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04-27-0152




 Side:アッシュ



 「…………ハッ!」


 意識が浮上した私は即座に周りに<内なる目>を向ける。

 しかし何かの危険な存在は居ないようであった。


 「やれやれ………

 おそらく無事だろうと思っていたが、それでも確定している訳じゃないからな。

 襲われる事も無くて安堵した。

 ……まあ、こんな地下に虫とか以外が居る訳は無いな。

 少なくともこの階層の敵になりそうな者は全て倒しているのだ」


 だから私が襲われるのは、上から下りて来た者しか居ない。

 しかし壺型モンスターもそうだが、そもそもアレらは移動に難がある存在だ。

 動けないとまでは言えないが、仮に動けても極めて遅いだろう。


 私がどれだけ寝ていたかは分からないが、それでもアレらが上の階から下りて来るまでには起きられるはずだ。

 1メートル移動するのに30分ぐらい掛かっていても不思議ではない、というくらいに私は思っている。


 起きた私は全て脱ぎ、箱型魔道具を使って汚れを落とすと、服などの汚れも全て落として綺麗にしていく。

 これは臭(にお)いなどで気づかれるのをなるべく防ぐ為だ。

 綺麗に出来るなら、しておく方が良いに決まっている。


 棍棒と杭と斧、それに盾も綺麗にして収納し、筒形の魔道具で水を綺麗にして飲む。

 お腹は空いていない感じなので、そこまで長い時間寝ていたわけではないのだろう。

 目が見えるかどうかは別にして、洞窟の中だからどのみち昼夜は不明だ。


 自分がどれだけ寝たのかも分からないが、少なくとも疲労はある程度とれていると思う。

 体を動かしても重い感じはしないしな。


 私は多少体を動かして解した後、先へと歩いて行く。

 そして分かれ道を右に行き、奥まで辿り着いたら穴を掘る。

 下は硬いものの、斧の反対側に付いているピッケル状の部分で破壊。

 スコップも使って穴の様にしたら、そこで用を足す。


 「………ふぅ。

 流石に用を足す為の穴は作っておかないとな。

 あまりそこら辺で適当にすると、水源が汚れたりするかもしれないし。

 それは飲む気にもならない」


 幾ら筒型魔道具で綺麗に出来るとはいえ、そして神様から貰った物だから完璧に綺麗にできると言っても嫌だ。

 納得する事なんて出来やしない。

 特に地底池の水があるのに、わざわざそっちを飲む必要は無いだろうとしか思わん。


 下らない事を考えつつ大きな方も出し、そのままの態勢で箱型魔道具を使う。

 お尻も綺麗になったので服を着ると、すぐにトイレ穴から離れた。


 「いやー、尻まで綺麗になるのだからリビ殿様々と言ったところか。

 本当にありがたいし助かる。

 これで後は水を入れられる容器さえあれば良いんだが、今のところは高望みだな。

 岩も削るというより壊すしか出来ないし」


 そうなのだ。

 岩を削って入れ物にすればいいと考えたが、削る事は出来ず壊す事しか今のところ出来ない。

 木があれば削るのだが、洞窟の中に木が生えている訳も無く………

 今もって水の入れ物は出来ていない。


 「それでも地底池が見つかっただけマシだ。

 さっ、愚痴ってないでそろそろ気合を入れるか」


 私は上への階段の前まで来ていたので、今一度気を引き締めて階段を上がっていく。

 タワーシールドに隠れながら上がると、早速新しい階層から歓迎を受けた。


 カカカカカカカカカッ


 またもタワーシールドに針がぶつかるが、あの壺型モンスターはまだ居るらしい。

 もしかしたら洞窟内には壺型モンスターと元女官しか居ないのかもしれない。

 もちろん本当にどうかは分からないが、ここまでに目撃したのはそれだけだからな。


 他の存在を見てみたいと思わなくもないが、今はそれよりも目の前に集中しよう。

 タワーシールドが壊れる事は無いが、そろそろ針が無くなるはずだ。


 カカカッ


 それ以降は音が止んだので、完全に針は出し尽くしたらしい。

 私は敵の位置を把握してから突撃。

 斧で壺型モンスターを殺害していき、部屋の中の全てを倒したら一息吐く。


