、その下っ端に知られる訳にもいかなかったのでな。
更には奴隷仲間でさえ、気を許せた僅かな連中にしか教えていない。
しかも仲間達は全員闘技場で亡くなっているのだ。
なので神殿の連中に教えるなんて不可能だろう。ならどうやって………?
私の鼻の能力を回避したのは偶然には思えないのだが、しかしそうなるとどうやって知ったのか理解できない。
何故ああも綺麗にかわして、私を【転移】させる事に成功したのか。
考えても分からないが、もしかしたら自分は絶対に正しいと思い込んいる者には効かないのかもしれない。
私は臭いで嘘を判別しているが、もしかしたら信じ込んでいる者は嘘を吐いた時の臭いがしないのか?。
結局は想像にしかならないが、ちょっと考えておく必要があるな。
臭いだけで疑うかどうかを考えていると、むしろ臭いが無い際に疑うという事をしなくなっている恐れがある。
怪しいヤツなのに臭いがしないから無条件に信じ込む。
もしそうなっていたとしたら、相当に危険な状況だ。
私の鼻も必ず嘘を暴けるという万能なものでは無い。
にも関わらず疑うという事をしなくなっているのだから、それは恐ろしいこと以外の何物でもないぞ。
「失敗はしたものの気づけて良かった。
致命的な失敗、とまでは言えないだろうしな」
未だ死んでいないうえに五体満足なのだ。
致命的な失敗からは程遠い。