 「やれやれ、とりあえず感覚は忘れていなかったようだ。

 戦闘感覚まで寝て失っていたら、針と針の間に飛び出していたかもしれない。

 休憩を挟むとどうしても緩むからな。

 この調子で頑張ろう」


 口に出す事で自分に言い聞かせ、そして私は先へと進んで行く。

 この階層は最初から左右に分かれているので、私は右へと行く事にした。

 別に深い理由は無い。

 下の階でもそうだったからというだけだ。


 どのみち階層の全てを回り、元女官の者達を一人残らず救わねばならん。

 なので階層の全てを見回る事に間違いは無く、だからこそどちらから行っても一緒だとしか言えない。


 タワーシールドを構えながら進むと、再び音がし始めたので止まる。

 「カカカカカッ」という音を聞いていると、突然<内なる目>の範囲内に人型の存在が入って来た。

 しかしこの洞窟内に人が居るなどあり得ない。

 となると………


 「FGTHTUMEWRNENM!!!」


 またもや意味不明な言葉を叫びながら、元女官が襲ってきた。

 今回は人型だが、明らかに小さいのでステージ5だろう。

 ただしステージ5が大きくなっていくのかが分からない。


 ステージ1の間は大きくなり2で小さくなっていく。

 そして3で再び大きくなっていき、4で小さくなっていく。


 しかしステージ5の情報はほとんど無いので、大きくなるのか小さくなるのか分からない。

 もしかしたら色が変わっているのかもしれないが、そもそも色が見えないので不明なのだ。


 最初の話せた者は真っ黒だったが、それが正式な色かどうかは不明だしな。

 未だに彼女だけが意思疎通の出来た唯一の存在だが、それ以外はどう足掻いても無理だ。

 何故かは分からないが、それでも諦める事は無い。


 助ける事は無理でも、救う事は可能なのだ。

 異形の姿のまま彷徨(さまよ)う事を止めさせ、死という救いは与えられる。

 それで納得するしかない。


 忸怩(じくじ)たる思いはあれど、出来ない事を夢想しても意味は無いのだ。


 人型なので攻撃をかわすのは容易(たやす)く、反撃で頭をカチ割って倒す。

 やはり棍棒の一撃は強力であり、相手が小さければ頼りになる武器だ。

 大きいと力が入らない打点でしか叩けないのでアレだが………


 倒した遺体に触れて浄化し、崩壊させて残った<混沌の種>を吸収した。

 元女官との戦いでは下がっていたので、針は飛んでこない距離に今は居る。

 <内なる目>の範囲がまた広がったので、どうや先程のはステージ5で間違いないらしい。


 それなりに広がったものの、未だに遠い距離は目よりも見えないのは変わらない。

 それでも結構な範囲は既に把握できるようになった。

 おそらくは100メートルに近いとは思う。

 ここまで全方位を把握できると頭が大変だが、慣れてくれば楽になるはずだ。


 駄目なら休憩しつつ進めばいいだけであり、そこまで急がなくてもいいだろう。

 むしろ焦るあまりに失敗する方が怖い。

 一度の失敗が取り返しのつかない失敗になる事もある。

 迷ったら安全策、を徹底しよう。


 カカカカカカッ


 ………どうやらこれ以上は撃ってこないらしい。

 私は敵の位置を把握して部屋に侵入、そして慌てて戻った。

 部屋は丸い形だったのだが、入り口近くの壁に逆向きに付いていた奴らが居たのだ。

 そいつらはまだ針を撃ち終わってはいない。


 なのでどうするかと考えたのだが、私はタワーシールドを掲げ後ろを向いて後ずさりする事に。


 カカカカカッ


 撃っていなかったのは5匹だが、強引に行くわけにはいかない。

 撃たせ切ってからでないと危険だし、どんな傷を負うかを考えたら一撃でも駄目だ。


 怪我もあるが、針は思っている以上に細い。

 なので刺さって折れたら最悪な事になる。


 針が刺さったまま折れてしまい、抜く事が出来ないなど危険すぎて仕方ない。

 体内に残留するなど恐ろし過ぎる。それを考えれば危険性がよく分かるというものだ。


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